現代の大空へ
まだまだ設定的な意味で不明な所(キャラの容姿等)があるかとは思いますが、もう少しお待ちください。
「まさか現代で零戦の機銃を撃てる日が来るとはな」
滑走路上で今か今かと空に昇る時を待つ零戦の鼓動を身体と耳で感じながら竹田 雅人は現代技術に依って改善された最もな物である無線で僚機の零戦に乗っている雪村 冬子に語りかける。
「そうですね。企画の段階から実弾を使ったデモンストレーションをするとは聞いていましたが、実際の射撃となると緊張します」
そう、今日はこの平和の国日本に置いて一部の市民団体からは「絶対に在り得ない」とまで言われて猛烈な反発を受けた、現代に蘇った零戦の曲芸飛行のデモンストレーションと"実弾"による射撃演習と言うトンデモイベントが執り行われていた。
その一大イベントでパイロットとして搭乗しているのが、米レシプロ機アクロバット大会三連覇の偉業を成し遂げた竹田と、同じ大会で二位をキープし続け、更には竹田と自分の機体の整備までしていた女性パイロット雪村だ。
ややこわばった風の彼女に、雪村が生まれた時から真向かいの一軒家に住んでいた竹田は長年本当の兄妹の様に接してきた雪村に対して優しく語りかける。
彼は自分は今年で26歳でまだまだ若いと言うが、小さい頃から三つ年下の雪村を共働きの彼女の両親から預かり世話をしてきた彼はやや年長者の様な雰囲気を感じる時もある。
「なぁに、中継用のヘリが居るとは言え、目標は日本本土から二十キロ離れた海上だ。それに本土から太平洋に向けてのアプローチしかしない事になってる、気楽に全弾ぶち込めば良い」
「そういう事では無くて……、あぁもう。脳筋の竹田さんとは違って私には私なりに考えている事があるんです」
「そうか、それより先週の打ち合わせの頃から竹田さん竹田さんって随分他人行事になったな、何時もみたいに名前では呼んでくれないのか」
「現代で注目の的の零戦に唯一選ばれた男性のパイロットで、悔しい事に顔が良いですからね。親しく話してる所をファンの女性に見られたら私は殺されるかも知れないですし」
自分だってとんでもない美人になったじゃないか。と心の中で突っ込みながら管制塔からの指示が入り一番機の竹田はフットペダルと操縦桿を改めて確かめ、計器類にも隈無く目を遣り異常が無いと見るやエンジン出力を上げ離陸を開始する。
滑走を開始し横に流れる機体をフットペダルや操縦桿を巧みに操り、出来る限り真っ直ぐに保持しながら少し。
暫く感じていたガタガタと地面から響いていた振動が無くなると同時にフワリと、現代の空へと零戦は日の丸が描かれた大きな翼で飛び立った。
管制塔は観客席からそう近く無い位置にあるものの、それでも大勢の見物客の歓声が無線を通して僅かに聞こえてきた。
耳を澄ますまでもなく聞こえるこの歓声は管制塔のオペレーター達によるものだろう、彼等も日本人だ。実際に飛ぶ姿を見たのはこれが初めてでも零戦がこの大空を飛ぶという事に感動しない人は居ない。
勿論、竹田と雪村もだ。
「一番機、竹田さん。聞こえますか?」
「こちら一番機竹田、聞こえてる。予定のポイント上空で待機する、練習の時にも感じたと思うがアメリカで乗ってたアクロバット用の機体とは勝手が全然違う。今日は天気も良くてエンジンちゃんもノリノリみたいだ、振られて事故るなよ」
「二番機雪村、了解です。――――異常なし、行きます」
続けて飛び立った雪村機の零戦に観客からはまた大きな拍手と弾けんばかりの歓声が向けられた。
二機の零戦は夫婦の様な阿吽の呼吸で曲芸飛行の演目を達成し、燃料の補給を受ける為に一度地上に戻った後、次は射撃演習場である太平洋に向かい飛び立った。
因みに私は第二次世界大戦中の日本の戦闘機の中では隼が一番好きです。