3:夢魔の企み
不思議なイケメン男性瑠依と巡りあったあの日。
思い出すとろくなことがなかった。
学校には大遅刻するし、先生にも、母親にも叱られて散々な1日だった。
瑠依は瞳を輝かせながら、私をおとぎ話のお姫様だと勘違いしているようだった。
ちなみに瑠依は、メンズアクセサリーショップ「ベラッダ」で働いているらしい。
そのルックスと人当たりの良さで、人気の店員になっているとのこと。
でも、まだ私の頭には疑問が残っている。
瑠依は現実世界の人間、それとも夢の中から私を追ってきた夢の中に住んでいる人なのか。
何だかモヤモヤしてかなりスッキリしない。
自分の部屋のベッドの上で抱き枕を抱きながらゴロゴロする。
そのうち眠くなって寝ってしまった。
こうして寝て無事に朝を迎えられると思ったのに。
何故夢を見る。
しかも、今回の夢の舞台は草原だ。
私はふわっとしたワンピースを着て大草原の上に立っている。
しかし一瞬にして大草原が暗黒の世界に変わる。
夢はコロコロと舞台を変えていく。
気づくと知らない世界いや舞台にきている。
私の夢を操るものがどこかにいる。
その正体は夢魔か、悪魔か、魔王か分からない。
夢の影で夢魔がニヤリと笑う。
「お前の夢は私の支配下にある。お前の夢は私のモノ、私が自由に変えてやる。お前が望む夢など見させない。」
春日愛は声の聞こえる方に向き直る。
「何よ、それ。私の夢をまた好き勝手にしよっての。いい加減にしてよ!」
春日愛は怪訝な顔で不機嫌さが増していた。
夢魔はまたニヤリと笑う。
「そんなに夢を取り戻したいか?夢が欲しいか?」
挑発するように夢魔は春日愛を見る。
「ええ、取り戻したいし。私だって自分の夢が欲しいわよ。」
「貴様は愚かな人間だ。ならば、私が試験を出してやる。それをクリアすれば全ての夢を返すかどうか検討してやってもいいぞ。」
「えっ、本当に。」
「ああ、1度くらいならチャンスを与えてやってもいいだろう。」
「1度だけ?」
「当たり前だ。世の中を、私いや俺を甘く見るな。このチャンスに賭けるか?」
「賭けてもいいわ。」
春日愛は覚悟を決めたようである。
「よかろう。人生最大の夢の賭けの始まりだ。では、次の夢で俺はまた現れる。その時に、試験の内容を詳しく言う。逃げるなよ。」
夢魔は春日愛の方を真剣に見やる。
「分かったわ。逃げないわよ。逃げたら、大事なものを手放すことになるから。」
「そうか、ではまた会おう。」
夢魔は春日愛の夢の中から消え去っていた。
夢魔の密かな企みは着実に動こうとしている。