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◆4話◆本性〜発覚〜

◇◇◇


 ルゥイ。こいつは俺が不在の時さえも、俺の部屋に居座って何が面白いのだろうか?しかも退屈で眠り込んでしまったと思われる。


 俺は取り敢えず着替えをして、スヤスヤとあどけなく眠る美少女面を見下ろした。

 このキレイな顔を見ていると、無性に腹が立つのは何故だろうか?その疑問の解を得るよりも、この腹立ちを少しでも解消すべく行動を起こしてしまう俺は、少しばかり短気かも知れない。


「……っ!!いったぁい。何すんのさ、もお〜!」


 プリプリと怒る姿も、端から見る分には可愛いくてならん存在だろうとは思う。しかし、自分に関わった途端に、どんな害虫よりもタチの悪い相手と化す事は間違いない。

 俺は渋々起き上がったこいつに再度ケリを入れる。


「ニャッ!」


 コロンと転がって恨めしげに見上げてくる視線を無視して、ベッドに腰掛けた。


 ルゥイは俺を警戒をし乍ら、少しばかり距離をとって上体を起こした。


 首を傾げて俺を見上げる顔に怒りはない。むしろキョトンとした大きな眸は素直そうで澄み切っていて、理不尽な暴力など受けた事もない無垢な子供の様だったりするからタチが悪い。


「機嫌悪いねェ、何で?」


 俺は無言のまま、懲りずに近寄って来たルゥイの襟をとった。


 ねじり上げると苦しそうにもがきつつ、それでも暴れようとはしない。 恐々とした眼差しですらなく、何とか宥めようと笑みを浮かべるルゥイがまた腹立たしい事この上ない。


「何で怒るのさ。俺、何かしたあ?」

「俺はな………、お前の顔を見るだけで腹が立つんだ。」


 強いて云うなら、吉岡夢美と同じ台詞も非常にムカついたが。この際それは置いておく。


「エェェ?生れつきだもん。かんべんしてよぉ。」


 こいつらに共通する力が抜けそうな話し方も、半分くらいは置いておく。


「ついでに、莫迦のフリしたその言動も気に入らねェ。」


 淡々と俺は云ったが、どんなに怒鳴られても平然としたルゥイが、さぐるような視線を返した。

 気の所為かと思うような、一瞬の事ではあったが、俺は逃さず追い詰める。


「莫迦じゃないのは解ってんだ。いい加減に本音を話し合おうや。……それとも、本気で怒らせたいか?」

「…………怒らせたくは…ない……かな?」


 まだトボケルつもりかと、俺は目をすがめたが、ルゥイは手を振って、取り敢えず離してくれと云う。

 ここで逃げられては、たまらない。真意を計りかねニラむ俺に、ルゥイは咳込みつつ観念した。


「……殺されるかと思った。」


 ぜーぜーと息を整えるルゥイは、それが本来の姿なのか、クスリと皮肉な笑みを浮かべる。


「まったく。警戒されまいとして、逆に取られちゃたまんないよね。」


 そう云って見返す眸は、どう見ても無邪気さとは無縁の表情で、何だかウンザリして悲しくなった。

 これが、一時でも心惹かれた相手かと思うと非常に虚しい。


「でもねェ、云っとくけど別に何を隠してる訳でも無いんだよ。」

「…………………。」


 それを信用しろと?

 こいつは本気で云うつもりだろうか?


 ルゥイは困ったように笑う。皮肉まじりの、穏やかとは云い難い空気をまとう笑みで、ますます不信をつのらせるシロモノだったが、ルゥイはそんな事には構わないと決めたらしい。


「どうせ疑われてるなら、取り繕ってもムダだしね。ダマし切れないなら本音で話す方が、俺としても確かに気楽ではあるよ。」


 無邪気どころか邪気にあふれ、性悪と呼ぶのが相応しい、不遜かつ傲然とした態度で人を見下す。


 ルゥイ……、俺は確かにお前が猫を被っていると気付いてはいたが……………そこまでやるかよ。今のお前が本性だと疑いもしないが――――。

 全然信頼出来ないぞ。何を云っても疑惑を招くぞ。


 俺の沈黙をどう見たか、ルゥイはフンとせせら笑う。


 可愛くねェ!

 どんなにキレイな面でも、この性格はどうしようもない。イヤな奴としか思えないヤローである。


「俺の云う事なんて、信じられないと思うだろ?」


 まったくだ。

 この眸。この笑み。この態度。

 どこを取っても信頼性皆無と云えよう。

 友達にしたくないタイプNO1の座は俺サマのタメにあるっ、てルゥイの表情が云っている。

 しかし。


「ここで頷いても、話が始まらねーだろ。」


 嫌々乍らも、云うしかない。

 憮然とした俺にルゥイは笑う。

 エラソーでイヤな奴丸出しの、笑顔より嘲笑と表現するのが相応な笑いに、早々とウンザリして逃げ出したい俺。


「俺はね、こんな奴だからさ。良いのは顔と頭と身分だけってよく云われるんだよ。」


 的を射た指摘だ。そいつとは意見が合うだろう。

 俺は失礼乍ら力強く頷いた。


「俺としては、それだけ良ければ充分だと思うんだけどさ。」


 他が悪すぎるだろう。

 人間中身も大事だぞ、絶対。

 俺が云うのも何だが……。


「確かに他人の手が欲しい時は不利なんだよね。」


 肩をすくめてルゥイは笑う。

 他人の手助けなんて、別に要る訳でも無い…と、その笑いが語っている。


「俺に出来ない事なんて、滅多にあるもんじゃないから、然したる不自由も感じないけどね。」


 自信に満ちた眸。

 ならどうしてあそこ迄、正反対の人格を演じる必要があったんだ?

 俺はそう思った。

 いくら来た途端は呆然としてても、その後の態度は自分で選択したもんだろう。


 疑問に応えるようにルゥイは云った。

 オレサマな表情に、ほんの少し苦さがまじる。


「地球は普通、干渉してはならない土地だ。いくつかの例外を除いてね。」


 何と云ったら良いのか……と呟いて、初めて、戸惑いがルゥイの顔にのる。

 困ったようなその眸は、初めて見た時の天使の顔と…確かに重なった。

 イヤぁな事実に気付いてしまう。

 俺が間違って恋した天使は、演じる前のルゥイだった。

 天使と云うより悪魔じゃねェか。


 無邪気なフリをしていた時は、かなり抜けた印象を与えたルゥイだが、こうしていると抜けているどころか、かなり聡明なタイプである。

 性格が何処までも自己本位で、何か企んでいるのではと警戒されるタイプでもある。


 そりゃあ、このままの奴に何を云われても、協力など出来なかったろう。少しでも記憶を覗かれるのはイヤだな。絶対イヤだ。例え知識だけだと約束されても、信じる事が難しい。


 何故なら。

 こいつからは人を人とも思わぬ不遜さと共に、人を陥れようとする底意地の悪さを感じるからだ。

 それを、こいつ自身解っているのだろう。


「俺に協力しようなんて物好きは、そうそういるものじゃないからね。先ずは地球で暮らす為のパートナーが欲しかったんだけど、そのパートナーが見つかってるのに助力を仰げないんじゃ仕方ないからな。」


 だから、違う性格を演じたと云う。


「もう少し、ダマし易い奴を探せば良かっただろう。」


 俺は嘆息した。こいつの演技は中々だった。俺以外の奴ならダマせたと思う。

 もちろん、俺がダマされなかったように、こいつの裏に気付く奴もいるだろう。だからと云って、それが少数派だって事まで、認めない訳でもない。大多数はダマされるぞ。

 確かに、こいつは頭が良いんだ。


「それなりに掟ってものがあるんだよ。」

「最初に逢った奴でないとダメとかか?」


 俺の言葉にルゥイは笑う。


「最初にエッチした相手だよ。ま、似たようなもんだけどね。」


 似てない。

 似てないぞルゥイ!少しは拘ってくれ!何でそんなに無造作なんだお前は!?


 心臓がバクバクいってる。

 やっちまったもんは仕方ないが………と思いかけて、気付いた。


「やらなきゃ、他の奴にしたのか?」

「当然じゃないか。とは云え、俺が跳んで来た事にも驚かず、俺の姿にも動じない、そんな奴は滅多に存在しない。性と意志を受けなきゃ、こっちの相手に力の干渉ができない事を考えると、お前がケダモノだったのは悪くない仕儀だったと思うね。」


 ケダモノと云われても、俺は何も云えない。

 しかし。


「お前に驚かない奴は居ないだろう。」

「お前の他にはね。」


 俺だって驚いたと云ってるんだ。気付け莫迦!

 怒鳴りそうになって、聞き捨てならない台詞に思いとどまる。


「やらなきゃ力が使えない?」


 いや、そんな云い方とは、また違ったような。


「やった相手が認めてくれないと、使えないんだよ。」

「…………。そのせいで、手の内をさらしたのか。」


 納得。

 つまり、それが掟って事か。


「聞くけど。俺が最初から今の態度で話しかけて、知識見せてくれた?」

「見せる訳がない。」

「他の人のを見て良いと云った?」

「………他の奴でも良かったのか?」


 頷いたルゥイに俺は舌打ちした。

 クソッ。それならそうと云えよ。


「他人がどうなろうと知った事じゃない。」


 そうして欲しかった。

 心から。


「今からでも良いから、他所にいけ。俺が許す。」

「イヤだ。」


 何がイヤなんだ。

 それとも、もうダメなのか?


「せっかく理解者に恵まれたのに、今更動くものか。」

「良いから出ていけ。俺はお前に関わりたくない。やり直せ。」

「ムリだって。お前は俺が此の世界にいる間、家族として過ごす事を認めた。それは一種の契約だ。やり直しは確かにきくが、お前が俺のパートナーになったのは変わらない事実だ。お前が認めない限り俺は力を使えない。その上、この性格にひるまないお前を俺が手放す訳もない。」


 そう云って、せせら笑うルゥイに俺はクラリと目眩を覚えた。

 何を云っても効果がない。

 何でこんな奴に関わるハメになったんだ?一体俺が何をしたんだ?


「ま、俺を抱いたのが不運と諦めるんだな。」


 そう云って、天使の顔をした悪魔は哄笑した。

 高笑いが非常に似合う。

 何処までもイヤミな笑いかただった。


☆☆☆


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