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◇未練◇引き篭りのルゥイリア

そう云えば以前に天使の更新すると書いてから忘れてました。

ストレス溜まりそうなルゥイリアです。ストレス溜まってる時には、逆に発散になる感じですww


燕夜も元気な時には書き難かったから、ウジウジした奴らは疲れた時に書くべしと思いました。なんちゃって発言ですがね。


少しでもお楽しみ戴けたら倖いです♪



☆☆☆


 ルゥイリア王子と云えばその狷介且つ短気な性格と、無差別に等しい毒舌を披露する事で知られる。彼を穏和と呼ぶ人間は居ないし、彼を優しいと云う人間も存在しない。

 そして、彼を未練がましいと呼ぶ者も不在だった。


 彼の傲慢とその身勝手を詰る意見は、それこそ無限に重なる平行世界の数ほど存在するかに見えたが、彼の弱気や未練など、恐らく誰にも想像出来はしなかった。

 それは、蒼月の梨夜を気弱な性格だと呼ぶモノが不在なのと同様に、有り得ない事態に他ならない。




 だが。

 現実は違った。

 神々さえ怯ませる毒舌の持ち主、いばらの王子ルゥイリアは。

 恋した相手に告白も出来ず、自らの世界に逃げ帰ったし。

 剰えその相手を、未練タラタラ水鏡に映し見守る日々を過ごしていた。


 美しいルゥイリアより、もしかしたら美しい少年。

 乱暴で、無表情で、たまに笑うと………物凄く魅力的な少年。


 ルゥイリアは初めての恋を引きずる自分を嫌悪した。未練がましく水鏡を覗くのは止めようと、何度も思っている。しかし思うだけで、止める事が出来なかった。

 洋は、相変わらずキレイだ。

 相変わらず、我が道をばく進している。そして、相変わらずディストミラルの忌々しい小娘に怒声を浴びせかけている。


 洋の遠慮の無い怒声と、当たり前のように奮われた拳や蹴りを。

 ルゥイリアは懐かしく思い出す。

 そんな扱いを受けた事は無かった。それを許せる筈も無かった。

 だが、不思議と。

 ルゥイリアは洋のする事ならば、然したる不満も無く受け入れる事が出来た。


 洋は常に怒っていた。

 だが、何故か嫌悪はされなかった気がする。

 その怒りに満ちた暴力は、単純でカラリとした明るさがあった。洋の性質は、マイナスの空気を纏うことが無い。何処までも真っ直ぐで、正直で……怒りの尾を引きずる事が無かった。

 それでも毎日毎回顔を合わす度に、言葉を交わす度に洋が怒っていたのは。

 その度毎にルゥイリアが洋を怒らせたからに他ならなかった。


 ルゥイリアの嫌味に、洋は耐える事も屈する事も無かった。怒鳴り散らし、殴る蹴るの乱暴な報復が為されたが、次の瞬間には忘れたかの様に平然としていた。


 ルゥイリアの笑顔を、人々は恐怖し嫌悪する。そこには邪悪の影がチラつくからだ。

 洋も当然のようにルゥイリアの企みに満ちた笑みを嫌った。しかし、すぐに慣れた様子だった。

 洋は何処までも自然体だった。

 隠し事も、画策も無い。

 ルゥイリアを嫌い、憚る事なくそうと告げ乍ら、怒ってない時の洋はルゥイリアと普通に会話もした。

 殆ど怒っていたが………。


 ルゥイリアに対する警戒を忘れないと誓いつつ、時に忘れているかのような無防備な態度。ルゥイリアをやり込め、暴力で押さえ付け、勝利を得ると無邪気に笑った。


 ルゥイリアに対して、何の含みもなく笑える人間が……一体どれだけ存在するだろうか。

 ルゥイリアの演技に騙される事も無く、警戒し続け乍ら……何故あんなに何度も無防備になる瞬間を重ねる事が出来るのか。ルゥイリアが大嫌いだと、言葉にも態度にも、隠す事なく洋は告げた。だが、楽しそうに笑った表情にも嘘は無かった。

 その嫌悪は一瞬一瞬のモノに過ぎなくて、もしもルゥイリアが態度を改めたならば、洋はルゥイリアに友情さえ抱いたかも知れなかった。


――そんなモノは要らない。


 洋の懐の深さに溺れ乍ら、ルゥイリアは自分の気持ちを否定した。もはやどうしようも無いくらいに惹かれ乍ら、これ以上好きになりたくは無いと考えた。

 洋はルゥイリアを愛さない。


 それくらいは。

 ルゥイリアにも解っていた。


 単純な洋の心は、ルゥイリアから見ればガラス張りに等しかった。ルゥイリアの美貌に、一目惚れした洋にも無論のこと気付いていた。

 しかし、どんな演技も通じなかった。

 ルゥイリアの実際の笑顔は、自らも認める邪悪なモノだ。

 その笑顔を見て警戒しない相手はいないし、怯まぬ相手もそうは居ない。

 ルゥイリアの性質と性格の悪さが滲み出る、不吉と企みを内包した笑みなのだ。

 それをルゥイリアは自覚している。

 本人が普通に笑う度に、余程高い位の神々以外は、その嗤いと嘲笑に怯み後退る。無自覚のまま生きられる程に鈍くは無かった。単純に気にしなかったから、改める必要を感じず、ずっとそのまま生きてきた。

 洋の前で繕ったのは、自分に見惚れたその眼差しを、また受け止めて見たかったからだ。

 しかし。


 洋はルゥイリアの外見に惹かれはしたが、無邪気を演じるルゥイリアには警戒を解かなかった。誰もが後退るルゥイリアの邪気に満ちた笑顔には、怯み乍らも立ち向かって来た。

 ルゥイリアの本来の感情を晒せば、洋は「怖いわ!」「気持ち悪いんだよ!」「さっさと帰れ異世界に!」「この悪魔!」等々と罵倒しつつも、一度殴れば溜飲が下がる様子だった。

 すぐにまた殴られる事になったのは、ルゥイリアが新たに怒らせ続けた為である。

 多分。ルゥイリアは洋の友人にさえ成れた筈だった。

 演じる事を止めた後、洋の怒りを誘い続けたルゥイリアだったが。

 怒りを誘うのが簡単ならば、その反対もまた容易だと云う事だった。

 ルゥイリアの邪気に溢れる笑顔さえ、洋は受け止めたに違い無かった。


――許容範囲広すぎるだろう。


 ルゥイリアは苦笑する。

 自分で云うのは何だが……とルゥイリアは考える。


――俺の笑顔を受け入れる可能性を持つとか……頭がオカシイだろう。


 その笑顔の持ち主が、自ら真っ向否定する。それがルゥイリアの微笑みだったり笑顔だったりする。

 当然。

 人々は囁く。神司仲間も頷く。神々も納得する


「あれは、笑いでは無く……嗤いだろう。」


 そう。ルゥイリアのソレを、純粋な笑顔だと受け止めるモノは皆無だった。笑みは陰謀と企みを秘め、笑顔は嘲りのそれ以外の何物でも無かった。

 邪悪な笑顔は、しかしそれはそれで信奉者が存在した。


 蒼月の梨夜と。

 棘の王子ルゥイリア。

 この二柱の神司は、嫌われ者以外の何物でも無いのだが……隠れた信奉者にもまた事欠かなかった。

 その美貌だけで世の中を渡るのかと、マトモな感性を持つモノは嘆くが、ただ美しいだけで慕われる訳でも無かった。


 元から研究ばかりして隠棲に近い生活をするルゥイリアだったが、その信奉者たちはルゥイリアの様子の変化に気が付いていた。

 無表情に…、時に嗤い乍ら水鏡を覗くルゥイリアは、どう見ても怪しさ全開だった。

 どんな悪巧みを練るのか、どんな恐ろしい陰謀がソコにあるのか。

 信奉者たちはドキドキと見つめ、その信奉者たちの様子に気付いた下位の神々は怯え、ちょうど塔に滞在していたルゥイリアの神司仲間に泣き付いた。

 基本的に、何かと実験体にされて被害を被るのは、大抵の場合が下位の神々だったから、今回もそうだと思われたのである。


「ルゥイ殿。神々を怯えさせるな。」

「トウゼ王?砂久弥まで来たのか。何の話だ?」


 ルゥイリアは同じ星出身の、東国の元東宮たちの訪問に怪訝な顔をした。

 そして一人と一柱に説明を受けて、自身がはくの塔内の平穏を脅かしている事実を知った。

 ルゥイリアは嗤った。


「へえ?期待されてるようなら、何かしらやらないといけない気になるな。」

「誤解のようだな。」

「期待などしてないから止めてくれ。」


 ルゥイリアは愉しそうに口元を歪めはしたが、飾らない口調は寧ろぶっきらぼうな程で、面倒臭そうな印象を与えた。その態度に、神司たちは神々の杞憂を悟り安堵した。

 ルゥイリアは大概の場合、何かしら「少年らしさ」を演じている。柔らかい口調で、少年の姿に見合う愛らしい笑顔すら浮かべる事がある。不吉極まりない笑みを浮かべる時も、甘く優しい話し方をする事が多い。台詞そのものは、毒に満ちているが、口調と声は煌めく程に飾り付ける。

 女神が美しい少年の姿を愛でるが故に、その演出はルゥイリアの信仰心でもある。

 実際のルゥイリアの口調など、本人ですら忘れがちだった。

 だが、何をする気もない時は、ルゥイリアですらある。嫌がらせも、仕事も忘れて、怠惰に過ごしたいと思う事もある。

 演じる事も、面倒になる。

 長い研究や仕事を終えた時などに、そんな状態になるルゥイリアを神司仲間は知っていたし、現在の姿は、まさしくソレだった。


 ルゥイリアは神司仲間を応対するのも面倒のようで、用が済んだなら帰れとばかりに顎をしゃくり出口を示した。

 側仕えの青年が、流石に無礼なのでは……とでも云いたげに、表情を引き攣らせていた。

 神司たちは慣れっこだったから、特に気にせず退室した。


「お前も行け。」

「………はい。」


 ルゥイリアは現在独りを好んだ。怠惰を気取る時期は大概そうだったから、周囲も大した違和感を感じなかった。

 ただ。

 水鏡を覗き続ける、その光景だけが異様だった。



「………。」


 シャランと砂久弥も、真実何でもないなどとは、恐らく信じてはいない。それくらいには、付き合いが永く。それくらいには、聡いとルゥイリアも知っている。


――莫迦げてる。


 ルゥイリアはそれでも、誰も居なくなった室内で、水鏡に映像を展開させた。

 そこに映る無表情の少年を眺め。

 自嘲の笑みに口元を歪めた。



 すぐに忘れる筈だった。

 忘れられない迄も、こんなに未練がましい真似を自分がするとは想像さえしなかった。


――洋。


 その映像に、ルゥイリアはそっと白い手を伸ばした。


――本当に……莫迦げている。


 細く長い指が、映像の中の洋に触れた。

 そして、偶然にも。

 洋が真っ直ぐにルゥイリアを見つめた。

 正確にはその方向に立つ、誰かに視線を向けた。


「…………。」


 こうした瞬間に沸き上がる気持ちを、ルゥイリアは持て余す。

 洋の傍に居る誰か、洋の声を聴く誰か、洋の視線を受け止める誰か。

 その全てを、滅ぼしてやりたいとすら感じた。


――嫉妬と云うものか。


 その感情と衝動を、ルゥイリアは新鮮に感じるが、不快さは否めなかった。

 ルゥイリアの趣味と仕事は、研究と嫌がらせである。

 恋愛沙汰に興味を持った事が無いとは云えない。永い命は様々な暇潰しをルゥイリアにすら望ませた。

 愛され執着される日々も、幾度も経験した。引きこもる生活のほうが圧倒的に永くは有るが、それなりに世界を飛び回るルゥイリアである。

 沢山の世界に満ちるチカラや、その文化もルゥイリアの研究対象だった。

 文化毎に、恋のしかたさえ違う。ならばそれも観察の対象になり、体験してみるのもフィールドワークの内にするのがルゥイリアで、そこに全く愛情が無かった訳でも無い。


 ただ今までのルゥイリアは、塔に帰還すると共に当たり前のように思い出に変えただけだ。そこに未練などと云う言葉が介在する余地は無く、その「思い出」を研究の材料以外に使用する必要も無かった。

 神々への信仰や、その宗教。実際の女神たちとは違う、神官が語る言葉が面白かった。

 文化と歴史は世界毎に違う。

 その文化を選択したのですら無く、生活に追われる人々が存在する世界も巡った。


 ルゥイリアは科学を棄てた星に生まれた。それでも、科学は有ったし、王族に生まれたルゥイリアは贅沢に慣れ親しんでいた。

 世界が丸ごと、飢えに苦しむところも有ったし、丸ごと遊び唄うばかりの民で溢れた世界も有った。

 ルゥイリアは世界の謎を探求する。


 それが趣味であり研究と云う名の仕事でもある。

 なのに現在のルゥイリアは、謎などどうでも良いとばかりに引き籠もる。水鏡に映る姿に未練を募らせる。


 本日、ルゥイリアが言葉を交わしたのは、トウゼ王と、未だに人間であり続ける神司仲間と、彼らの来訪を告げに来た助手で一柱と二人。

 世界が狭いのか広いのか微妙な相手では有るが、現在のルゥイリアが天の岩戸よろしく引き篭っているのは確かだった。


 らしくないと云えばこの上なくルゥイリアらしくない現状だったが、端から見る限りには悪巧みしているとしか見えないのがルゥイリアと云う存在だった。

 ルゥイリアが弱っている現在、日頃の恨みを晴らそうとするモノが皆無なのは、結局はそう云う事だった。

 事実を教えたとしても、罠を疑われるだろう。

 それがルゥイリアなのである。


 実際は、単に初恋とその失恋を引きずって引き篭っているだけだった。


――洋。


 ルゥイリアはもう逢う事も無い相手の姿を、見つめるだけの日々を過ごす。

 ルゥイリアがその気になれば、幾らでも地球を訪れる事は可能だろう。女神のお気に入りは伊達では無いし、リア・リルーラはルゥイリアの恋を喜んで見守るだろう。

 リルーラの娯楽に成るのが嫌な訳では無い。


 ルゥイリアが決めかねるのは、再会したらもはや諦められない自分が簡単に予測出来たからだ。


 そして。

 そんな自分がどんな風に変わるのか、今以上にオカシクなるのか、全く予測が付かなかったからである。


 故に、ルゥイリアは水鏡が繰り出す映像に、そっと触れて、その水面の波紋を見つめては嘆息を繰り返すのだろう。


 イバラと呼ばれる刺だらけの毒舌王子は、まさかのヘタレ全開の日々を送るには一応相応の事情が有るのだ。


 ルゥイリアにはチカラがある。物理的にも、権力と呼ばれるそれも。至高の女神のお気に入りが、簡単に恋に溺れる訳には行かなかった。


 トウゼ王は、フライサの星を壊滅しかねなかった。倖いその恋は実り、危険は杞憂の域に留まったが、展開次第では現実になったかも知れない破滅を、ルゥイリアは確かに知っていた。


 ルゥイリアの恋は実らないだろう。


 それを知り乍ら、どうして洋の元に向かうなどと云う我が儘が云えるだろう。

 ルゥイリアは失恋など怖くは無い。

 愛されない事は、寧ろルゥイリアにとって当たり前でもある。

 だが、ルゥイリア自身が、洋に危険を齎すかも知れない。


 そんな可能性を考えたら、自重するしか無かった。


 トウゼ王の想い人は、女神と夜闇神の協力無しには命が無かったと云う。それは、あんなにも媛に焦がれるトウゼ王自身が招いた事故だと云う話だった。


 ルゥイリアはトウゼ王と同等以上に月の光を纏う。そして、トウゼ王と同等以上に闇を操るチカラを有していた。

 塔内にさえ入り込む影が、ルゥイリアを慕う。地球から帰還してから、闇のチカラがやたら強くなった事を、ルゥイリアは自覚していた。


 ルゥイリアは自嘲の笑みを口元に浮かべた。


 それでも。

 洋の近くに行きたい。


 そんな願いを持つ己が、とんでもない愚か者に感じられた。


☆☆☆



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