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◆1話◆天使!?

☆☆☆


 ある日、天使が堕ちて来た。


 いや、比喩でも冗談でもなくてさ。本当に、実際に、堕っこちて来たんだ。


 白い翼を持ってた。

 ふわふわの、柔らかい羽毛。その純白の輝きは、マジで目がチカチカする程に眩しかったさ。

 でも、もっと眩しいのはその髪。そして、その顔。

 俺はその髪と美貌に、先ず思ったね。


「すげぇ。…………。」


 何か云おうとして、何とも云い難い事に気付いた。


 貧困なボキャブラリーじゃ、せいぜい綺麗とか美しいとか麗しいとか、もうそのものでしかない言葉しか浮かばないんだが、余りにも本気で「綺麗」なものだから、かえって口には出来なかったんだよ。


 輝くばかりのって云うが、実際に輝いてんだもん、その人。って人間じゃないけどさ。

 白くって綺麗で、ああ、清潔そうってのピッタリかも。

 無垢ってのかな。


「すげぇや。」


 銀色に青とか碧とかを溶かしてグラデーションをかけたみたいな髪は、見事に波打っている。

 白ってより、クリーム色って感じの肌は、柔らかそうで、滑らかで、ホクロひとつないんだ。


 キョトンと見上げる眸は、何てぇか、紫色でさ、バッサバサのまつ毛が頬に影を落として、キョーアクに可憐、なんだ。


 ああ。

 認めるしかないだろう。


 俺は恋をしたんだ。


 この天使に。


☆☆☆


 だからと云って、一足飛びにそんな事をしなくても良かったのでは無かろうか?


 我ながら、そう思わずには居られない。

 俺はベットに座り込んで煙草を吸っている。未成年だが見逃してくれ…吸わずにはおれないんだ。


 見下ろせば、心臓に悪いキレイな生き物が居る。


 白い手足を投げ出して、呆然とした眸が天井を見上げている。

 シミひとつ無かった肌には、今はいくつかの擦り傷と鬱血の痕があって――。


 そう。つまるところは。


 犯っちまったんである。


 ……………。


 だってだって、どうすれば良かったんだよ!?大体やりたいサカリの17才の部屋に堕ちた天使が悪いだろう!


 天井に穴があいてるとか、窓が割れるとか、せめてそんな現実味が有れば、まだ違ったかも知れない。


 けど、実際には、音もたてず、いきなり空間に出現して、トスンとカーペットの上に落っこちたんだよ。へたりこんで、キョトンとした眸で俺を見上げてた。


 驚いたのはこっちだろう!?

 薄い衣は、布が少な過ぎた。胸元は刺激的な迄に眺めがよく、立てた膝もヤバかった。

 おまけに、翼まで生えてんだよ。

 現実だなんて思えるかよ。


 いや。

 例え、夢にしろ。

 そんなつもりはなかった。


 恋を……してしまって。

 好きに…なって欲しいと、思って。

 優しく、接するつもりで………


 なのに。


 その手を取って、その髪だか、肌だかから…薫る匂いにクラッと来て。


 次の瞬間


 思わず。

 抱きしめてしまっていた。


 そうしたら、ますます強く香り、相手は呆然としてるのか抵抗らしき抵抗もなく、………なだれ込んだ。


 うわあ!


 めちゃケダモノって云わねぇ!?

 自分で自分がイヤになるだろう。俺だって!俺だって、まともに口説きたかったのにっ!!


 しかし、犯っちゃったもんは仕方ない。


 チラッと、見下ろすと……紫の眸はようやく判断力を得たように瞬きを二度三度、でもって、視線が……真っ直ぐ、俺に来た。


「…………。」


 すこぅし、細まった眸に、俺はドキドキした。


 ケダモノ…とか、最低…とか、そんな台詞を予想してはみたが、そもそも日本語なんて出来るんだろうか?


 しばらく、無言で、ニラみ合った。


 ちょっとドキドキした。

 見つめ合ってるみたいで……ってノーテンキかよ俺は!とも思うが、多分、俺が動揺しまくっている事なんて、端からは全然解んないだろう。


 俺はクールな美少年と呼ばれている。

 性格を無視したその評判が根強いのは、俺が無表情で寡黙だからだと思われる。

 たまに笑うと天使のようだと云われるが、そいつらは結局天使を見た事がないんだな。とは云え、俺も初めて見たのだが。


 大概、つらつらと考えている内に、俺と相対する人間は何らかの決断を下すもので、俺はそれを受け入れるか否かを検討するだけで良いんだが、この天使は違った。


 じぃっと、俺の眸を視つめていた。


 何も云わずに。

 何ひとつ、見逃さない眸で。

 不思議な事に、その眸には憎しみや怒り等のマイナスの感情は浮かんでいない様に見えた。希望的観測に過ぎるだろうか?


 それでも、その澄んだ眸は、そんな毒っぽい感情とは無縁のように思われた。


 このまま。

 ずっと。

 朝まで見つめ合うのも悪くない。


 悪くは無いが……逃避が過ぎるだろうよ、それは。

 逃げるのは好きじゃない。


 だから、仕方なく、覚悟を………決めた。

 問い掛ける。


「名前は?」


 紫の眸が揺れた。

 そんな質問は予定外だ、と、戸惑っているようにも見えた。

 けれど、淡く染まった柔らかい唇が開く。


 コクリ。

 俺は息を呑んだ。


「そちらの…名は?」


 サラリとした声。

 声までも澄み切って、清らかさんな癖に、どうして「あんな香り」を持っているんだろう。


 そんな事を思いつつ、俺は応じた。確かに、俺が名乗るのが先だと思われたから。


「川崎洋。ひろしと呼べるか?」

「ルゥイリア」

「ルゥイで良いか?」


 ルゥイは頷いた。

 寝そべったままで。

 どうやら動けないらしい。


「………バスルームに行くか?」


 色々考えて、俺は云った。

 ルゥイも色々考えるのか眉を寄せて黙る。


「…………む」


 考えているらしい。


「要らない。」


 応えた。

 動けないなら運ぼうと、云おうとした言葉は飲み込むしかなかった。ルゥイが眸を閉じた瞬間。


 彼は、光の球体に包まれて、輝きが消えた後には、シミひとつない肌が、薄い衣に包まれていたから。


 傷も、情交の痕跡も、何ひとつなかった。


 その証拠に、ルゥイはひょいと躯を起こして首を傾げた。


「もしかして、驚いてるの?」

「………」


 重々しく、俺は頷いた。


☆☆☆


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