02 情報は送れても、物質は送れないらしい件
放課後の教室で、4人は“情報と物質”の境界について語り合う。
AB君の黒板の落書きが、軽いノリのまま深層の影を落とす。
夕日のオレンジが黒板に反射して、ゆっくり色が変わっていく。
4人は、誰も帰る気配を見せない。
A君「……でさ。
やっぱりあのメール、迷惑フォルダに入ってたんだよ」
B君『未来人、フィルタリングに負けてんの草』
O君《通信方式が違えば、
現代の基準ではスパム扱いされても不思議じゃないね》
A君はスマホを机に置き、少し真剣な顔になる。
A君「でもさ。
もし本当に未来からの信号だとしたら……
“情報”だけは送れるってことだよな」
B君『物質は送れないけど、
データなら送れるってやつか』
O君《情報と物質は別物だからね。
情報はゼロ質量だけど、物質はそうはいかない》
そのとき、AB君がふらっと立ち上がり、
黒板の前に歩いていく。
AB君【は〜い、ここ試験に出ま〜す】
(黄緑のチョークで “情報:0質量” と書く)
A君「お前……なんで放課後に黒板使ってんだよ」
B君『てかその色、またどこから持ってきたんだよ』
O君《でも、視覚的には分かりやすいね》
A君「じゃあさ。
未来人は“物を送る”んじゃなくて、
“設計図”を送るんじゃないか?」
B君『あー、3Dプリンタで再構成するってこと?』
A君「そう。
未来の技術なら、もっと精密に……
“原子単位で”再構成できるかもしれない」
O君《情報転送型タイムマシン、というわけか》
AB君は黒板に
“原子 → 配置 → 再構成”
と図を描き、ピンクのチョークで矢印を強調する。
AB君【ここ〜、次の……あ、いや】
(少し考えて)
【ここは残しといて。あとで使うから】
A君「使うって何にだよ……」
B君『お前の“あとで”って信用ならんのよ』
A君は少し黙り込む。
A君「……じゃあ、人間も……情報化できる?」
B君『お前、急にSFの難易度上げんなよ』
O君《でも、理論上は“情報化”は可能だと
考える研究者もいるね》
A君「……でもそれって“移動”じゃなくて、
“複製”なんだよな」
O君《コピーされた側と、元の自分。
どちらが“本物”かという問題が出てくるね》
A君はスマホを見つめる。
A君「じゃあ……魂って何なんだ?」
B君『お前、放課後に魂の話すんなよ』
O君《でも、避けて通れないテーマだよ。
情報と物質の境界を考えるなら》
AB君は黒板に “魂=?” と書き、
その下に小さく “情報?” とだけ残す。
AB君【これも残しといて〜。
日直のA君、消さないようにね】
A君「日直って……俺だっけ?」
B君『お前だよ。忘れんな』
A君は再びスマホの画面を見る。
そこには、届いた謎のメールの差出人──
“unknown-node-01” の文字が光っていた。
A君「もし魂が“情報”なら……
未来から送ることもできるのかな」
放課後の教室は静かなままなのに、
4人の会話だけが、ゆっくり深層へ沈んでいくようだった。
出演:A君・B君・O君・AB君
情報は送れるが、物質は送れない。
その境界にある“魂”という概念が、A君の中で静かに揺れ始める。
AB君の黒板の図は、ただの落書きのようでいて、どこか意味深だ。
次回、A君の“ズレ”がさらに輪郭を持ち始める。
今回のキーワード:
「情報転送」「物質の限界」「魂=情報?」「unknown-node-01」「黒板」




