01 タイムマシンは受信機が必要らしい件
放課後の教室で始まる、4人のゆるい雑談。
その中に、誰も気づかない“違和感の種”が静かに紛れ込む。
放課後の教室。
夕日が差し込み、机の影がゆっくり伸びていく。
A君とB君は窓際の席に座り、今日も部活に行く気配はない。
O君は静かに本を読み、AB君は教科書を枕にして寝ている。
A君「なあ、タイムマシンってどうやって作るんだろうな」
B君『また急にSFかよ。放課後一発目の話題じゃないだろ』
A君はスナック菓子をつまみながら、妙に真剣な顔をしている。
A君「いやさ、未来から情報を送るって考えると、
過去側に“受信機”がないと成立しないんだよ」
B君『あー、なるほど。
未来人がメール送っても、こっちに受信機なかったら届かないってことか』
A君「そうそう。だから未来人は“過去に受信機を置く方法”を考えないといけない。
でもそれって、もうタイムマシン完成してるじゃん?」
B君『矛盾してて草』
そのとき、O君が本から顔を上げた。
O君《それ、情報理論的には“自己言及パラドックス”だね》
B君『お前いつから聞いてたんだよ』
O君《最初から。A君の話、面白いから》
その横で、机に突っ伏していたAB君がむくりと起きる。
AB君【……受信機って、どこに置くのが正解なんだろ】
A君「お、起きた。AB君も聞いてたの?」
AB君【寝てたけど、なんか気になる単語が聞こえた】
B君『寝起きで会話に混ざるなよ』
AB君はふらっと立ち上がり、黒板の前に行く。
AB君【はい、じゃあここ試験に出ま〜す】
(ピンクのチョークで“受信機→過去”と書く)
A君「お前、なんで先生ノリなんだよ」
B君『てかその色どこから持ってきたんだよ』
O君《……でも図としては分かりやすいね》
A君はスマホを取り出し、迷惑メールフォルダを開く。
A君「でさ、もし未来からの信号が届いてるとしたら……
迷惑メールに紛れてる可能性あるんじゃないかと思って」
B君『未来人、スパム扱いされてんの可哀想すぎる』
O君《でも、あり得る話だよ。
未来の通信方式が今の基準と違えば、
“意味不明なデータ”として弾かれる可能性は高い》
AB君【意味不明ってだけで捨てられてる信号、
実はめっちゃ重要だったりして】
A君「それな。未来人泣くぞ」
ふと、A君は自分の手元を見つめた。
A君「……なんかさ、さっきから変な感じするんだよな」
B君『またかよ。今度は何が?』
A君「意識が……なんか、連続してないっていうか。
さっきの自分と今の自分が、ちょっとズレてる感じ」
B君『寝不足じゃね?』
O君《主観の連続性って、案外あいまいだからね》
AB君【……ズレるのは普通だよ。
むしろ、ズレないほうが不自然かも】
A君は笑ってごまかす。
A君「まあ、気のせいか。
てか今日の放課後、なんか時間の流れ変じゃない?」
B君『変って何だよ』
A君「いつもより……遅いような、早いような。
なんか“決まってる”感じがする」
O君《時間の流れが“決まってる”って表現、面白いね》
AB君【うん。
世界ってさ、整合性を保つために
ちょっとだけ“補正”してくるから】
B君『補正ってなんだよ。ゲームかよ』
A君は笑いながらも、どこか落ち着かない。
A君「でもさ、今日の教室……なんか“外側”が固い感じしない?」
B君『外側って何だよ。壁のこと?』
O君《比喩としては分かる気がする》
AB君【……外側は、触れないほうがいいよ】
その瞬間、A君のスマホが短く震えた。
画面には、見慣れない差出人からの通知。
件名:『受信機ハ構築サレタ』
A君「……え、これ今届いたんだけど」
B君『タイムリーすぎるだろ』
O君《差出人は?》
A君「unknown-node-01……?」
AB君【ああ、もう始まったんだね】
放課後の教室はいつも通り静かなのに、
A君の胸の奥だけが、ほんの少しだけざわついていた。
出演:A君・B君・O君・AB君
A君の主観に生まれた小さなズレ。
AB君の黒板での奇妙な行動。
そして unknown-node-01 の通知。
まだ何も起きていないようで、確実に何かが始まっている。
次回、A君の“ズレ”が少しだけ形を持ち始める。
今回のキーワード:
「主観の揺らぎ」「時間のズレ」「unknown-node-01」「外側感」「黒板」




