控室トーク:歴史の味、未来の一杯
(舞台裏の控室。木目の温かいテーブルを囲んで、対談者4人がリラックスした表情で座っている。
テーブルには、それぞれの“お勧めの食と飲み物”がずらりと並ぶ。控えめなBGM、香ばしい香り、穏やかな時間。)
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あすか:
本当に今日はありがとうございました。
対談を終えた今、ちょっとした“おつかれさま会”を開きたいと思います。
今回は、皆さんそれぞれの“おすすめの食べ物と飲み物”をご用意しました!
それでは、順番に紹介していただけますか?
まずは……陛下からお願いしても?
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始皇帝のセレクション
料理:蒸し羊肉と香辛料を効かせた小麦餅(古代秦の宮廷風)
飲み物:老酒(中国の古式紹興酒)
始皇帝(少し誇らしげに):
ふん、これが秦の宴の味よ。
羊は国力の象徴。しっかりとした脂に香草が絡み、体が温まる。
そしてこの酒――二十年は寝かせた。魂を鎮める深みがある。
トクヴィル(小皿を手に):
この香り……なるほど、勇ましい味ですね。
噛むほどに風景が浮かぶようです。
石丸伸二(頬を緩めて):
すごいですね……骨太というか、迫力のある味です。
“語らずとも語ってくる料理”って、こういうのを言うんでしょうね。
リンカーン(グラスを持ち上げながら):
この酒もまた、重厚ですね。
私の祖国ではバーボンが定番でしたが……これは、歴史そのものを飲んでいるようです。
始皇帝(やや照れながらも満足げに):
ふむ……口に合ったのなら、よい。
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トクヴィルのセレクション
料理:キッシュ・ロレーヌとバゲット
飲み物:赤ワイン(フランス・ボルドー地方)
トクヴィル(優雅に差し出しながら):
こちらは私の故郷、ノルマンディーに近い地方の家庭料理です。
卵とチーズ、ベーコンが入ったキッシュに、バゲットを添えて。
ワインは…おしゃべりを楽しむための、静かな脇役です。
始皇帝(少し驚いて):
ほう……これは“素朴”だが、奥深い。
見た目は地味だが、味は整っておる。まるで貴様の政治論のようだ。
石丸伸二
うん……これ、好きです。
派手さはないけど、バランスが良くて、何杯でも食べたくなる。
リンカーン(ナイフを使いながら):
この“理性的な味”……まさにフランス。
ああ、これは口の中で会話が始まりますね。
トクヴィル(笑顔で):
そう言っていただけると、料理も報われます。
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リンカーンのセレクション
料理:サザン・スタイルのビーフステーキとマッシュポテト
飲み物:バーボンウイスキー(ケンタッキー産)
リンカーン(控えめに):
私のは……少し荒削りかもしれません。
でも、これが私の“故郷の味”です。
ステーキはしっかり焼いて、シンプルに。マッシュポテトで温かみを添えて。
バーボンは、夜の語り合いにぴったりの友ですよ。
トクヴィル(噛みしめながら):
ああ、これは……真っ直ぐですね。
迷いのない味です。あなたそのもののようだ。
石丸伸二(舌を巻いて):
うん、うまい……体に沁みます。
“苦労してきた人の味”って、ありますね。これは説得力がある。
始皇帝(肉をかじりながら):
うむ……これは戦の後に食うと、力が戻りそうだ。
剛毅だが、温もりがある。貴様の“民への愛”が見えるようだ。
リンカーン(照れ笑い):
お褒めいただけるとは光栄です。
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石丸伸二のセレクション
料理:あきたかた焼き(広島・安芸高田市発のご当地お好み焼き)
飲み物:広島の日本酒(純米吟醸)
石丸伸二(少し照れくさそうに):
私からは……これです。
「あきたかた焼き」――広島風お好み焼きのご当地アレンジで、鶏肉を使用し、「神楽」にちなんだ5色の食材を使用しています。
新鮮な野菜をたっぷり使った、ソウルフードです。
素朴だけど、地元の誇りが詰まってる料理です。
そしてお飲み物は、私の地元・広島の純米吟醸。
ふくよかでありながら、芯がしっかりしていて、
まるで“地方からでもまっすぐ立つ”ことの象徴みたいな一本です。
始皇帝(不思議そうに焼きそば部分をつつきながら):
む? この“平たい玉”の中に……層があるのか。
もちもちとした食感、だが野菜がたっぷり。
ほう、これは……意外と気に入ったぞ。
リンカーン(ほくほくと口に運び):
この料理、見た目よりずっとボリュームがありますね。
土地の味がぎゅっと詰まっている……まさに“地に足のついた”味です。
トクヴィル(感心した様子で):
層構造……実に面白いですね。
下地に米粉、その上に具材、最後に卵――まるで“多層的社会構造”のようです。
しかも調和がとれている。これは……社会哲学的に非常に興味深い!
石丸:
ありがとうございます。
私は、政治や社会の話もこうやって“地元の料理”を囲みながらできたらと思っていて。
地方には語るべき魅力がたくさんある。
だからこそ、こうして味わってもらえることがすごく嬉しいです。
(石丸の笑顔に応えるように、皆がもう一口ずつ箸を伸ばす。
“あきたかた焼き”の湯気が、控室の真ん中でふわりと広がる)
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(4人がしばし無言で料理と酒を味わう。やがて、あすかが静かに言う。)
あすか(感慨深げに):
料理って、人の考えや価値観がにじみ出ますね。
今日この場が、国も時代も越えて、ひとつの“鍋”のようになっていた気がします。
(全員、笑顔。始皇帝も、どこか満たされた表情で杯をあげる)
始皇帝:
……異なる時代の者たちと、同じ食を囲み、語るとはな。
わしもまだまだ学ぶことが多いようだ。
(静かに、笑い声とグラスの音が控室に広がっていく――)