ラウンド2:地方は首都に従うべきか?
(照明が落ち、やや重いBGMが流れ、場の空気に緊張が走る。)
あすか:
さて、ラウンド2のテーマは――
「地方は首都に従うべきか?」です。
歴史上、首都はしばしば政治・経済・文化の中心として機能してきました。
しかし、それは地方が犠牲になることで成り立ってきた面もあるのではないか――
今こそ、その「関係性」を問うときです。
まずは、石丸さん。現代日本を代表して、率直な意見をお願いします。
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石丸伸二(静かに、しかし力強く):
はい。
率直に言って、現在の日本は“地方が首都に従う構造”に偏りすぎています。
東京が意思決定を独占し、地方はその下請けのような役割に甘んじている。
例えば、地方交付税や補助金制度。
一見「支援」に見えますが、実態は“首都に従うことへの報酬”のように感じます。
私はそれを変えたい。
地方が独自の意思と力で、堂々と国にもの申せる構造をつくるべきだと思っています。
始皇帝(急に椅子から身を乗り出し、低く唸るように):
――戯言だ。
(場内がざわつく)
始皇帝(声を荒げて):
何が“下請け”だ!
地方が勝手に振る舞えば、国家は瓦解する。
それが歴史の真実よ!
地方を統べる者こそが、国を支配するにふさわしい。
秦が統一したのは、六国が互いに従おうとせず、内戦を繰り返したからだ!
石丸伸二(一歩も引かずに応える):
しかし、現代は戦国時代ではありません。
多様性が価値となり、地方にはその土地に根ざした発展の可能性がある。
すべてを一つの基準で押しつければ、創造性も、人の暮らしも死にます。
私たちは、統一ではなく“協働”を求めているんです。
始皇帝(立ち上がり、指を突きつけて怒鳴る):
“協働”などというものは、強き者が寛容であるときにのみ成り立つ幻想だ!
貴様は地方に幻想を見せ、国の形を曖昧にしようとしているだけだ!
あすか(驚きながらも制するように):
始皇帝陛下、どうかお座りください……対談ですので、冷静に――
始皇帝(息を荒げながら着席):
……よかろう。だが言葉の毒は残る。
リンカーン(少し沈黙してから、慎重に):
始皇帝、あなたの怒りは理解できます。
国をまとめる困難、私は身に染みて経験しましたから。
だが、石丸氏の言葉にも耳を傾けるべきです。
“支配”と“協働”の間には、対話という選択肢がある。
トクヴィル(手を組みながら):
まさにそうです。
私は中央政府の過度な力に懐疑的です。
一見秩序を保っているように見える中央集権が、
地方の自発性や責任感を奪っていることがある。
地方は従うのではなく、参与する存在であるべきです。
始皇帝(冷笑しつつ):
地方が参与?
その参与が、裏切りに変わったらどうする?
貴様らは“信頼”に期待しすぎておる。
石丸伸二(眉をひそめ、やや強い口調に):
信頼がなければ、社会は成り立ちません。
権力だけで人を従わせる時代は終わっているんです。
今必要なのは、地方が“従う”のではなく、“対等に語り合う”ことです。
あすか(張りつめた空気を和らげようと):
ありがとうございます……
議論は激しさを増しながら、それぞれの立場の違いが浮き彫りになってきましたね。
“国家の安定”と“地方の自立”、
その間にあるものは何なのか。
ラウンド3では、現代の“首都の役割”を切り口に、この議論をさらに深めてまいります。
(スポットライトが各対談者を順に照らしながら、ステージがゆっくり暗転していく)