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魔導具の確認(ただし名称の悩みは続く)




お茶とお菓子がテーブルの上に振舞われた後で、僕の横に大きな箱が置かれた。箱を置いたエリカがニコニコとして説明を始める。


「これが、穂香に使ってほしいものだけど、見て貰えるかな?」

「僕が見るの?」

「見て確認してから、許可を出して欲しいかな」

「なるほど」

箱を開けて、小さなショルダ―バッグを取り出す。それは特に見ないで穂香に渡す。綺麗なパステルブルーの半円型のバッグだ。


「見なくていいの?」

「マジックバッグは、見なくても別に」

「そう。ありがとう。…これ、マジックバッグ?収納魔法じゃなくて?」

「うん」

「確かめないで分かるんだ」

穂香の言い方に首を傾げる。


「見れば分かるでしょ?」

「え、どうやって」

「…魔力の流れとか、紡がれた形式とかで」

「え」

今度は本当に動きを止めた。僕は変な事を言っただろうか。


「くじ…魔王さま?」

「あ、うん。名前困るよねえ」

宗典がそう言って苦笑する。

「我が魔王と俺達は呼べばいいけど。かと言って穂香ちゃんが魔王様と呼ぶのも違和感があるだろうし。苗字の呼び捨ても、いま話したことと違うしねえ」


そう言って苦い顔をしている僕を見る。

「本当に、強要する気はないんだよ。俺達は嬉しかったけど、君が嫌だったり違和感があったりするのは良くないから」

見られて頷く。

「呼び捨てで呼ぶなら苗字より名前の方が良い。苗字の呼び捨てって僕には慣れないから。多分、仕事の同僚とかがする感じかなあ。同い年の人がやるって気がしている」

僕の話に穂香が頷いた。

「イメージそんな感じかしら?横のつながりの人には呼び捨てって感じよね。上下で上の人はさんとか付けるけど、下の人は呼び捨てよね?」

「うん、だから苗字の呼び捨ては、自分よりも下の扱いっぽいから嫌だ。名前呼び捨てなら、身内イメージだけど、やっぱりきもち下っぽいのかなあ」


呼び名に悩んでいる僕達に、邪神ちゃんが警告する。

「言っトくけど、昔の有架の名前を呼んデは駄目よ。あいツが気付くわ」

成田さんが邪神ちゃんを見る。

「名前で?」

「そうよ。絶対にダメ」

僕は邪神ちゃんの頭を撫でる。

「そんなうかつな人は此処には居ないよ、大丈夫」

「それなら、余計な事を言っタわね」

少し膨れたような声の邪神ちゃんの頭を撫で続けていると、穂香が僕に聞いてきた。


「じゃあ、有架くんでいいかな?」

「うん、そう呼んでくれるなら、それで」

ニコッと笑って穂香が肯く。

…呼び捨てになれようと、頭の中でも頑張って呼び捨てにしているけど、どうなるかな。ちょっと知恵熱が出そうだけど。


「じゃあ、魔王さま、検分の続きをして貰える?」

「…分かったよ、エリカ」

その呼び方で皆、納得するんだね。


箱の中から腕時計みたいなものを出す。

マップの魔導具かな?どこぞの管理も着けていたし。

「これが、マップの魔導具かな?」

一応確認はする。想像では使えないから。


「そう。腕にはめて貰って、はめた本人が画面に指を押し当てる。そうすると画面裏側から魔力を検知して、微量の魔力で使えるの。使い方は目の前に画面が出てシミュレーションしてくれるから、大丈夫だよ」

高性能ですね。いくら掛かるとか知りたくないけど、箱の中を見るともっと高そうなのが入っているんだよなあ。


「もう、やっても大丈夫ですか?」

「残念ながら、ダンジョンゲート内でないと使えないから、後でどこかの外ゲートに行って確かめてね」

「あ、はい。そうですよね」

穂香が慌てて頷く。


「これは、何だろう?」

僕が小さなアクセサリーを出すと、宗典が嬉しそうに話す。

「それは俺が作ったもので、首にはめて欲しい。アクセサリーのチョーカーにしてあるけど、外衣装備で、防御魔法と多少の攻撃魔法、転移魔法も備えている。さっきのマップとは違って、外でも使えるから、今装備してもらって構わない」

「え、外でも使えるんですか?」

穂香の問いに宗典がニコッと微笑む。


「俺の錬金は、ダンジョン専用っていう訳じゃなくて、そもそも現世で使えるように組んであるからね。この世ならどこでも使えるよ」

「穂香ちゃんだって、普通に魔法使えるでしょ?ここに居る人は全員、ダンジョンだけでしか使えない力なんて持っていないよ」

ローズに言われて、穂香が皆を見渡す。

それから、せっせと給仕をしてくれる無花果で目線が止まった。

ああ、分かるよ。

無花果は何も言わないから、何が出来るか分からないよね。


でも、穂香はその疑問を質問にはしなかった。

僕の手元に視線を戻し、指先にあるチョーカーを見る。見られたので渡すと、何だか神妙に首に巻いた。

「似合うかな?こういうアクセしたことがないのだけど」

「うん、似合うよ」

僕が言うと、少し顔を赤くする。本当に似合うけど。


「あとは、我が魔王に捧げものかな」

僕が次に手に取った小さな箱を見て、宗典が言う。

「え、これは僕に?」

「そうだよ。無花果があげた練習用の指輪をずっとしているでしょう?」

小指にはめている無花果に借りた指輪を外す。借りっぱなしだったけど、錬金陣の暴走が怖くて外せなかった。


箱を開けて中を見る。予想に反せず中身は指輪だった、しかし二個ある。

「二つとも?」

「そう、片方はその指輪と同じ、錬金の解除をしてくれる。少し大きい方は錬金陣を仕込んであるよ。我が魔王は殆んど魔力切れがないだろうから、そこに二種の回復と防御の錬金が入っているから、使ってね」

「二種類の回復って」

「自分と他人と二種。我が魔王と他人とでは系統が違うから。込める魔力量で治りが違うけど、死者の回復は無理。生きているなら欠片からでも回復できるけど、そこまで使うかは考えてから使ってほしいかな」


それは強大な魔法では。

小さい方は小指に入ったけど、もう一つは中指には入らず薬指になった。最初は左手にしようと思っていたけど、薬指なら右手だなと嵌めなおす。

あわてて左右を入れ替えた僕を、にこにこして見ている錬金術師が。


「わざとやったの?」

「まさか。他にも有用なものを考え付いたら、指輪にしたいから最初はそこらへんかなって考えただけ」

「魔法使いって、沢山の指輪を付けてるイメージが確かにあるけど」

頷いた僕の意見に穂香が首を傾げる。


「え、そうかな?そんなイメージあったかしら?」

「ないかな?」

それは夢の向こうの話だろうか?確かにこっちの魔法使いって、ダンジョンの外で会ったことはないけれど。

「おばあさまの一族が、魔法使いの一族だけど。指輪。うん、幾つかは付けてるけど、指全部とかは付けていない気がするわ」


「生活しづらそうだものね」

ローズが笑いながら、ケーキをフォークに刺した。

「無花果のケーキやお菓子は本当においしいから、止まらなくて困る」

「そうなんだよ。ここに来ると太るんだよね」

双子が文句と賛辞を言うと、無花果が微笑んだ。

「お褒めいただき有難うございます。たくさん食べても何も言わない宗典さまが霞んで見えますね」

紅茶を飲んでいた宗典が、無花果を見る。

「え、なに、無花果は褒めて欲しかったりするの?」

「…言ったら絶交です」

「言わないけど、絶交はやめてね。生きていけなくなるから」

「はい」

微笑んでお茶のお替わりを入れている無花果を、穂香が見て首を傾げる。


「あれは、特殊ダと思うべきよ」

邪神ちゃんの呟きが穂香にも聞こえたのか、僕の胸元を見て苦笑する。

「賢者様がそういうものだと、認識するのは幾らか抵抗が」

「デも、多分そうよ」


宗典が僕を見る。

「そこ、誹謗中傷は止めてくれるかな?」

「あ、ごめんなさい」

「穂香ちゃんは良いんだよ、そこの邪神様がね?」

「私は別に、私見を述べテいるダけダわ」

「ぐぬぬ」


反論は出来ないのか。


貰った箱の中を見ると、最後に小さなナイフが残っていた。取り出して穂香に渡す。

「これも、私の?」

「多分そうだと思う。僕に剣を渡すとかはしないと思うから」

「そうなの?どうして?」

穂香の疑問には僕も皆も答えない。

僕には今は持っていない剣がある。それが何処にあるかは分からない。だけど、あれ以外の剣を握る事もあり得なかった。


「それに、ナイフは持ってるし」

「そうなのね。私も持っているけど。貰っておくべきかしら」

悩んでナイフを持つが、カバンの中にしまった。

「切れ味が良くて、所持者を傷つけないナイフだから、穂香ちゃんが使うと良いよ」

宗典の言葉に穂香が肯く。

「それなら使わせていただきます」

「うん、なるべく怪我しないでね、二人とも」

ニコニコしながら宗典が言う。僕も穂香も頷くと、ローズが空箱を持って自分の横に置いた。


「さて、穂香ちゃんに道具は渡したから、これからの攻略の話をしましょうか。我が魔王?」

聞いてくる宗典に頷いた。

クランの方針は決めておかなければならないだろうな。


「現状、ダンジョンは進化した後で、攻略がリセットされているの。ランカーが行って攻略を進めているのは関東近郊のみ。他の二十近いダンジョンは殆んど手付かずになっているわね」

エリカが話し始める。

そうか、そんな状況なのか。


「毎日のマスコミの意見では、モンスターパニックが近いと煽っているけど、私の意見としては、そこまでではないと思っている。多分、探索者が入っては怪我をしたり亡くなったりしている状況で、一応の均衡は保たれていると」

「誰も入らなくなったら」

僕の呟きにエリカが答える。

「地方から、モンスターパニックが始まると思う。ただ、それを分かってじっと見ている協会でもないでしょうし、あれだけ敵対していたパニッシュメントがこのまま動かないとも思えないけど」


穂香も頬に手を当てたまま考えている。

「解決策は幾つかあるけど、現状行えるのは魔王さまに探索を進めて頂く以外にないかと思えるの」

「他の解決策は実行できない感じかな」

僕の声に、エリカが頷く。


「パニと同じでよければ、実は解決すると思っている。ただ、今の協会はダンジョンの温存を願っているので、魔王さまが探索者を続けるのでしたら、ダンジョン攻略以外に方法はないと」

「うん、そうか」

考えながら頷くと、隣の穂香も小さく頷いた。


「じゃあ、何処から行こうかな」

現在攻略が進んでいる場所は他のランカーに任せるとして、僕らは何処に行こうか。


「そうですね。地方に出ても我々がいける場所は限られてしまいますし」

エリカが往く先に悩むと、宗典がにんまりと笑った。

「そこで俺の話だね。我が魔王さま、こちらに来ていただけますか?」

また悪のりを。

そう思いながら立ち上がり、大きな部屋の片隅に作られた小さな円陣の傍に立つ。


「これは?」

宗典に聞くと笑顔で答えた。

「簡易の転移装置です。これを使えば何処にでも行けるし、何処からでも帰って来れます」

ニコニコ笑顔の宗典に絶句していると、邪神ちゃんが呟いた。

「ああ、トロットの術式か」


夢の向こうの世界の魔法を、錬金で作ったと、そういう事ですか?





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