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ソロ+クラン攻略//横浜ダンジョン・4




「とは言っても、私達は十階層までで終わりにしようと思っているから」

「そうなんですか」

「そうそう。だからあと三階層分だけ付き合ってくれたらいいんだけど、嫌かな?」

「…伊達さんに聞いてからと思ったのですが、たぶん今は忙しいでしょうから。僕の判断でついて行く事にします」

「お、ありがとね」

にっこりと藤原さんが笑った。


いや、藤原に北角って、両方とも陰陽の超大家なのですが。


「よし、では、俺が前を行く。九条君と北角は後からついて来てくれ。殿は藤原だな」

「分かった」

「おけ」

「分かりました」

ちょっと津島さんが笑った。


「やっぱり、人数がいると良いなあ」

心なしかうきうきとして言う津島さんに、呆れ声で藤原さんが声を掛ける。

「大和が人を選ぶから、うちのクランは少人数なんだよ?」

「いや、弱いやつはいらないから」

「本当に、大和って選民思想だよね」

「いや、俺はそういった考えではない」


とても仲が良いんだろうなって思いながら一緒に歩いていく。

隣を歩いている北角さんが僕の手元を見て微笑んだ。

「君は、陰陽を使うのかい?」

「陰陽も使います」

「…他にもできるのか、凄いね」

小さめの声で、北角さんが話してくる。身長は普通に大きいのに屈んで話すから猫背で。不思議な感じだった。


「私と陸は、陰陽が出来ないから、ちょっと羨ましいなあ」

「え」

僕の声に、藤原さんと北角さんが揃って苦笑する。


「名字で分かっていると思うけど、私達は陰陽の一族だけど、あまり術が使えないのよ。素養がないからって言えばいいのかな」

「俺達のように、もともと使えない者は一族から離れて生活をしなければいけない。それが掟なんだ。だから探索者はちょうど良い」

いきなりそんな話をされて、僕はどういえばいいのか返答に困る。


「九条君は資質があったんだね、うらやましいな」

「家は継ぐのかい?」

「…いいえ。僕は独立しましたので、家は別の者が継ぐと思います」

「九条は後継ぎがいないの?」

「あ、いや、そうか、九条は、継ぐ事になる、のかな?」

問われて不確かな事を考えてしまった。おかげで物凄く変な返事をしている。


「俺にだけ探索をさせるな。真剣にやれ」

前を歩いている津島さんから、不満の声が上がる。

「あ、ごめんね大和」

藤原さんが謝ると、津島さんが小さく頷く。


その先に、さっきと同じグールが出て来た。

「頭が三つとは、不愉快だ」

そう言って津島さんが腰から抜刀して、グールを切り上げた。綺麗に斜めに切れたグールが、ボトリと石の床に落ちる。

それは伊達さんとも違う鮮やかさで。


血を振り払って腰に納めたのは、間違いなく刀だろう。

すごい。ランカー第二位になると、舞う様にモンスターを切るのか。


「これは、グールだと思うが、北角?」

「そうだね、グールだけど進化したやつかな。新種だと思うよ」

「そうか」

北角さんが胸を開いて魔石を取る。


黒い短髪に少しつりあがった眼をした、筋肉質の大きな体を持つ日本第二位のランカーは、自分の力量を信じて刀を振るう。

カッコいいなあ。


「あれ?大和に惚れた?九条君」

「カッコイイと思います」

僕が言うと、津島さんが振り返って僕を見た。顔が真っ赤だ。

「俺は、そんなものではない」

「はいはい。嬉しいなら嬉しいって言った方が良いよ、大和?」

首をぶんぶんと降ってから、また津島さんは前を向く。

後ろで藤原さんが、けらけらと笑った。


四人で歩いていくのは不快ではない。

少し前まで、伊達さんと歩いていた時も別に不快では無かった。僕は他人とうまく付き合えないと思っていたが、それは今までそういう付き合いを経験していなかったからだろうか。


後ろから、唸る声がする。

だが振り返って魔法を放つ前に、藤原さんが双振りの斧で相手に切りかかっていた。それもまた舞うような鮮やかさで。

一撃ではないが、双剣のように斧で切り裂いていく。


ガシャンと音を立ててデュラハンが倒れた。上の階にいるのよりも大きくなっている。

「これも変化しているかな」

藤原さんが聞くと、北角さんが肯いた。屈んで魔石を取りながら鎧を触っている。

「鎧の出来が違う感じだから、進化したものだと思う。入ってから出会ったものはすべて進化しているものだね」

津島さんが、前を見ながら呟く。

「これが横浜ダンジョンとは、思えない変化だな」

「これから行く、池袋なんて想像もできないよ」

僕は藤原さんを見る。


「池袋に行くんですか?」

僕はまだ行った事がない。元は上級者ダンジョンと言われていて、神聖系が多いから行くのを躊躇っていた。


「そう、頼まれているからそっちに行く予定だったんだけど」

「大和がね、ここに寄ろうって言って」

僕が津島さんを見ると、何だか考える様な顔で呟く。

「勘だ」

なるほど。

まるで侍のような佇まいの津島さんには似合った返答だった。


そのまま階段を見つけて降りる。やはり他の人も立ち止まり振り返る。これはランカーの儀式なのだろう。それが出来るのは光栄な事だ。


八階層も、九階層も、この人達には大した事ではないようで、僕は魔法を使う事もなく十階層までの階段を降りる。

降りた先で曲が変わった。


パイプオルガンが響き渡る。それから激しい曲にと変わった。

背中がぞくぞくする。


フロアの見た目も全然違う。巨大な柱が八本だけ立っていて、その中央に大きなトカゲが鎮座していた。その口からは紫色の霧がシュウシュウと漏れている。

「あれは」

僕が聞くと、北角さんが答えてくれた。


「たぶん、バジリスクだと思う。あんなに大きな物は見た事がないけど」

「十階層にボスがいるのか。面白い」

「いや、大和、面白いじゃないから。あれ毒霧だし、バジリスクなら石化もしてくるだろうし。何か考えないと」

怒っている藤原さんの横で北角さんが何本かポーションを出しながら、悩んだ声を出した。

「毒消しはあるけど、石化解除はないよ。対策してから出直した方が良いと思う」

唸った津島さんが僕を見た。

「…九条君は何かできるか?」

「魔法障壁が無ければ、倒せますけど」

「うん?」

津島さんが変な声を出した。


「九条君は陰陽使いではないのか?」

「陰陽も使えます」

「ああ、本当は魔法使いなんだね。分かった魔法障壁がないか調べてくる」

そう言って藤原さんが駆け出した。


「え」

どうやって調べるって言うんだ。実際に掛けなければ分からないのに。僕の気持ちが届かない距離で、藤原さんがバジリスクに、何かを投げた。

それは黄色い光を出して、バジリスクに当たる。パチパチと音がした。


急いで藤原さんが戻ってくる。勿論僕達に気付いたバジリスクもこちらに走ってくる。

「おけ。魔法は多少効きにくいけど、障壁はないよ!」

「無茶が過ぎる!」

僕は藤原さんと入れ替わるように走ってバジリスクに近付いた。

「〈漆黒の風〉!」

パチンと指を鳴らす。


黒い風がバジリスクを包む。外側は剥がれたようだ。もう一回。また指を鳴らすと崩壊の風がバジリスクを包む。

睨んできたが、真っ先に目を潰していたバジリスクは、僕を見失って石化が出来ない。それを確認した津島さんが僕の後ろから走ってきて、バジリスクに切りかかった。


バジリスクが四つの足を見事に切られて、身動きが取れなくなる。返す刀で津島さんがバジリスクの胴体を二つに切った。

僕の眼の前で、綺麗にずれて半分に割れる。


連携など相談もしていなかったのに。

僕の横で津島さんがバジリスクの遺骸を見ている。藤原さんも北角さんも傍に立った。何だろうか、軽い達成感がある。


「良くやってくれた。感謝する」

「すごいね、九条君。単詠唱の魔法が使えるんだね」

「いや、お見事」

三人に急に褒められてどう言っていいか分からない。

「いえ、出来る事をやっただけですから」

僕がそう言うと、何故だか津島さんが頷いた。

「それが良いのだ。出来る事を出来る時にやるのが良い事だ」


北角さんがバジリスクをいくらか解体して、魔石と眼球を取り終えると津島さんに話しかける。

「今回はこれで良いんじゃないかな。ちょうど十階層だから転移装置もあると思うし」

「そうだな。探してここから出よう」

「そうだね。九条君も一緒に出るだろう?」

藤原さんに聞かれて頷き返した。さすがに体力が持たない。

歩いて転移装置を探しながら、僕はこの人達が僕を連れて行くと言ったのは、実は心配して転移装置まで連れて行こうとしてくれたのではないかと思いついてしまった。


転移装置までに新たなモンスターが出ることはなく、このフロアはボス用だと判断して地上に戻った。


上がった先で僕は津島さんたちに頭を下げた。

「有難うございました」

ニコッと津島さんが笑う。

「良い出会いだった」

藤原さんと北角さんも笑っている。

「またね、九条君」

「ご縁があれば会えるよ、九条君」

軽く手を振って〈天原に征く〉のメンバーと別れる。なんだかすごい人達だった。僕の魔法がほとんどいらない人達は初めてだったな。


ダンジョンの近くの探索者協会に行くと、外のベンチに伊達さんが座っていた。

声を掛けようか悩んでいると、伊達さんが伏せていた顔を上げる。それから僕を見て立ち上がり、また座った。

「良かった」

力なく呟く声に、僕は小さく肯いた。




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