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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第4章 第二次キセト・オルサバーグ防衛戦

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4-5 レッド・ビッグ・ラビット

現目標:オルサバーグの防衛準備

「各々任務を遂行せんことを期待する!!出陣せよ!!」

誰も使わず寂しさばかりが漂う新品の正門前にて、声を張り上げるはこの城塞都市を表から支配するオルサ家家長エント・オルサその人であった。

そしてその声に全身に浴びていたのは、色は同じ銀色だが著しく大きさが異なるわずか20つほどの鎧たち。

最も大きいのは成人男性が1人と半分ほどあり、最も小さいのは成人男性の半分ほどしか背丈はない。

あまりのバラつきに傭兵団か何かと間違えそうになるが、彼・彼女らはれっきとした新たに発足されたオルサ家に従う騎士団、オルサバーグ騎士団の面々であった。

傷一つなく光る鎧を纏った騎士団の面々が、エントの命令を実行せんと門をくぐっていく様子を、とある鬼人族が首を傾げながら眺めていた。


「あ、ごめんなさい。ちょっとお聞きしたいんですが……」

「あいよ。ってなんだ、サンフェスの兄ちゃんじゃないか。なんだ?」

鬼人族の質問に耳を傾けたのは、豚鼻が特徴の豚人族である。

「あれ?どこかでお会いしたことが……」

「あぁ面を合わせたのは初かもな。お前さん結構有名だから知り合いだと勘違いしちまったんだよ」

「えぇ僕って有名なんですか!?」

まだこの街に、いや正確に言えばこの世界に来て早数か月。

死にかけたり地獄の特訓をした経験はあれど、有名人になった覚え等ない鬼人族はそう言って大きくて赤い首を傾げる。

「そりゃあ有名さ。レッド・ビッグ・ラビットってね」

レッド・ビッグ・ラビット。直訳すれば赤くて大きな兎。

現実ではそろそろ受験と耳にタコができるほど聞かされるお年頃だったサンフェスでも、これくらいの英語ならば分かる。

「兎って……俺は鬼ですよ!?」

「んなこたぁ見りゃ分かるさ。けどよぉ、お前さんの特訓風景みたら兎にしか見えなくなっちまったんだよ。仕方ねぇだろ」

もちろん特訓とは、オルサバーグの外周を頭がおかしくなるくらいに走り回された訓練であり、今でもたまにサンフェスは夢に見るくらいだ。

「こう走ってはピョンピョンって飛び跳ねて。ありゃあマジで兎だったな」

サンフェスは赤い顔をより赤くして俯いてしまうのだった。


「っとと、兄ちゃん悪いな。それで聞きてぇことってなんだ?」

「あ、そうでした!」

豚人族の男に聞かれたサンフェスは、咳払いして顔色を戻すと本題へと入る。

「あの騎士団の人たちは一体どこに?」

最近は新しくきたテツヤの授業と地獄ではないが引き続き特訓を続けているサンフェスだが、政治にはノータッチなので町全体の動きは何も知らない。

「あ~あいつらか。なんか知らねぇが周辺を回ってくるらしいぞ」

「周辺を回ってくる……?パトロールか何かですか?」

周辺を見て回るなど、飛んでいったボールを探しにいく時くらいでしか経験したことないサンフェスは、さらに首を傾げる。

たかがパトロールの出陣で当主が号令をかけるなどあり得ないのだが、今回は彼の経験が少しだけ当たっていたようだ。

「まぁそれみたいなもんらしいぞ。なんてったって難民って奴がいるらしいからな」


「難民……ですか」

いくら政治に疎いサンフェスでも、テレビで放送されているのを目にしたことはある。

だがテレビに映っていただけで、ぼんやりと”別世界の出来事”だと思っていた光景が、”現実”になった途端話は変わる。

「あぁ難民さ。どうも西のほうで暮らしてた奴ららしい。まぁこの前あの王国に勝ったからな。帰れると思うのも無理ないさね」

すでにあのキセトの町攻防戦が数か月。祝勝気分は落ち着きを取り戻しつつあるが、それでもまだ多くの住民が浮足立っている。

その熱狂は風に乗って木々を過ぎ去り、キセトの街より東側の森で放浪生活を送る亜人たちに届くのは当然だろう。

「まぁだからお前さんも街の外に出る時は気を付けるこった。よく特訓で外にでるんだろぉ?」

「え?あ、そうですね。今日もこれから外に出る予定で……」

「それなら余計に気を付けるこった。そんで特訓が終わったらまた俺の店にでもきな」

「お店?失礼ですが見たこと……?」

現状オルサバーグで開店している店なんて食料品店と、キセトの町からやってくる行商人が開く何でも屋くらいで、そのどちらにも豚人族の店員などいなかったはず。

当然の疑問に豚人族の男は、その大きな鼻を鳴らしながら胸を張っていう。

「聞いて驚けぇ?あそこにある居酒屋茶豚亭、それがお前の店だ!」

指差した場所には小汚くもしっかりした木造建築で、キセトの町の場末で開店していた酒場そのものであった。




豚人族の男、いや茶豚亭の主人から今夜飲みに行くと断り切れずに約束してしまったサンフェスは、逃げるように城壁外へと足を延ばした。

以前自身が走った道は水堀に姿を変えており、その後に走った場所は砂ばかりの平地に、さらにその後障害物競争と言わんばかりに走った森は、今ではすっかり随分遠くへと後退している。

この広大で砂しかない場所は、毎日サッカーを励んでいた学校のグラウンドを思い出し物思いに耽っていたが、すぐに声を掛けられて中断する。

「あら?今日も随分早いわね」

艶やかな声でそう言うのは、オルサバーグを裏から支配しており直接助け出してもらった人物の部下、シーラであった。

「それいつも言ってますけど、シーラさんが毎回遅刻しているだけですよ」

「うるさいわねぇ。そんな細かいこと言ってちゃ駄目。私の苦労も考えてよね」

可愛いというよりも妖艶な表情を作るシーラの言葉に、肩を竦めるサンフェスであったが彼はなぜシーラが毎回遅刻するのか理由を知っている。

特訓内容を考えていたり仕事が立て込んでいるなど殊勝な理由では決してなく、ただただいつもとは正反対の服装に着替えるのが面倒だからだ。

いつもの水着以外何も身に付けない恰好から、タンク役が務まるくらいガッチリとした水色のフルプレートアーマーを着こんでいる。


シーラは魔法で変装しているため誤解されがちだが、実際の姿は両足ではなく尾ヒレを生やしたマーメイドだ。

水中に生息する種族だからこそ水耐性が強く、濡れることも厭わない。

そしてマーメイド種は人間を魅了するため、美形と過激な服装をしていることが多い。

ここまで言えば分かるだろうが、そんなマーメイド種の特徴をふんだんに盛り込んだシーラは、彼女の上司から強く言い聞かされていた。

「サンフェスの前で普段の姿で出るのは禁止。特にシーラ。お前は無暗に触れるのも禁止だ」

「えぇ!?なんでよ、オウキ様!あんなピチピチの男なんて1番旬じゃないの!」

「だからお前は特に禁止なんだよ!!相手の年齢考えろ馬鹿!現実なら犯罪だからな!?」

そんなやり取りを直接見たわけではないが、ある程度察しているサンフェスは、藪の中にいる蛇を呼び起こさないよう、これ以上この話題を広げることはなかった。


「あ!そう言えばお聞きしたかったんですが!騎士団の人たちが!町から出て行ってましたけど!何かあったんですか!」

ブォン、ブォンと人と同じくらい巨大な棍棒を振り下ろしながらサンフェスは聞く。

「ん~?騎士団?あ~そんなことあったわねぇ」

そんな棍棒を事も無げに小さな盾で弾き飛ばしたシーラが、思い出したように言う。

シーラは基本的にパーティーの後列で味方を回復するヒーラー役。そのはずなのだが、手塩にかけて育てられた彼女は当然他のジョブもマスターしている。

その中には前衛のタンク職も含まれており、まだまだ初心者レベルを抜けられてないサンフェスの攻撃など児戯に等しかった。

「それで!何があるんですか!」

「ただ難民を探すだけよ?大通りの掲示板に告知してあったでしょう?」

「そりゃあ!見ましたけど!!」

昨夜思いついた棍棒の連撃をこれも涼しい顔で弾くだけで、サンフェスの疑問は解消されていない。

連撃で疲れ切った腕を休ませるよう、息を整えたサンフェスは改めて問う。

「見ましたが、難民探すだけにしては随分と重装備でしたが……」


森の中にいる人を探す、たったそれだけなのに騎士団の人たちがあれだけの重装備を付けるだろうか。

この疑問も半分間違いで半分正解に近かった。

間違いの部分は森の中を移動する場合は、基本的に装備できる最善のものを付けるが当然であること。

現代日本、そして特殊な能力でその日本と似たような生活が遅れているオルサバーグで過ごしているので忘れがちだが、街の外は魔物が跋扈する危険な世界だ。

この世界の村では水を汲みに行った者が魔物の食料になったり、魔物を狩っていたはずが狩られていたなど日常茶飯事で、そのような事態は極力避けなくてはならない。

これは出陣する兵士であっても例外ではなく、いざ敵と戦った時に「もっといい装備を持ってる!」と行っても後の祭り、宝の持ち腐れだ。

だからこそ町の外へ出る時は、よっぽどの自信がない限り最善の装備を纏うのが当たり前となる。

そして正解は……

「まぁそうねぇ。多分君には言っていいと思うけど、オウキ様に誰にも言うなって言われてるから言えないわ。ごめんね」

そう言ってシーラは笑って誤魔化すのだった。




「分かりました。それじゃあオウキさんに直接聞きに行きますね」

疑問に思ったら即行動、そんな真っすぐな青年サンフェスだが今はとにかくタイミングが悪い。

「あ~オウキ様はちょっと今忙しいから無理ね」

「え?いやもちろんオウキさんが忙しいのは知っていますが……」

オルサバーグのあれやこれやに口を出しているのだから忙しいのは当然なのだが、シーラの口ぶりは明らかに違う理由を示唆している。

「違うの違うの。ま、これは口留めされてないからいいでしょ。オウキ様は今お勉強中よ」

「勉強中?」

学生の性だろうか。もしかして自分は今、授業をサボっているのかと全身を強張らせるが、すぐにシーラが説明を加える。

「えぇ勉強。もちろんテツヤさんのお勉強じゃないから安心して。というよりもテツヤさんもお勉強中だからね」

「え、テツヤ先生も勉強ですか?それより何の勉強を?」

生徒から見たら先生は勉強させる側であってする側ではないのだが、今は重要ではないと横へと置いておく。


「なんだったかしら?確か防衛方法についての勉強だった気がするわ。私は面白くなかったから抜けてきちゃったけど」

「防衛……方法?」

「えぇ。エフィーちゃんもいるんだから問題ないでしょうにと思うけど、キセトの町から先生がやってきてるって言われたら受けるしかなかったみたいよ」

正確にはオウキとその仲間たち、そして首脳陣であるエントに教育者テツヤ。あとは未来の将軍エデルとイルマも参加しているのだが、サンフェスはそこまで頭が回っておらず、ただ1つの言葉に捕らわれていた。

その言葉とは”防衛”。

サンフェスは部活でサッカーのディフェンス方法を勉強したことがある。

あれは敵チームのオフェンスがあまりにも強力で、中盤の攻守(ミッドフィルター)を担っていた彼は必要に駆られて勉強していた。

そう、必要に駆られて勉強したのだ。これは受験勉強も同じで、入試という必要があって勉強していた。

ならば今オルサバーグの首脳陣が防衛について学ぶのは具体的にどういう時か、その答えが自然と頭に浮かぶ。

計らずともどうして出陣した騎士団の人たちがなぜ重装備だったのかの答えを推測できたサンフェスは、近い将来起こるであろう出来事に顔を青ざめるのであった。

もしかしたら次回から最新話の更新ではなく、これまでの話の更新になるかもしれません。

内容もリライトではなく追加で、これまでガンガン進んで説明不足と急展開になっていたストーリーを直していきたいと思います。


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