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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第4章 第二次キセト・オルサバーグ防衛戦

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4-2 学問のすゝめ

"天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずといへり"

説明するまでもなく、紙幣に印刷されるくらい有名な偉人が著した本の一節だ。

この言葉を持ち出すのは大抵「神様は人間を平等に作ったらしいぞ!」という論説を補強する際なのだが、後に続く一文を見れば、”人間は平等”だなんて結論を出していないのが分かる。

なぜなら、後の続く一文をザックリまとめると、「じゃあどうして人間に上下があるのか。それは学ぶかどうかだ!」と言っているからだ。

つまり纏めると、「人間は生まれた時は平等!でもそれから何を学ぶかによって身分の上下が分かれるよ!」となる。

”人間は皆平等”、そんな甘ったれて現実離れした夢想ではなく、現実で高みへと昇っていくためには勉学へと励めべし。だから本のタイトルが”学問のすゝめ”なのだ。


この思想を武家という貴族が長年支配してきた徳川幕府の幕が閉じた数年後に説いているのだ。

今でこそ当たり前の価値観かもしれないが、江戸時代は士農工商と呼ばれるくらい生まれが絶対だったのだから、紙幣に印刷されるのも納得だろう。

さて、そんな偉人の評価は横に置いておくとして。

この偉人の言葉通り、常人では測り知れないほど勉学に打ち込み、身分や位を上げていった偉人は意外と多い。

例えば初代内閣総理大臣の伊藤博文は生まれが農民だったが、英国に密航してまで勉学に打ち込むくらい熱心だった。

このように数々の偉人が死に物狂いで身分や位を上げていったのが近代現代になるわけだが、ここで問題なのはその偉人たちの後継者だ。

『三代目が家を潰す』という言葉もあるように、後に続く者は先の者と比べて勉学を疎かにしやすく、それが顕著にでるのが三代目なのだろう。

他にも三代目とは限っていないものの、盛者必衰や諸行無常と類義語も存在するくらいなのだから、どれほど後継者が重要になるか分かってもらえたと思う。




身分や位を上げるならば勉学は必須である、これは多くの人に納得できる事柄だろう。

だが世の中、勉学に励めば必ず身分や位が上がるわけでもなく、正当な評価がされないと悩んでいる者も多い。

また反対に、何も大きなことを成し遂げていないのに身分や位が上げられる場合もある。

政治や陰謀、策謀が交じり合うこともあるので、本人に悪気はないのかもしれないが、それでも身分や位が上がったのならそれに相応しい勉学を身につけるべきだ。

少なくとも与えられた身分や位が望まないものだとしても、受け取ったものを守りたいのあるならば。

そこで始まったのが……

「はい、それではプリント2枚目、1番上のジリト王に関する問題を……エント様、お答えてください」

元教師テツヤによる授業であった。

内容はジリト王国の歴史から、この大陸──ミズガルド大陸って言うらしい──の地理に至るまで、社会と言えばいい科目が主だ。

勉学とは学校で受ける勉強だけではなく、日々生きていくうちで学べる様々なことも含んでいる。

だが最も基礎となるのはやはり学校の勉強であり、学びやすいのも学校の勉強であろう。

何を学ぶのかハッキリしている上に、教師という見本を(まね)べばいいのだから、吸収する知識量も多い。


「えぇと……6?」

「残念ですが違います。正解は第9代目です」

突然当てられたオルサバーグの支配者エントは、正答できず渋顔を作っている。

これまで村長として多くの正解か不正解かの答えがない指示を飛ばしていたエントが、ハッキリと不正解だと突きつけられているのだからそんな顔にもなる。

そんな彼の隣にはエントの顔が面白くて、ついつい口角を上げてしまう影の支配者もいたのだが、それを見逃すテツヤではなかった。

「それではオウキ殿。プレイヤー追放令の勅令を出したジリト王は何代目の通称何という王様ですか?」

「えっ!?……分かりません」

「はい正直で結構。プレイヤー追放令の勅令を出したのは第4代目、通称戦王の即位中です。しっかりプリントを見て覚えておいてください」

間違いを笑ったオウキも、またすぐにエントと同じ顔をさせられるのだった。


こうしてどんどん渋顔を作る者が増えていくオルサバーグの一室では、授業が開かれていた。

過去の偉人が言ったように上の立場になるには勉学を努力する必要があるが、反対に突然上の立場になった時はどうすればいいのか。

その答えは立場に見合っただけ勉学に励むしかない。

だからこそこの部屋、いや教室には領政に関わる重要な役職に就くであろう者たちが集められていた。

まずオルサバーグを支配するオルサ家当主のエント・オルサは当然として、影からエントを操っているオウキ、そしてエントの一人娘で最も次期当主に近いスーラーも強制参加となる。

この3人の他にも政務に関わる者、そしてその可能性が僅かにある者は強制参加となった。

代表的なのはオウキの仲間たちで、オウキ以外に6つ用意されたが、今もイスに尻を乗せているのはエフィーだけ。

熱暴走で頭が沸騰したオルクスや違うことを始めたドーシュとランド、シーラはすぐに授業へ来なくなり、授業時間がそのまま睡眠時間になったヘレンは教室から追い出されたから、エフィーだけが残ったというべきだろう。

他にも脳筋種の鬼人族族長キレツとハーフゴブリンシュ種の族長ゴブスも既に離席しており、亜人種の族長で残ったのはハーフリング種のエイベルのみ。

あとはオウキが将来に将軍としての活躍を期待しているエデルとイルマ、財務見習いとして活動中のカトリンとエネスティアの母娘、ある程度基礎的な教育を受けた元テツヤ村出身の人間たちの中で手が空いている者たちが参加している。




そんな中、1人異色な強制参加の理由を持つ者がいた。その者の名はサンフェス、この前の作戦初期に仲間にした鬼人族のプレイヤーである。

オウキとしては数少ないプレイヤー仲間の1人であり、心強い味方になるかと期待していたが、サンフェスはまだお酒も飲めない学生だ。

しかもゲームを始めたばかりでレベルも低いため、サンフェスには生き残る力だけ身に着けてもらったらいいと考えていた。

だがそんなオウキの考えに真正面から異議を唱えたのが、授業を行う当人のテツヤである。

「もし現実に戻れた時に困らないよう、しっかりと勉強しておくべきだ」

彼の主張には”現実に戻れたら”という、現状かなり可能性の低い話も含まれているが、だからと言って即座に諦められる話でもない。

さらに立場的には一介のプレイヤー同士だが、テツヤは教師でサンフェスは学生。

自然と上下関係が構築され、生徒が教師に授業へ出ろというのだから、真面目だったサンフェスは真面目に授業に出席していた。


ちなみに現在開講されている授業は数種類あり、一般常識という科目が最も受講者が多いのだが、対照的にその後の数学が最も少ない。

微分積分や指数対数関数、三角関数、ベクトルやら確率に至るまで、もはや単語を見ただけで発作を起こしてしまいそうになるくらい難しいものでいっぱいだからだ。

真面目なエフィーですらペンを放り投げ、数字に強いカトリンとエネスティア母娘も頭を抱え、エデルとイルマも白目を剥くなど、数少ない受講者でも理解している者は少ない。

元地理教師のテツヤが僅かに拙い教え方で理解を深めていけるサンフェスは、下地となる知識があればこそだろう。

ちなみにこの授業でのオウキは生徒役ではなく、教師役として他の受講者をサポートしている。

オウキは高校数学は当然として大学レベルの数学も習得していたからであるが、テツヤよりも教え方が大雑把であったため不人気だったのは内緒だ。




テツヤの授業は不人気だが重要であると認知されているため、連日40名ほどしか入らない教室が満員になるのだが、参加者は行政に関わる者が大半であるため授業だけ受けているわけにもいかない。

オルサバーグ中央に位置する行政区、その行政区を守る内壁とたった1つの門近くにあるテツヤの教室を出たら、そのまま行政区に足を運んで街に関する会議が始まるのがほとんどだ。

教室に参加者の半分ほどがそのまま会議の参加者にもなるため、改めて招集をかけなくてもいいからであろう。

会議ではほぼ毎日異なる議題が上がるが、内容はこの3つがほとんどを占めている。

・街の開発状況

・町民の生活改善

・ジリト王国との戦争対策

どの対策も欠かせないため、連日議題に上がるのも当然だ。


街の開発状況はそのままの意味で、オルサバーグの開発に関することが議題として挙げられる。

どの区画にどれだけの建物が建ったという大きなものから、南東の裏門から搬入される資源量の小さいものまでの話が飛び交う。

町民の生活改善は大きな話ばかりで、貨幣文化や経済に関する議題が多く上がる。

これまでオルサバーグに住む住民の多くが物々交換であったため、まだ貨幣に馴染みがなく何かをお金で買う意識も低いため経済レベルも低い。

建物を建てる大工や資源集めをしている者には給金として貨幣であるゴールドを渡して馴染ませようとしているが、こればかりはもっと時間がかかるだろう。

だがいい話も当然ある。テツヤの授業で行われる小学生レベルの算数は義務教育としたからか、合計金額やお釣りの計算が拙いながらも普及していた。

今はまだいないだろうが、今後お釣りを誤魔化す奴や会計で不正するものが出てきたとしても、町民たちだけで対応できるようになるかもしれない。


そして最も重要というべきか喫緊の問題なのだが、ジリト王国との戦争対策である。

既にこの冬、いや年を越した辺り──既に1年が現実と変わらず12か月あり、今は12月だと学んでいる──に侵略してくるのは先の作戦で得た情報と、カトリン母娘からの情報で確定している。

だからこそ防衛手段を確立しておかなければならないのだが、これが遅々として進まなかった。

なぜならオルサバーグ内の多くが戦闘種族であったから。

戦闘種族だったら防衛は簡単に見えるかもしれないが、軍隊というのはある種の生き物だ。

筋肉や皮といったものも重要だが、それを動かす問題なく動かすための骨や臓器も重要になる。

つまり今のオルサバーグは筋肉ばかりで、肝心の骨が全くない状態なのだ。

まさに船頭多くして船山に上るの逆バージョン、一兵卒ばかりでそれを指揮する者が圧倒的に不足している。


どれほど深刻なのかと言えば、まずオルサバーグを守るための軍隊はオルサ軍になるわけで、総司令官は当主のエントが務める。

オウキと彼の私兵は役職的にエント付きの顧問であり、部隊長になるのは除外。

そうなると残るは鬼人族族長のキレツとハーフゴブリン種族長のゴブス、あとはハーフリング種の中でも戦闘に特化しているアーロンだけだが、族長自らが最前線に行かせて戦死でもされたら困るため、族長を抜くと残ったのはアーロンのみなのだ。

エデルとイルマも候補に入れたいが、まだ指揮経験が未熟で本人の能力的にも心配なので除外するしかない。

まだ騎士団と言っても数十人規模なので問題ないが、今後町が発展して騎士団の規模が増せば問題になるのは火を見るよりも明らかだ。そうならないためにも一刻も早い指揮官の育成に力を入れるしかない。

多くの者が差し迫る問題を認知しつつ、解決方法が時間しかない現状に顔を顰めるしかなかった。

昨日は更新できずにすいませんでした!

週末と月末が重なったら忙しさが限界突破してしまい、間に合わなくなってしまいました。

今後は同じようなことが……できるだけ無いように頑張ります。


面白いと思った人は、ぜひブックマークや評価、レビューをして頂けると嬉しいです。

筆者の執筆モチベーションにも繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

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また感想や質問、要望などもコメントかXで受け付けていますので、ぜひぜひお送りください!

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