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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第4章 第二次キセト・オルサバーグ防衛戦

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4-1 行く先は地獄か天国か

第4章の始まりです!

道行く人々から立ち込める白い息、そしてその様子を眺める家屋の窓には朝霜が厳しい冬の到来を告げる季節。

冷気を拒絶するように住宅は固く閉ざされ、通りには閑散としているのが常であったが、魔の森に近いグレンツェの街では違う光景が広がっていた。

通りには鉄の装備を身に纏った者が行き交い、酒場などの食事処や賭博場などの遊戯場へ吸い込まれるように人が消えていく。

一様に若い者しかおらず装備が似ており、さらには大規模な遠征を通告されている町人たちは、否が応でもその者らが兵士だと分かる。

ただ兵士にも身に着けている装備が異なり、1つは上質で光沢を放っている鉄装備の者と光に当たれば白く光る線が幾重にも見える者、さらには装備というより金属の板を紐でまとめた物を身に纏う者もいる。

最も高品質な装備を付けている者の鎧には、王家直属の国軍だと示す盾の中に旗を突き刺した人間の文様が大きく描かれていた。

そして鈍い光を放つ者の鎧には盾の中に短刀が描かれているが、金属の板みたいな鎧を纏う者にはそういった家紋や所属が分かるマークは無い。

だが間違いなく所属が多岐にわたる兵士の集団が集っているからか、漂わせる雰囲気や言葉遣いが兵士によって大きく変わるのだが、その中でも一つ共通しているのが兵士たちの表情。これから始まる戦闘に憂いているのか、はたまた魔族たちを恐れているのか、彼らは揃って顔に大きな影を落としている。

答えは誰にも分からないが、この兵士たちの表情から見るに彼らは決してなだらかなものではないと直感しているのは確かだろう。


そんなグレンツェの街の中央部、貴族邸宅予定地に建てられた司令部に、高貴な身分の者が顔を突き合わせていた。

その高貴な者たちの中でも一際威厳ある服装を纏っている初老に差し掛かった男性が、白髪交じりの茶髪を揺らしながら問いかける。

「では今より軍議を始める。まずこれまでの日程に狂いはないな?」

身を乗り出して問いかけるのは、ジリト王国第1王子パルメニカ・アルグアスその人だ。

白髪が目立ち始める中年でありながら、父王の側近として様々な分野で手腕を発揮した人物で、王位継承権1位と次世代の人間である。

本来ならば王位継承権1位の者が敵地に足を踏み入れるなど言語道断なのだが、1年ほど前に提案・実行したジリト王国北東にある半島を制圧・開発し貿易路の拡充を目指した【パルメニカの大東進】が、道半ばの街に大敗北を喫したのだ。

自派閥の有力貴族の次期当主を失う大失態を演じたパルメニカは、王位を狙う次弟の躍進を防ぐため父王の援助を受け【第2次パルメニカの大東進】を発令。

自ら兵を率いて魔族領土を切り取った偉大な王、その夢を胸にパルメニカはジリト王国の最東端とも言えるグレンツェの街まで来た。




「はっ!行軍並びに友軍との合流、全て狂いなく完了しております」

パルメニカの隣で答えるのは、いかにもな風貌の老騎士であった。

「ご苦労、ドルヒ卿」

「はっ!」

ドルヒ卿と呼ばれた老騎士は、短く返答をすると完全に色が抜けきった白髪を揺らし敬礼をする。

ドルヒ卿、正式な名前はアルディ・ドルヒ伯爵。

ジリト王国内で武の名門として挙げられる2大貴族の1つで、ジリト王国象徴の盾の中に小さくとも鋭い短刀が光り輝く家紋の家だ。

今回の軍事作戦でも3部隊──正しくは輜重隊を合わせると4部隊──の内の1部隊の指揮を任じられている。

「では次にナール卿。兵站物資の現状を報告せよ」

「はっ!兵糧、軍需品。全て過不足なく荷馬車への積み込みが完了しております」

次に呼ばれたのはナール伯爵、正式な名前はエッカン・ナール伯爵。

以前の【パルメニカの大東進】で中核を担ったナール伯爵家は、道中見つけた街と謎の勢力にとって壊滅の憂き目にあった。

それにより次期当主と歴戦の将兵たちを失う大損害を出したが、何とか参陣している。

エッカンも白髪を揺らしながら敬礼して答えると、盾の中に輝く大剣の家紋が隠れてしまうが、彼は特に気にしていない。

「うむ、ナール卿。其方には先の戦いと同じく、今回も頼らせてもらうぞ」

「はっ!我が身命を賭しても御身を守ると誓いましょう」

より深く力を込めた敬礼を返すエッカンを見るパルメニカの瞳には、一抹の不安が灯っていた。


パルメニカにとってナール家とは、自身を次代の王へと押し上げるために必要な武力であった。

ジリト王国を守護する武の名門のもう1つとして語られているため、名声だけ見てもナール家を抑えておく利がある。

しかしその頼り切っていた武力は先の戦いで多くを失い、名声にも深く傷がついたのは間違いない。

武力と名声の回復に大人しく邁進して欲しい、パルメニカ個人の希望は自派閥の貴族を守ろうとする優しさがあったが、時勢が許してくれなかった。

自身を蹴落とそう画策する第2王子派閥に属するドルヒ家の参戦、作戦失敗で結束が緩んでしまった自派閥の貴族たち、そして何よりも再び作戦失敗を招いて王位継承権を失う恐怖が、ナール家を戦場へと舞い戻らせた。

これまで長子相続を基本としたジリト王国で、長子パルメニカを支持するのは保守的な大貴族が多い。

伝統と安寧を第一とする大貴族の多くは、長年ジリト王国中央部に広大な土地を持っており、どれだけ過去に研ぎ澄まされた牙を持っていたとしても、時間の流れと共に風化して消えた。

今でも鋭い牙を持っているのは一部の貴族と、大部分を砕かれたとしても他の貴族よりも牙が揃っているナール家のみ。

パルメニカがナール家にどれほどの期待を抱いているのか、察して余りあるだろう。




ただ例えパルメニカが【第2次パルメニカの大東進】を成功させたとしても、本来の目的を疎かにしてはいけない。

本来の目的とは第2軍の総司令官で、第2軍の目的は魔の森から到来する魔族を撃滅すること。つまりは人間と魔族の間に築かれた障壁、フォーマーチ・ラインの守備である。

このフォーマーチ・ラインの守備に、数少ない優秀で忠実な部下を配していたのだが、突如として現れた竜によってもういない。

ただでさえ数少ない軍事関係の手駒を、開拓大隊から手放しては行軍にも影響を与えかねないと考えたパルメニカは、とある人物に援軍を求めた。

「そして皆にも紹介しよう。この者はヘファニア。第3軍の総司令だ」

パルメニカの後ろに控えていたその人物が、一歩前へと踏み出し挨拶をする。

「パルメニカ兄殿下よりご紹介預かったヘファニアだ。皆の者、よろしく頼む」

そう言って見渡すヘファニアという男は、まるで常に殺気をまき散らすように鋭い視線を会議場にいる人間へと向けたが、委縮せずに敬礼できたのはナール伯爵とドルヒ伯爵であった。

ヘファニア、正しくはヘファニア・アルグアス。そう、れっきとした王族でありパルメニカの異母弟で第5王子である。

本人は王位に興味がないうえに、特別な事情ゆえに王位継承権すらない。だが一部の貴族から支持を集めているため、パルメニカも対抗しているのだろう。


「このヘファニアに、余が不在時のフォーマーチ・ラインの守備を任じてある。ナール卿、よきにはからえ」

「はっ!承知いたしました」

パルメニカの指示に応えるナール伯爵の声には、僅かばかりの喜色が混ざっていた。

それもそのはず、ヘファニアは第3軍の総司令を務めている人物だ。

第3軍は対魔族用に王国北東部を守護する第2軍や、国軍の主力としての奮戦が期待される国王自ら率いる1軍と並び立つほど重要な軍団で、主に王都を守備する精鋭部隊である。

王都の守護者と称される第3軍の構成員は自然と腕自慢の強者で占められ、その頂点に君臨するヘファニアも人間種としては異常なまでに能力値が高い。

王家の五男として生を受けたヘファニアの人生は、王族として破天荒と評価するしかない。

冒険に憧れた彼は、年少期より追い縋る侍従を振り切ってはギルドに足を運び、共も連れずにダンジョンへと足を運んでいた。

そんな生活を続けていた彼は、成人する頃には冒険者顔負けの実績を積み上げ、ジリト王国でも有数の冒険者としての名声を得た。

だがそんな絶頂期のような彼にも不幸が訪れる。とある場所にあったダンジョンのボスから、解除不能な猛毒を食らってしまったのだ。

魔法適正が低い人間種に対抗する手段も治療する手立ても得られず、絶望の淵に叩き落とされたと言える。

それでも彼は腐らず、今でも己を鍛え上げながらいずれ垣間見えるであろう強敵との戦いのために延命を続けているのだ。

そんな指揮能力は怪しくとも実力者のヘファニアならば、仮にフォーマーチ・ラインに魔族が押し寄せてきても守り切れるだろうと判断した。




フォーマーチ・ラインの守備、開拓大隊の人員、物資。そのどれもが以前とは比較にもならない大がかりな準備の元で集められた。

目指すは魔の森奥地にある城塞と、川沿いにある城塞都市。その2つの目標を潰し、さらに北東へ侵攻し大きく海へと出っ張った半島を制圧する。

この作戦さえ成功すれば、今の王国領土では難しかった本格的な海上貿易の道が開かれ、そして王国は更なる領土に恵まれることだろう。

未来のジリト王国が繁栄の道を歩むため、そして反映したジリト王国の頂点に君臨するため、パルメニカは重々しい号令を発した。

「全軍に通達。これより開拓大隊は魔の森へと侵攻する。皆の奮戦を期待する!」

「「はっ!」」

霜がちらつく冬初頭。ジリト王国は鉄の音を奏でながら土を踏みしめだすのであった。


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データ

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◇侵攻軍


正式名称:ジリト王国開拓大隊

総兵数:約8万人


第1師団:指揮官パルメニカ・アルグアス(ジリト王国第1王子)

兵数:約4万人

主な構成員:第2軍兵士


第2師団:指揮官アルディ・ドルヒ(ドルヒ伯爵当主)

兵数:約2万人

主な構成員:ドルヒ伯爵領軍、私兵


第3師団:指揮官エッカン・ナール(ナール伯爵当主)

兵数:約1万5千人

主な構成員:ナール伯爵領軍、私兵、傭兵


◇防衛軍


正式名称:ジリト王国第2軍


フォーマーチ・ライン守備隊:臨時指揮官ヘファニア・アルグアス(ジリト王国第5王子)

総兵数:4万人

主な構成員:第2軍兵士

更新1日ズレて大変申し訳ありませんでした!

昨日いきなり家電が壊れまして・・・

あと今週末もちょっと1日遅れるかも?なんとか間に合うように頑張りますが、忙しくて無理な時はXでポストします。


面白いと思った人は、ぜひブックマークや評価、レビューをして頂けると嬉しいです。

筆者の執筆モチベーションにも繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

X(@KenRinYa)もやっているので、フォローもよろしくお願いします!

また感想や質問、要望などもコメントかXで受け付けていますので、ぜひぜひお送りください!

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