表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第3章 家号作戦

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

59/67

3-27 光明を手に

現目標:ハウス作戦

概要:敵国内の辺境に住み教鞭をとれる人材を確保するため、少数部隊で潜入・スカウトする

進捗:作戦完了済み

主な新規加入者:テツヤ、エネスティア、カトリン

遥か西の土地から東にある魔の森よりもさらに東のオルサバーグにやってきた人間たちは、オルサバーグ内で行われた最高会議にて紆余曲折ありながらも居住が決まった。

決定事項は多岐に及んだが、人間たちについては今後他の亜人種たちとほぼ同じ待遇だが、一定頻度で人間種への査察が行われる。

査察と言っても非常に簡単で、自宅内に武器や装備など反乱に必要な道具を集めていないか、生活を営む上で亜人種に横柄で暴力的な態度を取っていないかが調査され、これはまだ完全に人間種を信頼しきれていない亜人種を安心させる名目だ。

そしてここで問題なのは横柄や暴力的な態度とはどのようなものか、そしてどのように判断するかであった。

人間、亜人種に関わらず生きていれば誰しもが邪な考えを持つ可能性があり、穴だらけのルールは悪用される。

そうならないよう現実世界の法律と同じで、基本的に性悪説を元に悪用できないようにに制定しなくてはならない。

もし穴だらけかつ悪用され放題のルールであったら、間違いなくそのルールを守らない者が増える上に、ルール外で解決を試みる私刑が蔓延ることだろう。

この世界は身体能力が高く魔法が使える、私刑の被害も間違いなく大きくなるので慎重に制定しなくてはならない。

それらを加味して出来上がったルールは、まさに裁判に通ずるものがあった。


どのようには個別案件が多すぎるので何とも言えないが、誰が判断するかについては2人の裁判官が話し合って決める。

1人目の裁判官はエント・オルサ。オルサバーグを治めるオルサ家の家長だ。

基本的に領地内での裁判権は、決闘裁判という異例はあるものの基本的にはそこを治める貴族が独占している。

このような前例が多数あるにも関わらずオルサ家家長のエントが裁判権を独占していない、それどころか3つに分割しているのはオルサ家がまだ新興貴族であり家長に力がないこと、そして譜代家臣のように幅を利かせる次の裁判官が原因だろう。

2人目の裁判官はオウキ。表向きの役職はオルサ家付き軍事顧問であり、裁判に顔を出せるような身分をしていない。

しかしオウキは人間種でありながらも、力こそ絶対という価値観を持つ亜人種を多数従え、亜人種と人間種にも分け隔てなく接している。

そのため人間種と亜人種の諍いでも最も中立的な立場で裁けるだろうという理由で選ばれたわけだが、裏にはオウキに権力を集中させる意図もある。

オルサバーグには新設された騎士団はあるが、150人ほどしかいないオルサバーグでは団員は20人ほどが限界だ。

それでも迫りくる人間種との戦闘を行えるのは、オウキと彼の仲間を名乗る6人の亜人種がいるからに他ならない。

オルサバーグの戦力とはそのままオウキと彼の仲間たちの強さであり、人間種の侵攻が判明している現状、何が何でも手放すわけにはいかないのだ。




あらゆる意図がぶつかりあった会議の中、安堵で胸をなでおろしたのは今回移住が決まった人間種のまとめ役である機械人間(マキナー)種のテツヤであろう。

移住する人間全員が、過去にテツヤを迫害から守ってくれた人間種の末裔であり、恩返しのために守ると誓った者たちだ。

徴兵に行ったまま戻ってこなかった者も数多くいるが、それでも飢饉や魔物から幾度も村を守ってきている。

そんな者たちが再び安寧の地を得られるのだからその喜びは尋常ではなく、オウキによって斬られたままの両腕の修理を忘れて移住者に伝えに行くくらいだ。

まだ完全に安全だとは言い切れないが、この土地を治める貴族から直々に同じ待遇で人間種を迎え入れるという発言と、何よりも実質的にオルサバーグを支配しているオウキを見る限り安心できると直感していた。

テツヤはオウキと同じく元NRGプレイヤーだ。価値観の根底には、現代的な人権意識が根付いている。

加えて長い移動期間中にオウキを観察していたが、テツヤから見ればどこか不安定な部分も見受けられるが、決して人の死に鈍感な者ではない。

長い教師生活の中で磨かれてきた人を見る目から判断しても、テツヤの判断はそう間違っていないだろう。


テツヤは念願の夢を叶えたも同然であったが、彼の心はその身を覆う鋼鉄のように寒い。

オウキと同じく突然この世界に転移してきたテツヤは、これまで体を流れるオイルが冷まされたことはなかったのに。

転移直後は仲間と共に必死に生き、ジリト王国で勅令のプレイヤー狩りが始まってからは仲間を失いながらの放浪生活。

そして泥と血に塗れ、行きついた先の村で匿われてから守護者として生きてきたのだ。

そんな彼が、守護者としての役割を終えつつあるのだからオイルの流れは停滞するのも当然だろう。

「おぅどうだぁ?」

茫然としながらオイルを冷やしていたテツヤは、荒々しい声をセンサーで感じ取り意識を戻す。

「あ、あぁ失礼しました。ピッタリです、問題ありません」

テツヤは新しくも見覚え有るのある鋼鉄の腕を掲げた。

元々機械人間(マキナー)種としても古い型番で始めたテツヤは見た目もオンボロで、後々に追加されていった人間と変わらない見た目をしていない。

それにも関わらず何と違和感も覚えないほどピッタリであり、どこか懐かしさも感じられるほど精巧なのはまさに匠の技だろう。

何度か手を握っては開くを繰り返したテツヤは、既に次の作業を始めていたドワーフの男に感謝の言葉を述べた。

「ランドさんありがとうございました。素晴らしい腕をお持ちですね」

「へっ!いいってことよぉ、久しぶりで面白かったしなぁ」

受け答えはしてくれているが、手元の意味の分からないパーツから視線は動かない。

ランドとはオウキ直下の部下であり仲間でもあると紹介されたドワーフだ。


テツヤは既にオウキから、直下の仲間は転移する前から共に冒険してきた歴戦のNPCだと聞いていたが、当然だろうという納得と衝撃が頭を殴る。

村に連れてきていた龍人族のヘレンはNPC限定種族なので合点がいくが、もう1人銀色の甲冑に身を包んだ巨体のオルクスとは全く交流が無く、どのような人物なのかも想像が付いていなかった。

だが彼が着こんでいる最高レア度の装備類と、鎧の隙間からジワリと漏れ出す覇気からただ者ではないことは察していた。

極めつけはオルサバーグに辿り着いた時に出迎えてくれた彼の仲間も、オルクスと変わらないくらい装備類と覇気を漂わせていたのだ。

このような装備を破棄を潤沢に持っている者など、広大なジリト王国と言えど極めて珍しいはずで、少なくともテツヤが王国内を自由に闊歩できていた頃は仲間以外にありえなかった。

だから転移前から一緒にいたというのは納得できたのだが、衝撃だったのはNPCであること。

古参プレイヤーでも揃えるのが難しい装備一式を着ているだけでもプレイヤーだと思っていたのに、装備構成が強豪プレイヤーが組むセットのさらに上を言っているからだ。


例えば作戦中のオルクスが身に纏っていた銀色の全身鎧は、始祖の巨人(ユミル)シリーズと呼ばれるオリハルコン製の鎧である。

オリハルコンは最も高い魔法耐性を持つが、その分物理耐性は1個下のランクであるミスリルとほとんど変わらず弱いため、主に魔法を使うダンジョンに挑戦する時にタンクとして活躍したい人が着こむ装備だ。

だがオルクスはその物理耐性が脆いという弱点を、全身を覆い隠せるほど巨大なヒヒイロカネ製の大盾でカバーしている。

ヒヒイロカネは最も高価で、物理耐性ならばアダマンタイト、魔法耐性ならばオリハルコン、どちらも欲しいならヒヒイロカネと呼ばれるくらい万能な金属だ。

そのためオルクスの戦い方は魔法を鎧で塞ぎつつ、迫りくる物理攻撃は技量でいなしつつ大盾で防いでいく形になる。

そして気になる値段だが、金食いコンテンツと呼ばれたハウジングをやりこんでいるプレイヤーすらも匙を投げるレベルにかかっていた。

まず全身鎧の大部分を占めるオリハルコンだが、最高難易度のレイドボスを倒した後に採掘できるたった1か所の資源地点から確率で入手するしかない。

それほど貴重なオリハルコンをベースに諸々のレイドボス素材を足し合わせて作られたのが全身鎧で、大盾に関しても値札を付けるならばそれくらいかかるだろう。

万能金属とまで呼ばれたヒヒイロカネは採掘できるポイントが極限環境である火口内部にしかなく、周囲にはダンジョンボスを務めてもおかしくないレベルのモンスターが跋扈している。

その中に行くだけでも辛いのに、さらには誰もほとんど使わない採掘師のレベルを最高まで上げ、最高級のピッケルを作り、そして熟練度をマックスまで上げてやっと入手できる。

もちろん最高級のピッケルの作成難易度もかなり高いため、冗談抜きで気が遠くなる作業と工程の果てに作られた装備なのだ。

そんな血と涙の結晶とも呼ぶべき装備を付けているので、プレイヤーだと勘違いしても仕方ないだろう。




テツヤはランドがドワーフでありNPCだと知っているので、ある程度彼の性格には察しがつく。

なぜなら種族ごとに性格がある程度決まっており、例えばエルフならば森林を好んだりセイレーンならば海を好んだりといった様子で、ドワーフならば物作りとアルコールが好きな頑固者が多い。

ちょうど今も修理という名の機械いじりが終わったため、ランドが自身に興味を無くすのも頷ける。

いや、昔ならば話す時は相手を見ろと怒っていたかもしれないが、なぜか怒る気にもなれない。

「それではランドさん。また何かありましたらお願いしますね」

独り言を呟き、ランドの自室を後にしようとした時だった。

「あぁそうだ忘れない内に言っておくぜぇ」

ドアに手を掛けた時に声を掛けられたテツヤが驚き振り返ると、機械に夢中になっていたはずのランドと目が合う。

「その腕はもうあっしの子なんだよ。大事に扱ってくれよ?」

「もちろんです。大切に扱いますとも」

右手で新しい左腕を掴んでみると、そこにはヒンヤリと冷たい感触を覚える。

「ほんとかぁ?」

疑いの目を向けられたテツヤは本当だと言い返したかったが、それよりも先にランドが言葉を捲し立てた。

「大事に扱うってあれだぞぉ?ちゃんと使うって意味もあんだぞ?」

「はい……?それは理解していますが……」

手や腕を使う、それは両腕がある人間ならば当たり前の日常だ。

「いや理解してねぇなぁ。あっしが付けたそれ()、戦いに使えってんだよ」

その言葉を聞いた瞬間、テツヤの両の瞳代わりに発光するライトが強く光った。


「あっしから見たら今のお前さんはまるで抜け殻だぞ?そんな抜け殻に最高の腕なんかもったいねぇだろ」

ランドが巨大スパナを担いで説教を垂れているが、今のテツヤには何も言い返せない。

確かに今のテツヤに何の願いもない。これまでなら村人を守ると願いが存在したが、それも今では手放しても問題なさそうだ。

そうなれば待っているのは何か?ただただ穏やかで平和に暮らせる日常だ。

毎日ノンビリと畑作業をしながら、乞われるがままに教育を施し、またベッドに身を沈める。

この騒乱の嵐が吹き荒れる世界で、そんな日常を求めている者はたくさんいるだろう。

だがそんな日常は、果たして毎日学校で日誌と次の授業を用意するのを繰り返していた日常と何が違うのだろうか。

そんな日常に疲れて、心躍るゲームの世界に飛び込んできたはずだ。

「私の……次の目標か……」

何度も口に出してきた言葉を、今再び口に出すと途端に遥か遠くに行ってしまった記憶が甦ってくる。

「初心に戻って自分が本当に何をしたいのかを考えるように」

「何事も取り組むなら目標が合った方がモチベーションの維持に役立つぞ」

「やりたいことが見つからない?それだったら自分の好きなことを見つめ直すことからやり直そう」

これまで幾度となく教え子に説いてきた言葉が、今改めて全て自分に降りかかってくる。

テツヤは自分と言う存在を見つめ直していく。自身が何かを残し大切にしていきたいと思っていたこと、ゲームの中でも攻略を教える立場になっていたこと、そして1番嬉しかったのは自分の教えを実践した人が嬉しそうに笑いかけてくれることを。


「おい、お前さん大丈夫かぁ?」

突如として動かなくなったテツヤを、ランドは興味津々な目で見る。

心の機敏などに疎いランドであったが、人一倍機械に対する情熱だけあるが故に核心に迫る質問をしたとは夢にも思っていない。

それどころか動かないテツヤを修理対象としてまた内部をいじれる、そんな下心しかない喜びを湧き上がらせていた。

だがランドが席を降りて修理を始めようとする前に、テツヤの瞳の発光機器が今日1番の輝きを見せる。

「ランドさん、ありがとうございました。おかげで目が醒めました」

「はぁ?」

突然感謝されても意味が分からないランドだが、そんな彼を無視してテツヤは話し続けた。

「もう一度自分がやりたいことをしっかりと考え直してきます」

早口で言い切ったテツヤはドアを開けて去る直前、思い出したようにランドに頼む。

「あ、ランドさん。恐らく腕……いいえ、全身が壊れる可能性もあるのでその時はよろしくお願いしますね」

普通の人間ならば全身骨折するくらい悲惨な状況のはずが、なぜか嬉しそうにテツヤは事前にそう報告してから去った。

「はぁ……?ま、修理できるならいいかぁ」

頭をボリボリと掻きながら座り直したランドは、その言葉を最後を意識を再び目の前のパーツに移すのだった。

昨日更新できずすいませんでした!

土曜日に風邪ひいてしまって作業できず、日曜日だけでは間に合いませんでした・・・

え?それなら平日があっただろって?

リ、リリースされたばかりのゲームやってたとかそんなんじゃありません・・・


面白いと思った人は、ぜひブックマークや評価、レビューをして頂けると嬉しいです。

筆者の執筆モチベーションにも繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

X(@KenRinYa)もやっているので、フォローもよろしくお願いします!

また感想や質問、要望などもコメントかXで受け付けていますので、ぜひぜひお送りください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ