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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第3章 家号作戦

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3-19 楽しい楽しい会議

「──っし、これで完成っとぉ!!」

1人のドワーフが歓喜の叫び声を上げ、握っていた工具を目の前のテーブルに置いた。

テーブルは壁に埋め込まれるように設置されており、支柱は可能な限りテーブル下で脚を邪魔しないよう斜めに組まれ、それが四方の壁の内2つを占めている。

片方はファンタジー世界にはあるまじきむき出しの電源コードや何かしらのケーブルが草むらのように生えており、もう片方はゴミ捨て場よろしく工具やら機材が所狭しと散乱していた。

綺麗好きな者が部屋に来ようものならば卒倒するだろうが、本番は部屋の中央に鎮座する巨大テーブルだ。

20畳ほどという広さの部屋でありながら、その大半を占めるテーブルと上に置かれた常人には理解できない機械や部品の数々は、ランドというドワーフを如実に示している。

三度の飯よりも開発が好きなランドは、ここが自室であることも忘れて研究室へと魔改造してしまったのだ。

苦し紛れに設置された質素なベッドも、上に置かれた機材に悲鳴をあげている。ここで睡眠する者がせめて有機物であれと願うかのように。


その様子を満足そうに眺めていたランドの部屋にノックの音が鳴り響き、シーラが姿を見せた。

「ランド、これから来る人間たちの住居だけど……って、あなたもうこんなに汚したの?」

自分の城を小馬鹿にされたランドは少しイラつき、ついつい口さがない言葉を発する。

「おめぇの部屋よりマシだっつぅの。なんだぁ、あのつまんねぇ生け簀みてぇな部屋は」

「失礼ね。マーメイド種族にとって綺麗な水は重要なの」

シーラの言は半分本当であり、半分嘘だ。

マーメイド種にとって綺麗な清水は大好物であるが必要不可欠ではなく、何ならシーラのように尾ひれを足に変化させられるレベルなら一般人レベルの水分量で足りる。

そんなこと長年仲間として活動していたランドが知らないはずもなく、最も言いたい部分は『つまんない』と言う部分であった。

しかしこれ以上深堀されたら弱い上に、自分から喧嘩を売ったと自覚しているシーラは、そんなこと言いに来たんじゃなくて前置きをしてから

「新しくくる人間たちの住居について会議があるから、さっさと下に降りてきて頂戴」

と言い残し、逃げるように部屋から出ていく。

「ったくよぉ……」

頭をボリボリと荒く掻きむしったランドは、コードやケーブルがむき出しになったテーブルを見て溜息を吐くと、重い足取りで部屋を出ていくのだった。


ここは魔の森の中にできた最も新しい町、オルサバーグ。

つい2か月ほど前に着工され、魔法とアイテムボックスの力を遺憾なく発揮された結果出来上がった城塞都市だ。

町をグルリと一周囲む城壁の外には水堀が巡らされており、正門の北口と裏門の東南口に水堀を渡す橋、そしてその先には馬出が作られている。

西洋の城壁に和風の馬出を作るのは変に思えるかもしれないが、最も攻城する敵が殺到する場所を守備するのは効果的で、役割的に馬出と呼ぶよりもバルバガンと呼ぶ方が正しい。

だがそこまでの知識はNRGの開発陣もオウキたちにも無かったので、類似した防衛機構の馬出の名を使っているのだ。

そんな鋼鉄の城壁と防衛機構の内側には、木材で組まれた家屋が碁盤上に所狭しと建ち並んでいる。

北にある正門から伸びる大通りを、円状に放射されていく幹線道を横目にいくつか通り過ぎると、再び巨大な城壁が姿を現す。

この城壁はオルサバーグ、ひいてはオルサバーグを治めるオルサ家の本拠地であり行政の中心地を守るものだ。

街を守る外郭と同じく、オルサ家の屋敷をを守る内郭も鋼鉄製で、その高い壁の外側には深い水堀が敷かれている。

平時であれば貯水池や住民の憩いの場として、戦時であれば侵攻を阻む強力な障害物として立ちはだかることだろう。


「ちっ、眩しいぃったらありゃしねぇぜ」

そんなオルサバーグの中心地にあるオルサ屋敷、ではなくその隣に建てられた3階建ての屋敷から出てきたランドは、今日初めて降り注がれた日光に目を薄めて悪態をつく。

なぜなら、日の光が自身の視界を遮っているのも、こうして外を出歩いて会議に出ないといけないのも、不本意だからだ。

ランドの初期構想では、オウキや自分たちが済む屋敷を行政の中心地とし、その建物を強固に守るよう城壁を鋼鉄よりも強力で魔法にも耐性を持つオリハルコンとアダマンタイトの合金、もしくは両方に適性を持つヒヒイロカネを使いたかった。

さらに金属を極細に加工した金属糸で編み込んだドームを設置し、空からの襲撃にも万全の態勢を取りたかった。

だがそんな野望も開発者が最も忌み嫌う2つの単語によって潰される。その単語とは「政治」と「予算」だ。

どれだけ実質的にオウキがトップだと言っても、オルサバーグを治めるのはオルサ家家長のエント・オルサであり、家長よりも豪華な屋敷を構えるのはよろしくない。

さらに防衛面では今手持ちの素材だけで建築可能だと主張したが、補充の目途が立っていないとの反対意見で騙されている。

他にも大通り半ばにあるオルサバーグの人込みの中心に建てたかったオウキの銅像は噴水に、門から離れて人通りが少ない南東に作りたかった工場群は夜の施設に。

どれだけ自身の意見に理が無かったとしても、自身の提案であればこのような不便にならなかったと思えば悪態の一つは吐きたくなるだろう。

だがこの物作りのエキスパートは、悪態をつくだけで終わりにはずはなく、道すがら問題をどう改善していくかを、ぶつぶつと1人呟きながら歩くのだった。




「あら、遅かったじゃないランド」

さっき見た顔が、部屋に入るなり嫌味を飛ばしてくる。

「うっせぇなぁ。だったら、あっしの部屋からここまでスライダーを付けてやろうかぁ?それだったら短けぇ足でもすぐ着くぞ」

「あら?それはいい案かもしれないわね。もし作るのなら勝手にね」

「あぁん、勝手にだって?おめぇが言ったんだから、素材くらい出しやがれってんだ」

「お二人方、喧嘩はお止め頂ければ……」

ドワーフとマーメイドの喧嘩に割って入ったのは、この街の最大の権力者であるオルサ家当主、エント・オルサその人である。

だがエントは自分でも棚ぼたで貴族当主に就いただけだと自覚しているからか、彼は自らの権力を笠に着ない。

当然変なことをすれば一瞬で飛ばされるほど実力の違う目の前の功労者を、無下に扱うことなどできなかった。

「あぁん?この魚女が……ったく分かったよ、静かにしといてやるよ」

相手がどれだけの権力者であろうが我が道を行く頑固おやじのランドだったが、視界にとある者が映ると顔をしかめて荒々しく椅子へと腰を下ろした。

ランドが見た者、それは静かに息を殺して殺気をまき散らすダークエルフのエフィーだった。


彼女は今とても機嫌が悪い。機嫌が悪いもんじゃない、とんでもなく不機嫌で今すぐでも暴れ回りたいくらい怒っている。

なぜなら敬愛してやまない者から、予定を超過するという連絡を受けたからだ。

それだけならばまだ寂しさで心が埋め尽くされていただろうが、その敬愛してやまない者の隣には恋敵がいるとなれば話が変わる。

エフィーは知っている。恋敵がアグレッシブにアタックすることを。

対して自分はいつも受動的な気質があるが、それでも意中の相手と接する時間は役割の都合上、自身の方が多かった。

だがそれは慢心だったと、今強く痛感させられている。

どうして自分は絶好のチャンスを不意にしているのに、恋敵は絶好のチャンスを手に掴んでいるかと。

すぐにでも意中の相手の隣に飛んでいきたいが、ハッキリとオルサバーグを守っていてほしいと断れた今、命令違反をしてしまえば呆れられるかもしれない。

そんな重たい感情の葛藤に悩み続ける彼女は、ここ最近恐ろしいまでに機嫌を悪くしていたのだ。


「そ、それでは本日の議題、人間種の難民についての会議を始めます」

隣から漂う殺気に気圧されながら、最高権力者のエントは周囲を見渡して宣言する。

今、会議場で顔を突き合わせている面々が揃ったからなのだが、ランドが声を上げた。

「あん?ドーシュの野郎がいねぇぞ?」

「ドーシュ様ですが……あ~その、そちらで参加されるようでして……」

エントが見た場所は窓から陽が差し込む部屋の隅だったが、すぐにそれだけで意味が分かる。

ランドは目を凝らしてみると、確かにエントの見た場所だけ魔力が一切なく、誰かがここで身を隠している証左でもあった。

「ったく、また祈ってんのかよ」

吐き捨てるようにいうランドだが、彼の想像は一つたりとも間違っていない。

まさにその場でドーシュが祈りを捧げており、彼は彼なりの気遣いで会議の邪魔にならないよう気配遮断や透明化まで使っているのだ。

もちろんエントは言った。

「そこまでやられるのでしたら、会議に参加して欲しいのですが……」

「何を言うんじゃ、お主は最も神の光を受けられる時間を日陰で過ごせというのか?そのような非道は決して許さぬぞ」

そう言って全く聞く耳を持ってくれなかったのだ。


こうして始まった会議は、まさに地獄と言ってよかった。

嫉妬の感情から殺気を周囲にまき散らし、今か今かとオウキの帰りを待ちわびるエフィー。

会議する場所にいるだけで、話し合いなどに参加せず祈り続けるドーシュ。

会議内容よりも自分の部屋をどうカスタマイズしようか悩み始めるランド。

真面目に聞いているフリをして、今日は誰の家に行くか楽しみに待つシーラ。

この4人を唯一抑えられる人間も会議に参加しているものの、ここにいるのはオウキに扮したユルクだから無言を貫くしかない。

各種族のトップにもオウキ不在を隠しているため、ただただ威厳を出せるよう組んだ手に顔を乗せて黙っておくことしかできず、迫りくる眠気と必死に戦っている。

そして真面目で裏事情を全て知っているエントは、胃に穴を開けそうになりながらも会議が円滑に進むよう四苦八苦している。

残った各種族のトップもいろんな意見を持っているものの、殺気が蔓延する会議で発言できるほど胆力は無く、静かにエントの話に賛成するのみ。

もはやオウキが決めたことを伝える場となった会議場では、まだこの地獄の現場が数回ほど残っていることを、彼らは知らなかった。

ちょっと1話が長くなりすぎたので、今回から4,000文字程度を目安に更新していきます!

でもリライトしたら1,000文字くらい増えると思いますが・・・


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