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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第3章 家号作戦

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3-15 交渉と博打は時の運

現目標:ハウス作戦

概要:敵国内の辺境に住み教鞭をとれる人材を確保するため、少数部隊で潜入・スカウトする

メンバー:オウキ、オルクス、ヘレン、エデル、イルマ

「さて、集まってくれたか」

キャンピング・ハウスのリビングで腰を落ち着かせながら、来客を出迎えた。

まず入ってきたのはゲストを呼びに行かせたイルマで、戸惑いと悩みの狭間にいるかのように浮かない顔をしている。

そして次に入ってきたのは長老テツヤだ。深くマントを被っているから見た目は怪しい人間なのだが、その中身は両腕を無くしたマキナーである。

最後に入ってきたのはイルマと同じくゲストを呼びに行ったエデル、そして彼に連行されるように来た村長であった。

連行すると言っても村長はかなりお年を召されているようで、頭は真っ白で木の杖を皺だらけの右手で握りしめている。

杖を突くたびにコンコンと空洞音を響かせているので物騒なアイテムではなく、本当にごくごく一般の人間と言っていいだろう。

「まぁ座ってくれ。話は長いんでね」

警戒心と疑問、そして戸惑いの中、俺はハウス作戦を成功へと導く一手を放つのだ。


「さて、忙しい中時間を取ってもらってすまない。だがその貴重な時間に相応しい話をさせてもらうと約束しよう」

交渉事はともかく強気で。じゃないとテツヤとの最初の交渉のように、どうしても素の事無かれ主義の対応になってしまうからな。

知り合いだけならば効かないが俺を詳しく知らないならば、しかもそれが交渉事で最も狙うべき人物がそうならばこれほど有効な手はない。

「まずは村長さん、いやここではバウナーさんとお呼びさせてもらおうかな?」

未だに戸惑いの色を隠せないまま対面に座る村長の名を呼ぶ。

「は、はい。お好きな方で結構ですじゃ」

「それではバウナーさん、彼とは面識がおありで?」

顎をしゃくってバウナーの横に座るフード男に注意を送る。

「もちろんですじゃ。彼はワシらの村の長老じゃからの」

「ほぅ、知ってる、と。名前や年齢も?」

ゾワリと機械人間から冷ややかな空気が漂ってくる。

名前はともかくとして、年齢は明らかにプレイヤーとNPCでは大きく異なる変えようのない値だ。

人間の中から宇宙人を探すような人狼ゲームがもしあった時、年齢が千歳とか答える奴がすぐに宇宙人と分かるがそのようなものだ。

ある意味で村人には極力自身の身の丈を隠し続けてきたテツヤの目の前で、村人にクリティカルな質問をするのだから予想はしていた。

「え、えぇそれはもちろん。お名前はテツヤ様で、お年は……」

そこまで言った後、横目でテツヤの様子を伺っている辺り、知っていると見て間違いないだろう。


「いや、年齢はもう答えなくていい。知っているようだからな」

「な、何をですかな?テツヤ様は長く我が村にいて下さっている長老ですから、そこからは計算すれば……」

「もういい。もういいんだバウナー。彼は知ってる」

俺の言葉で明らかに焦りだしたバウナーを、テツヤが横から諭すように止めた。

バウナーは弛んであまり開かなかった目を大きく広げ、そして再び閉じる。

「左様でしたか……」

「オウキさん。見ての通りバウナーには俺が人間じゃないと伝えてある」

聞けば代々村長にだけはテツヤは自らの正体をバラしていたらしい。

いくら人間社会から隔絶した生活を送っていたとしても、村に属する限り何かしらの交流はある。

その交流を可能な限り最小限にしつつも、恩人たちの子孫が住まう村を守るため、村長にだけ正体を晒してきたわけだ。

事実上の世襲となってる村長を、自分が一から教えを説いた者に就いてもらって隠蔽し続けてもらう。

この隠匿性の高さや教育のおかげで、長い時間テツヤはこの村に潜めていたと言っていいだろう。

「村長知ってたんだ……!」

「確かに食料を渡す時に……っていらないのか!」

俺の横では納得の声を上げている者が2名いたが、重要ではないので無視する。


「それではバウナーさんが大丈夫だと確認できたところで、本題に入らせてもらおうか」

そう言って一呼吸入れてから、俺はテツヤを見て伝えた。

「テツヤ、改めてお前をスカウトしたい」

昨日全く取り合ってもらえなかった提案を、再び俺は繰り返す。

一瞬だけテツヤの体が動いたが、すぐに停止して答える。

「昨日言ったはずだ。俺はその話を──」

「ここの村人全員と一緒に、それでもか?」

テツヤの言葉に交換条件を被せた。それもただの交換条件ではない、彼が最も大切にして止まない者を交渉材料にしたのだ。

突飛な提案をされたからか、それとも大切な物を交渉材料にされたからか、テツヤの体は不自然なほどに揺れているが、賛成も否定もできないのは悩んでいる証拠であろう。

そしてそんなテツヤよりも体を大きく揺れ動かしたのは、知らぬ間に交渉材料にされていた本人であった。

「私たちも?それは一体どのような……?」

まだ気づいていないが、彼らの運命をテツヤの言葉一つで決定づけられる非常に重要なものである。



戸惑バウナーと金属の瞼を閉じ熟考するテツヤ。

もし感情のままに拒否されたら、ハウス作戦は完全に失敗になるが、針の穴くらいのチャンスをこの交渉で大きく広げていかなくてはならない。

そのためにも村のまとめ役である村長も、この場に呼んだのだ。

「テツヤが考えている間に、バウナーさん、改めて自己紹介しよう。俺は魔の森の中にあるオルサバーグのトップ……じゃなくて、あれだ。そう……軍事顧問付秘書だ!」

格好よく決めたかったのに、人生とは上手くいかないものだ。

それでも思い出せたのは「軍事顧問付秘書です、軍事顧問付秘書ですよぉ!」と隣で教えてくれたエデルのおかげである。

格好悪いところを見せて幻滅されたか少し不安であったが、ありがたいことか分からないがバウナーの注目は別にところにあった。

「魔の森……魔の森ですと……?」

魔の森、ジリト王国民であれば一度は遠征で行かされる民からすればろくでもない場所である。

「えぇ魔の森です。行ったことはおありで?」

「……二度行ったことありますな。一度目は海が見える綺麗な場所でしたが、二度目は本当に酷かった。おかげ様で脚が使い物にならなくなりましたよ」

右脚を叩いて笑うが、その顔はどこか物寂しそうなものであった。


だがふと冷静になったのだろう、バウナーは思い出したように顔をあげた。

「少しお待ちを。そのオルサバーグという町を聞いたことありませんな。奥地にできた新しい町でしょうかな?」

まだ短期間とはいえ、この世界の価値観ではバウナーの予想はそう突飛なものではないはずだ。

魔の森に建てられた町の人が、長老と名高いテツヤをスカウトしにくる。現実味はあるどころか、情報伝達速度が現代と比べて著しく低いこの世界では、知らない間に新しい町ができるなど日常茶飯事だろう。

だが現実は小説より奇なりとも言う。まぁこの世界が果たして現実かどうかという疑問もあるし、何よりゲームの中だから使いどころ違う気もするが細かいことは気にしない。

「確かにオルサバーグは魔の森の奥地にできた町だろうな」

「なるほどなるほど。それならば人手不足でしょうなぁ」

「そうだな。人手不足で困り果ててる時、エデルとイルマにテツヤを推挙してもらったんだ」

「確かにこの子らは特にテツヤ様に懐いておったからのぉ。ですがオウキ殿、テツヤ様は人前と避けて生活されておられるのじゃ。そこにワシたちの長老をお送りするのは……」

「そうだろうな。人前では、な」

確かにジリト王国ではテツヤは人前に出たら、すぐにプレイヤー狩りとやらの刺客が送り込まれるだろう。特に両腕を失っている今は絶好の機会とも言える。

だがもしそれが人前に出ても問題がないのなら?もしプレイヤー狩りなんて行われておらず、人じゃなくてもいいのなら?

それを証明すべく、ずっと後ろに控えていた側近に声をかけた。

「オルクス、変身を解け。あぁ体重はそのままでな」




効果は劇的であった。

変形というより進化に近いオルクスの変わりように、バウナーは目を剥くほど開き、口は間抜けのように開けたまま固まっている。

隣のテツヤもある程度オルクスが普通の人間ではないと察していただろうが、それでも冷たい鉄の隙間に灯る光は大きくなる。

「と、まぁこれが俺たちだ。本当はもっといるんだが連れてこられないからな。ちなみに、今も上で監視の任に就いている彼女は龍人族だ」

「龍、龍っ!?」

これ以上驚かせるとポックリとバウナーが逝ってしまいそうだし、何よりまだ仲間ではない彼らにはこれ以上の情報開示は慎む。

「さて、それでテツヤ。そろそろ答えは出たか?」

最初に村人と共にスカウトすると言ってから黙りこくっていたテツヤに、俺は再び問いかけた。

現状、状況が読み込めず固まってしまったバウナーにはこれ以上の説明は望めないが、それでも村人全員を連れて行くとなれば村長である彼の協力は必須だ。

だがそれもメインターゲットであるテツヤの説得無くして実現はしないので、再びメインを照準に捕らえる。


「……気に食わんな」

鈍く低い声が響き渡る。

「それでも飲んでもらわないと困るな」

反対だと言わないようけん制しつつも、テツヤの立場ならば怒って当然なのだ。

そもそもテツヤはリスクを負ってまで村人を自発的に守護するくらい、村人のことを大切にしている。

そんな村人にわざわざ危険な魔の森に入るだけでは飽きたらず、その森の奥にある町への移住を持ち掛けられたのだ。

現代ならば引っ越し感覚で隣町どころか県外、準備はかなり必要だが外国でも暮らせるが、中世時代の生活が色濃く残るこの世界ではそんな気軽にはできない。

食い扶持となる畑はいつ使いものになるのか、日用品などを卸してくれる商人の存在等、同じ種族だとしてもこれだけの問題があるのに、移住先が魔物が蔓延る上に異人種だらけ。

どれだけ愚か者であっても、おいそれと移住に賛成できる者などいないだろう。

だからこそテツヤは考慮に値しないと唾棄すべき提案なのだが、先ほどの出来事が全てを覆した。そう、村人全員の徴用だ。


村人を全員徴用するなんて、ただの暴挙でしかない。

畑や家畜を世話する者を取り立てれば飢饉の芽を作り、物を作っている物を取り立てれば商業の基礎にひびが入る。

分かりやすい例を出せば第二次世界大戦中の日本が総動員であり、国民を全員徴兵した結果、商業も農業も崩壊した。

食料は配給制となったのは誰もが知るところだが、食料を戦地へと送る以外にも第一次産業従事者の激減、肥料や農具の作り手も減ったことにより、生産量が著しく低下したものも原因なのだ。

それくらい国家にとって劇物である総動員を、つまるところを村人を全員徴用をしようというのだ。

これがまだ徴用中も徴用後も生活の保障がされているのであれば気が楽だっただろうが、あの女騎士の様子からは保障の欠片も感じられない。

備蓄か裕福であるのならば飢えを凌げるが、そんなものとは縁のない寒村のテツヤ村では徴用先で亡くなるか徴用後に飢え死にするかの選択肢しか残されていない。

いやもう1つだけ選択肢がある。プレイヤーを見つけた者に渡される賞金で耐え忍んでもらう、限りなく成功率の低い自己犠牲の方法が。


「……本当に村人全員なんだな?」

「もちろんだ」

「途中で放置するなどは?」

「どうしてお前が離反しそうなことをせねばならん」

簡単に受け答えをすると、再びテツヤは押し黙り

「……少しだけ身内で話し合いたい」

長考の末、搾りだされた願いを聞き入れた俺は、許可しつつも背中に汗を流していた。

正直かなり勝算の高い博打だ思っている。

俺ならば1人で逃げる選択を取るだろうし、大切な者がいるのならばその者を連れて行けばいい。

だがこの考えは俺独特なものだと理解はしている。なぜならこの世界に来てから仲間が出来た今、そのような選択肢は存在しないのだから。

だから俺みたいなタイプならば大切な人を交渉材料に置いても意味を成さないが、仲間や身内を大切にするものならばそれは代えようがないくらい重くなる。

そしてこれまでのテツヤを見るに、明らかに人を大切にする俺とは正反対の人間だ。

間違いなく村人を最優先の結果を求めてくるだろうが、もしかすると俺が考え付かない選択肢もあるかもしれない。

あらゆる準備と長期間の旅程の末の作戦が成功するか失敗するか、急遽(こし)えた大博打に懸かっているのだから冷や汗も流れるというものだ。




「オウキさん、バウナーと話し合った」

おおよそ10分ほどの時間が経った後、テツヤは鉄で固まった無表情のまま言う。

「とりあえずバウナーは村人たちに説得のため離席してもらう。問題ないな?」

バウナーも頷いており、俺も出発直前になって「聞いてない!」と騒がれたくないので許可を出す。

杖を付いて急いで出て行こうとしたバウナーをイルマに任せて見送った。

「それで……俺の提案を受けいれた、その認識でいいんだな?」

ゆっくりとアイテムボックスから出した茶を口に含みながら言うが、茶の水面が揺れており味もそこまで分かっていない。

それよりも博打に勝ったという安心感の方が強かったからだ。

だがその安心感もすぐに否定される。

「まだ確定はしていない。オウキさんがその提案を実現できるくらい、私たちに力を貸してくれるか。それを見極めてからだ」

「はぁ?」

脳が必死に言語の理解を拒むが、無視し続けていい結果になるわけでもないので聞き返す。

「それは一体どういう意味だ?」

「スカウトの条件が村人全員と一緒に、と言ったな?ちょうど少し前、村の若者が1人徴兵されていてだな、その子も一緒にだ」

「すでに徴兵されてる、ねぇ……は?いや無理だろ」

「なんだ早速約束を反故にするのか?」

いやいやいやいや、どう考えても既に徴兵された若者1人を連れ戻すなんて、絶対に面倒なことになる。

だが面倒だと断れば、今のように約束を反故にしたと見做され、作戦は失敗に……。

そのため俺に取れる選択肢は……

「くっ……分かった、分かったよ!連れ戻してきてやるよ!!」

そう言うしかできなかった。


「そうかそうか。頼んだぞ」

相も変わらず無表情だが、声が弾んでいるのが分かって余計に腹ただしい。

こっちは1日でも早く帰って迎撃準備を整えたいってのに……。

「そう言えば聞いていなかったが、どうやって村人を移住させる気だ?」

懐疑的な目を向けられながら聞かれた俺は、腹ただしさと情報を隠しても意味はないと思い、懐からとあるアイテムを取り出した。

俺が初めてキセトの町に行った時にも使った【上級・ミニポーター】の劣化版である、【ミニポーター】である。

この【ミニポーター】ならば設置後一週間で自壊するので、中々に便利なアイテムだ。

そんな【ミニポーター】を使って、少し面倒ではあるが俺が1人ずつ一緒にオルサバーグの元村長宅地下にある【上級・ミニポーター】にテレポートして、そして再びこのテツヤ村に設置した【ミニポーター】にテレポートする。

これを村人の数だけこなせば、移動なんて一瞬で終わるからこその作戦なのだ。


だが【ミニポーター】を見たテツヤの顔が、無表情なはずなのになぜか青くなっているような気がする。

「まさかとは思うが、それで帰るつもりか?」

「ん?そう思って出したんだが……」

反対に使わないのに出すのはおかしいだろと思ったが、どうもテツヤの反応を見る限り違うらしい。

「オウキさん、残念ながらそれは使えないよ」

「はっ!?なんでだよ!?」

壊れてないだろうし、もし仮に壊れてたとしても大量にあるのだからどれかが動くはずだ!

俺は殴りつける勢いで反論したが、テツヤは冷静に諭すように教えてくれた。

「戦争中の国の間ではテレポートできない、当然の事だろう?」

……え?

「初心者の頃経験した覚えはないのか?テレポートが使えないって状況」

……それは多分国に所属しないと分からないことでは……?

「え?本当に経験したことないの?」

……。

「オウキさん、君は一体どうやってゲームしてたんだい!?」

国同士の戦いというメインのゲームシステムを一切触らず、ただひたすらに仲間とダンジョンに潜っていましたとは言えず、今日一番の非難の籠った目を向けられた俺は、何も言えずただ黙って俯くしかできなかった。


書き足し書き足ししてたら、1千文字くらい増えてこの文字数に。

1話って短い方がいいのか長い方がいいのか、未だに分からず執筆をしています。


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筆者の執筆モチベーションにも繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

X(@KenRinYa)もやっているので、フォローもよろしくお願いします!

また感想や質問、要望などもコメントかXで受け付けていますので、ぜひぜひお送りください!

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