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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第3章 家号作戦

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3-3 人材確保の第一歩

大目標:安寧の地の確保、元の世界に戻る

中目標:安寧を邪魔する敵の撃破、研究人材の確保

小目標:オルサバーグの建設、人材確保

現在の目標:物・金・人の充足

「……オウキ殿、これは?」

眉間に皺を寄せ怪訝そうな表情でこちらを見るのは元エルフ村の村長であり、手には先ほど俺が渡した紙がある。

「そこに書かれている通り。それ以上もそれ以下もない」

俺が答えると、より一層眉間の皺を深くさせるが、元エルフ村の村長は追及をしてこない。

なぜなら内容はとても簡単で、下記の一文だけであったから。

『他の者よりも際立った何かがあれば即刻名乗り出ること、他のことについては一切考慮しない』

能力でも体力でも、容姿や技術でもない()()

その際立った()()を持つ者を俺と仲間たちが見極め、有用であれば登用するという人材不足に対する苦肉の策であった。


この能力がある者が誰であっても登用する方法は、かの有名な三国志の曹操が出した求賢令を真似たものだ。

あの赤壁の戦いで大敗北を喫した曹操は、国力の回復に努める中で人材不足に悩んだ時に発令された命令である。

その時の曹操は優秀な軍師を亡くしており、その軍師がいればこんな事態になっていなかったという言葉を残しているくらい人材というのは重要だ。

現代の価値観に染まった者の価値観ならば当然だと唾棄しがちだが、曹操の時代はどうしても縁故やコネが物を言う時代であり、最も有名な諸葛亮が劉備と知り合ったのも互いの知り合いを通してのこと。

もちろん求賢令だけで人材不足を解決できたわけもなく、九品官人法等の登用法など施行したのだが、今は主題から逸れるため横に置いておこう。

登用方法は縁故やコネに依るのは文化が未発達なこの世界も同じで、どうしても優秀な人材を正道で見つけようとすれば人脈に頼らざるを得ない。

だが異世界に突然放り出された俺たちと難民、ただの田舎の村民、そして敵国だった兵士に人脈などあるはずもない。

だからこそ人材を探す方法として求賢令に頼るしかなかったという事情がある。


ただ苦肉の策と言ったのにも理由があり、この求賢令は失敗するという見方が俺とエフィーで共有されているからだ。

何百万の人口を抱えた曹操ですら求賢令に失敗して何回か発令し直しているのだ、たかだ100人程度に出しても英雄級の人材など出る確率が無いに等しいし、そもそもそんな人材ならばとっくに俺の目についているはず。

なので今回の求賢令は、あくまで一時的でもいいから中間管理職的な人材を登用し、町としての体面を保とうとしているに過ぎない。

俺の真意を知っているからこそ元エルフ村の村長も同意するのだが、彼が皺を寄せる理由は他にあった。

「承認を頼みますよ、町長」

そう、このオルサバーグの長として判断を下さなければならなかったからだ。


オルサバーグ、正式名称オルサバーグの町は、元エルフの村を魔改造のごとく発展させて城塞都市(予定)の町だ。

元エルフの村を制圧したのも、城塞都市へと発展させたのも、そして近隣の町であるキセトの町と友誼を結んだのも全て俺、オウキだ。

普通の人ならば俺を現実を知らないお調子者か、ホラ吹きの大馬鹿者として見下されるだろうが、それが変えようがない事実であるから、周囲からの反発はない。

だがそれはあくまで”周囲から”に限った話であり、それより外の反発はどうしてもあるだろう。

全く知らない奴がいきなり大きな町の長になった、ましてやそれが憎悪の対象となっている人間では無用な軋轢を生むのは想像に難くない。

これから新しく独り立ちして外との関係を作らなければならない時に、その反発はどう見てもデメリットだ。

そのデメリットを引き受けるくらいならばと、この村の元村長であったエルフ村の村長に町長役を押し付け……失礼、任せるになったわけだ。

仲間からも俺が誰かの元に付くのを嫌がったが、あくまで俺たちの目的は元の世界に帰ること。

いずれこの世界から去る人間が町のトップになったところで、元の世界に戻る時の精神的な重しなると説得し理解してもらっている。

だから求賢令と同じ時期に出されたもう1つの重要な令は、今の俺には必要ないと机の奥底に押しやった。




何とか着実に町という1つの組織の土台造りをしていたある日、俺の元に珍しい者が2人顔を並べていた。

その珍しい者とは元ジリト王国兵士であり、今のオルサバーグで3人しかいない人間種のうちの2人でエデルとイルマだった。

「人材について、いい人を知っています」

俺はそのエデルの言葉を聞いて、一応この町のトップになるエルフ村の村長改めエント・オルサに視線を向ける。

ちなみにエルフ村の村長に元々苗字、家名など持っておらず、トップに就かせるまで村長と呼ばれすぎて名前すら忘れていた。

無理やり名前を覚えさせ、オルサバーグにちなんで家名を与えたため、元エルフ村の村長の名前がエント・オルサになったというわけだ。

そのエントが無言で俺に問題ないと頷いてくれるので話を続ける。


「良い人とは誰でどんな才があるんだ?」

「はい。それは私たちが元々住んでいた村にいる長老と呼ばれる人です。才能は人になにかを教えるという面で優れているかと」

エデルの言葉に俺は記憶の片隅に置いていた彼とその隣にいるイルマの言葉を思い出す。

そう言えば幾度となく彼らが長老なる人物から簡単な知識を学んだと聞いており、その才能は目の前の人物が生き証人だ。

今は簡単な部隊行動を教えており、将来的には大軍を纏め上げる軍団長に任命しようとしている彼らの言を信じて簡単な問いを続ける。

「ふむ……名前と性別、年齢は?」

「名前は……長老としか聞いていません。性別は声の高さ的に男性で、年齢は多分長老と言っているから老齢かと思います」

「”思います”?村に居たなら顔を合わせたことくらいあるだろ?」

「いえ、それが残念ながら私もイルマも長老の顔を直接見たことは……。いつもカーテンやドア越しで話していたので」

エデルとイルマの両名が申し訳なさそうに顔を伏せるが、俺からすればそのような人材を知れただけで重畳だ。


エデルとイルマが推薦してきた人物”長老”は、今まさに喉から手が出るほど欲しい人材と言える。

優秀な人材を得る方法は大きく2つ。

1つは他の場所で頭角を現している者を引っこ抜いてくる、簡単に言えばヘッドハンティングだ。

確実な能力を最短で得られるメリットがあるものの、その分のデメリットはかなり大きい。

ヘッドハンティングされた者は条件によって所属を変える簡単に傾向が強く、こと村や町といった巨大化して多くの秘密を抱える組織にとっては、かなりの懸念事項になるだろう。

そのためもう1つの人材確保を叶える方法の、育成に舵を切るべきだ。

デメリットとして育てるのに時間がかかる上に、育ててみたからといって求める人材に出来上がるとは限らない。

だからこそ僅かでも優秀な人材に育つ卵を手に入れるべく、ありとあらゆる企業が様々な手法を取っているというわけだ。

話を戻して。この人材を育成する方法を村や町などの巨大組織でするメリットは、もし適正が無かったとしても別の部署に回せる他、村や町に対する情念を覚えてくれる。

いわば”愛国心”とも言える感情を植え付けられれば、待遇だけが所属を決める条件にはならない。

もちろんその”愛国心”に甘え待遇を改善しないとどうなるのか、現実に目を向ければ痛いほど理解できるだろう。


そんなわけで求賢令で深刻な人材不足を最低レベルまで改善させつつ、人材育成で鍛え上げた人物を最終的に入れる。

例えるならば人手不足の部署を派遣で時間を稼いでもらっている間、じっくりと新入社員に研修を施し、その人手不足問題を解決する。

この世界に派遣の概念はないし、何よりも派遣として雇う人材も村内の人物であるため、じっくりと鍛え上げた人材が補充でき次第、この者らにも教育を施して謙遜ないレベルに上げるつもりだ。

今あげた話は最高にうまくいった時の話であり、現状1番の問題は新人に教育を施せる人物がいないこと。

エデルとイルマ、あとユルクにエフィーを家庭教師として付けているが、彼女の人見知りの性格と司令官であって指導者ではないから、かなり不向きな仕事を押し付けている。

例えるならば超高性能なパソコンを暖房器具にするようなもので、できなくもないだろうがもっと他に使った方が有用、そんなイメージだろうか。


だからこそエデルとイルマが提案してきた”長老”なる人物の提案は、諸手を上げて歓迎したい、いや意地でも歓迎すべきだ。

「最終的な判断は実際に会ってからだが、今貰った情報だけで判断するに間違いなく登用したい人材だな」

最終的な判断とは言うのは、俺と会話している人間が極めて稀な成功例であった場合や、亜人種と共同生活に馴染めない場合などを考慮してのこと。

いくら人材を求めていると言っても、顔も能力も知らない相手に何かしらの重役を放り投げるような無責任ではない。

だがあくまでこれまでの情報から推察した予想が正しければ、最終的な判断を下すまでもなく問題ない人物であろう。

教育という概念が希少な世界でただの村人ごときに基礎的な教育を施し、あまつさえそのような偉業を周囲に誇るどころか顔すらも隠している。

俺たちみたいに他者とのコミュニケーションに難ありならば納得もできようが、教えるという一種の高度なコミュニケーションを取れている時点でその線はない。

そうなると周囲に顔すら隠す理由は、その者が周囲と全く異なるから、そして自身が異質だと自覚しているからに他ならない。

ここで言う異質とは、価値観や思考、さらに言えば種族すらも含む。

そう、まるで今の俺が周囲と全く異なる価値観と知能、種族であるにも関わらず過ごしているかのように。

人材確保という面でも、同族意識とも言うべき感情面でも、俺はエント・オルサに”長老”スカウト作戦を承認さるべく行動へと移すのだった。




「さて、エデルたちが慕う”長老”なる人物のスカウト作戦。まずはこの作戦の是非を聞きたい」

再び指令室で開かれた会議で、俺は単刀直入に切り出した。

顔を並べる面子はいつもより少なく、直属の仲間と人間3人、そして町長であるエント・オルサのみ。各種族のトップは現場の指揮やエント・オルサから伝えて、指示系統の慣れに活用する。

併せてとエント・オルサが町長だという認識を強める狙いもあるのだが、これはゆっくりと馴染ませていけばいいだろう。

「主ー?その作戦、また分かれて行動するのかー?」

試案で意識を持っていかれていた俺を戻したのは、頭を傾げるヘレンの声だった。

「そうなるな。流石にオルサバーグを完全無防備にはできん。だから作戦を実行するならば、俺たちを2つのチームに分ける」

「え~!?アタシは主と一緒がいいー!」

「それは安心しろエフィー。お前の偵察と隠密能力は敵地での行動には必須。それに俺も説得に加わるから間違いなく一緒になる」

俺の言葉に脚と尻尾をパタパタと振りながら喜ぶが、並んだ顔の多くが難色を示していた。


「オウキ殿。是非は置いとくとしても、本当に敵地へと赴かれるおつもりですか?」

新米町長が心配そうに、多くの者の声を代弁する。

「本気だ。敵地への潜入はかなり困難が予想される。必然的に多くの決断が必要になるだろうから、俺も行くのだ妥当だ。そしてそのリスクを背負うだけの価値もあると考えている」

新米町長の立場から考えれば、この場にいる者を筆頭に戦闘力の高い者たちの重し役となっている俺を危険な場所へと送るのは言語道断だと言える。

この町の戦力が、いつ暴力へと変わるのか俺の意思1つで変わるのだから当然だろう。

「分かりました。ですが連れ帰ってくる者と周囲の意思に関しては、私の一存ではどうもできませんぞ」

「もちろん。両者とも俺が折衝役になる予定だ。安心してくれ」

新米町長から安堵の深呼吸が漏れる。

彼が言いたいことは簡単で、『連れ帰ってくる人間と周囲の魔族たちの仲介は自分にはできませんよ』とう言っているのだ。

エデルたちという前例はあるものの、それでも人間への警戒心は以前とある彼らの中に、放り投げるなど無責任の極み。

前例のように俺か俺の仲間が、亜人種たちとの橋渡し役という骨を折るのは、作戦提案者として当然だ。


「オウキ様。私はそこまでの価値を感じませんので反対です」

口を結んだエルフの代わりに、ハッキリと否定の言葉を上げたのはもう1人のエルフであった。

「反対の理由は主に2つ。1つは”長老”なる人物との接触が難しいこと。2つは”スカウト”作戦であること。

まず長老なる人物との接触をどうするとお考えでしょうか?私たちはそもそもジリト王国の地理や長老なる人物について一切知らないのですよ?

それならばエデルたちを連れて行く方法もありますが、敵陣の真ん中を足手纏いを連れて動くだけの余裕はありません」

身内が多く明確に否定するため、口数を多くしたエフィーが理路整然と理由を述べていく。

「もし作戦を実施するならば、その時はエデルたちを連れて行く予定だ。場所も人相もエデルたちしか知らないからな。それにエデルたちの能力が足りていなくても、基本的には隠密行動になるからそこまで問題ないだろう」

本人がいる前でハッキリと足手纏いと言いきるエフィーに苦笑いを交えつつ、俺も反論を交わした。


「さらに2つ目の”スカウト”作戦であるところに私は反対です。

その人材を取り入れたいならば拉致するのが最も手軽かつ確実でしょう。そしてこの作戦ならば、ヘレンにエデルかイルマのどちらかを担いでもらって拉致しに行く手があります」

「そ、それは……」

「なんで、アタシがクソエルフの言うこと聞かなきゃならないんだ?」

拉致してこいと倫理観皆無な作戦を提唱し始めたエフィーに、イルマは顔を引きつらせ否定し、言いように扱われるヘレンからは笑顔が消える。

「全員落ち着け。エフィー、確かに拉致してくるのが最も確実で安全なのは分かる。だが拉致してきたところで、本当に俺たちのためにしっかりと働いてくれると思うか?ちゃんと協力してくれると思うか?無駄な禍根を作って反乱の種を蒔くのなら、そもそもやらない方がマシだ」

例えるならば自らの脚で楽しいデスゲームに参加するのと、突然拉致されてデスゲームに参加させられるのとでは、そのデスゲームがドッキリかどうかに関わらずデスゲーム主催者に向くヘイトの量は雲泥の差となる。

「それならより反対です。エデルたちを見ている限り、長老は村人から大変尊敬されている様子。そのような人物を説得して連れて帰るのは、リスクとコストがかかりすぎる気がします」

「コストとリスクだけ見たらそうかもな。けどさっきも言ったが、俺はこれらを負うだけの価値があると思っている」

それはどれだけ近しい仲間であっても、プレイヤーとNPCでは理解し合えない感覚だからこその価値であろう。


最終的に長老スカウト作戦は、無事に可決。反対は護衛の面から渋ったオルクスと、先ほどハッキリと反対を表明していたエフィーだけだった。

詳細な作戦内容は近々決めるが、間違いなく重要人物としてエデルとイルマの名が連なる。

長老の住む場所までの案内から仲介、そして説得に至るまで彼らに頼った作戦であるのは違いない。

少しばかり訓練をハードなものにして、初めたてのプレイヤーぐらいまでレベルを上げなければと真剣に考えるのであった。

エルフ村の村長、ただのサブキャラ予定だったんですが、あまりにも色んな設定を盛り込んでいくうちに重要なキャラへ。

これまで名前はを出していなかったのではなく、決めていなかったのは秘密です。


面白いと思った人は、ぜひブックマークや評価、レビューをして頂けると嬉しいです。

筆者の執筆モチベーションにも繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

X(@KenRinYa)もやっているので、フォローもよろしくお願いします!

また感想や質問、要望などもコメントかXで受け付けていますので、ぜひぜひお送りください!

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