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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第3章 家号作戦

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3-2 物・金・人の全て

大目標:安寧の地の確保、元の世界に戻る

中目標:安寧を邪魔する敵の撃破、研究人材の確保

小目標:オルサバーグの建設、人材確保

現在の目標:物・金・人の充足

キセトの町防衛戦から数週間、俺たちは何とも言えない日々を送っていた。

「いいか、組織っていうのは人間、あぁ別に人間種のことじゃない、生き物って意味だ。組織ってのは生き物に全く同じで、それぞれが重要な役割を持っているんだ」

周囲で膝を突き合わせる面子を見渡しても全員が首を傾げているが、唯一エフィーだけは遠い目をして理解してくれるのが俺の心のオアシスだ。

「まず1番分かりやすいのが頭。頭で色んな決断を下して、体全体に命令を下していかなくちゃならない。これは誰でも分かるだろ?」

ただ分からない者のためにも、俺は懇切丁寧に説明を始めた。


「次に足。下された命令に沿って足を動かし、体を望む場所へと運んでいかなきゃならない。組織で言うなら移動手段みたいなもんだ」

ここでやっと分かったのが、シーラとエルフの村長。よしよし、お前達も十分優秀だな。

「次に両手。だけどこっちは分かりやすくするために左右で分けようか。右手は迫りくる脅威から体を、組織を守るために行動するんだ」

右手の説明をすると、自分たちのことだと自覚があるのかさっきまで静かだった奴らが途端に盛り上がる。

「次に左手。時には体にとって有益なものを作り上げたり右手の援護をしたりと、何かと器用さが求められる手だ。そして最後は胴体、言うまでもないが生きるために必要な臓器をたくさん詰め込まれている」

ここは自分たちとは関係ないなと静かになるのは偉いかもしれないが、俺の言いたいことを理解しろよ!!

「だからな、お前らみたいに右手ばっかりの組織は駄目だってことだよ馬鹿野郎がよぉ!!」

どうして組織の()()()を説明しているのかというと、物・金・人の問題にぶつかるどころから、ぶつかって何百メートルとチェイスをしたところから話が始まる。




「よし、じゃあ第……何回目だ?ま、いい。城壁内建造物の会議を始めるぞ」

元エルフ村村長宅を魔改造した2階にある指令室で、俺と仲間たち、各種族のトップと人間3人、後はスーラーやエンメルを入れた面々と顔を突き合わせる。

オルサバーグの周囲を囲む城壁部分が建設中の今、可能な限り城壁内の建物について意見を出し合って住みやすくしていかねばならない。

そのために何回も何回も暇な時間があればこうやって膝を突き合わせる会議を開いているわけだが、各種族のトップからは

「エルフ族は特にありません」

「鬼人族もだ」

「ハーフゴブリン種もです」

「ハ、ハーフリングも!」

と定例的な言葉しか出てきていないのだ。

別に俺が何も意見を言うなと脅しているわけではない。ただ必要最小限の村生活が長すぎたから、何が欲しいと聞かれても出てこないだけ。

例えるならば日本の一般人に未来へとワープさせてから、何がしたいか言ってみろと聞いてるようなもの。

出るわけないのは当然だがもし何か思いついた時のために要望を聞く機会を頻繁に設けつつも、これから暮らす街に何を建てるのか共有するために出席してもらっているわけだ。

各種族のトップもそれを理解しているからこそ、自分たちにとって何の益にも見えない会議にわざわざ足を運んでくれている、その殊勝な態度に感動すら覚え、願わくばこの馬鹿どもにもその態度を見習ってほしい。


俺はそう思いながら振り向いたのは、今日も今日とて会議に出席するとは到底思えない態度の仲間たち。

「……で、お前らの意見は?」

何十回と繰り返され嫌気すら出てくる質問を投げかけると、今回も1番に回答したのはシーラであった。

「はい!やっぱりまずは娼館を建てるべきだと思いますわ!前回問題だった従業員は、キセトの町で募集すればよろしいかと!」

性の忠実な僕であるマーメイドが自信満々に提案してくるのだが、俺の答えは当然決まっている。

「却下。キセトの町からの引き抜きはサミュス殿が許さないし、何より何度も言っているがもっと一部しか使わん建物はいらない」

キセトの町周辺を治める領主サミュス・カストルムの名前を出して諫めるが、シーラは止まらない。

「娼館は全員が使いますよ!!ねぇみなさん!」

この場に座る各種族のトップを見渡しているが、誰も彼も「こっちに話を振らないで欲しい」とばかりに俺を見ており決してシーラの方を見ない。

目が合った者の末路は、顔を真っ赤にしながら縮こまっている人間のユルクみたく、娼館の良さを口に出すまで自身の性体験を根掘り葉掘り聞かれる。

幸いユルクがまだ汚れを知らないチェリーボーイだったから周囲にまで問題は広がらなかったものの、自分の性癖まで開示させられていた姿はあまりにも哀れだ。


「娼館は不要で今回も一致だ。次は?」

不満顔のシーラを視界から外すと、今度は目を覆っていたゴーグルを額に上げながらドワーフが叫んだ。

「旦那ぁ!それだったら歯車とかナットとかの部品工場を作ってくれよ。そいつだったらいいだろぉ?」

物作りのプロフェッショナルであるドワーフの中でも、さらに腕利きであるランドならば当然の要望かもしれない。

今度魔電を使った施設などを作るにあたって、ランドの求める部品はいくらあっても足りないくらい必要になるだろう。

この案は前回の武器演習場などという城壁内の敷地を全て使うくらい馬鹿でかいものほどいくらかマシだ。

だが俺の頭を縦に振らせることはできない。

「残念ながら却下だ。必要になるとは言っても現状、その工場を稼働させるだけの人手と素材が足りない今、作ってもただの箱だ」

元エルフ村、現オルサバーグの周辺から採れるものは、かなり南へ行ったところにある石と粘土くらいで、他に特産らしい特産はない。

強いて言えば周囲に腐る程ある木材が特産かもしれないが、現在唯一の売り先であるキセトの町周辺も森なのでただの材料である。

ランドはなおも作ってほしそうな視線を向けてくるが、変なことを言えば「お前の手持ち素材でやれ」と言われることは百も承知。

小賢しいかドワーフは、それ以上の押し込みは諦め静かに椅子に尻を乗せた。


「オウキ殿!やはりここは皆の気持ちを団結させるためにも、大神殿が最も適してる言えようぞ!!そこで寄付金を募れば、金銭問題も解決できましょうぞ!」

木でカサカサの頭を振り上げて何回も同じ提案をしてくるアホ2が、鼻息を荒くしながら聞いてくる。ちなみにアホ1はシーラである。

シーラと同じく棄却された理由を改善してくるあたり本当に俺の仲間には小賢しい奴しかいないと眉を顰めたくなるが、それでも提案されたからには検討しなくてはならない。

「ドーシュ、何度も言っているが大神殿を建てる分には問題ない。寄付金を集めるのもいいだろう。だがどうやってその寄付金を出す人を集めるか、さらに言えば寄付金を出せるだけ人に貨幣文化を教えるかが問題なんだ」

元々この村に貨幣文化はなく物々交換をしており、それは森の中を彷徨っていたり同じく細々とした村で暮らしていた亜人種も同様だ。

もっと分かりやすく言えば、今この場に出席している者しか貨幣文化を理解しているとは言い難く、外で城壁の建築や物資集めをしている各種族たちは労働の対価として食料を渡しており、貨幣など使うだけの余裕もない。

「あと前回も言ったが、ちゃんとスーラーを納得させたか?」

聞けば俺たちがキセトの町を防衛している間に一悶着あったらしく、実際に彼女は焼き討ちする一歩手前だったらしい。

「……スーラー殿には後々説得する」

「それだったら駄目なんだよ。せめて彼女の了承を取り付けてから提案してくれ」

普段だったら森に愛されしエルフらしく美しい黄緑色の瞳が、真っ黒な深淵を覗いたかのような瞳になって笑う様はドーシュでも恐いらしい。当然だが俺も恐い。

ドーシュはスーラーの顔を思い浮かべるとブルブルと震え、そのまま静かになった。


あらかた意見を出し終わったのか、指令室が自然と静かになった頃、突然頭に魔法通信の音が鳴り響く。

『あぁ、どうした?』

『主ぃー!なんか森の中にいっぱい人がいるぞー!?』

森の中に人と聞いて少し目を細める。

『その人はどの方向から、どんな感じだ?』

『ん~……海を見てちょっと右に向いた方向かな!?その中に馬車があって、鳥みたいな頭の人がいるぞー!?』

海はちょうど北にあり少しばかり右というのは北東、さらには馬車が紛れ込んで亜人種が乗っていると。

その情報だけである程度の推測が付いた俺は、ヘレンに確認の命令を送る。

『分かった。多分それはキセトの町の商人だ。一応その人たちに確認を取ってみてくれ。もちろん味方ならば怪我は絶対に、絶対にさせるなよ?』

『分かってるってー!じゃ聞いてくるー!!』

ぶつんと魔法通信が切れる音を最後にヘレンの声は聞こえてこないが、間違いなく大丈夫だろう。

それくらいヘレンを信頼しているのだが、この場に出席させずに偵察任務へと出してるのは少しばかり心苦しい。

代わりに偵察任務を任せられる人がいないと言う意味では、今オルサバーグを襲っている人材の問題だとも言えるだろう。




それからは特に新しい提案もなく城壁内建造物の会議を終わらせたのだが、ほとんどの者はすぐさま退出せずに破顔して他種族とのコミュニケーションに精を出している。

各種族のトップの仲がいいことは良いことなのだが、どうもコミュニケーションの内容は楽観的なものばかりのように感じる。

キセトでの戦闘に勝ったから次は捲土重来を果たすべきだとか、俺たちの村ができるのは楽しみだとか。

あらゆる問題が無ければ俺も楽しめようが、楽しむためには解決しなくてはならない問題が山高く聳え立っているのだ。

そのため俺は冒頭でやったように、組織で重要な()()()について懇切丁寧に説明するハメになった。

幸いなことに各種族のトップや仲間は無知なだけで無能ではない。

人・物・金の全容が理解できないまでも問題らしいことを理解し対策を考えてくれる。

だが元が細々と暮らしていた村民ばかりな彼らに、優秀な人材のツテや専門家などいるはずもなく、もし持っているならば既に村人になっているか何かしらの理由で来れない場合であり、考えうる対策など取れるはずもない。


何も出ない居心地の悪い空間になりそうだったが、その雰囲気は再びヘレンによって霧散した。

『主ー!さっきの集団、キセトの町からの商人って言ってるぞー!』

『やっぱりか。ヘレンは偵察を続行しつつ、商人の安全を確保しておいてくれ』

明るく元気な了承の言葉が返ってくると、そのままヘレンの声は聞こえなくなる。

「……とにかくまずは貨幣を教えるところから始めましょう」

エルフの村長の呟きに全員が同意すると、村民たちに貨幣文化を沁み込ませる対策について考え始めるのであった。


サミュスの好意により派遣してもらった商人が持ち運んだ賞品は、既に全商品俺が支払いを済ませている。

もし売れ残りが激しい場合、オルサバーグに行商するだけ損がでると思われて交易が途絶えてしまう可能性を危惧しての対策だ。

そのため商人が持ってきた商品を村民たちに配ろうと考えていたのだが、貨幣文化を学ばせるために少しだけ小細工をすることに。

今まで労働の対価として食事を提供していたが、それをゴールド、つまり貨幣に変える。

つまるところ賃金を渡してそれで食事を楽しみ、さらには商品も自分たちで買わせることにしたのだ。

賞品は既に支払いを済ませているから二重支払いになって大損なのだが、村民たちに貨幣を教えるための勉強代と考えれば安いし、何より結果として商人の懐に金を忍び込ませるのも悪くない。

「エフィー、悪いがお前に食事の配給係を任せる。俺は商人と話して頼み込んでくるよ」

人見知りのエフィーは嫌そうな顔をしているが、計算が得意であり適正価格を見極められる彼女にしかできない大役だ。

そして俺はお金の使い方から数え方までを説明しないといけない商人を黙らせるべく、ゴールドをパンパンに詰めた麻袋を用意するのだった。

物・金・人の並びってどれが正解なんですかね?

筆者的には人・物・金が1番言いやすいような気がしていますが、調べた感じ物・金・人って書かれていることが多い。

どれであっても意味は通じますが少しだけ気になった出来事でした。


面白いと思った人は、ぜひブックマークや評価、レビューをして頂けると嬉しいです。

筆者の執筆モチベーションにも繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

X(@KenRinYa)もやっているので、フォローもよろしくお願いします!

また感想や質問、要望などもコメントかXで受け付けていますので、ぜひぜひお送りください!

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