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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第3章 家号作戦

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3-1 王国の首脳部(※画像あり)

オースラリア大陸か四国の海岸線を少しばかり変形させたような横に細長く形をしたミズガルド大陸。

そのミズガルド大陸の北には、大陸中央に座して生きとし生けるもの全てを拒む巨大なヴォラダス山脈とドルル湾に挟まれた国があった。

国の名はジリト王国、つい数百年前まで魔族が支配していた地域を征服した者たちが興した国の名だ。

最初の国民の大半が遠征部隊の構成員であったが故か、ジリト王国の民たちは自分たちと異なる存在をとにかく嫌い、繁栄のためならばその地に住まう者を害することも厭わない。

この気性は未だに自分たちを遠征部隊の正統な末裔だと誇り高く語る貴族に根深く、ここ数十年の間で繰り返される東の森、つまり魔族の住処への侵略もその表れであろう。


挿絵(By みてみん)

<マップの簡易イメージ>


そんなジリト王国のほぼ真ん中に位置しそこが数百年前まで大森林であった事実を忘れさせるような発展具合を見せる王都、更にその中央には民たちの暮らしを監視するように(そび)え立つ王城は、いつもの荘厳さを飛ばすほどに騒騒しい。

普段ならば生命に平等の厳しさを叩きつける冬が去り、春の穏やかな陽気で新たな命が芽吹き始める今の季節、農作物の予想収穫量や今年の基本方針を決めていた王城の一室を借りた評定の場は、憤怒と絶望、そしてあらゆる策謀が渦巻く戦場へと変わっていた。

僅かでも自分たちが有利となる主張を醜くぶつける戦場を、一段上の場所から鷹揚に眺める還暦を早数年経た男は、第九代ジリト王フリード・アルグアスその人である。

隣には次代の王として名高いフリードの嫡子パルメニカ・アルグアスが初老の証である白髪を金髪に潜ませながら座っているが、彼の眉間には刻み込まれたように深い皺が作られていた。




「王よ!此度の敗戦により多大な損害を第2軍は被りました。特に装備の消費が激しく、補給は到底間に合いませぬ。ここは今一度、組織の再編成を行われてはいかがでしょうか?」

少し前に起こった戦闘により第2軍の一部を抽出した開拓大隊は、それはもうめっためたにやられた。

兵士は僅かでも身軽になりその場から逃げ出そうと装備のほとんどを放り捨てており、帰参した者は栄えある王国兵士ではなく道端に転がる浮浪者だと勘違いしそうになるほどみすぼらしい。

ある程度の損害や死者は想定していたが、ここまで装備を失った兵士がでるとは全く想定しておらず、帰ってきた者のほとんどが自主的に第2軍から去ったことで退役金を節約できたと苦笑いでしか言えない。

だがここで王に向かって進言している中位貴族の当主の真意が、別のところにあることは誰の目にも明らかだった。


第2軍のトップである軍団長を務めるは王の隣に座る第一王子パルメニカであり、中位貴族の当主は第5軍の一部隊を任せられるほどの人物だ。

第5軍は南にあるヴォラダス山脈の中ほどにあるイリィート聖国の歓待を主目的としており、その構成員の見た目は戦闘員というよりも宮廷貴族と呼ぶに相応しい。

そして第5軍の軍団長はパルメニカの実弟である第二王子ベソスであり、ベソス本人は王の隣ではなく王家からすれば塵芥(ちりあくた)の貴族たちと同じテーブルに座っていた。

本来この評定の場に参加できるのは、王と次代の王になり得る人物、そして6つある軍団の軍団長とその配下のみ。

北西を守る第4軍と王都を守護する第3軍の軍団長も同じく王子なのだが、この2名はそもそも政争などに興味はないから今回は問題にならない。

通常であればこの評定の場に顔を出せること自体が名誉なことだが、第二王子(ベソス)の視線の先には第一王子(パルメニカ)が座る椅子。

そのためにベソスは子飼いの貴族に狙う椅子に腰を下ろすパルメニカに攻撃させているに過ぎない。


当然パルメニカもベソスからの攻撃だと理解している。普段ならば「貴様如きが裁量してよいことではない」と一喝しているところだが、今回何も言えないのは敗戦の影響があまりにも大きいからだ。

自身が率いる第2軍の一部の敗戦だというのも当然だが、何より今回の開拓大隊を編成してまでの大遠征は自ら主導し名前まで冠させた【パルメニカの大東進】で失敗したのも大きい。

【パルメニカの大東進】は王国から海沿いに東へと進み、ドルル湾を形作っているロストルム半島の攻略を目指した先の長い作戦だ。

この作戦は現在山道を越えイリィート聖国を介してしか他の国と貿易が行えていない問題を解決するための一手であり、成功した暁にはロストルム半島に一大貿易港を作る算段出会った。

フリード王も西は蛮族、東は魔族と陸路での貿易ができないこともあって了承した壮大な作戦であったが、その作戦がまさかロストルム半島に辿り着くどころか、森に入って比較的近い位置にあった町キセトの攻略に失敗したのだ。

完全に出鼻を挫かれており、何も得ていないのに損害だけ出している最低最悪な状況をしていた。


普段ならばパルメニカを擁護する声を上げてくれるナール家も、今回ばかりは旗色が悪い。

今回の開拓大隊の先陣を務め、そして最も大損害を受けた家でもあるから如実に発言力が下がっているのだ。

遠征準備やら魔物との国境警備、練兵視察など最前線であるが故に忙しい日々をパルメニカが送る反面、時間を持て余して貴族との時間をベソスはたっぷりと取れる。

その結果が自派閥に属する所属する貴族の多さに現れており、積極的にパルメニカを支持する貴族は数えるほどしかいない。

ここで重要になるのは長子相続という保守的な考えからパルメニカを消極的支持する貴族であるが、ベソスの交渉と今回の敗戦により減少するのは確実だろう。




ベソス子飼いの貴族たちによる王に向かっての提言と体を整えた攻撃を黙々と聞いていたパルメニカが、攻撃の間隙に口を開いた。

「陛下。今回の魔族はこれまで撃退してきた魔族と異なり、明らかに連携を取っております。

今までにない魔族どもの連携は看過できない脅威であり、これ以上損害を広げないためにもいち早く殲滅すべきだと認識しております」

ベソスたちは今回の敗戦をパルメニカの準備不足という形で落とし込もうとしているが、物事を冷静に判断するパルメニカの視点はもっと別の場所にある。

帰還兵から話を総合すればどちらも奇襲という攻撃方法であるが、明らかにその奇襲は連携が取られたもの。

その上闇雲の突撃しかしてこない魔族たちが、今回ばかりは指揮官を狙い軍同士の押し引きをしている。

奇襲で混乱して負けたことよりも、魔族たちのこれまでとは違う戦術を身に着けたことの方が、パルメニカにとって恐ろしかった。


首肯しつつフリード王は隣に座する第一王子を(たしな)める。

「貴様の言う通り連携する魔族など我らの脅威であることは認める。

だがどうやって殲滅すると申すのだ?相手はあの開拓大隊すらをも粉砕する相手ぞ。

かの脅威を打ち払える力を持っておらねば、ただいたずらに兵を失うことになる」

王の言葉は確かに第一王子へと向けられていたが、視線はこの場にいる全員へと向けられていた。

ここで「我こそは!」と名乗り上げ殲滅に成功すれば第一功であることに違いはないが、ここには誰も存在しないのか錯覚させるくらい声は上がってこない。

それはそのはず。開拓大隊は主力が王軍ではなく領主軍であったとしても、その領主軍はこれまでに幾度となく魔族を撃退してきた者たちだ。

その開拓大隊に匹敵するほどの力を持っているのは王軍でも半数しかなく、兵士よりも宮廷貴族の多い第5軍など質も量も比較することも烏滸(おこ)がましい。

第1軍と第3軍が筆頭候補になるだろうが、第1軍は慣例的に軍団長は王が務める主力軍であり、第3軍は数は少なくとも猛者揃いだが王都守備軍であるから遠征させるなどもってのほか。

残るは第4軍と第6軍だが、北西に固められた落ちこぼれ集団と軍とは名ばかりの警察組織である第6軍には荷があまりにも重すぎる。


つまり王は「兵も出さない臆病者は黙っていろ」と言っているに等しく、ここまで言われたらいくら低能だと思われていても腐っても軍の頭脳を務める貴族たち。嫌でも次の展開が読めてしまう。

「陛下、僭越ながら私めが指揮する第2軍に魔族を殲滅する機会を頂きたい!」

王に最も近い場所でそう声を上げたのは、先ほどまで非難を一身に浴びていた第一王子であった。

彼が団長を務める第2軍は確かに前回の遠征で痛手は被っているものの、それはあくまで抽出された一部分でしかなく本隊は魔族が居座る森付近に展開されたまま。

装備や練兵の質でも地理的にも、開拓大隊を戦闘力で上回る軍団などこの第2軍以外にないことなど誰の目にも明らか。

だがこんな薄ら寒い演劇に冷水を浴びせようにも、ぶちまけた冷水が熱湯になって我が身に降りかかると予見で来てしまうが故に何も言えない。

そして全員の視点が演劇の主役に向けられると、獰猛な笑みを見せて最後のセリフを告げた。

「よいだろう。パルメニカよ、防衛に必要な最低限の兵を除き、脅威となる魔族の殲滅を命ずる。我らが脅威の萌芽を見事摘み取って見せよ」

それは事実上の今回の敗戦の帳消しチャンスであり、後の世に伝わる【第一次パルメニカの大東進】の折り返し地点であった。




ジリト王国を支える軍部の首脳陣が王城から出て行った頃、王と第一王子は王の執務室で顔を突き合わせていた。

この場にいるのは王と王子、親と子だけであり、そこに煩わしい権力闘争などない。

「ありがとうございました父上。必ずや汚名を挽回させていただきます」

深々と頭を下げる息子に対し、父は窓から差し込む光に全身を浴びながら答える。

「よい。これも国内の混乱を最小限に抑えるため。何が何でもお前には次の国王となってもらうためには必要なことよ」

ジリト王国は伝統的に長子相続の文化であり、国内の多くが長子であるパルメニカの王位継承を望んでいるが、戦争を繰り返し行っていたこともあり必ずしも長子が継いでいる訳ではない。

その上存分に宮廷闘争を繰り広げる次男もいるため、評定の場で示されたように上級貴族の中で長子のパルメニカ支持者は決して多くないのだ。

王と言えど決して高位貴族の意見を無視することはできず、その貴族たちを押さえつけるためにも【パルメニカの大東進】や第2軍の軍団長に就かせている政治的意図もある。


だがいくらこの息子を次代の王へと押し上げたい王であっても、莫大な損失を出すだけの作戦など認めるわけにはいかない。

「してパルメニカよ。貴様に必勝の策が存在するのか?」

ジリト王フリードの視線が子を思いやり父親のものから、国を優先する為政者のものへと変わる。

「はっ、陛下。まず必勝の策を披露する前に、今回の敗因から学ばねばなりませぬ。散発的ですが帰還する兵士の証言をまとめ検証した結果、此度の敗因は補給と油断の2つだと言えましょう。

まず補給ですが、これは本隊に十分な物資を持たせられず出陣したことにより、補給を適宜待つ必要が生まれ、魔族どもに連携をさせる時間的猶予を与えてしまったことにあります」

輜重隊の足が遅いのは徴兵部隊であったことも影響しているが、軍人ばかりの本隊でも輜重部隊が持ってくる物資を待つため迅速な攻略を第一に考えていなかった側面がある。

つまりキセトを早期攻略しようがしなかろうが、輜重部隊の運ぶ補給物資は今後の作戦に必要不可欠。

そのためキセト攻略戦にじっくりと腰を据えられたというメリットもあるが、今回の作戦では魔族に連携させる時間的猶予を与えてしまったデメリットの方が大きかった。

元から十分な物資を持たせていなかったのは作戦準備に間に合わなかったことや、次の問題へと繋がる油断があったことは否定的できないだろう。


「次に油断ですが、こちらは輜重部隊と本隊どちらにも言えましょう。

輜重部隊に満足な護衛隊を随行させていなかったこと、そして本隊は敵が策略を使うことを念頭に置いていなかったこと、どちらも油断としか言えない惨状でございます」

占領どころか制圧もしていない森林の脇を行軍させるなど、ある程度の知識を持つ者ならば奇襲に打ってつけ付けの場所だと理解できる。

ただこれまでの魔族たちに連携や協力という概念は存在しておらず、奇襲を受けても流浪の部隊程度だと思われていた。

それに優秀であった開拓大隊の司令官は事前に本隊から強襲偵察隊として森林にいくつかの部隊を派遣しており、もしもの対策を取っていたとも言える。

だがそれは強襲偵察隊を軽々しく粉砕し、それどころか強烈な反撃を加えてくる者など微塵も想定していなかったのだが。


また本隊の総司令官にも油断があったと、パルメニカは確信していた。

魔族が連携しないとの認識から本陣の守備を手薄にし全力を注いでいたこと、加えて手薄な本陣に各部隊の指揮官を無防備に集めていたことが挙げられる。

自派閥傘下のナール家で起きた爆発事件と同様に、()()()()()()()()()本陣を爆破されたのは、本陣の警備を怠っていたとしか考えられない。

その常識的なまでの考えは、脱走できた捕虜に魔法をかけ上位者のところで爆破するなどという陰険極まりなく複数の魔法を同時に使った奇天烈な真実よりも、よっぽど現実的だと言えよう。


帰還兵から(もたら)された体験を精査と考察のフィルターを通して得た情報を話した第一王子は、さらに声に力を込めて話す。

「この2つの失敗を繰り返さぬため、今回の遠征では明確な目標設定と十全な準備が必要不可欠です。

魔族の全てが連携を覚えているのか定かでない今、遠征軍をより深く森の中にまで進出させるのは極めて危険でありましょう。

そのため本遠征の目標をキセト、そして一部の者が見たというキセトを支援できる砦のみに目標を定めます。

物資はこの2ヵ所を占領・維持するのに十分な分だけにし、輜重部隊に割く戦力を無くします。

物資の運搬は制圧後、損害や抵抗の強度によって柔軟に対応すべきでしょう」

第一王子の言葉を聞きながら黙っていた王は、頭の中で見落としがないか思考を巡らせる。

自身が軍を率いていた頃ならば準備しすぎるくらいの作戦内容であるが、二度目の失敗はできない第一王子を考えると最善の策に見える。

「……合い分かった。詳細は後日詰めるが、防衛に必要な最低限を残し第2軍を連れてゆくがいい」

この程度の策で十分なのか一抹の不安を抱えたまま、王は次期王の献策を認めるのであった。

イメージ的にこの世界の大陸は四国を縦に伸ばした感じで、新居浜市辺りにジリト王国、四国中央市辺りにキセトの町、四国山地がヴォラダス山脈と言えば分かりやすいかも。

ちなみに画像は絵心が壊滅的な筆者が、せめてものとしてパワポで作りました。

こういう画像なら画像編集ソフトよりもパワポの方が作りやすい不思議、いやパワポは画像編集ソフトだ(暴論)


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