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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第2章 キセトの町

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2-11 キセト防衛戦・前夜

大目標:安寧の地の確保、元の世界に戻る

中目標:侵攻してくる敵を撃破、元の世界に戻るための研究人材の確保

小目標:城塞都市の建設、難民たちを救援

現在の目標:キセトの町の防衛

「いつつ……」

肩と脚を焚き火に照らしながら確認するとどちらもパンパンに膨れ上がっており、持ち運んだテントや道具類の重さが物語っている。

このまま放置して明日役に立たないなんてことは絶対に避けるため、布に巻かれた氷を押し当てて冷やしていく。

「エデル大丈夫?」

すると突然幼馴染のイルマが顔を覗かせてきた。

氷をなけなしのMPを使って生成してくれたのもイルマだからいてもおかしくないんだけど、不意に薄暗い中で照らされた顔と綺麗な金髪を見ると心を乱される。

「大丈夫……あ、いや違う大丈夫じゃないよ。けどこれくらい我慢しないと」

肩は食い込んだ紐の後がいくつも出ているし、脚は歩きすぎて棒切れのようになっている。

だから強がりたかったけど、イルマの翠眼に俺の隠し事は通らないから諦めて正直に言う。


「そうよね……私もエデルたちに比べたらマシだけど、結構跡が残っちゃってるわ」

「っ!?ごほっごほっ!」

「ちょ、大丈夫?」

いきなりイルマが首元から肩を見せつけてきたから思わず咽てしまった。

普段はお堅いくせにこういう時だけ全く警戒心が無くなるのはなんでだよ。

「ごほごほっ、大丈夫だから。で、何しに来たんだ?」

俺は足元に転がっていた水筒で場を濁した。


「今日もほら、結構余ったから持ってきたわ。それでユルクさんは今日も?」

イルマはさっき夕食で出されたのと同じ肉入りスープが差し出してきた。

「ありがとよ。ユルクなら自分の持ってきたテントで気持ちよく寝てるよ」

なんだか気恥ずかしいというか何というか、俺は何となくスープに手を伸ばしてさっさと食事に入る。

もうとっくに夕飯は食べ終わっているのだが、他の種族たちは食が細いようで毎回結構な量が残るからありがたく俺たちが貰っている。

「そ。ならいいわ」

呆気らんとイルマが隣に座ると、もう片方で持っていた肉入りスープにスプーンを突っ込んだ。


「あ~、毎回聞いてる気がするけどこの肉ってずっと同じなのか?」

「そうよ。もう何度言ったか分からないけど、私たちが肉を食べられるなんてすごいわよね」

「そうだよなぁ。肉なんて村全体で祝い事をする時しか見たことなかったのにな」

「私もその時にしか見たことなかったわ。王国軍の食料なんて本当に酷かったしね」

「あぁあったなぁ。あれが1番覚えてる。石とパンなんて同じ固さだからどっちも食べられるって上官な」

「あったあった」

「……」

「……」

お互い笑い合って話していたけど、どちらともなく黙り込む。

それだけ思い出せることが山ほどあったけど、同じくらい苦労や苦しみもあったのだから。


気の置けない仲の俺たちだから、互いが無言でも気まずさなんてない。ないけれど先に口を開いたのは俺だった。

「すごいところまで来たな俺たち」

「そうね。隣にいるのがエデルなのは変わらないのに」

思い返せば戦争漬けの領主軍に入りたくなくて村から抜け出した俺たちは、とんでもない苦労と時間をかけて王都まで行き王国軍に入った。

だけどそれで得られたのは僅かな訓練期間だけで、結局は俺たちが避けた領主軍と一緒に亜人種たちが支配する樹海へと送り込まれるハメに。

魔物が蔓延る死の森なんて言われている場所に送られるような奴らだ、周りにはやさぐれてたり奴隷たちとマトモな奴なんていない。

だから別動隊に選ばれた時なんてヤバイ奴らから逃げ出すチャンスだとしか思わなかった。

それが今では派遣先の亜人種の村にいた人間に掴まっで、なぜか指揮官候補として教育を受けてる。

村の長老の言ってた「人生なんて暗闇の中を歩くのと一緒だ。平坦でも危険なこともあれば、険しくても安全なこともある。だから最後の最後まで考えて行動して諦めるんじゃない」という言葉の意味が今なら分かる。

イルマもこっちを見て笑っているけど、俺と同じことを考えてる顔だ。

「……生き残ろうね」

「あぁ、もちろん」

それだけ言うと、少し(ぬる)くなったスープの器を傾けるのだった。




「これで終わりかしら?」

「終わりっぽいな。じゃ、俺はエフィー様に報告してくるよ」

洗った鍋と食器類の水を切ってから嵩張らないよう一纏めにしていく。

これをしないと明日出立する時に大慌てになる、というよりもエルフの村を出立で大変な目に合ったから今から準備している。

あとの仕事は後方部隊は見張り以外就寝することを指揮官であるエフィー様に伝えなければいけないのだが、エフィー様専用テントの周囲にはエルフ族やハーフゴブリン族、ハーフリング族のテントもあるからちょっと近寄りがたい。

俺たち人間だけ遠くに置かれているわけじゃないが、亜人種たちのテントへ不用意に近づくと殺されかねない。


俺は立ちあがって一度深呼吸で心を静めてから、いざエフィー様のテントへと……

「ここらへんの植生なんてあのクソジジィにでもやらせろってんだ」

俺が一歩踏み出す前に見知らぬ細長いコップみたいな物を持ったランド様が、エフィー様専用テントの隣に設置されたランド様専用テントから出てきた。

ランド様はこの部隊の指揮官とではないがオウキ様が従える6人の亜人種の1人で、とてつもない力を持っていらっしゃるドワーフだ。

「ここらへんの草とか引っこ抜いときゃいいだろ。ったく、めんどくせぇったらありゃしねぇ。んあ、なんだぁお前ら?」

あ、まずい!見すぎた!

「い、いえ!何でもありません!」

「そ、そうです!私たちはすぐに就寝します!」


つい軍にいた頃の癖で右手を伸ばして頭に添えて左手は体に引っ付けて敬礼したが、これは人間の軍の作法でありここではまずいんじゃないかと気付いた時には既に遅かった。

「あ~あ~、んな固ぇ挨拶なんていらねぇよ効率わりぃし。今から寝るってんならそこらへんの草でも摘んできてくれねぇか?」

「はっ!どのような草をお探しでしょうか?」

「だから固ぇって。なんでもいいんだよ、そこらへんに生えてる草を引っこ抜きゃ納得いくだろうし」

そんな雑とも言える命令を遂行しようと地面に目を向けると、今度はランド様以外の声が聞こえてきます。

「何を言っているランド。ちゃんと自分で調べろ」

「んだよエフィー。こんな面倒なこと言ってきた旦那に文句言えよぉ」

新しい声の正体は俺たちの部隊の指揮官であり会いに行かなければならないエフィー様でした。

ランド様は口を尖らせて文句を言い続けています。


「き、君達も。ランドの話なんて聞かず早く寝る準備をし、しなきゃ」

素っ気ないように見えるエフィー様だがオウキ様曰く人見知りなようで、最初の授業なんて布越しからお姿を見るしかなかった。

それが今ではチラチラとだけどこっちを見て話してくれているだから、エフィー様から信頼されるようになってきた証なのかもし──ごふっ!

「ほらエデル、早くエフィー様に報告しなさいよ」

イルマから飛んできた強烈な肘鉄が俺の脇腹を貫いてくる。

どうしてかエフィー様と一緒にいる時のイルマは機嫌が悪いようで、今も右手の親指と人差し指を擦り合わせる癖が出ている。

「だ、大丈夫?」

「あ、大丈夫ですエフィー様、ありがとうございます。また食事の後片付けが完了したことをご報告させていただきます」

「あ、あぁなるほど、ね。了解ありがと。さっさと寝ていいよ」

ここ最近毎日3回は行っている報告に慣れたエフィー様は頷くと、テントに戻れと言わんばかりに手を振っていた。

よし、これで俺の仕事も終わり!

さっさと戻って寝ようかと踵を返そうとしたのだが、

「おぃおぃ、これから寝るんだったら手伝ってくれてもいいじゃねぇか」

ランド様の声で引き止められてしまった。


「ランド……いい加減にしろ。彼らの仕事は終わったんだ。変な手間を増やすんじゃない」

「変な手間って言うんなら旦那に言えよなぁ。この手間はあっしが求めてるんじゃねぇんだから」

「そうだとしてだ。それに彼らに手伝うメリットも無いだろ」

ランド様とエフィー様の喧嘩がこのまま爆発までいくのかと恐怖に慄いていると、突如大きな影が現れました。

「お前ら、喧嘩、止めろ」

「なんでぇオルクス、もう装備はいいってか?」

俺たちの部隊にいるオウキ様が従える3人のうち最後の1人、オーク族のオルクス様だ。

今までオルクス様と話す機会が少なかったしまだ敵対していた時にオルクス様の戦いを見ていたから、その巨体とあり得ないほど力を持つ彼には脚が震えるほどの恐怖心を持っていた。

けれどこの行軍中に何度も報告する機会があって、その度に優しく頼もしい背中を見ているから徐々にその恐怖心は薄れつつある。


「装備、見る、終わった。だから、これ、やる」

オルクス様はそう言って片手を出したかと思うと、手のひらから大きな袋を取り出した。

「なんでぇこれ?」

「土、必要、ランド」

「あぁ?あっしが必要だって?」

ランド様とエフィー様がその袋を無造作に開けると、突然ランド様が笑います。

「はっはっはっ!オルクスぅ、こりゃぁ確かに土だ。けどあっしが欲しいのは草なんだよぉ」

「土、草、一緒、違う?」

「ばっか!どう考えてもちげぇだろ!おめぇは野菜を土だとでも思ってんのかぁ?」

「我、野菜、いらない」

「だぁー!そういうことじゃねぇ!」

オルクス様は首を傾け、ランド様は地団駄を踏んで怒り、エフィー様は首を振って呆れている。


そんな様子なぜかとても微笑ましくて時間も忘れて眺めていたけど、エフィー様が止めた。

「はぁ。オルクスは明日大変なんだから早く休みなさい。ランドも明日活躍してもらうからさっさと草を集めて寝なさい」

「承知」

「へいへい、わぁ~っったよ」

「き、君達も。早く寝るんだよ。明日は多分いっぱい走るんだから」

「了解で……え?」

俺とイルマは敬礼をして立ち去ろうと思ったのだが、最後の言葉に引っかかりを覚える。

「あのエフィー様、いっぱい走るというのは……」

「え?だ、だって明日は攻撃したらすぐに撤退するから……」

……え?明日から攻撃ならすぐに終わらないんじゃ……?


一瞬沈黙が訪れるが、近くで草集めをしていたランド様が助け船を出してくれた。

「ともかく早く寝ろってこったぁ。指揮はエフィー、ケツ持ちはオルクスがやるってんだ、心配するこたねぇ気軽でいいぞ」

「りょ、了解しました!」

そう返事しているが俺の頭の中は嬉しさで一杯だった。

明日で戦闘が終わる?ということは生き残れるってことじゃ……?

すぐ横にはニヤニヤしたイルマもいるけど、きっと俺も今同じ顔をしているんだろう。

こうして嘘か本当かは分からないけど、生き残れる可能性を見出した俺は心地よくテントに……

「おぉい気軽にって言ったけどよぉ、今子ども()()()()のは止めろよぉ」

「「やりませんよ!!」」

ランド様が変なことを言ったせいで、睡眠不足になりました。

そして数日間イルマとの関係がギクシャクしたのは少しだけ恨みます。

今回は人間のエデル視点のお話でした。

キセトの町防衛戦が終わった後、覚えていれば登場人物のレベルのまとめを出したいけど、未だにジョブ名が決まってないことが多いので、出してもサブキャラメインになるかも。


面白いと思った人は、ぜひブックマークや評価、レビューをして頂けると嬉しいです。

筆者の執筆モチベーションにも繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

X(@KenRinYa)もやっているので、フォローもよろしくお願いします!

また感想や質問、要望などもコメントかXで受け付けていますので、ぜひぜひお送りください!

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