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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第2章 キセトの町

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幕間1 勉強って、とっても大切

俺は天を仰ぐ。

確か難民たちを積極的に迎え入れたのは、2つの目的があったからだ。

1つは安寧の地を手に入れ守護するための力として、そしてもう1つは元の世界に戻るための頭脳を得るために。

前者の方はすこぶる調子がいい。戦闘に特化した傭兵種族の鬼人族を迎え入れられた上に定住できそうな土地──エルフの村──を手に入れたからだ。

まだジリト王国という脅威は存在しているが、立つための拠り所があるというのはかなり大きい。

窓から見えている城壁建築も、亜人種の身体能力の高さの恩恵でどんどん前倒しになっている。


ただ問題は後者、つまり元の世界に戻るための頭脳集めだ。

正直に言えば俺は中世の学力について舐めていた。

そりゃ教育なんて概念すら無さそうな世界に期待なんてしていなかったが、俺の予想以上にひどかったのだ。

俺は工事現場とは反対側の窓に近づき、外を見ると……

「訓練、頑張る」

「オルクス殿承知したぁ!いくぞ、てめぇらぁ!」

「1、2!」

「きん、にく!」

「3、4!」

「きん、にく!」

腕立て伏せの訓練をしている鬼人族とハーフゴブリンの者たち。

そう、そうなのだ。あまりにも脳筋が多すぎるのだ……。


正確に現状を理解するため、データを出していこう。

まず今このエルフ村には、俺たち抜きで総勢120人くらいが暮らしている。

内訳はエルフ族約50人、ハーフリング族約50人、鬼人族とハーフゴブリンがそれぞれ約10人、人間3人。

エルフ族をさらに分けると支配者層2人、狩人10人、職人が5人、他は農民。

ハーフリング族も分けると支配者層1人、鉱夫5人、戦士1人、他は農民。

鬼人族とハーフゴブリンは分けるまでも無く、全員が戦士。

人間は今のところ3人とも指揮官見習いだな。

つまり纏めるとだ、俺たち抜きで戦士30人ほど、指揮官見習い3人、職人5人、残り80人ほどが農民であり、最も大切な研究要員は0人。0人だ!!

俺は研究できるほどの知能がないから、俺たち(ディッシーズ)を入れてもランドただ1人。

しかも俺たちの仲間を入れても増えるのは戦士だけで、生活を送っていく上で重要な職人が1人も増えない。


俺はそんな苦悩に悩まされつつもどうしてこうなったのか、亜人種たちを纏めてた時を思い出す。




強い者をリーダーに。その家訓というべきか族訓ともいうべき言葉を体現する鬼人族は、難民としてやってきた後すぐにこの集団のトップである俺に挑んできたのだ。

「ワシらに指示を出したくば、貴様が真に強き者だと証明せよ。そして弱き者であれば強き者オルクス殿を解放せよ」

め、めんどくせぇ~。ちなみにオルクスはなぜ認められているのかというと、反抗的だった鬼人族を静かにさせるためにボコらせたからだ。

「はぁ~、分かった分かった、挑戦は受けるから待て。ただし!何度も何度も挑まれるのは面倒だから、代表者をだけとしかやらんぞ」

「構わん。貴様との決着楽しみにしておる」

あの時のキレツはまさに武人然と評したくなるほど頑固一徹な武者だった。

目は俺を中央に捕えながらも視界の端で動いたものを認識する視野の広さと注意力、いつでも背に抱えた武器を取り出せるよう力をわざと抜いている力量と、力強い鬼人族の体現者だ。


そんなキレツとの一騎打ちは鬼人族の前で行われた。これで不正や見ていなかったから無効だと騒ぐ馬鹿を黙らせられる。

「……貴様、早く武器を持て」

キレツは背から人間サイズほどの棘付き棍棒を取り出し、音を鳴らして引き摺る。

「武器?あぁ俺の武器か。俺は相手によって武器を変える戦い方をするから、無手でも気にするな」

今言ったように敵によって戦い方を変えるのは本当のことで、もし戦い方を固定してしまったら不利な相手と対峙した時に対処できなくなる。

「本当に良いのだな?悔いは残さぬか?」

「残さない残さない。なんならハンデとして俺は武器を縛ってやるよ。どうせ俺が勝つんだから遠慮すんな」

「……よかろう」

静かにキレツは頷いたが、こめかみに浮かぶ血管を見逃すほど俺も阿呆ではない。

「あいわかった。ワシ、キレツは我がリーダー、オルクス殿に誓って勝利を収めん!」

こうして勝負のゴングが鳴った。


先手はキレツ、棍棒を持ち上げた勢いそのままに上段から一気に俺目掛けて振り下ろす。

鈍器であるはずの棍棒からは風切り音が鳴り、これまで数多の生物をミンチにしてきたであろう金属の塊は今回もミンチを生成することを確信している。

だが俺は動かない。いや動く必要がない。棍棒は、俺の左隣りの土を耕していたからだ。

キレツは目を見開き驚愕したのものの、すぐさま棍棒を横殴りの風のように振り払う。

だがまたしても棍棒は宙を舞い、俺に掠ることすら無い。


2度の確殺攻撃をからぶったキレツは、筋肉に物を言わせた跳躍で後方に飛び俺との距離を取った。

「……貴様、何をした?」

「何を?それも見えてないっていうことか。これもマイナス評価だな」

傭兵種族だからもう少し戦えると思っていたが、予想外に弱いらしい。

「まぁいい。お遊びはここまでだ。次は俺も攻撃しようか」

「うるさい!これで終いだ!」

怒号を上げたキレツは再び上段から袈裟斬り軌道を描いて振り下ろしてくるが、これはさっきも見た。

俺も同じように肉体強化した手で、棍棒を横から押して軌道を変えるだけ。

天高く落ちてくる雨が屋根にぶつかっても砕かず沿って流れるように、棍棒も僅かに軌道を変えるだけで力は別方向へと流れる。

盾でやれば受け流し、剣で言うならすり上げと言うべきか。

そして武器を振り下ろし無防備になったキレツの顎に、今度は遠慮なく掌底を打ち込んだ。


そんな勝負があってからは、キレツを含んだ鬼人族全員が俺のことをリーダーとして認めてくれたのだが、それからは異常なまでに従順。

「キレツ、お前らの種族って土木作業できるのか?」

「できます!」

「そうか。それじゃあこれ(スコップ)持って穴掘りに……」

「承知した!」

昨日まで俺に敵意と殺意を向けていた鬼人族が、今では俺の命令を嬉しそうに待つ子犬に変貌した。

嬉しいと言えばいいのか、その身代わりの速さが気味悪いと言えばいいのか。

とにかく今度、俺の仲間とも一騎打ちをさせようと思った出来事だった。





これが鬼人族が難民としてやってきた数日間の話だ。

気味が悪いものの鬼人族が俺に従順になってくれた分、心なしかハーフゴブリンとハーフリングの視線に温かさが戻ってくれたのだから、怪我の功名とも言える。

ただ自分よりも強い者にしか従わない鬼人族を指揮する者をどうすべきかという問題から、そもそも指揮や研究できる人数がいないことに気付いた。

多少読み書きできる人間を指揮官に育成する話はあるが、人間種だけを特別扱いする気はない。

だからまず俺は、人間だけ特別扱いをしておらず公平に審査するかつ人材発掘の目的を込めて抜き打ちテストを実施した。

問題は国語と算数に関するもので、とても簡単なものから中学校レベルの難しいものまでを取り揃えており、特別枠なんていう差別的なものは用意しない。

だが、まさにこのテストの結果が悲惨だったのだ。


まず国語の問題は文字が読めないから、何を書いているのか分からない者が続出。

仕方なく口頭で質問して回答してもらう形式にしたのだが、その結果も散々なものに。

問い1、あなたはリンゴを持っていて知り合いはブドウを持っています。あなたはブドウが欲しい時、どうやって手にいれますか?

鬼人族の回答『持ってる奴から奪う』。

ハーフゴブリンの回答『欲しがってはいけない』。

ハーフリングの回答『ブドウって何?』。

エルフの回答『自分で育てる』。

とりあえず鬼人族の頭にゲンコツをぶち込んでから、次の問へと移る。


問い2、剣が3本、弓が2つ、ヘルメットが5つ会った時、武器の数は何個?

鬼人族の回答『いっぱい!』。

ハーフゴブリンの回答『3つ!弓は持てないから武器じゃない』。

ハーフリングの回答『3かな?2かな?あ、いや5かも?』。

エルフの回答『2つ。森の中だったらもっとさくさん作れるから──』。

もう1発鬼人族と、さっきから問の趣旨を理解していないエルフの頭にもゲンコツをお見舞いした。


そう考えると人間のエデルとイルマは回答が常識的で俺の精神衛生上素晴らしい。

「えぇと知り合いとリンゴを使って交渉します」

「武器は5つです」

うんうん、そうだよこれだよこれ。俺の求めていた答えは。

研究員になって欲しい気もしたが圧倒的指揮官不足の現状、このまま勉強してぜひ指揮官になって欲しい。

他にもエルフ族でペンと紙の恋人のエンメル。

「知り合いと交渉します!武器は……え~と、分かりません」

読解力は問題はないが、計算能力に難あり。

だが周囲が酷すぎるからとても優秀に見える。

エルフ村の村長と村長の娘スーラー。

「リンゴを持って交渉する。数は……多分5個?」

何回か交渉を経験したからか読解力に問題はないし、算数についてはエンメルよりも僅かに上か。

ただこの2人は今まで村長と村長補佐をやっていたことと性格を加味しても、全く研究員に向いていないだろう。


最終的な結果として俺の求める学力を満たしていたのはエデルとイルマだけで、素質の見える者まで範囲を広げてもエンメルとエルフの村長、スーラーのみ。

これだけでも頭を抱える状態なのに、新たに仲間の学力もひどいことが判明したのだ。

まずオルクス。こいつは種族特性が知能低下だから仕方ないにしても、小学生レベルの学力は身に着けておいてもらいたい。

次にヘレン。読解力はそこまで問題なかったが、算数になった途端鬼人族と変わらず『いっぱい!』と大雑把すぎる答えしか返してこない。

エフィーとランドだけは俺の求める学力を持っていたから問題ない。

頑固爺のランドは意外かもしれないが研究を続ける上で文字と数学はとても重要だからで、下手したら俺よりも学力がある。

そしてドーシュとシーラ。こいつらは聖典を読むことと女を口説くためというそれぞれの欲望を叶えるために国語はマスターしていたが、必要のない算数は難民と変わらない有様だ。


今まで仲間と冒険する上で学力なんてあったらいいな程度だったから、今は何が起こるか分からない状況である以上最善を尽くすべきである。

それが例え使わなさそうな算数の問題であったにしてもだ。

「……明日から夜に勉強会を開く。エルフと鬼人族は俺が、それ以外はエフィーが担当。ランドは特例として除外とする」

俺は天を仰ぎながら告げた。

「えぇ~勉強やだー!」

「我、主、守る、仕事」

「ワシもか!?ワシは呼吸の時間なのじゃが……」

「そうよそうよ!私のお楽しみ時間が減るじゃない!」

「え?私が教師……?」

色んな苦情が(さえず)っていたようだが、拳を机に叩きつけたらピタリと止まったから、みんな理解してくれたみたいだ。

うんうん、俺もみんなが勉強の大切さを理解してくれて嬉しい。

安心しろ、魔電炉はすでに仮設置してあるから夜でも明るく勉強できる。


この日から陽が出ている時は工事音が、陽が沈めば唸り声が鳴り響くようになった。

鬼人族の教官役がオルクスであるため、訓練も現代風になっています。

ちなみにオルクスの知っている訓練はオウキに教えてもらった訓練だけで、オウキもぼんやりと思い出した訓練しか知りません。


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