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最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第2章 キセトの町

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2-7 ホウレンソウは必須

「くそが……」

俺は足元の石を蹴り飛ばしながら罵声を吐く。

「まぁまぁオウキ様、落ち着いてくださいな」

「……」

「シーラ、オルクス……お前らもだぞ。ふざけやがって」

苦楽を共にしてきたはずの仲間にまで怒りを向けたくはないが、今回ばかりは我慢ならん。

「どうして……どうして俺が肉を焼く係なんだよぉー!!」

そう、今の俺はなぜかトングで自分の食べない肉を焼いていた。


事の始まりはそろそろマトモな飯を食いたいっていう俺の我儘からだった。

昨日のキセトの町ではエルフに化けてたから野菜ばっかりだったし、エルフの村にいるときは食う場所とか時間も省くために、ダンジョン挑戦中に食うような携行ブロック食だったから、たまにはしっかりとした飯を食いたい。

だから俺はたい焼きに引き続き、エルフたちの懐柔をする名目もあると自分に言い聞かせて、結構本格的なBBQを開催したってわけだ。


だが俺の後悔はすぐに始まる。

「う、うっぷ……す、すいませんあまりにも美味しくて……」

「あ、ちょっと動かさないで……」

目の前で地面に転がる村長父娘と同じように、そこら中でエルフのミートボールが腹を出して転がっていた。

俺の焼いた肉をそれはそれは美味しそうに平らげていたんだから、そりゃ腹いっぱいになるだろうよ。

「みんな食べ過ぎだから、オウキ様大丈夫よ~」

そう言いつつ炙った魚を口一杯に頬張っているシーラ。

「確認ご苦労……エルフって菜食じゃないのか?」

「ん~?基本は菜食よ?けど、エルフたちの反応とか倉庫を見る限り、調味料も何もないみたいなのよねぇ。あったのは干し肉だけだったし」

棘のある言葉だったのだが、気にする様子もなくシーラは答える。

干し肉と言えばジャーキー的なイメージがあったけど、エルフ村の倉庫にあった干し肉は本当に乾燥させただけのもので、固くて獣臭い最悪のものだった。


「あんなものと比べたら仕方ない……か?まぁいい。そろそろ俺も食うから、変なところ触るなよ」

俺は厳命した。そう、厳命したのだ。

意外かもしれないが、俺たちのパーティーでマトモに料理できるのはドーシュだけで、現実では毎日カップラーメンを食ってたような俺がパーティーの中でも名シェフになるくらいレベルが低い。

料理人のジョブはカンストさせているはずなのに、大雑把で適当にやるか、勝手にアレンジするか、ミリグラム単位まで合わせようとして完成しない奴ばかり。

そんな奴らに任せられるはずもなく、俺は魔道具のBBQコンロ設置から材料の取り出し、肉奉行までしてたから全く食えていないのだ。

目の前で美味しそうな肉を目の前で美味しそうに食べられる苦しさ、俺は絶対に忘れないからな!?


いやけど今は一旦そんなこと捨ておく。

そう、今俺が焼いているのはアイテムボックスの中でも最高品質に近い『カウ・オブ・ゴッド(神の牛)』のステーキ用霜降り肉で、適度なサシと弾力のある赤身が堪らない一品なのだから。

野菜も食えって?うるせぇ今は肉だよ肉!

肉汁を漏らさないようBBQコンロを弱火にして美味しさを閉じこめつつ、柔らかさを保ったミディアムレア。

ふっふっふっ、目ざといエルフたちが転がったまま涎を垂らしているが、これは俺の肉だ!

トングで肉の柔らかさを確認して、狙い通り焼けたことを確認。

よしそれじゃあ俺の初めて(だと思いたい)の異世界食事を楽しむとするか!!

取り出した箸で肉を摘まもうとした、したのだが虚しく空を切った。


「あれ?俺の、俺の肉は!?俺の肉どこいった!?」

さっきまであった極上の肉は、いつの間にかBBQコンロから飛び立ち、そして大きな口の中にダイブ。

「お、俺の肉ぅ!!」

丹精込めて焼き上げた肉を横取りしやがったふてぇ野郎はどこのどいつだ!?

「オウキ様ー!帰って来たぞー!!というかこの肉マジで美味いなー!」

そこにはオルクスと並び立つほど食事量を誇る、暴食のヘレンが立っていた。




肉の恨み、晴らさずにおくべきか。

そんな下らない怒りは、彼女と一緒に戻ってきたドーシュやエフィー、そして難民たちを見て吹き飛んだ。

なにせ難民と言っても様々な種族の亜人が70人くらいおり、その者らは全員木製の檻に突っ込まれているのだから。

「それでなんで閉じ込めてるんだ?ドーシュ……は無理か。エフィー」

大仕事が終わったとばかりに天に向かって両手を広げるドーシュを無視して、マトモに答えてくれそうな奴に聞く。

「それは……暴れるから?」

「なんでお前が疑問形なんだよ。というかそりゃ閉じ込められたら暴れるだろ」

檻の中では今も必死の形相で木格子に武器を振り回す者や俺に向かって罵声を浴びせる者、隅っこでひと固まりになって震える者と十人十色だが。


ただ見た感じある程度の種族と性格は分かる。

まず反骨心を隠しもせず威勢のいいことを言っているのは、頭に角を持つ鬼人族だろう。

確か戦闘に特化した種族だが、オークよりも尖っていないステータスをしていたはず。

そしてその鬼人族の足元で一緒に騒いでいるのは、ゴブリンに近い種族の亜人だと思われる。

体躯の小ささと特徴的とも言える緑色の肌は、まさにゴブリンに近い特性だからだ。

最後に端っこで怯えている最も人数が多い種族は、先ほどのゴブリンの近親種と同じくらい体躯が小さいが、肌は人間と同じ色をしており見た目からはよく分からない。

ただ隅っこで怯える様子や体躯から見て、戦闘系の種族でないことだけは確かだろう。


「それでエフィー。もう一度聞くが、どうして檻に入れてるんだ?」

「小さくて端っこに居るのは人間に襲われてたから助けるついでに。他はヘレンが連れてきたけど暴れたから」

「助ける相手を全員檻にぶち込む奴がどこにいるんだよ……というか彼らとの仲介役だったエルフの狩人たちは何してたんだ?」

俺はさっきからずっと俯いたまま黙っているエルフの狩人を睨みつける。

エルフの狩人たちはビクリと肩を震わすが、この責任の一端は間違いなくあるのだ。

「そ、その……私どもも気付いたらこうなってまして。ただその後ドーシュ殿とエフィー殿に聞いた話では……」

そうして俺は溜息が止まらない話を聞くのだった。




判決結果。

過失の5割ヘレン、4割エフィー、残り1割ドーシュ。

チームリーダーのエフィーの言うことを聞かず独断行動しまくったヘレンが最も悪いが、その独断行動を諫めることもせず放置したエフィーも悪い。

そして止められる立場にいたドーシュが、ちゃんと止めなかったのも間接的に悪いから1割の過失だ。

エルフの狩人たちもドーシュと同じく止めなければいけない立場ではあったものの、まだ新たな支配者であり圧倒的実力差のある俺たちに意見できるはずもなく、途中からは凄惨な現場で意識を失っていた。

だから過失はなし、なのだが紹介人として選抜されたにも関わらず職務を全うできなかったことも事実。

俺からの罰は言い渡さないが、信じて送り出してくれたエルフの村長からはちゃんと罰を貰うように。

以上、今回の問題は終了、解散!!


「よ、よろしいので?」

「何がだ村長?」

「いえ、狩人たちの罪がないということですが……」

「問題ない。というかちゃんと理由も言っただろ?ただ狩人たちの処罰は村長に任せるが、こいつらより重かったらそれはそれで不満が溜まるだろうから、塩梅は任せたぞ」

「分かりました。寛大な処置、誠に感謝します」

エルフの村長はそう言うと、作戦室から静かに立ち去って行った。


さて、残る問題はヘレンとエフィーの2人だ。

せっかくのBBQだが先に問題を解決せねばならない。

ちなみに捕虜同然だった難民への食事と抑えは、罰としてドーシュにやらせている。

いくら火耐性があるとはいえ本能的に嫌いな炎と向かい合わせるわけだから、立派な罰になるだろう。

「オウキ殿ぉ!ワシを灰にする気ですか!?」

「だまらっしゃい!それとも何日か祈祷の禁止でもいいんだぞ!?」

そう言うとドーシュは元からあったシワクチャの顔にさらに皺を作りつつも、コンロの前に立つのだった。

ハッキリ言ってドーシュよりもこの2人の処罰と問題解決の方が重要だ。


「さて、それでまずはヘレン。どうして独断で行動した?」

「えー?だってトロかったもん。アタシがパっと行ったら早かったじゃん!」

「早いも遅いもあるか。安全のため固まって行動するようにと伝えたはずだぞ?それに、どうして連絡すらしなかった?」

「だって蛇行してたしそんな無駄なことしたくなかったもん!連絡はしたぞー!今から行くって!」

「今から行くって連絡ではなく宣言だ!それに蛇行してた?なんで蛇行してたんだ?」

口を尖らせぶーぶー文句を垂れるヘレンの横で、俯きつつも怒気を出しているエフィーに聞く。

「いえオウキ様。私たちは蛇行はしてなかったかと……」

「いいや蛇行してたぞー!フラフラ、グネグネ歩いていただろー!?」

「それはあなたの気のせいでは?私たちは真っすぐ歩いておりました」

ヘレンが立ち上がり威嚇し、その応酬としてエフィーも冷たい視線を浴びる。


「待て待て。誰も喧嘩するために呼んだんじゃない。落ち着け」

2人が喧嘩したらこの村なんて跡形もなくなるのは目に見えている。

それに、俺もこういう形で大切な仲間を失いたくない。

「話を纏めよう。まず蛇行していたということだが、ヘレン事実か?」

「そうだ!アタシはしっかりこの目で見たんだ!!」

「お前がハッキリとそう言うなら、確かにエフィーたちは蛇行していたんだろうな。だがエフィーどうしてお前にその自覚がない?エルフの狩人たちがそう案内したのか?」

「いえ、それは……違います」

「それならばお前の判断で蛇行したということか?ならなぜ自覚がない?」

次第に口籠り出したエフィーを問い詰める。

「それは……その狩人たちから大まかな方角を聞いていたので、その通りに移動を……」

「大まかな方角を?それ以外は聞いていないのか?」

俺の詰問にエフィーはこっくりと頷いた。


これで俺の疑問は晴れた。

どうしてエフィーは蛇行していたのか、それは単純に道を知らなかったから。

どれだけ森に愛された種族であろうと、目的地も分からないまま移動していたら迷う。

だからこそ目的地を知っているエルフの狩人を付けたわけだが、ここでエフィーの人見知りの性格が悪い方に作用した。

綿密にエルフの狩人たちとコミュニケーションを取ることなく、ただ示された方角へと直進するのみ。

通れる道は分かっていても、それが目的地へと辿り着く道なのかは別なのだ。


「状況は分かったエフィー。そして同時にお前への処罰もな」

エフィーは口を一文字に結んで俺の言葉をジっと待っている。

「今回はお前の人見知りの性格が悪さをしたんだ。仲間内だけでしかも俺がいる時は問題なかっただろうが、今度そうはいかない。だからまずはお前はエルフたちと共に寝食を共にし、他人とのコミュニケーションを学べ」

「承知、しました」

ガックリと項垂れるエフィー、その隣では勝ち誇った顔でヘレンが笑っているが笑っている場合じゃない。

「ヘレン、お前もだ。お前は蛇行していると分かっていながらも連絡を取り合わなかった、そしてチームリーダーであるエフィーの指示に従わなかった責もある。だからお前もエフィーと同じくエルフたちに紛れ、人とのコミュニケーションを学べ」

「えぇ!?嫌だよ主!」

目を見開きつつヘレンは抗議してくるが、今回ばかりは成功したとはいえ行いが酷いからな。

俺は心を鬼にして、ヘレンの抵抗や懇願を全て却下する。

これを期に、仲間だけでも報告・連絡・相談のホウレンソウは、必ずやって欲しいと強く思うのだった。

ホウレンソウは大切。本当に大切。マジで大切。

そして今回は他人との関わりが少なかったパーティーだからこそ起きた、ホウレンソウに関する問題でした。



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