表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最強の部下たちと征く、異世界魔王戦記  作者: 犬鈴屋
第2章 キセトの町

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/67

2-6 ホウレンソウって大切

眩い光が体を包み込みフワっとした浮遊感を覚えた瞬間、目の前の景色が緑色の森林から茶色の厚板へと変わった。

「オルクス、シーラ、スーラーも大丈夫か?」

「我、大丈夫」

「えぇもちろん」

「私も大丈夫です。それにしてもここって本当に……?」

眉一つ動かさないオルクスとシーラとは反対に、スーラーは少しフラつく足で周囲を見渡している。


「あぁ多分昨日ランドが作った場所のはずだ。まずはそこから階上に出るぞ」

後ろに仲間を引き連れ階段を上がると、やっぱりそこは元村長宅を改造した1階だった。

「ちゃんとランドは準備してたみたいだな」

「そうですねぇ。それでこれからはどうするので?」

「そうだな、シーラは一応怪我人がいないか確認を。スーラーは村長を探して作戦室まで連れてきてくれ。オルクスは俺と行くぞ」

さっさと寝たい俺はすぐに階上の作戦室へと向かう。

昨日は当然色っぽいことなんてない徹夜で、永遠とオルクスの背中の鎧に付いた傷を数えてたんだよ。

反面シーラは昨夜よっぽど楽しかったみたいで、剥きたての卵みたいな肌をしていた。




俺たちが作戦室へ向かうと、テーブルに見たことない部品を散らか、手元で何かいじくっているランドがいた。

「お前が部屋に引きこもっていないのは珍しいなランド」

「おぅ旦那。帰ってきたのか」

「おう。それで、防衛案はどうなったんだ?」

そう聞くと俺に見向きもしなかったランドが、ピタリと手を止めると溜息を吐く。

「それがなぁ。あっしに求めたのは城塞だろ?んなもん、あっし1人では無理だ。だからとにかく案を村長にまとめてもらってんだよ」

無理、かぁ。

あのランドがハッキリとここまで言うんなら、それは無理なんだろう。


「具体的にどんなところが無理なんだ?」

「あん?それは簡単だ、全員を納得させるってことだよ。時間も資源も土地も無限じゃねぇだろ?」

「それは当然だな」

「だろ?絶対に誰かの要望を削ることになんだよ。だったらどこを削るかなんて、暮らす本人に決めてもらうのが当然ってこったぁ」

うぅむ普段は頑固一徹なランドだが、利用者ファーストの考え方はちゃんとしているな。

当たり前の話だが、使いもしない奴が決めたものなんて、よっぽどそのことに詳しくなきゃ役に立たない。

運転免許持ってない奴が唱える便利な車って言ったら分かりやすいかもな。


「分かった。それでエフィーたちは?」

「あいつらから連絡はねぇな。まぁドーシュがいるから夜は大丈夫だろ」

「確かに。けど昼もマトモなら安心できるんだがなぁ」

今日も燦々(さんさん)と照りつける太陽を見て、自然とため息が出てしまう。

「ま、それじゃあエフィーたちが帰ってきたら会議を開く。それまでには準備しててくれよ」

「あいよ~」

適当な返事をするランドだが、俺の経験上こいつは絶対に準備しないってことは分かる。


「それで、こいつらは何してるんだ?」

そして俺はさっきからずっと気になっていた、作戦室でじっと静かに座る人間たちに視線を向けた。

「ん、こいつらか?あっしが保護してんだよめんどくせぇ」

「保護?どうして……」

「オウキ殿!遅れて大変申し訳ない!」

俺が言い終わる前に村長が汗水を垂らして駆け込んできた。


「いや事前連絡無しで呼んだのは俺だからな。大丈夫だ」

スーラーに連れてきてくれと言ったから慌ててるのは理解できるが、なんでこんなに顔が真っ青なんだ?

てっきり遅れたことに対してかと思ったのだが、俺の言葉を聞いても顔色は戻らない。

村長の一人娘を渡されるほど重要人物である自覚は持っているが、それでもこんなに血色になるほど脅した記憶はないぞ。


「それで、何かあったんですか?」

「はい……その……」

苦虫をかみつぶしたような顔をしながらランドを一瞥だけすると、重たい口を開いた。

「私たちが油断していたばかりに、人間の捕虜が2人も逃げたようで……」

「あぁなるほど」

「どうか、どうか処罰はこの私めだけで御赦しを……!」

平身低頭とはまさにこのこと、村長はつむじが見えるくらいに頭を下げている。

その後ろではさっきまで白かったスーラーも真っ青になって頭を下げているから、ここに来るまでに聞いていたんだろう。


「それについては処罰なんてない。そもそも逃がしておくよう指示を出したの俺だからな」

「そ、そうでしたか!!いや、しかし逃がしてしまったのは事実です。大変申し訳ございませんでした」

そう言って再び頭を下げた村長とスーラーだが、チラリと見える顔からは険がとれて血色も戻っている。


これで村長の胃に穴が空くことは防げた、というかランドはなんで俺が逃がすよう指示出したことを伝えてないんだよ。

俺たちに反抗的もしくは亜人種を見下している捕虜を逃がすって俺たちだけの会議でしただろ。

俺から伝えるが確実だったが、出発前で時間的な理由と周囲で誰が聞いているかも分からないから、俺たちが出た後に内密に伝えておくって決めていたはず。


「しかしそれならどうしてランド殿は私たちに言って下さらなかったのでしょうか」

少し非難混じりの言葉に俺も同意しかないのだが

「いやランドは自分の研究しか興味ないので忘れてたみたいです」

なんて部下に憎悪が向けられるようなことは口が裂けても言えない。

いい上司ってのは部下の失敗を庇いつつ、責任を取ることだ。

決して人の成果をぶんどって責任を押し付ける、俺の元上司のクソ野郎みてぇのことじゃねぇ。

「すまない、村長に伝えておくようにと指示を出し忘れていたみたいでな。俺が悪かった、すまない」

「いえいえ!多くを決めたならば失念することもありましょう。仕方ないでしょう。そしてそちらの人間たちの疑惑は晴れたのも良かったことです」

村長が示した先には、3人の人間たち。

あぁ~なるほど、脱走の手引きをしたと思われていたわけで、村民から追われていたと。

それでランドが保護していたというわけか。

めんどくせぇって言ってるが、ランドは自業自得じゃねぇーかよ。


「それでは私は村民に人間たちについて説明してまいりますので……」

そう言って踵を返す村長だったが、まだ本題すら言ってない。

「ちょっと待ってくれ。後で俺がいない間どんなことをしたのか情報共有をしてもらうから、作戦室まで来てくれ。それと……エルフは普段は何を食べているんだ?」

「なるほど。分かりました。そして何を食べているか、ですか?普段は森の恵みを頂いておりますが……いや、僭越ながら昨日ランド殿が出してくださった料理の虜になった者が多くて……あちらの方を好む者は多いと思います」

「ランドの飯?あぁあのチキンソテーか」

仲間は俺がいない間でも問題無いよう、自分の好きな料理をアイテムボックスに常備している。

ただランドは色んなものを食うのがめんどくせぇ、そんなことを考える暇があるなら研究だっつって、最下級のチキンソテーを死ぬほど溜め込んでるんだよな。


そういうお前のアイテムボックスには何が詰まってるんだって?

そりゃもちろん、今までプレイしてきてゲットした料理とかアチーブメントのために買い込んだ料理もあるから、無骨な丸焼き料理から宮廷料理に至るまで、ほぼ全ての食材が詰め込まれている。


とと、話を戻して。

「分かった。それじゃ俺たちの持っている食料を出そう。だからついでだ、村民にこの家の1階に来るよう伝えておいてくれ。捕虜脱走を伝え忘れてた俺からの謝意ってことで」

こうやってヘイト管理しておかないと、後々この村で活動しにくいからな。

「なるほど、分かりました!それでは行ってまいります」

さっきまでとは明らかに違う足取りで、階下へと走っていく村長を見送った。

「……ランド」

「あんだぁ?」

()()を1階に来たエルフたちに配ってこい」

「なんでだよ!?あっしは──」

「それとも今回の罰として、これの代金をお前に渡す研究素材から天引きしたほうがいいか?好きな方を選ばせてやる」

「行ってきやす!!」

ランドは俺からのアイテムを受け取ると、ドタバタ喧しく階下へと降りていくのだった。




「さて、馬鹿の説教はこれくらいにして、だ。次はお前たちに関係することを話そうか」

俺の視線の先には、息をのむ人間の3人がいる。

「現段階ではお前たちは捕虜という立場だが、今後の身の振り方を考えてもらう。ここで村民になるもよし、故郷に帰るもよしだ。もちろんその後も干渉しない。ただし、再び戦場で(まみ)えても命の保証はしない。これが条件だ」

早い話、捕虜の解放だ。

どっからどう見ても一般兵のこいつらに身代金もクソもないし、何より捕虜を持ち続けても何の利も得られない。

だからと言ってすぐに処分するなら、そもそも捕虜を取る必要はなかった。

「もちろん村民というのはエルフたちと同じ待遇だ。俺と同種だからといって特別扱いなんてしないし、したら厳罰に処す」

俺としては人間嫌いのエルフたちとの融和政策に使いたいところ。

じゃないとどうしてもこの町で活動しにくいからな。


「あの……質問をいいですか?」

「いいぞ。確かエデル、だったか?」

金髪碧眼でまさに西洋のイケメンといった風貌の男が質問してきた。

「そうです、エデルです。それで質問なのですが……どうして俺たち()()選択肢を?」

俺たち”には”の部分が強調して言う。

「それは亜人種に嫌悪感を覚えず反抗の気配が無かったからだな。どちらか片方でも持たれていたら……な?」

「は、はは……それはよかった、というべきですかね」

エデルと後ろにいた恐らく同郷の女イルマも顔を歪めて笑っている。


「それで答えは?」

「……少し私たちだけで考えさせていただくことはできますか?」

口を一文字に結んだエデルが言うと、イルマとユルクもコックリと頷く。

俺は気軽に聞いているが、間違いなくこの問いの答えは将来に直結することだ。

「もちろん。ただし回答期限は明日の正午までにさせてもらう。話は以上だな、それでは家に戻って話し合って来るといい」

エデルたちは頭を下げて感謝すると、難しい顔をして階下へと降りて行った。


俺としては数少ない人間だからこそ残って人間に悪意が向いた時、俺の代わりに憎悪を受け止める役になって欲しい。

ただ下手な人間を入れて、人間同士の間が悪くなっては本末転倒だからな。

だから俺はこの3人の人間を特別扱いして、仲間になるかどうかって聞いたわけだ。


「我が主」

さっきまで置物のように静かに侍ってくれたオルクスが、珍しく俺の思案中に声をかけてきた。

「どうした?」

「寂しい、見える」

「そんなことない。というか俺がそんな顔してたか?」

「してた。人間、いない、寂しい、我が主、きっと」

「……違う。そんなこと言ってないで村の視察でも行くぞ!」

これ以上オルクスに突っ込まれるのも腹立たしいから、俺はさっさと階下へと向かうのだった。


ちなみに階下ではランドが、アイテムボックスからたい焼きを取り出しては大量にくるエルフに配っていた。

予想通り甘いたい焼きは大人気だったようで、ランドのやつれ具合からどれだけ忙しいかも分かる。

無料で配布っていっても、意外に賞品の受け渡しって面倒だからな。

俺はそそくさと元村長宅から飛び出したが、背後から俺の名を呼ぶ叫び声が聞こえたが、きっと気のせいだろう。

名目上エルフの村長と主人公は同格ですが、実力差は違いすぎるからこんな関係に。

たい焼きは頭と尻尾どっちから食べるっていう派閥があるみたいですが、自分は気が向いた方から食べる派でした。


面白いと思った人は、ぜひブックマークや評価、レビューをして頂けると嬉しいです。

筆者の執筆モチベーションにも繋がるので、ぜひよろしくお願いします!

X(@KenRinYa)もやっているので、フォローもよろしくお願いします!

また感想や質問、要望などもコメントかXで受け付けていますので、ぜひぜひお送りください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ