09 大切な選択
1年でトラブルが続出した所為か、その後は平穏な学生生活が過ごせて、3年も半分が過ぎました。私達は学校内の交流しか持たず、地に足が着いた行動のみで平和に勉強しています。
恋愛には余り気にせず、父様に連れられて出た社交界でも、軽々しい行動をしないので、かなり大人しいと見られている様で、逆に人気が有るそうです。でも、保護者の壁は厚く、私自身、ハニートラップに近づかないので、高嶺の花?
因みにファッブルを始め、3人とも、この夏に婚約者が決まりました。特にケビンは幼馴染らしく、元々仲も良かったそうで、なんとなく、ずっと一緒になるんじゃ無いかな〜とお互いに思っていたとか。羨ましいかも。
「残りは私だけですね。優秀な人から売れて行く様で、寂しいです。」
と呟くと、お祖母様が寄って来て、
「ミッシェルがその気にならないと話せないから。と待っている人達は居るのよ。紹介しても良いかしら?」
と言うではないですか。驚きました。今までその様な話は有りませんでしたし、侯爵家を継ぐと言う事で、政略結婚かも。と少し諦めが出始めていたので、
「私の意見を聞いてもらえるのですか?」
と叫んでしまいました。長期休暇も半分以上過ぎて、パーティも何回か連れて行かれましたが、そんな気配は感じた事が無かったのに。
「何人か、私の友人の孫娘を紹介した筈だけど、ミッシェルは相手に興味を見せなかったでしょ?だから、皆んな様子見をしていたのよ。ほら、結婚自体はミッシェルが卒業後数年しても問題無いからって。
まぁ、ミッシェルと同い年の娘さんには諦めた方も居たけどね。年下の娘さんが多いから。」
と笑うお祖母様。一度はお話した事が有る人ばかりと聞かされ、そう言う目で見ていなかったので、印象に残っていないと落ち込むと、また笑って身上書を数冊持って来てくれました。
今日はあの身上書の中のお一人との顔合わせです。レイチェルは王都のガレット伯爵家の次女で、一つ下の後輩です。2年Aクラスに在籍しており、手芸部で刺繍の取り纏めをしているとか。
会ってみると、私が水掛けをしている時に、薬草園や隣りの畑に来ては花のデッサンをしている子でした。
「ミッシェル様。やっとご紹介頂けました。レイチェル・ガレットと申します。私、入学式の時に転んでしまって泣いていた時に頂いたハンカチを御守りにして、ずっと持っています。
あの、覚えていらっしゃいますか?」
ハキハキとした口調で明るく、とても良い印象です。
「ごめんなさい。擦り傷にハンカチを巻いた記憶は有りますが、それがどなたかまで記憶していませんでした。でも、そんなに喜んで頂けて嬉しいです。」
思わず笑顔になりました。こんな好意の持ち方をしてくれるなんて、初めてかも。
「そうですよね。学年が違うし、紹介も無く話し掛けられなくて、こっそりと?周囲を彷徨いてました。」
と笑顔で返して来ます。
「私が水掛けをしている時に、よくデッサンしているのは見ていました。単純に、絵を描くのが趣味なのかなと思っていましたよ。それと、お祖母様からレイチェルさんの趣味は刺繍と伺ったのでその為かもと思いました。」
気持ち良く話していて、気付いたら夕方になってました。
年齢も近く、同じ学校に通っているという事で、最初に紹介してもらったのですが、とても好印象でした。お祖母様には後三人ご紹介頂く予定なのですが。少し悩みます。正直にお祖母様に相談すると、
「ミッシェルはどなたかとお付き合いした事が無いし、今までに貴方に押しかけて来た人が酷過ぎるから比較対象にはならないの。レイチェルさんも素敵なご令嬢ですけど、待っていてくれたのは彼女だけじゃ無いの。
他の三人にも誠意を見せるつもりで顔合わせはしてもらいますね。」
と言われました。二回目は隣りのアンバー公爵家の長女のチェルシー様。二つ下で、王都の違う方の学校に通っています。話した感じは、なんと言うか、お嬢様?幼い処というか、我が儘な処というか、私とは合わないと感じました。
三回目は王都を挟んだ向い側のパスツイート侯爵家の三女で、リデル様。3年Cクラスに在籍しているそうで、私の1年の時の噂を知っているからか、馬鹿にした態度を取って来ます。この人は、私を待っていたのでは無く、言葉は悪いのですが、貰い手が無いのではないでしょうか。
最後は派閥内のカビラ伯爵家の長女のアリエットさん。お祖母様には悪いのですが、この人はダメです。表面上は繕って会話して、機嫌良く帰ってもらいましたが、お祖母様に告げ口です。
「お祖母様、スパムを覚えていますか?私が彼を調べてもらった時に、彼とお付き合いしていたのがアリエットさんです。他校生だった為、名前と顔が一致していなかったので気付きませんでしたが、話の途中で気付きました。彼女は私が知らないと思っているのでしょうね。昔話の様にスパムの名前を出した処、少し動揺したのか口調がおかしくなりましたよ。あの時には引っ掛かりませんでしたが、カビラ伯爵家も再調査が必要ですか?」
お祖母様のお勧めはチェルシー様だった様ですが、可愛いと我が儘を履き違えている処が、私には無理かなと思い、後2年で良い成長を遂げて変わると期待するのも難しい。と、結論を言うと、諦めてくれました。
正直な処、あの四人の中で私を見ていたのはレイチェルさんだけだと思うのですよね。他の三人はシュバイツアー侯爵家嫡男と見ていたと思います。
お祖父様と父様に、公爵家や侯爵家と縁を繋げなくて申し訳有りません。と謝ると、二人とも、
「ミッシェルが一番相性が合うと決めたのだから、間違っていない。我が侯爵家には政略結婚など必要無い。」
と背中を押してくれました。




