10 これを乗り越えて幸せになる予定です。
休暇中に無事にレイチェルと婚約を済ませて、意気揚々と学校に戻りました。ファッブル達にも紹介して、結婚までの一年半でする準備の話とか、私が浮かれていると、ケビンが、
「ミッシェル様、Cクラスの友人から、侯爵家の令嬢が、卒業後ミッシェル様と結婚すると公言していると聞きました。思い当たる事はございますか?」
と聞いて来ました。レイチェルは二年のAクラスです。何を血迷って!と思ったのですが、
「もしかしたら、夏季休暇中にお見合いした相手の一人かもしれません。パスツイート侯爵家のリデル嬢なら、相性が悪いので絶対無理とお断りしたのですが、何か思い違いをされているのでしょう。
私は既にレイチェルと婚約をして届出も受理されています。」
と、無視を決めたのですが、数日後、レイチェルが襲われそうになったと連絡を受けました。
幸いにもレイチェルは馬車で通学しているので、怪我は有りませんでしたが、怖かったのでしょう。数日、休学すると学校に連絡が来たそうです。
その話が寮内でも噂されて、食堂で皆が食事をしているのに、王都は平和な筈なのに、暴漢に狙われるなんて、何をしたのかしらね。と声高に話す令嬢の姿を見て、あぁそう言う事か。と気付いてしまいました。
早速、お祖父様に手紙を出し、レイチェルの事件とパスツイート侯爵家のリデル嬢の話を伝えました。学校内は意外と監視の目が増えたので安心していたのですが、私の想像が当たったのなら、学校内も危険になります。
三人にも情報を共有してリデル嬢の行動を監視していると、夜、暗くなってから外に出る所を見つけました。ポールに寮監を呼んでもらい、私達はひっそりと跡を付けると、柵の切れ目から手が出て、何かの受け渡しをしている様でした。木の影に隠れて話を聞くと、
「顔に酷い怪我をさせて!って言ったのに出来なかったらしいわね!馬車が襲われただけでは彼女に婚約解消させるのは難しいじゃない!次はちゃんと大怪我を負わせるのよ!」
と言ってます。丁度寮監も来ていて一緒に話を聞きました。私は土魔法を使って、柵の外にいる人物を拘束し、外の人が動けないと叫んだのを合図に、寮監がリデル嬢の拘束に動きました。外の人物に対しては既にポールが警備隊に通報しに走っています。
寮監がリデル嬢を応接室に連れて行き、リデル嬢が受け取った用紙を回収しました。侯爵令嬢といえど流石に寮監には敵わない様です。受け渡しを見られていたのはキツかったのでしょう。素直に提出してます。
ポールに呼ばれて外に向かいます。警備隊が来たので拘束した魔法を解くのです。リデル嬢は男にお金を払っていた様です。それにしても、何処であんなのと知り合ったのでしょうね。
翌日、学校から呼び出されたパスツイート侯爵が寮に来ました。私は状況から関係者と見做されて寮監から立会いに呼ばれてます。リデル嬢は俯いたままで顔を上げようとしません。
「済まない。私は事情が分かっていないので、説明が欲しい。」
寮監に説明を求めているが、全て知っているのはリデル嬢だけだと思うのですよね。私は想像でしかないし。
「私は昨夜、寮生に呼ばれて向かった先で、リデル嬢が誰かと示し合わせてお金のやり取りをし、その際に受け取っていたこの用紙しか情報を持っていません。詳しくはお嬢様に聞いて下さい。」
侯爵がリデル嬢を見るが、俯いたままで反応しません。仕方なく、
「初めまして。私はシュバイツアー侯爵家のミッシェルと言います。この夏に、お祖母様の紹介でリデル嬢と一回、お話させて頂いた事があります。
私には婚約したばかりの令嬢が居るのですが、先日、馬車で通学時に暴漢に襲われました。その方が今回の件の被害者と思われます。
そして、私がそう思う理由として、休み明けに学校で、リデル嬢が私と婚約すると公言していると第三者から聞いています。」
侯爵は驚いて私を見ました。
「妻からリデルが見合いをしたとは聞きました。元々我が家とシュバイツアー侯爵家に繋がりは無かったと思ってはいたが、見合いの結果、やはり縁が無かったとだけ報告されました。妻からはリデルにも断られた事はちゃんと伝えたと言われて、見合い自体私は忘れていましたが。なんでリデルは………」
と呆然とした表情になりました。そこに警備隊から報告書が届いて、レイチェル嬢の襲撃をお金を払って指示したのがリデル嬢だと判明したと有りました。
侯爵がそれをリデル嬢に突き付けると、パッと顔を上げて、
「だって、彼女は伯爵家なのよ!しかも私より年下なのに、なんで婚約出来るの?彼女が出来るなら、私だって婚約しても良いじゃない!彼女が居なくなれば私が侯爵家と婚約出来ると思ったから、絶対に排除しなきゃと思ったのよ。教室でそう呟いたら、あの人を紹介されたのよ。」
と叫びました。侯爵が誰に紹介された!とリデル嬢の肩を掴んで揺さぶっていますね。もう、私がここに居る必要は無さそうですので、寮監にアイコンタクトを取って退室しました。
レイチェルに解決したと連絡しました。たぶん、パスツイート侯爵家から賠償が来るでしょう。お祖母様にも今回の事件をお知らせしました。お祖母様繋がりで受けた話でしたから、知らせる必要があると思ったからです。
お祖母様の返信に驚きました。家同士も、お祖母様にもなんの繋がりも無かったのに、当人達が同級生だからと言う理由で押し込まれただけだったそうです。同じ侯爵家という事と、同じ学校に通う私達が知り合いで好意を持っているのかもと思って会わせただけと言われて、お祖母様の顔を立てる為に会ったのにとガッカリしました。
リデル嬢は退学し、修道院に入れられたそうです。暴漢を紹介した男爵子息は、当然退学と思いきや、停学で済んだそうです。質の悪い冗談で、侯爵令嬢が本気にするとは思わなかったと泣いて謝罪したそうです。そんな後ろ暗い人と交流があると分かった上での措置としては信じられない話です。………まぁ、関わりたくないから、我慢しますけど、男爵家の寄親の公爵家が出て来たらしいので、落とし所だったのでしょう。
取り敢えず、レイチェルは安心して復学出来ました。
私自身は三年間Aクラスでも上位の成績で過ごし、問題無く過ごしたつもりなのに、最初と最後で迷惑な事件に巻き込まれました。三人からは女難だったね。と笑われましたけど、本当に良い迷惑でした。
卒業式は無事に終わり、私は侯爵領に戻る事になりました。レイチェルは来年卒業したら、侯爵領に嫁いで来ます。それまでの一年は、私が定期的に王都に来て交流を図る事になります。私は学生気分でデート出来るので少し得した気持ちも有りますが、王都でという所がネックです。
予め、全て予約して陰から警備させれば問題ない。と父様は笑うけど、私にとって王都は鬼門なのですよ。まぁ、一年の辛抱ですね。
そして、耐え忍んだ?一年が過ぎ、先日、晴れやかに卒業を迎えたレイチェルが今日、侯爵領に嫁いで来ます。優しい父様とお祖母様、厳しくても優しいお祖父様に護られて幸せになった私の元に、更に幸せが訪れます。
不条理な迷惑はこれからも私を悩ませる事が有るかもしれませんが、今日からは、私がレイチェルを護って跳ね返すのです。………一人では難しくても、頼れる人に囲まれている私はきっと無敵になりました。
ちょっと不幸な事に気付いたので、山なし谷なしな、平和な生活を目指しているミッシェル君。を書きたいなぁと思って始めたのですが。素直で優しいミッシェル君の筈が、捻くれて来てしまったのは何故?と、書きながら、何処に向かっているの?になってます。
この後はレイチェルちゃんに癒されて、優しいミッシェル君に戻る筈!………なので、そんな幸せなシュバイツアー家を想像して下さいね。
行き先が不明になってしまったので、ミッシェル君の話は此処で終わります。優しい人に囲まれて幸せ一杯な未来を描く予定だったのになぁ。着地点は何処!?




