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虹灯す  作者: かすり
7/40

第一幕/第二話・③《自》

Next EP:2/18

BGM: https://on.soundcloud.com/CsJZJc99Dqo1JcQx8


一話・鬼出電入(きしゅつでんにゅう)…目にも止まらない速さで現れたり、消えたりすること。

二話・夜郎自大(やろうじだい) …自分の力量も知らずに、偉そうに振舞うこと。

三話・雨笠煙蓑(うりゅうえんさ)…雨の中で働いている漁師の容姿を言い表す言葉。

四話・斗南一人(となんのいちにん)…この世で最もすぐれている人のこと。

(引用元・四字熟語辞典 https://yoji.jitenon.jp/)


「美味じゃ」

「あのぉ、ここ回転寿司違うんですけど……」

「かいてんずしぃ? なんじゃそれは」

「チェーンの安い寿司屋! 一皿百円ぐらいやん!」

「ワシは安い肴は食わんぞ」

 大人びた、落ち着きのある(すし)屋だった。というか鮓屋に落ち着きがあるとかあまり言わないのかもしれないけど、雰囲気がとにかくそうなのだ。伝統的というか歴史ある感じというか。一言でいえば年季を感じる風情だ。物静かに佇む大将がその説得力を増す。

店の名前何て読むんだろう。金へんとなんか……? 難しい漢字で読めない。

 そんな場違いな所に中高生だろうか、ジャージを着た少女と明らかに小学生の見た目であるにも関わらずどこか古臭い口調の二人組がカウンター席に腰掛けていた。ジャージ少女はなんの躊躇なくバクバクと鮓を頬張るチビの横顔に口をパクパクさせている。寿司を食わせろと言って駄々を捏ね始めたのは、数日前からニコラの家で居候を始めた住所不特定年齢不詳のチビ少女=マユヒメ様だ。威勢よく家を飛び出していくから懐が厚いのかと思えば、金目の物は一切持っていないと言うから高一女子はこうして青ざめている。ウチ婆ちゃんも爺ちゃんもおらんからお年玉あんま貰われへんのよね。せっかく小遣い残してたのに。頬杖をつく彼女の表情はどこか寂しげだった。

「大将、にぎりもうニ人前じゃ」

「ええ加減にせんかい」

お供の注文を即座に撤回させるニコラ。

「にしても此処の鮓は美味い。それに何処か懐かしい味がするのじゃ」

家で揚げ物を食う時みたいに、幸せに満ちた顔を披露してくれる。

そんなことより。とジャージ少女は切り出した。

ついでに話がある、と彼女を連れ出したのはマユヒメだ。その話とはなんなのか、本題に触れてみる。

「オヌシ、最近どうじゃ」

最近? なに家庭訪問? 親戚の叔父ちゃんみたいな絡み方やん。

でも最近は学校生活にも慣れてきたし友達も出来たし何より、また薙刀を握れるようになった。

勉学は相変わらずだけどその他は充実している。曇ってた視界が晴れてきたような気がして、毎日が新鮮なのです。

などと、ニコラは身の上のあれこれについて嬉々と答えた。

「……それで副部長は美人やけど声デカくてな、あとカスミちゃんは……」

「オヌシ」

トン、と机を叩く音と共にマユヒメはジャージ少女の言葉を遮った。

「忘れてはおらぬか、オヌシの使命を。ワシが此処へきた理由を」

使命? 理由? そんなものあっただろうか。ここ数日の記憶を辿ってみると。

そういえばそうだ。このチビと出会った日の出来事。それからウチに転がり込んできた理由。

あっ、とニコラは思い出す。

「ハネヒメじゃ。ヤツの復活を阻止せねばならん」

そう言って亜麻色髪の少女は右手に握ったお猪口(ちょこ)を口に当て、ぐいっと飲み干した。

「その絵面結構ヤバいんやけど」

「吟醸酒しか勝たぬ」

未成年飲酒やん。もしかしてウチ捕まる? 呑ませた側も罪を問われるって聞いたことがある。不安がる黒髪少女

だが「ワシを餓鬼だと思うな。地獄にいた時間を合わせば優に九百は超えておる」

九百って年齢のことだろうか。何言ってんだろこの人。意味わかんね。

とにかく、と脱線した話を元に戻すマユヒメ。

「部活に入っただのなんだのと浮かれておるが、それでハネヒメを倒せると思うておるのか?」

「と言いますと?」

「お前の相手は怪異の化物じゃ。汝等(うぬら)小童同士の薙刀ちゃんばらなんぞなんの練習にもならんぞ」

確かにそういえばそうだ。負けず嫌いが発動して入部テスト再挑戦、そのまま流れで入部したが本来の目的は『日本を征服しようと企む悪霊=翅姫の復活を阻止すること』であって、インハイましてや例のお祭り全国大会で優勝することでもない。

「そうじゃ、仲間は多いほうがいい。その友達とやらもまとめて鍛えてやろうか」

「は!?」

ナイスアイデアと言わんばかりに高揚した声色で立ち上がるマユヒメ。酒の所為か少し頰が赤い。その発言に目を丸くして驚くニコラ。冗談じゃない。あんな危険な目に皆を合わせるわけにはいかないと、数日前に神社で起こった出来事を思い返す。

「ならこの話は終わりじゃな。オヌシが戦うと決めたのじゃ、ちまちま遊んどる時間は無いぞ」

そうだけど、と歯切れの悪い言葉を残す黒髪少女。入部したばかりなのにもう辞めますなんて気不味いったらありゃしない。そもそも私が戦うとして、これからなにをすれば? 正直実感が湧いていない。確かにあの夜、怪物を目の当たりにしたこともこの手に握った薙刀の感触も現実で起きたことだ。でもその後ハネヒメを倒せやら日本を救えなど命じられて、なるほど了解しましたと頷けるほど私は賢くない。まずは何をどうるするべきなのか。明確な指標が必要なのだ。

「いいじゃろう、よく聞け」

落ち着いた声でそう言う飲酒少女。スッと席に着き、着物の(しわ)を整えた。

かのように見えた。

バンッ! 机を叩く鈍い音。

「あへなき最期は物怪(もののけ)翅御台(ハネミダイ)の名を残す、思ひ出づるも涙にて袖はかはかぬ筒井筒!!!」

「うわぁっ!?」

あまりの唐突な大声に、お茶を噴き出すシラフ少女。大人びたこの空気を台無しにする。

なんとマユヒメは椅子の上に立ち上がり、声を高らかにして叫び始めたのだ。

「いつか御身ものびやかに春の柳生の糸長く、枝を連ぬる御契り」

「なぁマジで勘弁して!」

ヘッドロックの要領で、立ち上がったチビ少女の口元を力強く押さえた。むぐぐ……と唸る亜麻色髪の女。弱冠半泣きになりながら、大将にヘコヘコする十六歳。「すんません、すんません」と頭を上下に振る。対して大将は気にせず落ち着いた様子だ、作業に没頭している。他に客がいなくて良かった。ニコラの想いが伝わったのか、腕の中の抵抗力は少しずつ削がれていった。

「まったく、つまらん奴じゃ」

はぁ、と溜息を吐くクソガキツインテール。一息吐きたいのはこっちだとジャージの少女は睨む。

「前にも言った通り、ハネヒメの目的は“現世への復讐”じゃ。近いうちに奴は地獄から連れ帰った悪霊と共に、

現存の勢力を率いてこの世にやってくる。人の魂を食い尽くすつもりじゃな。それを迎え撃つのがワシらの使命」

やっとマトモに話し始める。

「悪霊は蓄えた怨念の強さで力が決まる。特に奴の場合は他とは比べ物にならん。仮に復活した悪霊共が時を経て

本来の力を取り戻せばまず勝機は無い」

なんかヤバそうだなぁ。

神社で会った化物より手強い相手。おっかない。

「対してワシらが有利に戦う方法が一つだけある。それは“奇襲”じゃ」

奇襲?

「幸いにも奴らはワシの復活に気づいておらぬ。でなければ早々にワシを消しておるじゃろう。今この世で自分達に楯突ける者など一人もおらぬと踏んでおる筈じゃ。であればその隙をつくまで」

つまり、敵が復活したばかりで弱っているタイミングを狙い奇襲をかける。そういうわけだとニコラは理解する。

「で、いつ? どこででてくるん? そのハネヒメさん達ってのは」

「さぁな。出現するとすれば人の多く集まる場所と時を選ぶだろうが……現代の地理には詳しくなくてな」

ふーん。と相槌を一つ。……人が集まりやすいスポットとタイミングってことか。休日のショッピングモールとか?いや、規模が小さ過ぎるでしょ。人が大勢集まると言えば、夏のお祭りなんてのは……ってとこまで熟考して。

あ。少女の頭の中で一つだけ思い当たる節があった。

「天晴祭り……」

「あっぱれェ?」

マユヒメが怪訝な顔で隣に座る高校生の顔を覗き込む。

「そうそう、なんかな、全国で開かれるお祭りがあるらしいねん。ここ数年出来んかった分取り戻そうゆうて。最近観光客増えてるらしいしようけ人集まるんちゃ」

言い終わる前に。

「それじゃア!」

パンッと手を叩き着物少女は笑みを浮かべた。

頼むから静かにしてと、頭を抱えて呻くジャージ少女。

大将の方をチラ見するが、やはり気にする素振りは見せない。

「詳しく教えろ」

 それから酔っ払いに、祭りについて知っている情報を伝えた。薙刀の大会があるということも含めて。

一通りの話を聞き終えた亜麻色髪少女は暫くしてから「うむ」と頷き口を開いた。

「ならばこうしよう。オヌシはその大会に出場し、ハネヒメの動向を追え。各地を転々とすれば奴らの尻尾を掴めるかもしれぬ」

なんで勝手に決めてんねんこのチビ。そう思ったニコラだが、確かに彼女の言う通りだ。闇雲にあちこちを探し回るより人の集まる場所と時間を効率的に狙える。あと久々に旅行できる。

「よし、方向は決まったな。であればワシらが次にすべきことはァ……!」

「でかい声、禁止」

嫌な予感がしたので先に釘を刺しておいた。

ムッとした顔で隣の女子高生を睨むマユヒメ。ずれ落ちて来た着物の襟元を整えて呟く。

「修行じゃ。生身の人間などでは悪霊に手も足も出ぬ」

じゃあなんでウチに声かけたん? 警察じゃアカンの? そんな疑問を浮かべる平凡少女だが、すでに答えは決まっていた。

「“気魄”の習得。それがオヌシを強くする最大のカギじゃ」


⭐︎


「おりゃあッ!」

 鮓屋の一件から一週間ほど経った。この期間がとても短く感じたのはきっと、マユヒメによる地獄の薙刀レッスンが原因だろう。今こうしている間にも刀と刀のぶつかり合う音が木々の葉を散らす勢いで鳴り響く。

「甘い」

その呟きと共に、一本の薙刀が宙を舞った。防ぐ術を失った私の額を容赦なく(みね)で叩く。

ゴンっという鈍い音、骨振動を経て伝播する激痛。思わずしゃがみこむ。

「いだァッ!」

「おぉ〜」

目尻に涙を溜めて叫び声を上げる私と、それを眺めて歓声を上げる者達。

 ここは京都御苑の一角。散った桜が池の水面に浮かぶ様子を苔に覆われた橋から眺める。

さらに池を挟んだ反対側にはお年を召した御老人達が物珍しそうに私とマユヒメの打ち合いを観戦している。

余興かなにかと勘違いしているのだろう、一本(主に私が取られる)が生まれる度にこうして歓声が上がるのだから余計に悔しくなる。

ーーアタシの時代は必修だったけどねぇ、薙刀。

ーー真剣なんて久々に見るのぉ。

口々に声を漏らす年寄り達。とにかく気が散って成らない。

何故こんな公共の場でチャンバラなんてしてるのか。彼女曰く「雰囲気的に気持ちが入るから」らしい。

意味わからん。

「なんもガチで打つ必要ないやろ……!」

スマホの内カメでおでこを覗く私。うわ、たんこぶになってる。

対してその原因を作った張本人は声色ひとつ変えない。

「勝負は真剣じゃぞ。戦ならオヌシはとっくに死んどる。相手はなんせ悪霊じゃからな」

わかってるけど。心の中で何度もそう唱えながら立ち上がる。峯で私の額を打突したのは、正真正銘その薙刀が

本物である為だ。切先で殴れば脳天カチ割れ真っ二つ。防具は速度が落ちるので要らないと着物少女は言う。

つまりこの稽古は総じて生身の“殺陣”なのだ。一歩間違えれば死ぬ。もちろん私が。

幼少から練習してきた薙刀はあくまで競技としてのものだった。しかし、これから必要になるのは相手を殺す為の

刀だ。明確な殺意がなければ命を落とすのは自分だと強く言い聞かされた。

生半可な気持ちでは戦えないのだ。

「日も暮れてきた。今日は終いにするぞ」

気付けばいつの間にか、観衆達は失せ蛍光灯がちらほら光を灯し始めていた。身体のあちこちが痛いし疲労感も限界だ。学んだことを頭の中に反芻させる。

“打つ”ではなく“斬る”。競技と殺陣の差異に慣れず力のコントロールが難しい。ここは当面の課題になるだろう。

「……まだや。打たれっぱなしで終わらへんで」

美しい私の身体は痣だらけ。だけどそれ以上に私の勝利へのプライドはボロボロだ。このまま終わるわけには

「終いじゃ。腹減った」

……。

言い返すのも面倒になったので帰ることにした。このチビ、いつも第一優先に食欲を考える節がある。

食欲旺盛なのは私も同じなわけだが、コイツの場合は度を超えている。胃袋に穴が空いていて、そこから食べ物が漏れてしまってんじゃないかと思うくらい。なんて考えてたら、「あぁそうじゃ」と呟く声ひとつ。

すでに帰宅路に着くマユヒメは振り返らずに告げる。

「それから、オヌシに明日おつかいを頼みたいのじゃ」     


 翌日、私は自転車である場所に向かっていた。家から京都御苑を沿って南に真っ直ぐ。貴重な休日を潰すことになったが、ここ数日マユヒメのスパルタ稽古続きで休みなしだったことを思えば、丁度良い休息になるのかもしれない。

目指すは京都府中京区にある、“織部オリベ屋”というお店。この周辺には着物屋が数多く点在し、自分も七五三で着物をレンタルしに母と訪れた記憶がある。伝統的な老舗の集まる地域だ。昨夜の亜麻色少女の言伝(ことづて)を思い返す。

ーー織部屋にて、当主に伝えよ。蝶と戦う支度が必要だと。

なんでも織部屋というのは古くからマユヒメと接点があるらしい、『ワシの使いだ』と言えば伝わるらしいが本当なのか。ついでに薙刀を持っていけとのことだったが、理由は定かでない。更には異様に重たい小包みまで渡され、揺らすとジャラジャラと金の音色が聞こえる。なんだか怖かったので中身は覗かないようにした。

 セーラー服を靡かせて、気怠げにチャリを漕ぐ私。日曜の朝はランニングに励む人達とすれ違うことが多い。背中に細長い物を背負っている所為なのか、視線を幾つか感じる。にしてもなんだか落ち着かない。

(なんやろ、誰かの視線を感じる。付けられてるような……?)

思って後ろを振り返っても勿論ストーカーなんてそれらしき人は見受けない。気のせいなのは確かだが、やはり落ち着かない。まぁ私って可愛いし人の視線集めちゃうのは仕方ないんだけど。

 そうこうしているうちに目的地付近へと辿り着いてしまった。分からない事は気にかけても仕方ないので、足早に自転車をコンビニ前に停めて、織部屋とやらに向かう。老舗と聞くから、もっと古臭い木造の造りなのかと踏んでいたがそうではなかった。白と黒を基調にした、石造りの店構え。自動ドアに挟まれた向こう側、店内からはぼんやりと山吹色の淡い光が漏れる。展示された着物や織物はライトアップされて黄金色に輝いていた。

中へ入るとやはり予想とは裏腹の、喩えるなら高級ホテルのような広々としたエントランスが私を待ち受けていた。豪華なテーブルとソファが何組も用意されている。和というよりも洋の印象が強い、エレガントな空間を目の当たりにして、少し萎縮してしまう。こんな所へ来るのは初めてだ。

取り敢えず、受付カウンターで目的の人物の所在を伺うことにした。

「あのぉ、私シマ ニコラという高校生なんですけど。ここの社長さんとお話したいんですけど……」

声をかけた相手は、見るからに上物の皺一つないスーツに身を包んだ男性スタッフだった。その人は思案する様子もなく

「あぁ、代表ですか。誠に申し訳ございませんが、代表は本日のスケジュールが埋まっておりまして、面会は出来かねます」

これは、あしらわれてる。どこぞの馬の骨か分からない小娘と会わせるわけにはいかないということか。にこやかな笑顔で会話を分断される。かと言ってこのまま帰るわけにはいかない。この調子なら明日明後日を改めても結果は同じ……ならば。

「ウチ、マユヒメの使いで来ましたっ。そう伝えたら分かってくれるって」

本当に通じるかは不確かだったが、一か八かだ。手ぶらで帰るくらいならと思い切って口にした。

するとスタッフはその後もマニュアル的な表情こそ崩すことは無かったが、明らかに何かを考え込んでいる素振り。

「……分かりました。そちらの席で少々お待ち下さいませ」

通じたのか? やがて男性店員は一礼し、奥のエレベーターへと姿を消していくのだった。

それから十分程の間、私は座り慣れないフカフカのソファで、目前の菓子と紅茶に手を程よく頂き身を硬くしながら返答を待っていた。すると店の奥からこれまた立派な着物に身を包む男性と、先程のスタッフが姿を現した。入り口で一言二言話した後、彼らは互いに会釈をして双方別々の方向へ歩き始めた。

それからスーツの男が、私の元へやって来て礼をする。

「お待たせ致しました。代表のいる三階へご案内致します。こちらへどうぞ」

予想斜め向こうの展開。言われるがままに誘導される。

静寂に包まれたエレベーターが三階で停止し、ゆっくり扉が開いた。

「ごゆっくりどうぞ」

あれっ一緒に来ないんかい。

エレベーターは私一人を残して去ってしまった。少し心細くなって辺りを見渡す。  

 コンクリートの天井にはスポットライト。床は白い大理石で覆われ、フロア全体をまたしても山吹色の薄暗い灯りが照らす。燭台の火が揺れる城内のような明るさ。洋風で現代的な雰囲気の中に混ざり合う和があった。雪、月、()の花。どれも同じ色だが微妙に違う数種類の白、それから澄んだ川のような(はなだ)色や燻んだ古代紫などの美しい色々に染められた織物達が照明に照らされ艶やかに輝いていた。絢爛豪華(けんらんごうか)に彩られた着物や鞄、手拭いのような織目の肌理(きめ)細かい小道具も幾つか飾られている。きっとこのフロアはギャラリーだ。美しい品々に視線を奪われるも、その中に一際目を引くものがあった。

「うわぁぁ……」

この階に展示されているものの中で一番大きな着物。私が着るにしても余りある寸法だ。鬱金(うこん)色を基調とした中に、咲き乱れるのは五枚金色に捩れ花弁の巴草(ともえそう)。その中に混じる春蘭(しゅんらん)は朱色が燦爛(さんらん)に映え、力強く咲いている。袖や裾の端には矢羽根を加えた亀甲文、帯の部分を中心に淡い桃色の桜や花々を散らした花車(はなぐるま)が散りばめられ、その花道を掻い潜るようにして天に昇るのは数羽の鶴……ではなく亜麻色に近い白の(かいこ)、即ち()である。

綾羅錦繍(りょうらきんしゅう)を目一杯舞うその姿に、どうしてか私の視線は釘付けだ。

あれほど小さな体なのに、まるで主役が自分たちであるかのような表情。いや、小さな虫に逐一表情など存在しないとは解してはいるものの、そう感じずにはいられなかった。

「その逸品は約千五百年に渡り、我等“織部屋”が代々受け継いできた家宝である」

 和紙に真水を溶かすように、その人影はすうっと鬱金色の着物に浮かび上がった。

「なに、マユヒメ様の使いやて? 何処でその名前聞いたんや」

声色は女。シルエットは私より少し小さいくらい。

そう訊ねられて、私は今頃家でゴロゴロしながらポテチでも食べているであろう亜麻色髪の薙刀少女との関係性を洗いざらい説明した。神社で助けてもらった事とか日本の危機を救うために立ち上がったとか。布越しに佇む顔の知れない女性は私の話を聞き、十秒ほど黙り込むと急に声を荒げた。

「あのマユヒメ様が幼女で育ち盛り食べ盛りの呑んだくれメスガキやて!? んなわけあらへんやろ!」

そこまでボロクソに言った憶えはない。が、よほど気に障ったことでもあったのか、肩をわなわな震えさせてこう言った。

「訳わからんこと抜かしおって。オマエはんの口から出た(さび)、ワッチが叩き直したるわ!」

「えぇ……?」

そう言い放つ影のその手には、細長い刀のようなものが握られていた。

先端に反りがある大きな武器。間違いなく薙刀だ。

「その話、信じて欲しくばワッチを打ち負かせ!」

急な戦闘エンカウント。なんでそうなるの? 理解に苦しむが弁解の余裕はないようだ。

 捨て台詞を皮切りに、影は着物の裏から這い出て遂にその姿を現した。

唐突な一撃。相手は物陰から体を翻すと同時に脇構えから(自分から見て)右面への打突を繰り出してくる。

瞬時に腰を落として避けた後、素早い手付きで背負った薙刀を袋から引っ張り出す。

来る、二発目。頭上を通過した切先は再び、私の脳天をめがけて上段から振り下ろされる。

させるか。今度は避けることなく受け止める。物音ひとつなかったはずの空間に、靴の擦れる音と木の乾いた衝突音が反響する。拮抗する力と力。高い位置から振り下ろされた相手の一撃には勢いが加味されていて重い。

だが力勝負なら負けない。重心を立て直して反発する腕の筋肉を増強させる。

「うりゃぁッ!」

思い切り押し飛ばす。それでお互いの間合いは完全に切り離された。

改めて、その人物の恰好を観察する。

肩に届くぐらいまで伸びた黒髪と大きな黒目、一番特徴的なのはおでこの辺りに巻いたヘアバンド。可憐な韓紅(からくれない)色を主として籠目(かごめ)柄がデザインされている。見た目で言えば私より二つか三つ歳上な気がする、言葉遣いとは裏腹に少し大人びた雰囲気だ。服装は全体的には着物で振袖のように見えるのだが、機動性を重視してか袖口は広すぎず、また下腹部は太腿を露にしたスカートに身を包んでいる。自然を思わせる常盤(ときわ)色を基調としてヘアバンドと同じく赤色の牡丹(ぼたん)花が至る所に咲き乱れる華やかな衣装だ。伝統的というよりむしろ近代的な、大正ロマン的な印象である。

「我こそは織部屋三十六代目当主・織部綾嵐オリベ リョウランなり! 古くより繭姫様の五穀豊穣を受け仕えてきた氏族の末裔である!」

まるで大河ドラマばりの名乗りを上げ、駆けて間合いを詰めてくるハイカラ着物少女。そこである事に気づいた。

「え、真剣……ッ!?」

よく見ると、彼女の握る薙刀の切先は木材でも合成樹脂でもない……正真正銘の鉄であり刃物である。

もはや只の不審者だ。いきなり叫んで刃物振り回すとかヒスかよ……とドン引きする私。

だがそうも言ってられない。徐々に狭まる間合い。リョウランは中段に構えると、今度は容赦なく突きを

放ってきた。今まで試合で突きなんて使った事ないし、使われたこともない。時間的な余裕はあったものの予想外の一手に反応が遅れる。紙一重で横払いに身を守った。

「あぶな……ッ! そんなんナシやろ! しかも防具はッ!?」

思わず叫ぶ私。だが

「アリもナシもあるかぁ! 戦は試合ちゃうぞ、命の取り合いやぞおら!」

イカれてる。立て続けに「ワッチを止めたきゃ殺す気でかかって来なはれ!」なんて叫んでる。

その後も容赦なく突きを混ぜての打突を繰り出すリョウラン。

ギリギリのところで受けるか(かわ)すかの後手を踏む私。

このままでは勝てない。

だったら。

(殺す気、か)

そういえばマユヒメも言っていた。これからの戦いは一本の奪い合いなどではない。

命の奪い合いなのだと。当てるのではなく薙ぎ払わなければ勝てない、と。

(その一歩がコレだって言うなら、やってやる)

本当に切り伏せるかどうかはともかく。

大事なのはその覚悟だ。

(常識に思考を埋めるな)

薙刀女子なら薙刀女子らしく。

 

「やってやる」


 当たれば終わり。命を賭けた真剣勝負。とは言っても私が握る薙刀は競技用なので、もちろん刃物など付いてはいないが。いや、だったらむしろ都合がいい。どれだけ本気を出しても相手を殺すことはないのだから。

マユヒメはこんな事も言っていた。

ーー本来薙刀は一騎打ちにて相手を薙ぎ斬ることを想定した武器じゃ。打突部位に当てて残心を保つのではなく、

確実に殺す。戦の手順に形式はあれど、相手の仕留め方に手順などない。明確な差は、薙刀そのものの在り方にも

影響を及ぼす。そもそも相手も薙刀使いだと誰が決めた? 馬に乗ってはいかぬと誰が決めた? 矢で射ることも

(いと)わぬ。“足場”も“構え”も、全て状況によって変化する。

良いか、常識に囚われるな。戦とは“生き物”であると心得よ。

 目前の暴れ雌馬。コイツを止めるには。

想定外の状況に対応できるよう常に中段を意識していた両手の力が抜ける。

左手を左頬付近に、右手を心臓辺りへ近付けて。

「八相……やっとやる気出したか」

笑みをこぼすハイカラ娘。

突きを視野に入れ、且つ反撃の狼煙(のろし)を上げるための起爆剤、八相構え。

再び間合いを測る両者。

先程まで脳内を浮遊していた靄のような感覚は消えた。視界は今までにないほど澄んでいる。

「鬼気迫るその目ん玉……黒い焔に宿る決意。まるで“獅子”やな……でもなァ」

数秒の沈黙を破り、飛び出すリョウラン。構えは中段よりやや高め、右寄り。

八相でガラ空きになった私の右半身を狙う動き。繰り出すのは一番殺傷能力の高い突き。

「やと思うたやろ……何度も言うけどなぁ」

相対する二者。隙ありの右肩を突くかのように思えたリョウランは一瞬で薙刀を下段に持ち替えると、脳天まで切り上げる形で下から上に薙刀を振り上げた。これで私は虚を突かれ、振り払った私の一撃は無意味に空気を裂き、

代わりに私の胴体は左右真っ二つ

  

「知っとるわ。理屈には囚われんな……やろ?」


 そうなる前に。  

この瞬間を待っていた。ハイカラヒス少女が突きではなく下段からの動きに流動する瞬間。

相手に近い右脚で刃部より低い柄部を踏みつける。そのまま左足で相手の持ち手部分を蹴り上げると薙刀はバネの

ようにその手から弾け飛んだ。

「はッ!?」

動揺するリョウラン。両手には衝撃が伝わったのか、麻痺して上手く指が動いていない。

そして、宙に舞ったそれを叩き切るように私は握った薙刀を全力で振り下ろした。破壊音と共に呆気なく砕け散る刀。真っ二つになったのはリョウランの薙刀だった。これにて勝負あり。

「戦には戦法はあってもルールは無いって。誰かさんに教わったわ」

ふぅ、と一息吐く私。流石に真剣相手だと緊張感が増す。重たい肩がやっと軽くなった気がする。

「……なんやそれ」

俯いて、言葉を漏らすハイカラさん。肩をプルプル震わせている。

負けたことが悔しいのか、歯を食いしばりながら

「なんやそれ! オマエはんオモロいやんか。流石マユヒメ様が見込んだだけの事はあるでぇ。負け負けの負けや、オマエはんのこと信じたるわ!」

アッハッハっと高らかに笑うリョウラン。喜怒哀楽がバグっている。

「まぁその勾玉見た時からぜーんぶ分かっとったけどな!」

勾玉……あ!

そう言えば、マユヒメから預かっていたのは大量の賄賂(わいろ)……だけではない。

首元にぶら下げた勾玉。四つあるうちの一つがマユヒメに貰った物である。

どういう了見か分かり兼ねたが、こうしてみると意味はあったのかもしれない。

「すまんな、いきなり狂人噛ましてもうて。あまりにもガキっぽい目しとったからつい……」

そりゃ悪うござんした。この当主、あまりデリカシーは持ち合わせてないらしい。

「要件は言わんでもわかるわ。色々説明することあるから別館に集合や」

笑い疲れてヘトヘトになった様子のリョウランは、そう言うとエントランスで会った男性スタッフを私に寄越して

別館とやらに案内させるよう命じた。それから、と付け足す織部屋の当主。

「あの娘らも連れて行ったってや。客席で待ってはるわ」

あの娘ら?

なにやら不思議な一言を残して、彼女は奥の部屋へと消えていくのだった。


 なんで。

なんでなんでなんで?

「なんでおるんですか先輩!?」

エントランスにて。

衝撃の出来事。

「いやぁ、シマちゃんだけに戦わせるわけにはいかんやろ。なんせ“日本の危機”なんやから!!」

そういうことを言ってるわけではなくて。言い返そうとしたが相手はあのアラレ先輩だ。

どうせ会話は通じないと思って、隣で気まずそうに佇むメガネの先輩に視線を合わせた。

「ワタシはぜーんぶアラレに聞いたから……。ほらニコラちゃん、最近鮓屋行きはったやろ?」

はい、確かにマユヒメと。

「あの店な、魚釣りの“釣”に水瓶座の“瓶”で」

釣瓶(ツルベ)屋って読みまーす!!」

体操服上着に刺繍された小さい名前をグイッと引っ張って割り込むアラレ先輩。片仮名で“ツルベ”と書いてある。

「え、てことはあの店アラレ先輩ん家……!?」

あはは、と苦笑いを浮かべるハク先輩。

とんでもない誤算だった。つまり化け物がどうこうって話、全部筒抜けだったということだ。

因みにカスミちゃんの姿が見えないのは今日が日曜で、バイトがあるからと知っていたのでわざわざ訊ねることは

しなかった。彼女はこの事を知っているのだろうか。どないしよ。

皆を巻き込むわけにはいかないからとここ数日部活に顔を出していなかったし、内密に事を進めるつもりだった。

「お待たせ致しました」

 そうこうしているうちに、例の男性スタッフが顔を現し、別館とやらへ案内してくれる。

そこは先程までのモダンな建物と打って変わった見た目をしていた。

和か洋かと問われれば100%和だ。京都の町並みに溶け込む木造造りにこじんまりした一軒家。入り口には紅色の暖簾(のれん)が掲げられている。それを潜って横開きの扉をガラガラと押し開ける。床は石畳の、ひんやりした空間。どこか懐かしくて古臭い匂い。長年開けずに終われていた箪笥(たんす)の中の衣類のような。祖父母の部屋に似た匂いだ。

 細い廊下をゾロゾロと抜けると、そこに広がっていたのは畳十畳あるかないかのこぢんまりとした空間。内装自体は比較的新しいのか、床の畳はそれほど色褪せておらず美しいままだ。開けた障子の向こうには庭石や松の木、桜の木が日本庭園を飾っている。部屋の中には織物に使用するものだろうか、絹糸や染料、着物の柄を宛てがった屏風が立ち並び色相豊かな空間を創り上げていた。真ん中には渋い煤竹(すすたけ)色の机にそれぞれ座布団が用意されている。

「ようこそおいでなすった」

 腕を組んで私達を出迎える常盤色の着物少女。先程の戦闘で乱れた前髪は嘘のように手直しされている。まぁ座りなはれ、と座布団へ誘導される我々三人組。ゆっくり腰を下ろすと、着物に身を包んだ女性スタッフが茶を用意してくれた。有難うございます、と言葉添えをしておく。

「要件は分かっとるで。ズバリ”正装”の準備やろ」

正装?

「怪狐と戦うには修行も大切や。けどそのほかにも大切なもんはある」

ほれ、と何かを手渡すリョウラン。

「?」

私の手に落とされたのは一つの小さな白い塊。手触りはフワフワしてて少しザラザラ、柔らかい。卵みたいな形でとにかく軽いそれを私と同じく不思議そうな顔で覗き込むアラレとハク先輩。

「それは蚕や」

蚕。テレビで観たことがある、小さい蛾の幼虫だ。

「歴史の授業で習った……。養蚕は日本の伝統工芸の一つやって」


ぽけーっと見つめる副部長の隣でハク先輩が呟く。

「せや。ウチは代々養蚕で生計を立ててきた家系でな」

自らが纏うハイカラ着物を指で引っ張る織部屋当主。

西陣織(にしじんおり)言うんやけど、これも全部お蚕様の繭糸から作ってんのよ」

続けてリョウランが手をぱんぱんっと鳴らすと、障子の向こうから再び女性スタッフが姿を現した。

「こりゃまだ未完成品やけどな」

そう言って卓上に置かれたのは一着の稽古着。

なにものにも染まってない真っ新な白。

続いて女性が持ち出したのは。

「薙刀……?」

それも真剣。どうしてこうも物騒な刃物が何本も出てくるのか。それはさておき。

黒髪ハイカラ少女は立ち上がると、両手で稽古着の肩部を摘んで、自分の前に掲げた。

それに合わせて女性スタッフが握った薙刀をクルクル回して、しなやかな動きのまま上段に構える。

「何しはるんですか……?」

神妙な顔付きで訊ねるハク先輩。

「とくとご覧あれ」

コクリと頷くリョウラン。

その合図を皮切りに。

「やぁッ!」

頭上高くから振り下ろされる打突、それは手に持った稽古着を地面に叩きつける勢いで放たれた。

あんなの一刀両断に決まってる。鉄刀対絹糸なんて勝負にすらならない。

という三人の予想を見事に裏切る結果となった。唾をごくりと飲む愛武高薙刀部の御三方。なんと勢いよく繰り出された上段の一閃は、地面に突き刺さることなくぴったりと、稽古着の襟元で留まっているではないか。

「えぇなんで!?」馬鹿でかい声で喫驚(きっきょう)する副部長。

「秘密は蚕にアリ! ウチは伝統的な工芸に加えて蚕そのものの品種改良にも手を広げとるんや。採取できる繭糸の増量、蛍光物質の合成などなど。新しいシルク文化にも挑戦しとるわけよ」

アラレ先輩の反応が良かったのか、自慢気に語り始める織部屋当主さん。

「こいつは強化シルクで作った超軽量にして超耐久性に優れた品種改良稽古着ってわけ」

「すごぉッ!?」

故意的なのかなんなのか。アラレ先輩のリアクションに胃もたれしてきた。

でも当の着物少女は嬉しそうだ。ふんふん鼻を鳴らしている。

「マユヒメ様がオマエはんらをここに寄越したんは“装備”を揃えるためや。ちゃうか?」

神社で見た化け物に生身で勝負するのは危険だ。これがあれば相手の攻撃に怯むことなく戦うことができる。

「ホンマは薙刀も用意してやりたいんやけどな、生憎管理人が不在でな」

織部屋太っ腹!と(おだ)てるアラレ先輩だったが。

「おっと勘違いしちゃいけねぇよ小娘達。ウチは脚元を見定してから商売するタチでねェ……。ほら、持ってるんやろシマの旦那はん〜?」

見たことないくらいニヤニヤした笑みを浮かべ、挙げ句の果てには親指と人差し指をくっ付けて小さく輪っかを作り出すお姐さん。何のことかと思えば。

「マユヒメ様から相応のもん預かっとるんやろォ? ほら勿体ぶらんとォ」

ヤクザやん。こんながめつい大人絶対なりたないわ。そう思う反面このがめつさが若くして伝統工芸の一角を支える経営者には必要なんだろうと、妙な感心をしてしまう自分がいた。

「あぁ、これのことですかね」

そう言って私は鞄から、預かっていた重い小包みを取り出した。

中身は覗かなかったが、ここへ来てあらかた予想はつく。

満面の笑みで袋の中身を眺めたあと、織物屋当主のお嬢様は黄色い歓声をあげた。

「きゃ〜っ♡」

うーわ、前言撤回。こんな大人に絶対なれへん。

おおきに、と一礼したリョウランはすっと立ち上がった。

「ほな、決戦までには間に合わすから期待して待っとき」

あくまで面目は潰さぬよう、先程までの甘ったるい声とは別人のような爽やかな声でそう宣言した。

まぁ、これで良かったのだろう。納得しづらい部分もあったが大方上手く行ったのだと思う。

 その後、ギャラリーに展示された蚕の歴史や制作過程なんかを見学して一同は帰路に着いた。なにかと騒がしい休日であったが、ある意味貴重な経験が出来て良かったのかも知れない。

「なぁ、蚕って成虫になったら一週間くらいしか生きられへんのやって」

ゆっくりと、自転車を漕ぎながら勿忘(わすれな)の色に輝く空を見上げて誰かが呟いた。

短いのか、長いのか。新しい趣味に挑戦するには短いし、毎日六限授業があると思えば長い。七日しかないと捉えれば時間は早く過ぎるし、七日もあると考えれば時間はゆったりと進むのかもしれない。

そんなものだろうと思った。

「でも今日のウチらは明日にも居ないですよ。昨日のウチらももうおらへん。それが日常ってもんやないですか?」

「?? よお分からんけど帰りカラオケ行かん?」

「ええよ〜」

「有りっすね!」

「あ、カスミちゃん誘ってもええですか? バイト終わってるか知らんけど」

「ええやん、誘お!」

私達高校生には難しい話。これからどんな辛苦(しんく)が待ち受けているのか想像もつかないが、それでもありのままの毎日を全力で生きて行けばいいと、そう思えた。


【構成】

全四幕ー各四話ずつ



【基準】

A


【ジャンル】

バトル・恋愛・スポーツ


【注意点】

・『』は過去の台詞や引用、通話など通常時会話と区別する際に使用する。

・“”は作中の重要なキーワードや特定の単語に使用する。

・ふりがなについて→カタカナで記したふりがなは登場人物や特別な読みに使用する。

・本作のほとんどはWikipediaを基に筋書きを作成しています。そのため情報の正確性が曖昧です。

あくまで今作はフィクションとしてお楽しみ下さい。

・一話を投稿した日から一年間を改訂期間とします。誤字脱字、誤情報など、皆様から寄せられた情報を基に修正していきますので、お気づきの方はお知らせしていただけると幸いです。

・⭐︎マーク→視点変更

・二次創作等うぇるかむーーーよー


【年齢基準】

 以下の区分を参考にして下さい。

・A(全年齢向け)

・B(青年向け=R15以上)

・C(成人向け=R18以上)

・J(幼年向け)


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