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85 結末

最後となります。

開いていただいてありがとうございます。

 アーロンは、リカルドとの間合いを調節する。

 ミリ単位で。


 リカルドは、アーロンの間合いと呼吸を読む。

 いつ打ってくるか。


 アーロンは、最高の一撃を叩き出す最適な間合いとタイミングを計る。

 リカルドは、カウンターで一撃を返すために、アーロンのタイミングを予測する。


 ピリピリした空気が試合場を包む。



「アーロンの勝ちだ」

 アンセルメが言い放つ。


 (最後の最後に、悪いところが全部出たか)

 ダルミロが指導不足を悔いた。



「やぁー!」

 アーロンが遠間から仕掛けた。


 リカルドは、予想外の遠い間合いから攻撃に少しだけ驚いたが、それでも冷静に剣を合わせた。

 (この間合いだと一撃で決めるつもりではなかったようだ。次はどう変化するのか)

 剣を合わせたリカルドは、受けた剣を捌きながら次の手を予測しようとした。


「うっ!?」

 受けた剣の勢いが予想していたものと違う。

 捌くつもりが押し込まれる。押し込まれるどころか、剣が弾かれた。

 次の手を予測しようと考えていたことで、一歩反応が遅れた。 


 リカルドは自分の木剣を弾いても、尚且つ勢いを止めずに自分に向かってくる剣を、ただ何もできずに感じることしかできなかった。


 バン!

「一本、それまで」


 リカルドは脳震盪を起こしたが、なんとか膝を着いた状態で止まった。

 アーロンは剣を振り下ろし、しっかりと立っていた。



「おお、すげえ!」

「大逆転だー!」

「一撃だー!」

 観客が大騒ぎをする。



「やれば出来るんじゃないの」

 レティシアがつぶやく。


「やはり小さな差だったな」

 満足そうにアンセルメがつぶやく。


「試合中の選手にアドバイスして大丈夫なんですか?」

 レオカディオがアンセルメに尋ねる。


「反則でも何でも良いんじゃない? 優勝とか準優勝とかどっちでも良いんだよ。あの一撃ができたんだから」

 アンセルメは勝敗には無頓着だった。


「あの程度で反則だなんて言えませんよ」

 いつの間にか最前列まで来ていたダルミロがアンセルメに言う。

「リカルドは、私がしっかりと教えきれなかったから負けたんです。やはり私はアブラアンとは相性が悪いようです」


「でも実力ではリカルドの方が上だろうな。リカルドは、アーロンと初めて剣を交えたから、アーロンの間合いを読み切れなかっただけだろう」

 アンセルメはリカルドの敗因を分析した。


「レオカディオ、あいつを俺に預けてみないか? ダルミロも持て余すだろ?」

「私じゃ無理ですね」

 ダルミロ。

「それは良いですが……」

 レオカディオ。


「決まりだ。弟が教えきれなかったことは俺が責任取らないとな」

 アンセルメは笑いながら言った。




★★★




「アーロンやったね」

「おめでとう」

 オリビアとタマラが退場したアーロンを出迎える。


「今夜は祝勝会だね。お父さんに言ってご馳走用意してるわ」

「寄り道しないでちゃんと来るのよ」

「私たちは先に帰って、美味しいものいっぱい準備しておくね」

 二人はアーロンに声を掛けると喜び勇んで店に戻った。


 (平和だなぁ)

 アーロンは激しい試合を終え、二人の話ふんわりした言葉を聞いて、現実に引き戻された。


 ここはオレイロス村じゃない。

 アイネもいなければ、肉屋のリサもいない。

 妹のダフネは何をしているのだろうか。


 (ずいぶん世の中が変わったみたいだ)

 数か月前の世界とは、全く別の世界で生きているかのような感覚がする。


 (全く、剣って難しいや)

 試合を振り返って、つくづくそう思う。

 ダンディーに教わったことしか、生かしきれていない。

 言われたこと、教わったことでしか結果を出していない自分が、ひどく矮小な存在に感じられる。


 (ところで、さっきの人はダンディーなんだろうか?)

 観客席を見回した。

 程なくレオカディオ、レティシア、そしてダンディーによく似た男性が一緒にいるところを発見した。


 (とりあえず団長に挨拶するか。レティシアさんにも何か言われるかな)

 少しだけ胃袋が緊張する。



「団長、なんとか勝てました」

 とりあえず形ばかりのあいさつをする。

 ダンディーに似ている人物が非常に気になる。


「おめでとう」

 レオカディオが答えるのとほぼ同時に、レティシアに首を絞められる。


「お前、アレができるんなら始めから出しておけ!」

「やめてください」

 首と腕の隙間に手を無理やり突っ込んで気道を確保する。


 アレと言うのは最後の一撃だろうが、アレはあの試合で完成しただけだ。

 責められる筋合いはない、と思う。


 バタバタしていると、周囲の目が集まる。

 二つ名を持っている者に気安い態度を取られているのだ。

 ほとんどの目が羨望の眼差しだ。


「レティシア、その辺にしておけ。顔が青くなっているぞ」

 アンセルメの言葉に反応して、レオカディオが妹弟子の腕を振りほどく。


「お前、今日は勝ったから許すが、明日から私の下できっちり稽古をつけてやるから、今日だけはゆっくり休むんだぞ」

 脅しのような文言を吐くレティシア。

 羨ましそうな周囲の目がアーロンに注がれる。


「レティシア、その稽古に私も参加させてもらえないか?」

「アンセルメ様?」

「さっきレオカディオとも話したんだが、この子は私も無関係ではなさそうだ。弟の弟子であれば、しっかり最後まで面倒を見てやらないと、無責任となってしまうからな」


「アンセルメ様のおっしゃるとおりだ。アブラアン師匠の最後の弟子であれば、私たちが責任をもって育てなければならない。しかし、指導能力が私たちにあるとは思えない。特にお前にはな。だからアンセルメ様が特別に手伝って下さることになった」


「アンセルメ様が稽古をつけられる程度に強くするまでは、私が責任をもって強くします」

 毅然とした態度で断るレティシアだったが、レオカディオがレティシアの言い訳を一蹴する。

「いいから、これは兄弟子からの命令で決定事項だ」


「みんなで仲良く強くしようじゃないか。可愛い弟の新しく、そして最後の弟子なんだから」

 アンセルメの締めの言葉にレティシアも言葉を継ぐことはできなかった。

 自分の全身全霊をもって育てたいと思っていた気持ちをないがしろにされた気分のレティシアだった。

 その悔しさが眼力に変わり、アーロンはただただ睨まれることになった。




★★★



 父さん、母さん、失恋して王都に逃げたつもりだったけど、失恋なんて、とても小さなことに感じられるくらい、王都は刺激に満ち溢れています。

 少しばかり連絡をせずに心配させたかもしれないけど、今晩中に手紙を書いておきます。

 明日以降は、手紙を書く体力も気力も無くなると思うから。


 アイネ、婚約おめでとう。

 まだ心からお祝いできるほど癒えていないけど、アイネに言われたことを目標にしていなければ、今ここに居ないだろうから。

 ありがとう。


 ダンディー、刺激貰いすぎです。

 あなたの人生、波乱万丈のようですが、私の人生までそうするつもりですか。

 次に会うまで、もっと翻訳できるようになっていて下さい。

 私はもう少し剣を学ぶことになりそうです。


 ダフネ、村に帰るときには、美味しいものたくさん持って帰るからな。

 リサにあまり迷惑をかけるんじゃないぞ。


!Muchas Gracias!



本当にありがとうございました。

最後の最後、!が反転しなかったのは残念ですが、感謝の気持ちですのでそのまま残すことにしました。


本当に色々ありました。

パソコンの不調は当たり前で、仕事の変化、葬儀、各種トラブル。

それでも周りからは普通に見えているであろう私。

おまけに最後はインフルエンザで締めることになりました。


長い間見捨てずに読んでいただいた方には感謝しかありません。

本当にありがとうございました。



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