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61 文官の職場


 アーロンが頼まれた聖書の翻訳は、周りが思っていたよりも早く終わった。

 元々アーロンの得意分野なのだ。

 剣を振るよりも、こっちの方が得意、いや本業なのだ。



「エレナさん、翻訳終了しました」

 アーロンはエレナに報告する。


「翻訳だけじゃなくて、報告書にまとめなきゃ駄目なのよ。報告書の作り方教えてあげるから翻訳文寄越して」

 ぶっきらぼうに言葉を返し、アーロンに手を伸ばすエレナ。


「報告書にまとめておきました。これでいいですか? 」

 アーロンは報告書をエレナに渡す。


「昨日今日入ったばかりの子が報告書なんて作れるわけないでしょ。誰から聞いたのか分からないけど、報告書を作ったことだけは褒めてあげるわ。後で教えてあげるからしばらく大人しくしていて」

 エレナは報告書の作り方さえ教えていないのに、勝手に作ったアーロンに少しだけ驚くも、素直にアーロンの翻訳文と報告書を受け取る。

 (忙しいから、あとで報告書にまとめるか。教えるよりも早いから)

 エレナは、勝手に報告書を作ったアーロンにイラつきを覚えながらも、自分の仕事を片付けるべく、アーロンを視界から消した。


「何処かで適当に仕事貰ってきます」

 エレナが自分に興味を失ったことを感じたアーロンは、一言断って部屋を出て行った。



★★★



「団長がスカウトしてきた新団員って君か」

「君があのアーロンか」

「わっかー。歳いくつなの」


 一般団員が仕事をしている事務室で、アーロンはたくさんの質問を受けることになった。

 誰もが団長直々にスカウトしてきた団員に興味津々だったのだが、個室で仕事をさせられているアーロンに直接会うことができなかったのだ。


 個室に入れられていたアーロンは、そんなことになっているとは露知らず、翻訳業務に集中していたのだった。



「ところでエレナにいじめられていない? 」

 女子の一人がアーロンに尋ねる。


「そんなことありませんけど」

 エレナの冷たい態度を思い出しながら否定するアーロン。

 たとえ冷たい態度であっても、入ってすぐに先輩に対して文句を言う程、アーロンは常識がない訳じゃない。


「まあ、彼女は真面目だから。そのうち分かると思うけどエレナは第十騎士団のことは腰掛程度にしか思っていないから、定時で仕事を上がることにしているんだ。だからちょっと仕事に厳しいかも知れない」

 中年の男がエレナのことをかばう。


「でもそれって、自分の事だけやっていれば良いっていうエゴだよね」

 脇からエレナに対する厳しい声が上がる。


「まあそんな彼女(エレナ)だけど、口ほど悪い奴じゃないから」

「ディエゴはそう言うけど、一番彼女に厳しくしているのはディエゴじゃないの? 」

「そんなことないよ。僕は彼女のためを思って壁になっているだけだよ。実力がないんじゃ、行ってから苦労するからね」


 ディエゴと女子達の会話が、途中からエレナの悪口に近い内容に変化してしまっていた。

 会話の意味は分からないが、職場内のトラブルからは距離を取って、うまく、そして静かに生活しよう。


 大人しく暮らすことなんて、村の生活で慣れている。

 村長(ダニ)息子(エル)グループとも普段は接点を持たずに生活していたじゃないか。

 アーロンは心の中で、静かに生きることを誓った。


「アーロンは剣を使えるかい? 」

 ディエゴは話題を変える。

 少なくとも変えたようにアーロンは感じた。


「村で少し練習していました」

 当たり障りないように答える。

 レティシアにスカウトされたことを知られないように注意しなければならない。


「まあ、実際うちの団は剣の腕はどうでもいいんだけど、少しくらいは剣ができないと肩身が狭いからね」

「でもエレナのように頑張り過ぎるのもちょっとねえ」

 若い女性がエレナを批判する。

 エレナはこの女性からは嫌われている様子がうかがえる。


「文官であっても騎士団の矜持を忘れずに訓練に励むことは良いことだよ」

「でもエレナにとって文官(ここ)は腰掛けでしょ。第八騎士団はともかく、いつかどこかの騎士団に異動するんでしょ」

「彼女に実力が付いたらな。いつか」

「実力がなくても、実家の力で行けるんじゃないですか」

「彼女はそれを望まんさ。だから仕事をしながら頑張っているんじゃないか」

「自分の仕事だけやっているんじゃ私たちが迷惑なんですよ」

「まあ異動するまでの辛抱さ。彼女なりに頑張っているんだから。彼女の仕事で足りないところは上司の私がサポートするからさ。ほらほら、仕事に戻るよ」

 ディエゴは女子の愚痴を軽く受け止めて仕事に戻った。


 エレナとは仲良くできそうにもないけど、仮に仲良くなったらこういう面倒くさいことに巻き込まれるのか。

 文官という職場は、仕事の内容よりも人間関係に疲れそうだとアーロンは感じた。


更新のペースが遅くて済みません。

仕事が増えてしまい時間が作れません。(ただの言い訳)

61話は短いので、本日もう一本上げたいと思っています。

来週は趣味の会に出席する予定なのでアップできないかもしれません。

その時はごめんなさいです。

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