49 あがき
もう少し話を進めたいので、今週も毎日投稿したいと思います。
もう少しお付き合いください。
「ユダの子は勝ちましたね」
「当然だ。ダンディー最後の弟子だ。私の弟子でもある」
勝ち誇るレティシア。
「予想以上に差が開いていましたね」
「まあ、あんなものか。二本目は相手に受け流させずとも一撃で決められたのじゃないか」
「そうですね。ただ私たちとの訓練の成果を見せつけるために敢えて受け流させたんじゃないですか」
「そんなに器用なことをする余裕があるのなら、さっさと決めてやればいいのに」
不満を口に出すレティシア。
それでも嬉しそうだ。
娼館行きはもちろん、ダンディーへの侮辱をきっちりと晴らしたのだ。
更にスカウトもうまくいった。
州大会で上位に入る力を持っている選手に、誰も使えなかった技を見事に使いこなして勝利したのだ。
しかもその技を教えたのが自分なのだ。敬愛するダンディー最後の弟子に。
「ところで二十億ギニーはどう使うおつもりですか」
「うん、それを考えていた。ノープランだ」
「やっぱり。もしかして全剣に丸投げするおつもりですか」
「お前の案をいただこう」
★★★
「全く、サイナーの奴使えねえな」
ハビエルが毒づく。
二十億ギニーの賭けに負けた割には焦る様子は見えない。
「まさか奥の手を使うことになるとは思ってもいませんでした」
「本当に、あんなのが優勝候補だったのか? 坊やにあっさり負けてしまっただろ」
「ムルシアの支部長に厳しく言っておきます。更に本隊から指導員を派遣させます」
「しっかりと改善を進めろ。こんな体たらくじゃ今後の仕事にも差し支える」
「ハビエル様のおっしゃる通りです。既に黒狼は到着しておりますので例の件を進めます」
「王都から呼び寄せるのに金は掛かったが必要経費だな。賭けに負けないためにはあらゆる手段を取る必要があるからな。今度は失敗するなよ。あと負けたサイナーは飛ばしておけ」
「分かりました」
ハビエルは常に負けない賭けをしている。
小さい勝負でも、保険は掛けられるだけ掛ける。
大きい勝負なら当然だ。
勢いに任せた勝負はしない。
商売人として、リスクは承知の上で極力減らす。
本来であればやる必要のない賭けであったが、負けない賭けならいくらやっても損害はない。
二十億ギニー。
本当に支払うのであれば、自分どころか親にも迷惑を掛ける。
そもそも自分の支払い能力を超えている。
そんな賭けを受けてくれるのは、親とカウチョ商会の名前があるからこそ。
絶対に負けないからこそ身の丈以上の勝負ができる。
今回の賭けは最悪の結果になったが、想定の範囲内だ。
暴風剣姫を抱けないことと、呼び寄せた貴族への謝罪がマイナスだ。
しかし、黒狼の働き次第ではリカバリーできるかも知れない。
とりあえず貴族への謝罪のため、娼館を貸し切りにすることを決めたハビエルだった。




