41 訓練の始まり
「まず君の実力を知りたい。好きなように打ち込んできてくれ。地稽古だと思って構わない」
宿の広い敷地の一角を借りて稽古を始める三人。
アーロンはレティシアの言葉に従い、剣を振った。
夢にまで見た騎士見習いになれる。
一試合勝つだけで。
しかも試合前までコーチをしてくれる。
ダンディーの教え子が。
自分の姉弟子が。
とりあえず、自分の実力を見てもらう。
前に出るしかない。
様子を見るつもりだろう。
圧力を感じない。
まあ、女性でありダンディーよりも小柄だから、ということもあるのだろう。
アーロンは前に出る。
間合いを詰めて剣を振る。
あっさり躱されるがアーロンは気にせず更に剣を振る。
更に躱される。
連撃を繰り出すが紙一重で躱される。
うまく入りそうな振りもあったが、そういう時はレティシアが軽く剣を振って軌道を逸らす。
いくら振ってもレティシアには届かない。
「ティシム、次はお前が見ろ」
相手が代わったものの、同じく剣は届かない。
アーロンが一生懸命振っている剣を二人とも楽しそうに、そして軽々と避けていく。
単なるゲームのように。
「どうだティシム」
「土台、って感じですかね」
「同意だ。勝てると思うか」
「まあ、可能性は十分あるでしょうね」
「現時点では? 」
「微妙でしょうね。アーロン、何年剣を練習していたんだい」
ティシムがアーロンに剣術歴を尋ねる。
「十二歳から村の自警団で練習していました」
「三年も練習していたのに変な癖が見えない。これならいけるんじゃないのか」
「ただ体の線が細いんですよね」
「体は技でどうにかならないか」
「まあ、技術を会得する前に潰れない程度の体力はギリありそうですが」
「それなら問題ないだろう」
二人はアーロンの剣を批評した。
「アーロン、君がこの大会で一勝できるように、スカウトした私の責任で稽古する」
レティシアがそう告げた。
この時点で、アーロンは甘いことを考えていた。
スカウトされることが確定なのだ。
姉弟子の稽古が簡単な調整程度だろう、と。
ダンディーの弟子ならば、訓練もそれなりだという可能性を考えていなかった。




