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36 別れの始まり

「それじゃあ行って来ます」

 俺はダンディーと共に家を出る。


「お世話になりました。皆さんのおかげで楽しい時間を過ごせました」

 とダンディー。


「いえいえ、こちらこそ本当にありがとうございました。アーロンがこれほど頑張ることができたのはダンディーさんのおかげです」

「本当にありがとうございました。アーロンの剣の面倒見ていただいた挙句、最後にムルシアの会場まで連れて行っていただけるとは」


「いえ、お気になさらず。私も次の任地に行く途中ですから」


「アーロン、ダンディーさんの言うことをきちんと聞いて迷惑を掛けないようにするんだよ」

「ダンディーさんと別れた後もお肉をきちんと食べるんだよ。大会が終わったら、すぐに村に帰ってくるんだよ」

 両親の忠告がうるさい。

 そんなこと言われなくても大丈夫だ。


 知らない町に一人で行くのは不安があったけど、それ以上に大会でいい成績を残せるか、スカウトを受けられるか、そっちの方が心配だ。

 そのためだけに、一生懸命練習したのだ。

 アイネと会えるはずだった学校の時間も練習に費やした。

 肉も食べた。

 ダンディーの仕事も手伝った。


 しかし、ダンディーに与えたものより、貰ったものの方が多い気がする。

 ダンディーが来たばかりのころ、教えて貰う対価とかなんとか言っていたが、俺がもらったものの方が圧倒的に多いと思う。


 この恩は、いつかダンディーがこの村に再び訪れた際、しっかり返したいと思う。

 そのためにも、州大会でしっかりと結果を残し、悔いのない状態で村に帰る。

 そしてユダの墓守(もり)()としてしっかり仕事をする。

 俺の叶えた夢をダンディーに見てもらう。



 親から弁当を手渡され、俺たちは家を出る。

 村から州大会に選手を派遣するのは十数年ぶりだそうだ。


 大会出場のため、村から費用の助成を受けた。

 俺の分だけでなく、指導者の付き添い費用も出た。

 保護者や指導者の付き添い分も出せるのだそうだ。


 思ったよりも至れり尽くせりだ。


 今まで選手を派遣しなかったのは、村のレベルと州大会のレベル差があり過ぎたということをロベルトさんから教えて貰った。

 去年のダニエルが州大会に出なかった理由がそうだったのだと初めて知った。

 その話を聞いて、不安にならなかったと言えば嘘になる。

 しかし、ダンディーに鍛えられ、州大会でもある程度は勝てるレベルにまで引き上げて貰っていると思う。



 この村、この家に帰ってくるときは一人だ。

 その時ダンディーはもういない。


 一人で泣きながら帰ってくるのか、笑って帰ってくるかはこれからの戦い次第だ。


 俺の人生、絶対に未来を掴んで帰ってくる。

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