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34 豪天流剣術

 豪天流剣術には、恐怖しかなかった。

 打たれると、意識を失うか意識が飛ぶしかないほどの痛みを味わう。

 今までの防御が、全く通用しない。

 しっかり防御しないと、意識が飛ぶほどの一撃が防御を貫く。

 しっかり避けないと、避けたはずの剣に吹き飛ばされる。


 豪天流剣術と豪天流剣術一撃派の違いも教わった。


 豪天流剣術一撃派は豪天流剣術から別れた一派なのに、亜流を認めないという矛盾をはらんだ流派。


 毎日やらされている『立木打ち』という訓練は一撃派の練習だということを知った。


 ダンディーの訓練は、豪天流は一撃派の打ちに、豪天流の二の打ち・三の打ちを連携させている。

 非常に難しい。


 豪天流は、防具を着けていても怪我をしそうなほど打ちが強い。


 剣の技術からすると、シンプル過ぎるほどシンプルなのだが、ダンディーが操ると恐怖しか味わうことができない。


 これでも俺が怪我をしないように手加減して打ってくれているということは分かる。


 こんな流派と試合をしていたら、恐怖で前に出ることは出来なかっただろう。


 豪天流はシンプルゆえに、アレンジがかなり多様にできる事も知った。



 色々な流派の剣を教えて貰っているが、流派とは別に、足や腕を怪我している設定で地稽古を行うこともあった。

 ダンディーの操る剣は、新しい流派とも思えるほど堂に入っていた。


 片足を使えない設定でも、動かない足を起点にして多彩な動きをする。

 しかも、少し油断すると、動かないはずの足が動いて意識が飛ぶほど打たれる。


 ダンディー曰く、一撃だけなら怪我をしていても無理する奴はごまんといる、ということだった。


 実際にそのとおりだとは思うが、だったら最初っから怪我なしの設定でもいいだろ、と俺は思っていた。

 それが如何に甘いことか、その時は知るべくもなかったが。



 ダンディーは、喧嘩するときの注意点についても教えてくれた。

 全く役に立たないことだと思いながら、聞いていたが。


 自分の流派はなるべく見せないこと、もし剣を使うのなら全く違う流派を使うこと、だそうだ。

 自分の得意な流派や習っている流派を使うと、簡単に特定されて、事情を知らない仲間が不意打ちを喰らうことがある。

 すぐに対策を取られる可能性が高い、ことだそうだ。


 そんなこと、喧嘩しなきゃ良いだけの話だと思う。

 俺に敵も仲間もいないし。


 それでも一応、喧嘩するときは他の流派を使おうとは思った。


 そもそも、ダンディーの教えてくれる流派の名前を教えて貰っていない。


 何度も聞いたが、あとで教える、とはぐらかされた。

 ダンディーの話によると、数年前まで最弱と呼ばれていた流派だった、と言うことだ。


 俺は流派にこだわりはない。

 そもそもこの村で剣を習った者たちは、流派なんてない。

 強いて言えば、ロベルト流だろうか。


 最弱流派と言われても、ロベルト流にあっさり勝てるのだ。

 流派の名前なんて気にはしない。

 最弱だろうが何だろうが、俺はこの村で優勝し、州大会でもスカウトされる(予定)程に強くなっている(はずな)のだ。


 ただ、ダンディーに教えて貰って、各流派には技があり、それぞれの技は厳しい訓練で身に付けるものということを知った。

 俺が使えるのは、(かたち)ばかりのメッキ程度だろう。

 それでも、こんな技を知っているのなら、村の大会前に教えて貰っても良かったんじゃないかと思った。

 そうすれば、あれほど訓練しなくても、もう少し楽に勝てたのかもしれないと思う。


 毎日立木打ちを一生懸命こなしているが、豪天流剣術一撃派の撃剣なんて身に付けられるほど、俺には素質も体もない。


★★★



(さか)()? 」

 他流派の練習と併せて、変な技を練習し始めた。

 通常、足の位置と打ちのタイミングは決まっている。

 それを敢えて逆、つまり理に反する動きを練習している。


 打ちに力が入らない。

 その打ちを有効打にするために、試行錯誤する。


 試行錯誤と言っても、ポルドー流疾風剣のスナップを効かせた打ちを応用したり、豪天流剣術の技術を真似たりするだけだったが。



 大会後は、色んな事を詰め込まれているような気がする。


 他流派、逆技、歩法など。

 足法から進歩して歩法になった。


 教わった技術を体に染み込ませるのが大変だ。

 体力と時間がいくらあっても足りない。


 それでも、ダンディーは俺が州大会で良い成績を残せるよう教えてくれているのだろう。

 ここで努力するのは俺の義務。


 目標に近づいて初めて知った。

 俺が目標にしてきた地点は、思っていたよりも遠かったことを。

 こんなにも剣術は奥が深かったのか、と今さらながら驚いている。


 ただ奥深くまで連れて行って貰える師匠ができた。

 なので今努力する。

 何とか目標に間に合うところまで来ているのだから。


 俺の目標までもう少しのところまで来ているのだ。

 ここで少しでも手を抜けば、俺の人生はもう終わりだ。

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