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33 練習漬け

この一週間、毎日更新したいと思います。

誤字脱字無いように注意します。


 朝いつもよりも早く起きて、地面に立てられている棒を叩きまくる。

 ダッシュして勢いをつけて思いっきり。


 棒を担ぎにして、八相の構えから剣を繰りだす。

 右、右、左、左。


 疲れてきたら左右の手を入れ替えて、棒を逆に持つ。

 左、左、右、右。


 しばらく打っているとダンディーが現れて、細かく姿勢や打ち方の指導が始まる。

 一本一本丁寧に、正確に、素早く、力強く打つ。


 踏み込む足が張ってくる。

 それでも一撃一撃、ダッシュして棒を叩き打つ。


 足法の素振りとは比較にならないほど体力が奪われる。


 なぜ俺はこんな訓練方法に気が付かなかったのだろう。

 こんな田舎、わざわざ土台を付けて棒を立てなくても道端に木が生えている。

 いくらでも打ち込むことができる。

 細かいことはダンディーに指導を受けているが、そこまで上手にならなくても、しっかり振れるようになっていれば、ダニエルくらいなら自力でも勝てたように感じる。



 無心で打ち込む。

 時折ダンディーからのアドバイスに反応し、振りを微調整する。


 同じフォームから、左右別々の剣撃を繰り出す。


「そろそろ朝飯だぞ」

 ダンディーに声を掛けられ、朝の稽古を終わりにする。



 朝飯を食べたら、仕事場で稽古をつけてもらう。


 色々な流派の名前と技の説明を受けながら地稽古を行う。


 素早い系の流派の技については、初見で防げたことはなかった。

 一撃系の流派と技については、初見で気絶しそうになった。


 ダンディーが強いのか、流派の技術が優れているのか分からないが、とりあえず俺の体に散々叩きこまれた。


 試合当日に初めて教わった(かた)についても、しっかりと復習させられた。


 いつでも正確に対応できるよう、番号を言われたらその番号の(かた)で返さなければならない、と言うルールで。


 犬がご飯を貰う時にする、お座りやお手のように番号を聞いただけで勝手に体が反応するまでに、しっかりと形を叩き込まれた。



 州大会でスカウトの目に留まるように頑張らなければならない。

 初戦敗退で、良いところを見せられずに村に帰ることのないよう、最後の仕上げをしている。


 学校にも行っていない。

 ダンディーの仕事も手伝い、稽古をつけてもらうと、学校という時間が一番無駄だと思える。


 アイネに会えないのは寂しいが、今強くならなければ、これまでの苦労が全て泡と化す。

 大会後にいくら強くなっても意味がない。


 今強くなる。

 ここで頑張らなければ人生全てを失う。




★★★



「今日は、ポルドー流疾風剣だけを使え」

 ダンディーが意味不明な指導を開始する。


 ポルドー流疾風剣とは、剣の起こりを極力見せずに技を起動する剣術だ。

 うちの村にもその道場ができたと、この間の大会で誰かが言っていた。

 自分の対戦相手もそうだったらしいが、剣技と言われてもほとんど記憶にない。


 唯一ある記憶は、体が勝手に動いて一本を取ったことだけだ。

 体が勝手に動いていなければ、何かされていた感じはあった。


「なぜですか」

 俺は疑問をぶつける。

 知らない流派の技を知って、初見の技を防ぐ、ということの大切さは分かったが、知らない流派を一日だけ練習する意味が分からない。


「良いところがあったら積極的に盗め。そして、その流派と対戦するときの気持ちを少しでも感じてみろ」

 よく分からないが、そうしろと言うのなら、やるしかない。


 アーロンは中段に構える。

 対するダンディーも中段に構える。


 間合いを図りながら、手首を起動させ、一瞬でダンディーの木剣を払い、次の攻撃への切り替えで手首のスナップを効かせる。

 攻撃が読まれていたのか、あっさり木剣の根元を抑え付けられ、起動しかけた技が途中で止まる。


「猿真似じゃ誰にも通用しない。もう少し理屈を考えて真似てみろ。相手を打つために最短で剣を動かす。最短の動きを最小の力と最高の速度で正確にこなすだけだ」

 禅問答のようなアドバイスをされる。


 打たれることを承知でダンディーの動きを観察する。

 起こりが非常に分かりづらい。

 それでも僅かに起こりを確認する。


 起こりを確認してから対応しては、絶対に間に合わないことが分かった。


 ダンディーのやり方を見ていると、起こりを誘導している。

 そもそも構えの時点から、ポルドー流疾風剣の技を制限させている。

 動きを制限されると出せる技が偏ってくる。


 自分がやられたら、非常に気分悪いだろうな、と思うようなやり方だ。


 よく試合でやられなかった、と今さらながらほっとする。

 相手は、俺の剣筋を誘導するまでもない相手、と思っていたのだろうか。


 もしも試合で誘導されていたら俺は勝てたのだろうか。

 あっさり勝った記憶しかないけど、実は僅かの差だったんだろうと思う。


 その僅かな差が、勝利につながっただけ。

 勝利は時の運と言うが、本当にそういうものだということを感じる。


 もう少し強くなって、勝利を少しでも引き寄せなければアイネは手に入らない。

 ここまで来て目の前で捕まえそこなっては泣くに泣けない。


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