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27 昼食

次話投稿ボタンを押した瞬間にWindowsの再起動が始まってしまいました。

復元したデータを送信しましたがうまく投稿できず。

再起動で投稿できなかったのって2回目かな?

 準決勝を前に一時間の休憩が取られていた。

 準々決勝をまたもや秒速で終了させたアーロンは、ダフネと合流して昼食を取っていた。


「お兄ちゃん、あんまり目立たないでよ」

「何のことだ。俺はなにも目立ってないだろ」

 アーロンは妹からの言葉を考えることもなくサンドウィッチをパクついていた。


 卵サンドが美味しい。

 一枚を口に放り込むと、水筒の水を飲んで卵サンドを流し込む。

 体に水分が補充される。


「いやあ、ダンディーも鬼だな。危うく受付に遅れて試合に出られなくなるところだったよ」

 一言言うと、二枚目のサンドウィッチを手に取った。


「結構早く家を出たのに遅刻しそうになったの? 」

 ダフネが疑問を口にする。

 今朝、結構早く家を出ていたはずだと思いながら。


「あの後、仕事場で稽古をして。かなりギリギリまで稽古させられていた」

 そう言ってサンドウィッチをパクつく。


 いやあ、普通に間に合う時間だったけど、到着するまで不安だったな、とアーロンは思い返す。

 しかも稽古は厳しめだったし。


「さすがお兄ちゃん」

「ちょっと、ダンディー、何してるの」

 妹二人で反応が違う。

 実妹と予定妹では心配度が違うのだ。


「とりあえず間に合ったから、これもダンディーの言う魔法なのかな」

「魔法って何? それよりなんでギリギリまで稽古なのよ」

「よく分からないけど、俺が優勝するための魔法なんだって」

 サンドウィッチを口に入れる。

 数回咀嚼したのち、水と一緒に流し込む。

 少しだけ腹の隙間が埋まる。

 サンドウィッチを手に取る。

 サンドウィッチは食べやすくて好きだ。

 肉のように、硬くてまずいものがない。

 仮に不味かったら、そのまま水で流し込めばいいけど。

 母さんのサンドウィッチは美味しいから不味いものを食べるようにする必要はないけど。


「ダンディーも訳分かんないけど、お兄ちゃんも分かんない。なんでそんなに強いの」

 ダフネが一番の疑問を口に出す。


「そりゃ勝たなきゃ意味ないだろ。せっかく試合に出るのに」

 見当違いの回答をするアーロン。

 ダフネの質問の意味を考えるよりも手に持ったサンドウィッチを食べるのに夢中なアーロン。


「そうじゃない。なんであんな目立つような勝ち方するのよ」

「別に目立つような勝ち方してないけど。普通に()っているだけだけど」

「はぁ、なんで意味通じないかな。ホントお兄ちゃんて非常識だよね」

 ダフネの言葉に構わず三枚目のサンドウィッチに手を出すアーロン。

 美味しい。

 水で流し込むだけだが、気付かないうちに水分も体が欲していたことに気が付く。

 サンドウィッチも水も美味しい。


 とりあえず勝つことが目標だ。

 どんな形であれ、勝てば州大会への出場権が得られるはずだ。

 そうすれば、アイネとの約束も果たせる。


 負ければ全て無かったことになる。

 そんなこと怖くて考えたくない。

 一瞬、サンドウィッチをパクつく口が止まった。


「とりあえず今は勝っている。細かいことはあとで考えるさ」

 四枚目に手を出す。

 ダフネの言うことなんかいちいち取り合っていられない。

 自分の将来がかかっているんだから。

 これは綱渡りと一緒。

 少しでも足を踏み外したら終わり。

 今日以降のリカバリーなんてありえないのだから。

 昨年負けた時点で、今日以外のリベンジはあり得なかったのだから。


「もう負けてよ。あんまり強すぎてみんな引いてるレベルだよ」

 ダフネが何を言っているのか分からない。

 昨年はダニエルに敵わなかった。

 今年もそうなる予定だったが、ダンディーという剣の師匠に出会ってようやくダニエルを超えられそうなのだ。

 昨年と違って、順調に勝っているから強いと思っているだけで、実際はそうじゃない。

 少しは強くなっていると思うが、優勝するには少し厳しいかも知れない。

 それでも俺は絶対に優勝する。優勝しなければならない。


「よく分からないけど、後二回は試合をするから」

 そう言って、四枚目を食べつくす。

 五枚目を食べるとダフネやモニカの分が無くなってしまうかどうか、残枚数を確認する。

 大丈夫そうだ。

 食べ過ぎも試合に悪そうだから、これでやめておこう。


 そして五枚目に手を出す。

 ダフネは呆れたような顔をする。

 そりゃ試合が残っているのに五枚も食べれば呆れるだろう。

 でも腹が減っているのだ。

 試合は思っている以上にカロリーを消費するのだ。

 アーロンは五枚目でやめようと思いながら母親特製のサンドウィッチを口に運んだ。



★★★



「いやあ、参考にならなくて申し訳ないけど、さっぱり分からなかった」

「ところでアーロンは強いの? 」

「それがよく分からないんだよ。気が付いたら打たれて負けていたから」

「役に立たないなあ」

 ヤーニャ地区の応援団は、一ヵ所に陣取って昼食を取っていた。

 ヤーニャ地区の仲間たちは、直前にアーロンと戦って負けたヒルに、アーロンのことを尋ねていたのだが、さっぱり要領を得ない。

 アーロンが強いのか弱いのかさえ分からないのだ。


「じゃあ、ミランダが勝つんだろうな」

 焦れた仲間が問い質す。


「そりゃ、ミランダが勝つさ。俺たちじゃ束になっても勝てないんだから」

「でもお前は秒でアーロンに負けたんだろ。どっちが強いんだよ」

「間違いなくミランダだよ。ミランダの強さはみんな知っているじゃないか」

「でもヒルはあっという間にアーロンに負けただろ。ミランダに秒で負けることあるのか」

「そりゃ今じゃないけど。ただ、初めてやれば誰だってミランダには秒で負けるだろ。ミランダが本気を出せばだけど」

 ヒルは答える。

 実際、ミランダは強い。

 強さの底が見えない。

 ヒルはいつも練習では負けている。

 しかし、今日のアーロンは何かが違った。

 強いのか弱いのかささえ分からない。それが分かる前に負けたという方が正しい。

 ミランダにアドバイスしたい気持ちはあるのだが、アドバイスになりそうなことは何も得ていないので、話すに話せないのだ。

 そんなヒルに業を煮やして強く質問しているのだったがあまり意味はなかった。

 どうにかしてミランダに優勝してもらいたい。


 第一会場ではダニエルが勝った。

 第二会場ではヤーニャ地区のイスマエルが残った。

 第三会場ではミランダが勝って残った。

 第四会場ではアーロンが勝った。


 アーロンの最後の相手はヤーニャ地区のヒルだったが、ヒルの情報があまりにもなさすぎる。

 秒で負けたのだから、アーロンが強いのかと思えばそれすら分からない、と言う。


 ヤーニャ地区の者が二つの会場で勝ち残っていることすら奇跡みたいなものなのだが、できれば優勝者が出て欲しい。

 昨年までは出ても負けるヤーニャ地区だったのだから、大躍進は間違いないけど、優勝とそれ以外では受け止め方が全然違う。


 ヒルがミランダの優勝を望んでいることは疑うべくもないが、アーロンのことがさっぱり分からない。

 アーロンが昨年の準優勝者だ、ということは知っている。

 まぐれで準優勝しただけの男だ。

 しかし今年は何かが違う。

 対戦相手を秒速で倒している。というか病院送りにしている。

 やっていることは普通なのに、ヒル以外の対戦相手は救護班のお世話になっている。


「そんなにヒルのこと責めるなよ。私が戦えば分かることだし。事前に相手のこと知っていても、実際に戦えば、結果的に無駄だったという情報もよくある話だからさ」

 ミランダがヒルを擁護する。

 実際、ミランダは本気を出せば、この村で負けるとは微塵も思っていない。

 準決勝に残った仲間と練習するときでさえ、本気を出したことはない。

 自分に一定の縛りを掛けて、テーマを持って練習している。

 本気でやったら相手にならないし、自分の技術向上にならないから。

 そんな仲間に秒速で勝った相手だからと言って、何も恐れることはない。


 ただ、地区のみんなが私に期待をしてくれていることが純粋にうれしい。

 半年前までただの異邦人だった私が、ヤーニャ地区に受け入れてもらったのだ。



「決勝がヤーニャ地区同士なら、ほかの地区の奴ら羨ましがるぞ」

「それにはミランダは間違いないだろうから、イスマエルに頑張って貰わんとな」

「ミランダの相手はアーロンだから大丈夫だとしても、イスマエルの相手はダニエルだからな」

「いやあ、うちの地区からベストフォーに二人も入るなんて、それだけでも十分すごい話だな」

「それで満足してちゃ駄目だよ。うちの地区は凄い、ってことを他の地区の奴らにしっかり教えなきゃ」


 ヤーニャ地区の応援団は、準決勝に二人も進んだことですっかりお祭り騒ぎだった。

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