10 素振りと肉
勝てるのか。
毎日そればかり考えている。
ダンディーが強いことは、この数日だけで十分分かった。
ただ、ダンディーが強いことと俺が強くなれるか、と言うことはイコールではない。
練習相手としては弱いよりも良いのだろう、と思っている。
でもそれって本当に良いことなのだろうか。
俺より弱い相手と一緒に練習し、技術を丁寧に磨くという方法もあるのではないのか。
最もその弱い相手が、俺には居ないのだが。
強すぎる相手と練習しても、何にもならないんじゃないか。
そういう疑問が毎日頭に浮かぶ。
俺は強くなっているのか。
俺は強くなれるのか。
俺は大会で勝てるのか。
今の稽古相手がダンディーしかいないので、強さの指標がない。
俺が強くなっているのか、弱くなっているのか、全く変わらないのか、そのことが分からない。
毎日剣を振っては簡単に打たれ、少し動くと簡単に吹っ飛ばされる。
受け身の上達だけは体感できている。
あっ、受け身と体力が付いたことかな。
走って走って、剣を振って剣を振って、それで本当に強くなれているのだろうか。
正確に振る。きれいに振る。
足法も同じ幅で、同じタイミングで、きれいに移動することを求められている。
そんなことを求められている。
何が強くなることに必要なのか。
やはり運動神経じゃないのか、と思う時がある。と言うより、それが一番じゃないのか。
ダンディーは強い。しかし、技は教えてくれない。
俺がそのレベルに達していないのかもしれないが、ただ木剣を振っているだけで強くなれるのか。
そんな疑問を持ちながら、木剣を振る。
そんなことを思いながらも、常に歩幅、タイミング、きれいな振り方を追求しながら振っている。
素振りをしていて思うのは、完璧に決まった振りがなかなかできないということだ。
俺が下手なのか。これが上手になれば強くなれるのか。
こんなこと村の誰もやっていないが、強い人は強い。
本当は、最短距離で強くなれる道をわざと外して遠回りしているんじゃないのか、と思うことがある。
こんなまどろっこしい素振り、ダニエルに勝った後なら何万回でもやってやる。
それだけじゃない。
肉も毎日食べさせられている。
肉は苦手だ。
昔から好き嫌いなく食べることをしつけられているため、今までは仕方なく食べていたが、ダンディーに毎日食べさせられている。
母親は一度、食費が掛かり過ぎる、とダンディーに苦情を言ったところ、ダンディーが肉代だけは自腹を切ることになった。
しかし肉を買いに行くのは俺だ。
ダンディーの手伝いをして、稽古をして、買いに行く暇がどこにあるのか、と言われると、遺跡で調査が終わった後で、俺だけ走って『通り』に行かされるのだ。
いい加減疲れているので、歩いて行きたいのだが、それを許してくれないダンディー。
そもそも歩いて行ったら、夕飯に間に合うどころか寝る時間にも間に合わない。
ゆっくり走ることも許されず、帰りは重い荷物を持ちながら走って家に戻る。
買ってきた肉は、家族四人とダンディーであっさり消えてしまう。
これが二日に一回。
疲労困憊で家に戻ったら、苦手な肉が俺を待っている。
それでも、最近はダンディーのレシピのおかげで、肉が少しは美味しいと思えるようになってきた。
素振りが終わったら朝ごはんだ。
朝から肉が出るのはちょっと勘弁して欲しいと思う反面、最近は肉が少しだけ美味しいと思えるようになって、食事に肉が出てくるのが楽しみにもなっている。
読んでいただきありがとうございます。
なるべくたくさんの方々に読んで欲しいと思っています。
続きを読んでみたいと思う方は、一番星をキラリお願いします。
面白かったという方は多めに、面白くなかったという方はそれなりに。
評価がモチベーションになりますし、反省の材料にもなります。
次の作品のためにも、どうかよろしくお願いします。




