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人生は選択の連続

毎日17時に更新!!

よろしくお願いします。

 一人の老骨は意識が微睡む中、自身を振り返る。


 何処で私は間違った。いや、最初からか。


 探索者として、研究者として日々精進。


 その代償に妻を失った。


 娘も大怪我をし、心に大きな傷を作ってしまった。


 せめて、娘のためと遠方の都市へ移住させた。


 いや、嘘だ。 言い訳だ。


 カゲロウと呼ばれる娘とさほど変わらない歳の執事に悟られていた。


 目を背け、逃げていた事を。


 それでも彼は優しく、親身に接し、叱り、娘ともう一度心を通わす事を勧めてくれた。


 言い難かろう。気まずかったろう。


 彼には迷惑をかけた。


 そして今も迷惑をかけている頃だろう。


 チャンスをくれた。


 自身の行いが禁忌だと理解しながらも、犯罪に手を染めた老輩に。


 再考する機会を与えてくれた。


 しかし、私でも悪鬼を狩り、軍に頼らずのも娘1人くらいは守れると高を括っていた。


 手にした力を試したいと欲するが余りに…


 あの時、出せばいいものを…


 私はまた黙っていた。


 また間違った。


 すまない。我が愛しいの妻よ。娘よ。


 せめて、せめて…。もう一度、この目で、この手でーーー


 ーーー抱きしめてやりたかった。


 深く深く黒く醜い手に誘われ、意識は遠く遠く、まるで底すら無い深淵へと意識が飲み込まれていった。


 ーー

 ーーー

 ーーーーー

 ーーーーーーー


 ロイスが5体もの悪鬼に呑まれていく寸前、私は反射的に自身のモノリスへと声をかけていた。


「ーーー第二上限解放、カロン!、第一棺《斗掻星(とかきぼし)の鎖》」


『ん、あれは良くないもの』


 悪鬼とロイスの一番近くに居たジノは《アレースの大楯》で薙ぎ払いながら離脱、少し傷を負ったが巻き込まれることなく生還していた。


 その際に使った盾の動きに少し驚いていた。


「あっぶねぇー、ヤカゲちゃん!、どうすりゃいい?」


「ジノくんは、そのまま待機!ーーーいや、さっきの盾って、悪鬼とロイスの間に割り込めたり、移動させたりできたりするの?」


 ジノは一瞬躊躇い、思案する表情をみせたが、


「ははっ、やってみっか…。《アレースの大楯》!!」


 ジノは私の指示を聞き、《アレースの大楯を》を悪鬼から伸びた触手を断ち切るように配置する。


「うそ?!」


「なんとかなるもんだな!!、ナイス副隊長!!」


 クリオネは盾で悪鬼の体を引き千切った事に驚いた反応を見せる。


(え?、普通はできないのかな?)


 魔法に関して幼い頃はD³s(ドールズ)として未発達だったが故に教わらずに居た私は魔法を使う感覚というのを全く理解できずにいた。


 しかし、盾は固定して使うものと認識していた事が覆る。可能性が広がるのを感じた。


 感心するのも束の間、不完全とはいえ肉塊のようにも見える異形が、私とクリオネに目掛けて触手を伸ばしてきた。


「カロン!!」


『ーーー!!』


 眩い光を放つ白い鎖を異形の触手に縫い付け動きを止める。


「ありがとっ! カゲちゃん!、私は大丈夫よ!」


「わかったっ!、クー姉!!」


 クリオネに魔法を付与された刀を一度納刀し、カロンに呼びかける。


「第二棺、《縁断(えんだち)》」


『ーーん』


 柩をクリオネから離して配置しつつ、刀に手をかけ、ジノが分断した悪鬼の触手を切るために斬撃を放つ。


「閃剣三ノ太刀ーーーー山吹」


 刀から放たれた斬撃は、融合する前の核ごと触手を切り落とした。


(あれ?、斬撃には縁断の効果はないんだ…)


『む?』


 少し不機嫌になったカロンには申し訳ないが、結構大事である。


 先程の攻防で分かったのは、モノリスに対して驚異的な反応を見せるという事。


 逆にモノリスを使っていない者に対しては一切動きを見せないという事のある意味2つ。


 棺は出来る限り、非戦闘員から離すべきかな。


「ジノ!!、さっきの!、お願い!」


「えっ?ーー了解!」


 何に驚いたのかはさておき、やる気になってくれたようで何より。


「《アーレスの大楯》!!」


 ロイスに集まる悪鬼の核を触手ごと分断した大楯は、異形の塊を宙に打ち上げる。


(ジノって、器用な事するなぁ)


「閃光三ノ太刀ーーーー山吹!」


 出来る限り、接近しないよう中距離で捌くのに限界を感じ皆の安全を確保しながら離脱を試みる。


「ジノ、クー姉、一度距離を取って、広いところに出よう!、ここだと狭いかも!」


「分かったわ」 「了解」


 間に合わないと悟り、一度後退する。


 迷宮区の出来るだけ広い通路へ、迫り来る悪鬼の触手を斬り落としながら進んでいく。


「クー姉、ロイスさんを襲った悪鬼…。モノリスだけを必要に追ってた」


「確かにそうね… そこのボディーガードには見向きもしなかったし」


「なぁ、……もうちょい言い方ない?、ーーーーお、あざます」


 クリオネはそう言いながらも、悪鬼の猛攻に割り込みながら盾を使うジノの身体についた傷をペルセポネの能力で癒しながら道を走っていたりするので、なんだかんだ優しいお姉さんだなと思う。


「うんうん。能力の対象自体は狙わないみたいね」


「お、えっ!?、おま、ふざけんな! 前言撤回、返せよ!俺の言葉!!」


「時効よ…、感謝しなさい」


「ーーあはは」


 確かにクリオネの言う通り、モノリスの効果先には、触手は一切伸びてきていないようだ。


 モノリスだけを狙った悪鬼。


 今まで戦ってきた悪鬼にはそのような偏食じみた傾向はなかったように思える。


 そもそも非活動状態というのは悪鬼の食性を人工的に変えられた状態なのでは無いかと言う事に気づく。


 何れにせよ、


「ーーカロン、ロイスさん助けられそ?」


『?、助ける?』


「うん。モノリスだけを狙うならロイスさんは取り込まれただけで、捕食はされていないと思うんだよね」


『昔と同じ?』


「多分。アー姉の時と同じだと思う」


「カゲちゃん、どう言う事?」


「アー姉が悪鬼に取り込まれてた時も身体は無事だった。ただ、モノリスを体内に移植してたからその影響で起きてこれてないけど、今回は違う」


 アネモネは、D³sの研究過程で被験体になった。


 言わば第二世代型プロトタイプのような位置付けで、後天的に体内へモノリスを移植するという過程で生まれた存在。


 結果は失敗に終わり、あのような悲劇を生んでしまったが…。


 アネモネの場合は、最初こそ異形そのものだったが人型になってからは寧ろ神々しさすら感じてしまう純白の姿に変貌していた。


 ロイスは全くの逆、歪で禍々しい異形。


 色や姿も考える上では、重要な要素の一つではあるが、今回ロイスは体内に移植していないという決定的な違いがある。


「確かに、ロイスは持ってたわね。黒いの」


「良くわかんねぇけど助けられそうなのか?」


「……やるだけやってみよう。出来るだけ可能性があるなら試したい」


「…そうね!」


 十分な広さを確保し、敵を迎え撃つ準備をする。


「《ニュクスの彗星》はさっき通った通路に出来るだけ配置してきたわ、時間稼ぎにはなってると思う」


「?!、クー姉、ありがとう!」


 随分と悠長な悪鬼だなと思っていたが、クリオネはジノの回復と、悪鬼に対しての牽制を同時に行なっていたようだ。


(無詠唱だっけ?、そう言うのもあるんだ)


 やはり魔法は使いたい。


「なぁ、俺どうすりゃいい?」


「《アレースの大楯》はあまり小回り効かなさそうだから良いタイミングで《アレースの小盾》と混ぜながら捌いて欲しいかも。期待していい?」


「んー、なんとかなりそう。任された」


 何故ニヤニヤしているのかは謎だが、先程見せた魔法があるから大丈夫かな。


 クリオネは数年前に迷宮探索をしていた頃から自身でも戦えるように魔法が使えるようになった為、特に問題はない筈。


「来るわ」


「カロン!、お願い!」


『ーーん』


 いつでも鎖を展開できるように、且つ棺そのもので敵の攻撃を防げるように自身の両脇に配置し、悪鬼と対峙する。


「ーータータタタイイダ」


 迷宮の壁を削りながら道を曲がり、私達目掛けて突っ込んでくる悪鬼は、二足歩行の爬虫類を彷彿とさせる見た目。


 艶かしさに反し、右前腕には巨大なハルパーのような装甲がついており全身は禍々しい黒色。


 緑色の光が血管のように脈を打っていた。


「コーメメメーーデデde タータシタシタシタシ」


 私達のモノリスを見るや否や、悪鬼は加速しながら右手の装甲を構え斬り掛かってきた。


「カロン!、右手」


『ーーー』


 鎖は悪鬼の右腕を拘束し、動きを止める。


「あまり意味ないでしょうけど、ーーー《クリュサオルの飛剣》!!」


 クリオネの魔法の光剣は悪鬼の顎を下から穿つ。


 ガキィン と鈍い金属音と共にアッパーを入れられたような仰け反りを見せるが傷は今ひとつ付いていない。


 悪鬼は《ヘルメースの速剣》を左手で発動し、自身の右手を切り落として距離を取った。


『これ、要らない』と鎖に絡まった悪鬼の右手を投げ捨てるカロンの棺を横目に見つつ、自身の腕を切り落とす魔法の威力に驚異する。


 さらに、右腕はハルパー状の装甲含めて瞬時に再生。


 《クリュサオルの飛剣》を4つ同時に発動し、左手に維持していた《ヘルメースの速剣》で斬り掛かってきた。


「ダ、ダギギギーーキシキシキシキシ」


「ジノ!、クー姉お願い!」


「はいよっ!、《アレースの大楯》!」


 クリオネに飛ぶ魔法はジノに任せて問題ないだろう。


 残り2本が私目掛けて飛んできた。


 問題は私。


(完璧じゃないけど……)


「閃剣七ノ太刀ーーーー薄雪」


 剣先でその内一本の剣を受け止めつつ、後方に飛びながら威力を相殺し、もう一本は身体を捻りながら避けて、腹の部分を刀の鞘で叩き折る。


「やっぱり、核以外は切れないよね」


『文句言わないで』


 《縁断》に対しての不満を漏らすとカロンは少し機嫌を損ねてしまったので、「ごめんね」とだけ伝える。


 閃剣七ノ太刀は、魔法師との戦闘用に編み出された魔法の威力を相殺する技術。


 今だに私はこの術理を完璧に把握する事が出来ていない。


 魔法に対する理解と経験の浅さを悔やむ。


 ジノは先程の攻防を見ても焦った表情は無く、私に接近する悪鬼に対して真っ向から立ち向かう。


「?!、危ないよ!ジノ、距離を取って!」


「大丈夫大丈夫」


 と言いながらジノは悪鬼の懐に飛び込んだ。


 ジノに敵意を向けられた悪鬼が左手で発動している《ヘルメースの速剣》が振り下ろされたその時、ジノは右手に魔力を込め、


「……確かこうだったよな。ロイスさん。《アレースの小盾》!」


 ジノが斬られたかと思ったが、右腕の小盾で《ヘルメースの速剣》を打ち払う。


「結構、痛いぞ〜?」


 振り上げた右手の遠心力を利用し悪鬼の腹部へ、左脚を軸にしゃがみ込みながら右脚の回し蹴りを叩き込む。


「ギギィ?!」


「うそ?!、…卍蹴りじゃない」


(そんな体術あるの…?)


 宙へ浮き上がる悪鬼にジノは使い慣れた魔法を発動する。


「《アレースの大楯》」


 ーーーードゴォ


 無防備に曝け出された腹部目掛けて大楯が、鈍器で殴られたような鈍い音を立てながら叩き込まれ、そのまま地面に這い蹲る。


 ジノの目に宿るは怒気。


 今までに見たことの無い表情をしていた。


「悪鬼にまで、俺の扱いをぞんざいにされたらちょっとムカつくぞ?、プライド的な意味で。無視すんなこんちくしょう!、ーーーー副隊長!!」


( そこなんだ……ッ )


 ジノの怒りの方向性と機転に驚かさせるも、私の名前を呼ぶ声で我に返る。


「カロン!、鎖!!」


『ーーーん』


 ジノの大楯によって地面に押しつぶされた悪鬼へ、白く輝く鎖が両手足に刺さる。


「ジノ、ありがとっ!」


「うぃ」


 私は地面へ鎖で縫い付けられた悪鬼へと近づく。


「カーーゲカカカカカーーオオオオオニーーゲゲgg」


 私に呼びかけているのかは定かではないが、縫い付けられた腕や脚が抵抗を見せるも、カロンの鎖が自由を奪っていた。


「ロイスさん、きっと大丈夫ですよ…。娘さんに会うんでしょう?」


「ーームーメーースーメメメメ」


 抵抗をやめたのか大人しくなる悪鬼、私はロイスさんが持っていたモノリス、核を探す。


 ーーー見つけた


 ちょうど心臓部付近に存在する反応に縁断を突き刺そうとした瞬間、


「ーーギギギィッ!!」


「カゲちゃん!!」


 私を囲うように四方から魔法が発動し、私を襲う。


 不可視の速攻にも思える《ニュクスの彗星》


「もう、そういうのはいいよ」


 空中に《縁断》を放り投げ、


 ーー閃剣六ノ太刀、空木


 魔法の発動より早く振るわれたもう一本の刀を納刀していた状態から技を放ち、彗星の輝きを切り裂く。


 閃剣。


 ただ振りが早い剣術では無く、状況から最適解を見つけるまでの判断が速い者が振るう刃だと昔、天童が言っていた。


 迷った者から死ぬとも言っていた臆病者の剣。


 私にはお似合いだと思った。


 合計9種の相手の動きを見てから動く、後の先を取る剣術。


 動体視力と身体能力が高いだけの私。


 表面だけ取り繕ってきた臆病者の私には勿体無い最高の剣術。


 8年から戦闘に於いて迷いは無い。


 カルマが油断した私を庇って怪我をした。


 アネモネが悪鬼になり、意識不明となった。


 そして今回もロイスという会って間もない人間だが、私の思慮不足によって目の前で苦しみ悪鬼にしてしまった。


 後悔は先に立たない。


「ロイスさん、ごめんなさい…。私も同じような失敗を繰り返してきましたから気に止む必要はありませんよ。だからーーー」


 安心して戻ってきてください。


 空中に舞う縁断を逆手に持ち替え、悪鬼が持つモノリスを切り裂く。


「閃剣二ノ太刀ーーー榎本千鳥」


 二ノ太刀は逆手持ちの断頭剣術。抜刀術なら本来あり得ない二撃目を考慮した切り返しの太刀。


 悪鬼の甲殻をすり抜け、モノリスのみを叩き斬る。


 ガラスが割れるような確かな感触。


 悪鬼と成り果ててしまったロイスの身体は、ひび割れ黒い表皮が崩れ落ちていく。


『これは、要らない』


 カロンは先程と同じように鎖に刺さった黒い塊を投げ捨てて行く。


「なんで要らないの?」


『これは違うの』


「そっか」


 判断基準はいまいち理解できなかったが、何となく嫌な物と言うことは理解できた。


「カゲちゃん!、大丈夫?」


「終わったっぽいなー」


 戦いを終えたクリオネとジノは安堵した表情を見せる。


「うん、大丈夫だよ。クー姉。……ロイスさんは大丈夫そう?」


「…診て見るわ、ペルセポネ」


『承知しました』


 数分後、ロイスの容態を確認し終えたクリオネは、「大丈夫よ、カゲちゃん」と笑顔でウィンクをしてくれた。


 どうやら仮説は正しかったようだった。


「ロイスは今後どうすんのかね?ーーーーアイツら生きてんのわかったらまた何しでかすかわからんぞ」


「それもそうね。隊長に確認するしかないかしら?、……気になることも沢山あるし」


「そうだね、とりあえず運ぼうか。カロン」


『ヤダ』


「えぇー なんで?」


『…汚い』


 カロンはどうやら紛い物のモノリスを手にしたロイスを棺に乗せるのはダメらしい。


「それじゃ仕方が無いわね…。G、運びなさい」


「へーへー、わかりましたよ。テレシア様」


 自身の扱いに慣れてしまったのか、ジノは目や態度でこそ不満を垂れ流していたが素直にロイスを担ぎ、運び出すのであった。

いつもお読みいただきありがとうございます。


ブクマ&評価&いいねもありがとうございました。


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これからもよろしくお願いします。

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