後悔は先に立たず
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殺気を放つ童子を目の当たりにし、黒ローブの集団は、得体の知れない何かに、一斉に魔法を放とうとしていた。童子の放つオーラは素人目から見ても相当の実力者だと言う事が伺えていた。
「あぁ、そういう感じな」ーチーーカチー
童子は投降する意思なしと判断し、12本の剣の内5本を使って、相手の魔法を発動直後を瞬時に切り裂く。
5人は並列していた陣形から、距離を取り童子を囲むような陣形へと変わる。
(……それなりに統率は取れてるみたいだな)
「キサマ、一体何者だ?!」
黒ローブの1人が童子に声を荒げる。
「おいおい、第一声がそれか?、それこっちのセリフな?、お前らこそ誰よ、目的は?」
「話す訳ないだろ!、ふざけやがって…ッ!!」
ふざけて聞いている訳ではなく、童子としてはラフに、肩の力を抜いて戦闘する方が性に合ってるため至って大真面目である。
(んなもん、フランクな上司の方が話しやすいだろ……。)
「ふざけてるつもりは無いんだけどなぁ」
童子は魔法剣の内、8本を其々2本ずつ、黒ローブの一人一人に挟むように飛ばしつつ、目の前の「何奴?!」と反応してきた男の頭を掴み、地面に叩き込む。
ーーーードゴッッ
「ーーーガハッ」
「動くなよー?、てか髭剃れよ、気持ち悪りぃ」
「ーーーグゥッ」
童子の周りを取り囲む黒ローブに輝剣が首元ギリギリの位置に待機させる。また、地面に顔叩き込んだ男には抵抗されないように残りの4本を手足に突き立てた。
「なんだ、この速度は?!」
「クッーーー速すぎるッ!」
「なんか弱そうな奴らみたいな反応するなよ…。頼むからそれっぽい目的とセリフ喋ってくれ。時間無いんだから」
地面に後頭部を叩き込まれた男は手足から血を流し、呻き声だけが聞こえる中、心底めんどくさくなってきたので、童子は自分から本題を提示する事にした。
「…お前らは、ーーーーーあぁ、 なんだっけ?《白夜の帳》って連中で間違いないな?、外に居た5人も、お前らのお仲間ってことでOK?」
「ーーーーー」
黙り込んでしまったので話を続ける。
「はぁ、ちなみに、俺の可愛い部下が外の5人の内3人は既に処理してる。残りの2人は……なんか悪鬼化したらしいが、ご存知?」
「そ、そんな筈は……」
「外で使ったのか…ッ」
「キ、キサマのような一級魔法師、いやそれ以上の奴が何故こんなところにいる?!」
「んー たまたまだな。つーかお互いその辺困ってんじゃねぇーの?、予定と違うし。俺もお前らの扱い困ってんのよ。……割と本気で」
ロイスをターゲットに悪鬼の密猟密輸に加担するノトスの研究者や施設の調査をしようとした矢先に《白夜の帳》という連中が現れた。
さらに《方舟》の情報では、悪鬼の売買に加担している有力人物として挙げられた人間が、手段は間違ってしまっていたがノトスやその他の都市への流通を影ながら抑えてくれていた張本人且つ、人格者と来た。
本来なら国を挙げて賞賛されるべき行いだ。
しかし、そうはならなかった。
調べがついていたにも関わらずにだ。
つまりニュクスかアルバスそのものは、まるで悪鬼の密猟、密輸並びに研究を秘密裏に行う事を密かに推奨し、事故を起こそうとしているようにも見える。
これはかなり根が深い。
ヤカゲが言った今回の件は一度持ち帰るという判断に至った理由は恐らく、
「お前ら、ニュクス…いや《方舟》の人間だろ?」
「ーーーッ!」
「…遅いな」
童子の質問に対して、明確な殺意と魔法の反応を示した為、黒ローブの一人の首を跳ね、動きを止めた。
「あのな?、《ヘルメースの速剣》ってのはバレない訳じゃ無いのよぉ?、使うなら《ニュクスの彗星》くらいにしとけ?、学園で習わなかったか?」
「ちっ、くそッ!」
「何なんだ一体……」
「いや、この動き…、お前、まさか?!」
「ん?、気づいたか?」
先程の攻防でこれは確信に近いと童子は予想する。また、相手にも自身の素性がバレつつあった。
(オヤジが今回の作戦に私情を挟んだ理由が分かった気がするなぁ、ふざけんなよチクショー)
童子はゲンナリした気持ちになったが、早急にこの事を伝える必要がある。そしてロイスの扱いは中々険しい道のりになりそうな気がしていた。
黒ローブ達の目的は、ロイスを暗殺し、密猟密輸に加担した張本人として冤罪を掛ける事。
あとは悪鬼を使った人体実験。さらにニュクス絡み。
正式に軍の仕事として訪れるより先に潜入させたオヤジにエールを贈りたいよ。
抱き締めたくなっちゃうね。
割とマジで。
正式に派遣された頃にロイスの死体を発見。
研究資料含めて悪鬼の密輸入に加担していました。
殺害には謎の組織が関わっており、現在捜索中。
チャンチャンだ。
こういう報道で締め括る筋書きが透けて見える。
「貴様…、天夜叉…童子だな?」
「だとしたら何か変わんの? ーーーーてかお前らは、外の連中みたいに悪鬼化しないの?」
「なぜ、それを聞く?」
「単純な興味だ。……D³sと同じ感じ?」
D³sという名前を聞いた途端、黒ローブの連中が急に表情を暗くしたのが見て取れた。
「ーーー我々を……!、《白嶷》と一緒にするな!!」
「《白嶷》が行った事は神への冒涜だ!!」
「ノアこそ、悪鬼こそ我々の本来在るべき姿だ!!」
「それ、どういう意味よ?」
在るべき姿というのはどういう意味なのだろうか。
それだとエデンガルド帝国の思想に近い。
(このカルト連中は国跨いでんな、これは…)
狂信者という言葉で一括りにして無視する事も童子は考えたが、この目で確かめためて見るべきだとも思う。
童子は取り押さえた手で、黒ローブの頭に直接《ヘルメースの速剣》を打ち込み瞬時に処理。
体勢を立て直させるために、わざと《オリュンポスの輝剣》を少しだけ引いた。
「……どういうつもりだ?」
「お前らの言う本来在るべき姿というのが気になっただけだが? ほら、見せてみ? D³sとお前ら、どっちが強いんだ?」
「くそ、舐めやがって……。後悔するぞ?」
「その少しでも残っている良心を他のところに当てて貰いたいもんだね」
緩められた輝剣を見るや否や、黒ローブの男達は一斉に禍々しい黒い塊を取り出し、叫び出した。
「「《白夜の帳》に叡智ある世界を!!」」
3人の黒ローブは、声にならない悲鳴、奇声を荒げながら、黒い塊に飲まれ肉塊へと変貌。
「グゥオオオ」
「ギィヒィイイイッ」
「イダイダイダダダタ」
3つの肉塊は其々、依代となった人間の原型を止める事なく一つの異形へと成り果てていった。
ーーーーギョギギギギエエエエエ
「世界か…、世界ね。ハハッ、ーーーーはぁ、こんな虚しい同窓会があるもんかね」
泣き叫ぶ漆黒の悪鬼は、どう間違っても人間本来の在るべき姿と、童子は到底思えなかった。
怪しく光る紫色の眼光は、童子を凝視している。
ーーグルゥ
「誰も見てないし速やかに…。 ーーーーー二次会はなしの方向で頼むな」
童子は《オリュンポスの輝剣》を全て、目標へと放ちながら、異形に対峙する。
異形の悪鬼は《アレースの大楯》を複数発動し、軽々しく全て弾き返す。
「意外とタフな魔法使うのな。 悪鬼化する事自体にそれなりに意味はあるの…か。はぁ…」
光り輝く盾で防ぎ切った異形は、新たな魔法を童子に目掛けて放とうとしていた。
ニヤリと無理矢理引き裂いたような口元を見せる。
童子は、悪鬼が放つ魔法に、どこかモノリス特有の魔力に近い波長を感じた。しかし全く焦らなかった。
「これは自論なんだがな、自身が観測した事象が正しいから、納得するのではなく、人間は納得が先行するから観測した事象が正しかったと認識する…。そう考えているんだが、お前達はどう思う?ーーーあぁ、すまん。話せなかったな」
人間性を失うほどの侵食を見せ、モノリスに似た力を有する物体。黒ローブが手に持っていた黒い塊は一体何だったのか。あれはモノリスとは思えない。もう少し調べる必要がある。
「はぁ…。もう、何となくわかったから、ちょっと退場してもらうぞー。お疲れさん」
童子は右手を強く握りしめ、乞い願う。
その拳を勢いよく空間に叩きつけた。
「さて、導こうか…。ーーーーー最善を」
ーーーパリィン
本来入らない筈の亀裂が空間を割く。
「……連れ出されてくれるか?、ーーーー括理白姫」
ガシャンとガラスが割れたような亀裂が入った空間から姿を表す。
そこから伸びた色白い手と手を繋ぎ、優しく連れ出す。
『ーー全く、世話が焼けるでありんすな』
「久々だな…、遊んでくれんの?」
『ーー童子はんがそう望むなら』
割れた空間から現れたのは白い和装を身に纏う花魁。遊女。
彼女が地に足をつけた瞬間、時計の針の音が響く。
ーーーーー
ーーー
ーー
ー
「あぁ、そういう感じな」ーーーカチーカチ
俺は投降する意思なしと判断し、12本の剣の内5本を使って、相手の魔法を発動直後を瞬時に切り裂く。
5人は並列していた陣形から、距離を取り俺を囲むような陣形へと変わる。
(…それなりに統率は取れてるみたいだな)
「キサマ、一体何者だ?!」
ー
ーー
ーーー
ーーーーー
括理白姫と呼ばれる人型の《対話の権利》が見せたのは、ほんの数分前の光景。
《白夜の帳》が悪鬼として一つの肉塊になる前の事象を童子は観測する。
「閃剣四ノ太刀ーーーー赤椿」
童子は5人の黒ローブの首を迷わず斬り飛ばした。
ーーーー
ーーー
ーーーーカチ
「すまんな白姫…、助かった」
『ーーほんま童子はんは、権利の扱いが雑でありんすなぁ… 』
空間から現れた括理白姫は、純白の扇子で口元を隠しながら、事象が上書きされた事によって、本来生まれるはずの異形が消えかかっている光景を憐れむような目で見つめる。
「まぁ、借り物だからな。そう言いながらも律儀に来てくれるあたり、お前さんは優しいのな」
『もう…。また、そないな事言いなはる…、わっちは騙されまへんえ? しゃんと反省しなんし!』
「イテッ」
ペチと扇子で童子が繋いでいた手の甲と頭を小突く彼女は、気を取り直し真面目な表情を作る。
『ーーどう思てはんの?、あないな歪な奴……、許される筈のうなんし』
「んまぁ、良くはないだろうな。それより外はどうだ? あの2人は大丈夫そうか?」
『遊戯には問題ありゃしまへんよ?、ただ、あないな歪者が暴れ回るのは記憶からも斬り捨てた方が最善でありんす…。童子はんもそう思てはるやろ?』
「間違いないな、これ拾って大丈夫だと思う?」
童子は、黒ローブが持っていた黒い塊のような物を指差しながら、括理白姫に尋ねた。
『そないなもん触った手でわっちに触れようものなら、過去に戻って童子はんのと関係を斬り捨てとうありんす』
「ーーえっ、まじで?!、そこまで言うかね…」
怪訝な顔をする括理白姫の様子を見るに、モノリスから見てもあまり良くない物らしいが確かに触れるべきでは無さそうなので、童子は調べるのを後にした。
ただこのまま放っておく訳にもいかないので、手間だが迷宮の通路の端へ脚で追いやり、隠蔽用魔法の《ニュクスの眼光》を使って死体を不可視にする。
その間、童子の非人道的な死体蹴りを目の当たりにしている括理白姫の顔は非常に引き攣っていたが、お構いなしだ。
「あのさ、白姫が触れるなって言ったから仕方がないだろ?、俺も死体なんざ蹴る趣味ねーよ? 」
『そないな事言うて、童子はんが文字通り童の頃なんてひどいもんでありんしたけど、どの口が滑ってはるん?、あぁ、寒い寒い』
「あぁ、わかったわかった、お前さんには敵わんよ。ーーー先を急いでも?」
『……そうしなんし』
童子は括理白姫の手を引き、シズクとカルマの元へ向かう。
迷宮を一目散に駆けて行き、すれ違い様に奉仕生物を狩っていく。
「……当分、食費には困らんな、これは」
『食べられるでありんすか?、やめておきなんし……』
「いや、それがな。ヤカゲが作ったシチューが美味いのなんの」
『あの小娘でありんすな』
「んまぁ、そうだな。可愛い義理の妹だ。追々紹介する。追々な」
『尚早。遊女と戯れるのはまだ先でありんすな、わっちは一眼見た時からーーー』
「ヤカゲの話はまた今度だな。状況からしてシズクのモノリスが相性良く立ち回れている感じだな」
童子と括理白姫迷宮を抜け、話を一度切る。
ネオンライトが立ち並ぶ下界へと降り立ったと同時に、借り物の権利へと呼びかける。
「白姫」
『任せておくんなし』 ーーーカチーカチ
ーーーーー
ーーー
ーー
ー
「仕方な ーーーチーカチーー
「ーーー見つけたぞ」
「大人しく投降するでありますよ!」
と黒ローブの2人に警告するのは、銃を構えた青年と、刀を構えた少女。
そして霞んで見えーースーツ姿の男。
スーツの男以外の青年と少女はどちらも10代にしか見えなかった。
「はぁ、ほんと狂ってるよな…。うちの娘っ子と殆ど変わらねぇじゃねーか」
「それだけ世界が狂ってるって事だな」
「もし、D³sのモノリスを持ち帰れば、主人も喜んでくれるだろうぜ… 家族にも金が行く」
「ははは、そうだな」
2人は手に持つ塊に自身を喰わせながら叫ぶ。
「「《白夜の帳》にーーーーー
ーーーー
ーー
ー
ー
「閃光五ノ太刀、ーーーーー文目」
悪鬼になる寸前の男2人の上半身を黒い塊を纏めて原型が残らないよう切り裂いた。
ーーーー
ーーー
ーーーーカチ
『あの子らの奮闘…。無駄にする訳はいかないでありんす。それと同じように、わっちは童子はんが影に徹している姿を見ると、心が持ちまへん』
「悪いな。ただこの事に関しちゃ俺のエゴだ。実際に戦闘を続けていたら勝ってたしな。ただ、情報は持ち帰らせたくない。はぁ、全く、後悔は先に立たないってのは誰が考えたのかね…?」
自身の能力を真っ向から否定する言葉を吐露しながら童子は、血のついた刀を払う。しかし、括理白姫はそんな童子を憐れむように彼の背中へ撓垂れてきた。
『あんたさんは、人一倍不器用なクセして、後悔を先送りにする事しかできひんのに、分不相応な夢追っかけて…。いい加減にしなんし』
タバコに火をつけた童子は、何も言えなかった。
納得も後悔も人間の感情というのは目の当たりにした事象にしか示す事ができない感情だ。
それを観測し、事象を改変する時翔の力は、とても俺には見に余ると童子も感じていた。また、見せるのも時期的に早いとも考えていた。
『まぁ、そんなあんたさんやから、あの子もわっちを童子はんに貸してはるんや思う。精々、後の祭りにだけにはせんように…ふぅ』
いつの間にか括理白姫は手に持つ煙管をふかしながら、ネオンが照らす夜の都市から煙を撒くように姿を消した。
「ーーおっ?!」
突然消えてしまったため、童子自身も括理白姫へ無意識に体重を預けていたせいで、後ろに転びかけ、タバコを落としてしまった。
「ちっ、……早く行ってやれってことかね」
童子は、カルマとシズクのいる建物の屋上へ向かい、時代に争う後輩達に声をかける。
「物陰に潜んでた《白夜の帳》とかいうカルトっぽいやつは既に片付けたぞー」
「ーーー隊長?」
「隊長殿!!、それがーー」
2人の記憶はどうやらまだ、完全に消えていないようだがいずれ消えるだろうと童子は思い、予定通りの声をかける。
「ん?、なんかあったか?、まぁ何にせよ。 しっかり待機してたみたいだな」
(ーーー出来るだけな…)
童子は2人の成長した姿を目の当たりにして内心「よくやったな、お前ら」と頭をワシワシと撫でながら褒めるのであった。
( 俺だけは忘れないでいてやるからな )
童子の《対話の権利》、括理白姫は身に余る権能である事は彼自身が一番理解していた。元ある持ち主へ引き渡されるのは遠い先の話である。
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