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毎日12時と17時に更新!!

よろしくお願いします。

「近くの様子を確認して参ります」


 と言い残しカルマの通信に対応しつつ、童子は、ヤカゲが作ったシチューを食べながら、通信機越しにヤカゲとクリオネとジノに語るロイスの話を聞いていた。


(……これ美味いな)


 ヤカゲが料理中に聞いていた内容に付随して悪鬼の密輸入と研究に関しての内容を包み隠さず語っていた。


 ロイスが語るヤカゲを娘の護衛にしたいという話はどうやら本気だったらしくテレシアもといクリオネに土下座をするような勢いで頼み込んでいたが『却下です』と言う声が鳴り響いた。


 目が全く笑っていないシチューも凍てつく笑顔を浮かべて断っているのが童子の目に浮かぶ。


 しかし、ロイスはその言葉を聞いても『はははっ、そうでありましょうな』と断られる事が分かっていたような、そしてスッキリしたような雰囲気が通信機越しでもわかる。


 悪鬼そのものを密輸入するという大胆な行動を取った事も本来、水上都市ティアネコッタの民間研究機関に向かうものを無理矢理、金で買収して連れてきて貰ったそうだ。


 娘の近くで危険な研究はやめて欲しいという気持ちがありありとしていた。


 報告と《方舟》からの情報に上がっていた人物像と食い違う点が幾つもあるため、判断に悩む童子だったがヤカゲが1つの提案を出した。


『正直なところ、何を信用すれば良いのか全くわからない状況ですが、この件は一度持ち帰った方が良いかもしれません』


『カゲロウ様、一体どういう事ですか?』


『ロイス様の仰るニュクスが信用できないという件は一考の余地があるという事です』


 ヤカゲやクリオネは既に《方舟》の人間に対して《白嶷》での研究とアネモネの件で、少々辛辣ではあるが信用していない帰来がある。恐らく第一世代のD³sは訓練時に戦っていた悪鬼が元人間である事は察しているのだろう。


 童子の目では、シズクとジノがどのように考えているか不明瞭だが知らない方が良い事もあると考えていた。


 童子自身も過去何度か《方舟》に対して不審に思った事があるため気持ちは理解できる。寧ろ不審に思う所があるからこそ、身を置いていた。


 ただ反旗を翻すには時期尚早。


 《夜爾》の副隊長に限ってそんな簡単な判断を見誤る事は無いと童子は考えている。


『そもそも、密輸入はしたけど他の研究員にばら撒かずに自身の研究に回してたって話っすもんね』


『ええ、他の研究所に渡るような事があればノトスだけでの処理は不可能です。私はそれを阻止するため《白夜の帳》という宗教団体とのパイプを繋ぎ、私の元へ悪鬼やその素材が出来るだけ集中するように仕向け、独自に研究を進めていた』


 もはやジノの口調がいつも通りになっていたが、ロイスは全く気にしていない様子。問題は《白夜の帳》と呼ばれるカルト集団の方。


 何故こうもカルトな連中は怪しい名前を付けたがるのか…。童子の趣味に合わなかった。


 怪しくなりたいのだろうか。


 あれ、俺らも変わらんくね?


 童子はタバコを吸いながら下らない事を考える。


『Gの意見もありますが、ロイス様が仰る迷宮区に連れこまれた悪鬼…。それを私達で秘密裏に狩ってしまう方が良いでしょう。安全の確保が先決です』


 童子はヤカゲの判断が妥当だと思い、一度彼女達の元へ踵を返す。


 ボディーガードのロールプレイに興じつつ、感知魔法に引っかかった連中に関して伝える。


「どうやら少しきな臭くなってきました。遠目からも聞こえましたが、ロイス様の仰る《白夜の帳》らしき集団の反応がこちらに近づい出来ております。数は5名」


「な?!、何だと!、金は払った筈だ」


「ロイス様が防波堤になっていた事は向こうも気づいているようですね」


 どうやら《白夜の帳》さん達もロイスを完全に信用していないようだ、と薄々童子は感じていた事を述べる。


 金だけ背絞めて処理しようと言う事だろう。


 また、カルマの通信から考えられる動きから密輸密猟以外に別の目的があると見て間違いない。それを探る必要がある。


(義理の妹の為にも一肌、脱ぎますか… )


 童子は、ヤカゲ達の顔色を伺い告げる。


「……御嬢、恐らくですが戦闘になると思います。5人の相手を私に任せて頂くことは可能でしょうか?」


「D殿!?、それは無茶だ!、危険すぎる!!」


 クリオネが口を開ける前にロイスが焦りを見せるが、全く取り合わない。


 童子はどのような集団で、戦力がどの程度なのか知りたい為、ロイスに聞く。


「ロイス様、時は一刻を争います。理由と出来れば奴らの力量を端的に聞かせて頂いても?」


「彼奴等は、魔法師だ…。推定でも三級、いや二級相当の実力はあるぞ?」


「……なら問題ありませんね。D、任せて問題ないかしら?」


「承知致しました。行って参ります」


 クリオネのある意味、必要のない許可を貰い、迷宮区の入り口付近から接近するカルト集団と対峙するために走り出した。


『大切な御仁をみすみす無駄死にさせるおつもりですか?!』


 通信機から、ロイスの焦った声が聞こえてくる。


 情に流されるなと、童子はヤカゲに伝えたが、正直なところ奉仕生物と対峙している彼の所作からどうも悪人とは思えず、人間臭い奴だと思っていた。


(……嫌いになれんねぇ、どうも)


 どうやら人の事は言えなさそうだと、童子はそう思う。


「ヤカゲ、5体悪鬼が控えているそうだが、大丈夫か?」


『問題ありません。ーーーDは、大丈夫です』


 ヤカゲは、童子にもロイスにも大丈夫であるという旨を器用に伝えてきた。


 童子は、ヤカゲ達との通信を切り、今度はカルマからの通信を取る。そして《オリュンポスの輝剣》を無詠唱で自身の周りに予め展開しておく。


『童子隊長、黒ローブの2人が…、融合?…、とりあえず悪鬼化しました。それと《白夜の帳》という名前に聞き覚えは?』


「ーーなんだ、それ。とりあえずってなんだ?、……まぁ、いいか。その名前はさっきロイスから聞いた。詳しくは知らんが、ロクでも無さそうなのは確かだな。とりあえず直ぐに向かう。それまで出来るだけ待機。いいな?」


 カルマにそれだけ伝え、通信を切る。


(はぁ、忙しくなってきたなぁ、めんどくせぇ)


 童子はカルマとシズクの心配をしつつも何だかんだ戦闘になれば二人とも大丈夫だろうという気がしている。


 しかし、相手に好き勝手させるつもりもない。


 さてーーー


「ーーーなぁ、お前ら。ここに何をしに来た?、無駄だと思うが一応勧告な」


 目の前に現れた5人の黒ローブはそれぞれ、学術系魔法を展開しながら童子と対峙する。


「無駄な抵抗は辞めて、大人しくトーコーしてくださーい。従う気がないと思うから武力によって制圧するが、……宜し?」


 童子は12本の剣を怪しげな集団に剣先を向け、普段は余り見せない殺気を黒ローブの連中に放つ。


(人間相手は久々だなぁ、学生ぶりか?、入隊以来か?、ま、どっちでもいいや)


「黙ってたら何もわかんねーだろ?、で、どうすんのよ? 後悔すんぞー」


 童子は、次に起こる展開を予測しながら、謎の集団に対峙するのであった。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


 童子が迷宮区へと侵入してきた《白夜の帳》と対峙しに行った後、ヤカゲは、ロイス、クリオネ、ジノと共に迷宮区で隔離している悪鬼の処理へと向かっていた。


(……隔離なんてそもそも、できるのかな? )


 悪鬼は人間以外を襲う事は無いらしいので、奉仕生物に対しては無害だろうと楽観的に考えてはいるものの、放し飼いのような事が本当に出来るのか。


 そもそも迷宮区にどうやって悪鬼を連れてきたのか。


 疑問が頭を過ぎる。


 迷宮区の中層部は、上層部と同様に人の手が入っていない所もあれば、随所に人工的な建造物が散見する。壁から生えていると言うよりも、建物があったところに壁が出来たような印象を受ける。


 中層の中腹部以降は、国の許可が無いと入られないらしいが今回はそんな事を言ってられない。しかし、迷宮区に広がる異様な光景に皆息を呑んでいた。


 こう言うものなのだろうとあまり気にしていなかったが不思議だ。


 建物が立つ事を忘れて微睡んでいるかのような…。


「ロイス様、失礼ながら悪鬼との戦闘経験はお有りなのでしょうか?」


「お恥ずかしながら一度もありませんな…。ただ《白夜の帳》、奴ら曰く非活動状態に制御していると言っていたので多少は可能なのではと楽観的には考えておりますよ… テレシア様は?」


「私は、カゲロウと共に何度か。……後ろに控えるGも多少は大丈夫かと」


「……どもっす」


「はっはっは、それは頼もしいですな」


 迷宮区の構造物に気を取られているとクリオネがロイスの戦闘経験に対してリサーチを掛けていた。


 ジノのフォローを入れる際、露骨に声のトーンが下がるクリオネ。


 ジノは実際、あまり戦ったところを見た事がない。


 そもそもモノリスを使っているところを見た事がないので悪鬼との戦闘に関しては少し不安を感じる。


 4人は迷宮区の奉仕生物を狩りながら先を急ぐ。


 戦闘が落ち着いた際、少し気掛かりな内容があったため、ロイスに尋ねる。


「非活動状態というのは、具体的にどう言ったものなのでしょうか?」


「私も詳しくは…。奴らが言うには独自にA-CKI(アッキ)を研究した際の副産物と言っていましたが……。カゲロウ殿、申し訳ない」


「いえ、とりあえず様子を伺ってから判断しましょう。 テレシア様、宜しいですか?」


「……ええ、カゲに任せるわ」


 悪鬼を隔離している付近の奉仕生物を間引き、「こちらです」とロイスに誘導された先の横穴への通路を歩く。


 暗がりに見えるのは、悪鬼特有の禍々しい緑色の光。


 ロイスが先行する中4人は息を潜め、その光を確認しながら近づく。


(…様子見てこないとっ!)


 私が動き出そうとすると、クリオネが片手で静止してきた。


「G、様子を見てきなさい」


「うぇ?!俺っすか?!」


「あら、何か問題でもあるかしら?、()()()()()()さん」


「しょ、承知しました」


 クリオネの棘がある指示が飛ぶ。ちょっとだけこの状況を楽しんでいる様子は、昔見たクリオネみたいでジノには申し訳ないけど、ちょっと嬉しい。不思議とジノに対してもクリオネは、素の部分を出せるようで安心。


(ごめんね…、ジノくん…)


 ジノにアイコンタクトでメッセージを飛ばすと「はぁ」とため息を吐きながら指示通りに渋々悪鬼の様子を伺いに行く。


「テレシア様、大丈夫なのですか?」


「ええ、彼は丈夫ですから。2.3度噛みつかれようと、腕が千切れようと、しn…、死にかけても問題ありません」


 後半は最早、願望も入っているのでは?と思うほど過激なクリオネの物言いに、ロイスは違和感も覚えながらも納得してくれたらしく、その後は何も言わなかった。


 そして、ジノが2m付近まで近づいても悪鬼は反応する事はないが、心配になってきたので呼び戻す事にする。


「G、私が見た限りではその悪鬼達は動かないと思う…ッ!、……それ以上近づかなくても問題ないですよ。ただーー」


「どう、処理するかよね……」


 クリオネの意見に頷く。


 今回は、アルバスの騎士爵令嬢とその護衛としてロイスの調査に赴いている為、D³s(ドールズ)のモノリスがニュクスの軍《方舟》である事を悟らせてしまうため、ここまで築いた信頼というものに亀裂が入る恐れがある。


 今更ながらに私達D³sが置かれている立場に面倒臭さを感じる。


「生半可な魔法じゃ、無理かしらね?」


「ええ、ですが…。動かないと言うのであれば」


「……うふふ、多少強引ではありますが、試す価値はありますね。……G、念のため盾の準備を。カゲは刀を」


「承知しました」


「了解っす」


 合計で5体。


 動かないとはいえ本当に大事だろうか?


 疑念は晴れないが仕方がない。


 周りの奉仕生物間引いたとは言え、今の今まで手付かずという事すら怪しく思う。


 ジノが《アレースの大楯》を構え、クリオネが私の刀に《アレースの加護》を付与すると、


「では、手始めに私が」


「ロイス様、合わせます」


「「《クリュサオルの飛剣》」」


 クリオネとロイスは、お互いに《オリュンポスの輝剣》の下位互換魔法、単発の魔法剣を悪鬼へ解き放つ。


 飛翔する魔法の剣は悪鬼に突き刺さり、硬い表皮を切り裂いた。4人は息を呑むとものの、悪鬼の反応は依然として動く気配がない。その上、体表を削られた事にすら気づいていないような印象を受ける。


「本当に活動しないようですね……」


「まるで、標本よね…」


「元々、研究目的で連れてきて頂きましたから」


「ーーーー」


 複数の悪鬼が微動だにしない異様な光景に、ロイス以外、動揺していた。


 この人は活動状態の悪鬼を恐らく見たことがない。


 ここまで正気を感じない悪鬼なんて存在するのだろうか?


 本当に大丈夫なのだろうか?


 魔法で削り切るにしても数が多い。


 何か見落としている事はないだろうか?


 私は、思考を巡らせる。


「魔法で削りに切るにしても、流石に硬過ぎるわよね。ーーーカゲ」


「そのようですね。テレシア様…」


「俺まだ攻撃用の学術系魔法は覚えてないんすけど、大丈夫っすかね?」


「はっはっは、根気が必要になりそうですな。でもご心配は要りません」


 ロイスだけは、この異様な光景を目の当たりにしても動じず寧ろ自信に満ち溢れている様子。


(ーーー一体何を根拠に……)


「テレシア殿、実はこのような物を《白夜の帳》から応酬… いや買収していたのですが、使えますかな?」


 ロイスが自身ありげにポケットから取り出したのを見た物を瞬間、私はゾッと寒気がした。


 忘れていたわけではない。


 自分達しか使えないとたかを括っていた代物。


 カルマから本作戦開始日に情報の片隅に書いていた本来、悪鬼を討伐すべく編成された軍にのみに支給が許されている兵器。


 モノリス。


 私達D³sのモノリスは純白で、紫色の眩い光を放つ。


 汎用型として開発された物もまた、黒色ではあるものの、しっかりと紫色の光を帯びている。


 しかし、ロイスが取り出したモノリスは、私達が扱う物と決定的に違う。


 禍々しい黒さと薄汚れた緑色の光。


 その嫌悪感は正しく、悪鬼に向けるそれだった。


「ロイス様!、すぐにそれを手放すのよ!!」


「ジノ!!、盾を構えて!!」


「?、ーーわかった」


「はっはっは、いきなりどうされtーーー」


 ロイスのその後の言葉は、今か今かと待ち侘びていた悪鬼によって揉み消され、瞬く間に彼とモノリス諸共飲み込まれていったのであった。

いつもお読みいただきありがとうございます。


ブクマ&評価&いいねもありがとうございました。


「面白い」「続きが気になる」「更新頑張れ」と思われた方ブックマークと評価の☆☆☆☆☆を押して頂けるとすごく嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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