童子の観察日記
毎日12時と17時に更新!!
よろしくお願いします。
箸休め的な話です。
藤原童子はカジノ店を訪れた翌日、カルマとシズクが集めた情報を精査しつつ、ニュクスへ帰還せず、中央都市アルバスへ《夜爾》のD³sどもと訪れていた。
「迷宮用にモノリス以外の武器調達とは、めんどくせぇことなったなぁ」
「本来ならモノリスでも狩れるっすもんね… 奉仕生物」
「仕方がないじゃない。寧ろ探りを入れる予定の相手から直接申し出たんだから好都合よ。ーーーそれに」
「ちょっ、クー姉… 歩きにくいよ?」
「んはぁああん、カゲちゃん!、カゲくんに戻ってぇえええええ!!」
童子とジノの物言いに、やや交戦的な反応を見せるクリオネは、ヤカゲの腕に抱きつきながらヤカゲの顔を覗いていた。
見る人からすれば、非常に良い光景に違いないんだろうと思うが、童子はその辺に興味はない。
童子は、非常に仲睦まじいとも思うが、周囲の目線が煙たかった。
「お前らそろそろやめとけ。遊びに来たんじゃねぇぞ?」
「そうだよ、クー姉。作戦が終わったら、幾らでも付き合うから。 ね?」
「?!、カゲちゃんが…ッ、でもまぁ、それもそうね」
正気に戻ったクリオネは、程よくヤカゲと距離を保ちながら歩き始めた。
店の前に着くと、ヤカゲが振り返り、笑顔で一言告げた。
「武器調達のための資金は、カジノで勝ったから心配しないでいいよ」
「ーーー勝ったのか?」
カルマが意外そうな顔で聞くと「うん!」とドヤ顔でヤカゲは肯定していた。
ヤカゲのこう言うところは年相応である。
「ヤカゲ殿はギャンブルの才能もあるのでありますな!」
「カゲちゃん…いや、カゲくんは格好良かったのよ!!」
クリオネもシズクに同調しながら褒めていた。
女の子にカッコいいはどうなのかね、と童子は考えたが、執事気分を味わえた上に、役に入っていたヤカゲを見ていた為、こいつ自身満更でもないんじゃないかと童子は無粋なことを考える。
「んまぁ、金は副隊長が直々に用意してくれたし、それに甘んじるとするか。ーーーお前ら無駄遣いすんじゃねぇぞー」
「はーい」と適度にテキトーな返事をする部隊の面々に内心、舐められてんなぁと童子は思いつつ、迷宮区の奉仕生物用に武器等を物色するため店へと入る。
モノリスは一般用に普及されない分、それなりのものを用意する必要があるのだが、
(……さて、こいつらの人間関係、観察するかね)
童子は、学園の頃を思い出しながら観察する。
店内に入る部隊員は、それぞれ求めるものを物色し始めた。
「……カゲちゃん、武器を見る目が完全に、アクセサリーやら化粧品やらを物色してる乙女みたいな顔してる……。 これはこれでアリかも…、うへへ」
「……ヤカゲなら何でもありなのか?」
「当たり前でしょ?、そういうカルマも顔に出てるわよ」
「……そうかもな」
「あら、意外と素直じゃない?」
「ふっ、……シズク、使えそうなやつがあれば教えろ」
「承知したであります!」
童子の目には、ヤカゲを見守るクリオネとカルマは誰から見ても本当の家族のように見えていた。
クリオネに関してはカメラで写真を撮る始末。
店内で撮影はやめてほしいんだが…、怒られてからでいいかと童子は楽観的に考える。
「なぁ、俺、あの空気に入れる自信ないんだけど」
「あはは、そうでありますなぁ、おっ これは中々の業物であります!、店主殿!!」
「おー、分かってんじゃねぇか嬢ちゃん」
シズクはジノの気持ちにあまり寄り添う事なく武器を物色し、店主と何やら盛り上がり始めた。
「おい、ここにも副隊長タイプいんじゃねぇか、こんちくしょう」
「ジノ、お前は選ばねーの?」
「隊長…、俺は前線でバリバリ戦うタイプじゃないの知ってるでしょ?」
「まぁ、そうだわな。魔法使えるし。ーーーオヤジさんは元気か?」
「……どうなんすかね。生きてるとは思うんですけど、別に親父もそこまで俺のこと気にしてないっすよ」
ジノの翳りのある物言いに、童子は思うところはあるが、それ以上突っ込む事は辞めた。
(……しゃあねーなぁ)
「おーい、副隊長さんや。この悩めるジノくんの武器を選んでやってくれ」
「えっ?! ちょっ!、隊長?!? 」
「ん? 、あ、はい。 ジノくん、何か悩んでるの?」
露骨にテンパる部下の様子を童子はニヤニヤしながら見守る。
ヤカゲが自然と上目遣いになってしまうジノとの身長差。
おじさんはこう言う青春をコイツらに教えたい。
この部隊に所属する人間関係を店内の様子と今までの傾向で考えてみたが、どうやら予測通りそうで面白くなってきた。
童子は《夜爾》が結成される前からD³s全員の性格等を見抜いていた。
ヤカゲは、兄姉愛、家族愛が強い。
その反面無関心な事には無関心というより経験がないという初心なところがある。
シズクとジノへの対応があくまで形式的…。恐らく、義務感からくるもの。
器用さが先行して一見目立ちにくい未経験の部分がヤカゲの弱点。情報として目の前に飛び込んで来たものに対しての反応は良いが、予測できない事への対処は並。
今後何度かミスを繰り返して学んでくれるだろう。
クリオネは、ヤカゲのその初心さを妹愛から可愛がる傾向にあるが、戦場ではその感覚が命取りになることをいずれ教えてやる必要がある。
あと身内以外には興味が無いところも気になるか。この辺アネモネも甘かった。しかし、無理もない。
この辺は俺がカバーすれば今のところ何とかなるかと童子は姉妹に対して結論付ける。
シズクは以前まであった良い意味での愚直さをそのままに、物色している武器は暗器。
任務遂行の為の手段を増やす考えは、カルマがいい刺激になったと言える。
カルマは元々面倒見いい。意外と相性いいかもしれないから定期的に組ませたいところだが、童子自身がいつまで隊長やるか分からない為、保留とした。
カルマみたいなストイックなやつは型から外れると一気に脆くなる。
シズクはその点、失敗経験が多い分上手くカバーできると信じている。
モノリスを考えても相性がいいのはまず間違いないと童子は思う。
ジノは、軽薄。無関心。
その割には意外とこの部隊を気に入ってくれいる節があり、人間臭い矛盾を抱えている男子だ。
空気を読まない発言をワザと吐きながら、ジノは周りが見ている。
前線より、後方でどっぷり構えて指揮を取るのに向いてる為、追々は指揮系統は全てジノに任せても良いと童子は考えていた。
ヤカゲの事が好きみたいだし、これはこれで男が強くなるきっかけでもあるからコテ入れしながら様子見をする。
あと弄ろう。
悩め。そして励め若人よ。
父親のことを聞いてしまった詫びとして、ヤカゲとの買い物楽しめクソガキ。
其々の印象と課題を模索しながら、童子は学生時代の終わりにアネモネが言っていた事を思い出していた。
『私に何かあったらあの子達をよろしくね。うふふっ、みんな可愛いんだから』
それだけを言い残して前線を去った一人のアネモネの姿。
童子は「タバコ吸ってくる」と皆に伝えた後、店を一度出てからタバコに火をつけ、口に咥える。
中央都市の路地。
人気の少ない所で一人しゃがむ。
「ふぅーー、……お前さんが残した宝物。ちゃんと預かったぞ。若干一名、既に欠けてたが……」
童子はナットの事をふと頭を過ったが、存外あいつはどっかに息を潜めて生きながらえてる気がしていた。
( アイツはどこか俺の同期に似ている側面がある。それはジノもだが… )
童子が若いころ、オヤジを隊長とし、共に戦った三人はそれぞれの道を歩む事になり散り散りになった。
一人は水上都市ティアネコッタで教師をしながら研究をしている。
(いまは、理事長だっけ?、すげぇよなぁ)
もう一人は近衛魔法騎士団《ハイネの円卓》。
学生の頃から堅物だったあいつにはお似合いの現場だろう。
(……相変わらず、キレたら剣ぶん回すのかね…)
そしてアネモネは現在水上都市の病棟で意識不明。
(アイツ学生のころから世話焼きだったよなぁ)
欠伸をしながら一緒に登校したり、図書館で勉強したりしたような。
我ながら青春してんなぁと童子はと思う。
「アネモネ。早めに帰ってこいな」
手に持つタバコを口元に持ってこようとした時には既に燃え尽きていたのを見て、童子は顔を顰める。
再度新しいタバコに火をつけることはなく、店へと戻る事にした。
「おーい、お前ら。いいの見つけたか?」
「私、これにします!」
「カゲちゃん、あんなに刀を大事そうに…ッ!! はぁん!! 可愛い!!」
「カルマ殿、これはどうでありますか?」
「ん? いいんじゃないのか?、数本予備で買っておけ」
「ーー俺は、これが良いかもって副隊長から…」
ジノが持っているのは、筆記用具だった。
(…何の会話したら、そうなんの?)
まぁ、いいか。
各々決まったようで何より。
「俺も、ヤカゲと同じのにしとくかぁ。選ぶのめんどくせぇし、長さも見た感じ問題ないだろ。ーーー店主。まとめて頼む」
「はいよ、あんちゃん」
童子は天童から頼まれている事がある。
D³sに戦う意味とそれ以外の選択を見せてくれと。
会計をまとめて済ませ、ロイスとやらの依頼へ向かうための準備を済ませるのだった。
D³sの進む道は長く険しい。
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