心音ジャックポット
毎日12時と17時に更新!!
よろしくお願いします。
迷宮都市編本格的にスタートです。
ルーレットの確率ですがヨーロピアンを採用。
ストレートアップベット(一点賭け)は1/37。
2.7%で計算です。参考までに。 へけっ
更新時間と日付にご注目。
「お嬢様、手をーー」
「ふふっ、ありがとっ、執事さん」
迷宮都市へと入った《夜爾》は宗教国家アルバスのとある貴族令嬢としての潜入を果たした。
ノリノリである。
ノリノリになってしまった理由は迷宮都市に広がる景色。
視界に広がるは、辺り一面の街頭や立ち並ぶ店のネオン。
もし目隠しをした状態で、日本人をここに連れてきたら間違いなく、ラスベガスと思う事間違いなし。
以前ノトスに来た時からそう思っていた。
(前世で、見せてくれた写真もこんな感じだったなぁ…)
「よく、こんなところヤカゲちゃん一人で歩けたよな」
「おい、G。任務中だ、私語を慎め」
「Yes、D、任務に専念する」
ジノの質問に答えてやりたいのは山々だけど、今日一日は、洒落にならないのでスルーする事にする。いつもかもしれない。
夜の街を歩く赤いドレスは、街行く人達の目を釘付けにする。
性別問わず皆、クリオネの虜になっていた。
「…あの子、どこの令嬢だ?」
「知らねーよ、声かけてみろよ」
「いや無理だろ、ボディーガード連れてやがるぜ」
「あのナヨっちぃ執事は、令嬢のオキニか?」
(………泣きたい)
しかし、作戦の出だしとして上々。
誰も軍人だとは思っていないようだ。
童子とジノが周りを警戒しつつ、目的の場所へ、少し遠回りをしながら向かう。
目的の場所はあるカジノ店。
そこの店のオーナーが悪鬼密輸、密猟のパイプに繋がっているそうだ。
まずはカジノ店のオーナーと繋がる必要がある為、派手に遊ぶフリをする必要がある。
情報によると身なりが整っている美人や美青年に目が無いそうだ。
すごくわかりやすくて結構。
私が令嬢役をするよりもクリオネの方が適任と言える。
もしすぐに手を出すようなことがあったら私は何をするかわかったもんじゃないけど。
クリオネの横顔を見る。
それに気づいて微笑む姉…いや主人。
「あら、どうしたの? カゲ」
「……いえ、夜の街を歩くお嬢様の顔に見惚れてしまって…。申し訳ございません」
「うふふ、それならいいのよ、もっと見たって」
クリオネが私の頬に手を伸ばし顔を近づける。
「ひゃいっ?!」
「うふふっ、…やっぱり良いわね」
私とクリオネの顔がキスをするかのような至近距離に到達する。
甘い吐息が掛かる。紫色の瞳に吸い込まれそうだ。
おそらく遠くから見ている人達からは本当にキスをしているように見えていたのだろう。
ちょっと涙が出てきた。頬が少し熱い。
(な、何やってるのっっ!!、クー姉…ッ!!)
「見てあの執事と御令嬢!、禁断よ!禁断の愛よ!!」
「互いを求め合ってる。求め合ってるわぁ!!」
「みて、あの執事さん、顔真っ赤よ。……可愛いわ」
「あの令嬢が攻めよ。攻め立ててるのよ! ファビュラスッッッ!!!」
夜の街を歩く同じようなドレスコードを見に纏ったノトスで豪遊する貴族らしき人が騒つく。
「カゲったら本気にしちゃうから可愛いのよね〜ッ!」
「お、お嬢様…。お戯れが過ぎます…」
クリオネは急に私の顔から手を離し、ネオンに照らされた道中をスキップをするかのように駆けていく。
私に振り返ったクリオネが見せる笑顔を赤いドレスがより一層綺麗に魅せ、彼女を引き立てていた。
「何やってんねん」
「G、いやゴキブリ。任務」
「ひどくないっすか」
「ははは、だまれ」
ボディーガードからゴキブリにまで降格したジノ。
哀れ。
(……そろそろ良いかな)
監視カメラの位置を確認してから、目的のカジノへ向かう。
「お嬢様、今夜はこちらにしましょう」
「そうね。貴方が選んだもの。ここにするわ。ーーーゴk、G、D、貴方達はここで待機してなさい」
「かしこまりました」「…かしこまりました」
(ジノ、泣いてない…?)
それにしても童子は落ち着いてる。
帰りたいだの、めんどくさいだの言っている割に、スーツをしっかり着こなし、その佇まい一級のボディーガード。
脇役に徹するためにオーラを隠しているが、童子もかなり顔が整っている。
今回はしっかり髭を剃ってきているので、いつもより若く見える。
あ、またタバコに火をつけてる。
さほど真面目ではないのかも。
それはそれで絵にはなっているので、声をかけられてもおかしくないのに。
そう思いながら店へと入っていった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・
店に入って賭け事に時間を費やす。今回作戦に投与された金額はおおよそ、50万ゴルド、日本円換算で50万。
計算しやすいから嬉しいね。
天童から支給されている為心配は無いのだが、別の用途にも使う事も検討して多く見積もっても注ぎ込む額は10〜15万くらいで収めたいところ。
お金をチップに変え、クリオネがルーレットに参加し始めたが、中々目立つ勝ち方が出来ずに居た。
「ーーー難しいわね、カゲ」
「そのような日もございます。お嬢様」
クリオネが少し焦っているようにも見えた。
私自身もこういう所に来た事はない。
お互い慣れてないのも当たり前である。
数年前から迷宮都市に訪れる事はあっても、娯楽には目も暮れず、迷宮区に巣食う奉仕生物を狩っては、医療費を第一優先に軍で換金する生活。
クリオネもまた、水上都市で勉学に励み、モノリス以外でアネモネの意識を取り戻せる方法はあるのかと別のアプローチを模索し、たまに私と奉仕生物を狩り、素材を軍に持ち帰る。
軍からの信用というのを勝ち取る名目で生きていた。
お互い息抜きらしい事をしてこなかったのだ。
しかし、アネモネの為と思えばそれも苦ではなかった。
クリオネは確かに水上都市でお洒落をするようになったが、それも学園生活での付き合いと自身に付き纏う聖女や女神というイメージがあるからだ。
多少楽しめていたとしても、本心からではない事は会う頻度が減っても容易に理解できた。
そして今も必死に出来る事を熟そうとしている。
確かに目前の回る台はゲームだ。
しかし、今まで染み付いた価値観と任務で来ている事もあり、娯楽として楽しめていないのだ。
当然だろう。任務なのだから。
クリオネは綺麗な女の子。美少女と言っても過言では無く、寧ろ「美」という言葉が見劣りしている程だ。
自然と周囲に人が集まっている。そんな一人の姉の背中を見ていると、無性に切なくなってきた。
場違いで見当違いな考え方かもしれないが、折角だ。
どうせやるならもっと楽しんで欲しい。
(私と一緒に来てる事ってクー姉にとって楽しめる事なのかな…?)
一抹の不安はある。
これで落ち着いてくれるかは分からないが、迷宮都市に入る前の仕返しという名目で大好きな姉に一言囁くことにした。
クリオネの肩を優しく触り、彼女の耳元に近づく。
「……ひゃっ?!」
「……普通に楽しんで良いんだよ、クリオネ。……今夜は僕とのデートだと思って?」
椅子の後ろからクリオネの耳元で囁いてやった。
「何言ってんねん」とジノの声が聞こえてきそうだが、気恥ずかしさをなんとか堪える。
ピクッと少しクリオネが反応したかと思うと、こちらに顔を向けてきた。
少し潤んだ瞳で、頬を紅潮させつつ、むくれている。
(やっぱり、緊張してたのかな…?)
何も言わずにルーレットに向き直ったかと思うと、私の脇腹を猫パンチで小突いてきた。
どこ吹く風である。
(クー姉のそんな表情初めて見た。可愛いなぁ)
「そちらのお嬢様はどうされますか?」
「あ、あら、ごめんなさい。……参加させて貰うわ」
ディーラーはルーレットを既に回し始めており、私とクリオネの様子を見兼ねて急かされてしまったが、クリオネは黒のカラーベットにチップを積む。
カラーベットはシンプルに赤or黒、確率的には18/37なので、48.64%…ほぼ、1/2で勝てる。先程はこだわって赤に賭けていたが、尽く黒かったのもあるのだろう。
気休めである。
しかし、クリオネの最高確率であるカラーベットで攻める堅実な勝ち方が功を奏し着実に配当を受け取り始めた。
「ーーお嬢様、好調ですね。」
「カゲが付いているからよ。」
「ーー勿体なきお言葉です。」
使ったお金分を軍資金として回収しておきたいなと思いながらチップの枚数を頭の中で換金する。
今のところマイナス5万くらいな気がする。クリオネが楽しめてるなら良いかと楽観的になるのも悪くないけど…。
ディーラーがルーレットを回し始める。
(だいぶ、目が慣れてきたかなぁ… )
「お嬢様、次は1st12にベットしてください」
「ーーえ?」
「大丈夫ですよ。私を信じて」
「わ、分かったわ」
クリオネは私に言われるがまま、1st12に5万ゴルド分のチップを重ねる。
ルーレットを転がる白い球の速度が徐々に落ち、一つの溝に収まる。
「……え、うそ?」
「勝ちましたね。お嬢様」
白い球が入り込んだ溝は赤の『5』。クリオネの勝ちである。クリオネは嬉しさより、驚きが勝っているようだ。
1st12ベットに色は関係なく、1〜12の数字ならなんでもOK。確率は12/37なので32.43%。配当は2:1、賭けた金額と合わせて15万ゴルドになる。
「好調ですな、隣のご令嬢」
「?、貴方様も勝っているではありませんか…。それに私は後ろに控える優秀な執事の助言通りに置いているだけですから」
「ほう…、それはそれは、豪運」
「いえ、私はそのような。お嬢様が誇張されているだけで御座いますよ」
クリオネの隣に座っていた老紳士が気さくに話しかけてくれるので、気が和らぐ。有難いね。
そう思いつつも再度、私はクリオネの耳元で呟く。
「……僕がやっても良い?、クリオネの可愛い笑顔が見たい。……ダメ?」
「ーーーんぅ、ずるい言い方しないでよ…カゲちゃん」
肩を跳ねさせ、動揺したお姉ちゃんは、私の服袖をキュッと引っ張り立ち上がる。私はクリオネに席を譲って貰ったが、ギャラリーに主人が絡まれるのも面倒なので、そのまま細い腰へ手を回しながら強引に抱き寄せ「手を出すな」アピールをしておく。目立ってくれるし。
クリオネが顔を真っ赤にして小声で呟く。
「…ど、どうしたの?」
「誰にも触れられたくない。良いから側で見てて」
「…う、うん」
しおらしいクリオネを横目に、ルーレットを回し始めたディーラーの動きを確認する。
私は迷わず、赤『16』黒『17』赤『18』のストリートベットに全額突っ込む。 確率は3/37、8.1%だけど球が止まる位置が分かるので確率もへったくれもない。
( 本当は黒の『17』のストレートアップベットで大丈夫なんだけどね… )
「?!、ちょ、カゲちゃn…ッ?!」
「はっはっは、肝が座ってますなぁ」
「お嬢様、大丈夫ですよ。……私が勝ちますから」
《白嶷》で嫌と言うほど、弾道予測のテストを繰り返してきた経験が変に生きた。
球の止まる位置が予測できる事を悟られては、同位置に置かれてしまう…。一人勝ちができないという子供っぽい私を許して欲しい。
ディーラーがルーレットに手を翳し「NO MORE BETS」の掛け声と共に、テーブルに集うプレイヤーとギャラリーが静まり返り息を呑む。
ルーレットの球が止まり始める。
ーーコロッ、ーーーーコロ、コロン…。
「ーーえっ?!」
「ほう…、凄まじいですな」
ギャラリーがどよめく。
止まった箇所は、黒の『17』。読み通りでよかった。ディーラーの球を転がす速度が恐ろしいくらい一定でそっちの方が寧ろ凄いと思う。
「……お嬢様、続けても?」
「ふふっ、えぇ、勿論よ。お願いできる?」
「はい、承知しました」
より抱き寄せながらクリオネに許可を取る。驚いた顔から一変して、潤んだ目で笑みを浮かべる姉さんの顔が何よりも嬉しかった。
ーーーーー
ーーー
ーー
ー
後ろから歓声が聞こえてくるが、今はどうでも良い。クリオネが喜んでくれるならそれでいいと思うんだよね。
これでアネモネの医療費も稼げて一石二鳥だなぁ と考えていると、
「おい、このルーレット、スゲェー事になってるぞ…」
「……有能な執事を連れた令嬢が勝ちまくってる」
「まじかよっ!!」
「スロットよりマシーンしてる奴が居るらしいぜっ!」
という声が聞こえてきたので、そろそろやめにする事にした。
「お嬢様、これくらいにしておきましょうか。今夜は冷えます」
「ふふっ、そうね。カゲ」
クリオネの表情は、嬉しそう。この笑顔が見たかった。
ギャンブルに勝ったからではないとこの時ばかりは勘違いさせて欲しい。
驚愕の表情を浮かべるディーラーからチップを回収し、換金所へ向かう。
その際に隣に居た老紳士と数名のギャラリーに5枚ずつ、お裾分けし、気前のいい客である事を演出しておく。尾を引かれるよりこちらの方が後腐れ無く、この場から消えることが出来る。
(……ざっと、2500万くらいかな)
これだけあれば、医療費は余裕で賄えるなぁと本来の目的と違うことを考えていると、2階のギャラリーでギラギラとした衣装に身を包んだ偉そうな人が、従業員に耳打ちで話し込んでいる様子が見られた。
数分もしない内に、その人物が階段から降り、カジノで娯楽に励む人々からの視線を浴びていた。
今回のターゲット…夜の主だ。
「オーナー、こちらの方でございます」
「ーーーほう、待ちたまえ、そこのご令嬢」
そんな声が私達の耳に届く。
ある意味、1番のアタリかもしれないと、つまらない事を考えながら声の主にヤカゲとクリオネは対峙し始めるのであった。
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迷宮都市ノトス。そこは夜の都市。
昼に寝静まり、夜に活気立つ。
街頭や立ち並ぶ様々店。
賭博、ストリップ、オークション…。
そこには自由が広がっていた。しかし、無法ではない。自由とはある一定の制限化で許される心理、行動、言動の範囲を指しており、その範囲を逸脱する事は許されない。
範囲、制限、規則、ルール、そして法。そのような枠組みがあるからこそ自由は成立する。
では、枠組みなき自由は存在するのか。答えは否。
秩序無き自由は自由に非ず。
人はそれを無法と呼ぶ。
夜の都市は合法であって無法に非ず。
自由を得たくば、法に従え。
さすれば与えられよう。
欲の本質は自由を求めるもの。
自由を求める為に人はタカが外れる。人が獣になる瞬間よ。人が自由に対しての矜持を忘れる時。それが欲望というものだ。欲望の為に人は迷い、惑うのだ。
実に、愉快ではないか。
迷宮があるが故に迷宮都市ではない。
ようこそ、欲望という名の迷宮へ。
それ故に迷宮都市である。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー N.A.B 著
いつもお読みいただきありがとうございます。
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これからもよろしくお願いします。
最後の文は誰のものなんでしょうね。




