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ハイドアンドシーク

毎日12時と17時に更新!!

よろしくお願いします。

 作戦計画書を司令部に提出した翌日。


 私は軍用車両とは()()車両に乗っていた。


 ちなみに《方舟》発の作戦が開始するのは、今日からさらに1週間後である。


 童子の運転する車に乗った私とクリオネ、ジノは、迷宮都市ノトスに向かっている最中。


 助手席に乗る私は窓ガラスに張り付きながら外の景色を眺めていた。


 車に乗って眺める景色はいつも見る光景と違って見えるので、少し楽しい。


 車に乗って出かけると言う些細な夢が、最近叶い始めて私は満足です。勿論、カルマが運転する車も好き。


「おい、ジノ。迷宮都市って今どんな感じよ?」


「そういや隊長って迷宮都市行ったことないんでしたっけ?、結構ギラついてるっすよ」


「まぁ、そうなー、時代的に厳しかったからなぁ。人間ともチャンバラしてたし…。完全に行くタイミング逃しんだわな、これが…くぅうううっ、ちくしょう!、遊びてぇー!!」


「あはは…。また次の機会にしましょ?、ーーーー10年ちょっと前はまだ、風当たり厳しい時期ですもんね…」


「ヤカゲちゃんどゆこと?」


「ーーーヤカゲ、、ちゃん?」


 クリオネが、ジノの私に対しての呼び方に疑問を持ったのか、小声で同じ呼び方をしながらジノをむちゃくちゃ睨んでいるのをバックミラー越しに確認できた。


(こわっ?! …確かクー姉も10年前は忙しかったんだっけ?)


「ん?、んーと、そうだね…。端的に言うと迷宮都市は、傀儡国家の傀儡都市なんだ」


「はい?」


 ジノが怪奇的な顔を浮かべていた。


 端的に言い過ぎたかも知れない。


「分かり難いよね…。知っといた方がいいと思うから、ちょっとだけ話そっか」


 ー

 ーー

 ーーー

 ーーーーー


 傀儡政権。


 ある領域を統治し、名目上は独立しているが、実態は事実上の支配者である外部の政権や国家によって管理・統制・指揮されている政権を指す。


 宗教国家アルバスが建国される約50年前。


 ニュクスとノトスは元々別の国土。


 隕石ノアを中心にニュクスが南南東で、ノトスが南西側でそれぞれの国境を挟んで隣り合わせ。


 ちなみにノアから見て東に位置しているのが神聖クスマルクス皇国、その南側がエデンガルド。


 ニュクスは元々エデンガルド帝国の領土。

 エデンガルドは生産資源が乏しく、元々人口数が少ない国であった為、知恵を磨き知的財産を武器に他国と渡り合ってきた背景があるノア信仰を国教とする技術国家。


 ニュクスはその恩恵が強く現在でも軍事研究都市だね。


 悪鬼が侵攻してくるであろう方角に対して山脈があるため、自然を利用した防波堤として機能している地区。


 一方ノトスは元々神聖ノルキア皇国の領土。


 過去、外交関係にあったのは神聖クスマルクス皇国のみ。現在では殆ど外交を断っているので情報が少ない。医療が発展している国だそうだが、内政に問題を抱えているそうで国境を越えるのが厳しい現状がある聖樹信仰を国教とする宗教国家。


 ノトスはニュクスのように山脈がある訳ではないため、悪鬼が攻め込んできた際にノルキアで一番被害が出る可能性が高く、開拓されずにそのまま放置されてきたスラム。


 窃盗や殺人が横行していた治安の悪い貧民街だった為手付かずになっていた地区。当時は悪鬼の対処以外にも各国でノア近郊の聖地を巡って人間同士の戦争をしていたが、クスマルクスの独り勝ち。


 その際にクスマルクスはエデンガルドからニュクスとその周辺を手に入れ分領し、宗教国家アルバスが建国された。


 現在、中央都市アルバスの南地区と、楽園都市ガーデン、城塞都市アマテラスなどは元々エデンガルド領土だった。


 ある意味、宗教国家アルバスはクスマルクスにとってエデンガルドに対しての()()()のような位置付け。国境は瓦礫の山と化した更地だったりする。


 人間同士の争いが小競り合いのみになり、一途の安寧が訪れると思いきや、悪鬼の侵攻が激化したのはアルバス建国から数年後。


 各国の領土がノア中心に広がるように減少し始めた。


 クスマルクスは各国に呼びかけ防壁の建築を推し進めたが、エデンガルドが拒絶。ノルキアとアルバスが協力する運びとなった。


 アルバス領土となったニュクスの研究機関による指揮と支援の元、ノルキアはノトスの住民を労働力に国を守る防壁建築の話が進んでいった。


 アルバス建国から約10年後。

 国同士の分かりやすい格差が生まれる中、防壁の基礎工事を進めるノトスの労働者が、地下に広がる空洞を見つけた。


 それが現在の迷宮区である。


 その時代の神聖ノルキア皇国の権力者が嗅ぎつけ、こぞって探索。


 魔法親和性が高い奉仕生物の素材と貴金属が産出され始め、土地的な価値が跳ね上がった。


 ただ、それ以上に国内の問題とノトスの治安問題、各国との交渉、悪鬼への対処…etc


 ノルキアは抱える課題が多岐に渡る為、ノトスに治外法権を制定。


 治外法権が制定される前から貴族達が移り住み、ノトスは迷宮の影響で次第に資産を生み出して来たが、アルバス、エデンガルド、ノルキアの3ヶ国内の何処まで続いているのか不明瞭な迷宮を巡っての権利争いが勃発する事を危険視し、アルバス建国から約20年後、聖遺物四ヶ国協定をクスマルクスが制定。


 拡大傾向にあった戦争を一時的に食い止める事が出来た。その協定は、クスマルクスが有利な条件で作られているのは言うまでも無く…。


 しかし理由は不明だが、協定が結ばれてから数年後に、神聖ノルキア皇国はノトスをクスマルクスに譲渡。


 さらにクスマルクスはノトスをアルバスに併合…。


 その時期から神聖ノルキア皇国は鎖国状態。


 盥回し(たらいまわし)になるノトスは、傀儡国家アルバスの傀儡都市になった。


 その為、宗教国家アルバスの領土として併合されてからも、防壁完成までの一定の期間、治外法権が適用されている時期があったが、迷宮上層部から中層部付近の鉱物資源が取り尽くされ、下層部までの立ち入りをアルバス近衛魔法騎士団の同行が必要となった為に治外法権は撤廃。これはアルバス建国から約40年後のことである。


 迷宮都市及び迷宮区に入る際に様々な様式美が付き纏うようになった。


 ーーーーーー

 ーーーー

 ーー

 ー


 簡単に言ってしまえば歴史的にも、手続き的にも面倒くさい事この上ないと感じるのが、人間の心理だよね。


 私もめんどくさぁ と思ってる。


 それにノトスの住民がアルバスの思想へすぐに順応する訳もない。


 防壁が完成したのは現在から約10年前。それまでエデンガルドは防壁完成を阻止すべく、アルバスとの国境付近まで進軍していたのだが…、その小競り合いには童子は勿論の事、アネモネやクリオネも参加している。


 童子が十代の頃は私が生まれて間もない頃。クリオネも10歳くらいかな。2人とも悪鬼以前に、人間とも戦っていた時期なので、あまり思い出したくないだろう。


 アルバスが建国されてから約50年くらいしか経っていないのに色々あるんだよね。


 防壁建築中は、治外法権が残っていたはずなので、元エデンガルド領土であるニュクスの現役軍人が、ノトスでいい顔をされるわけもない。


 現在では、その治外法権の名残を用いて合法化した娯楽が経済成長の引き金となっている現状があるのだが…


「ーーー歴史的観点で見ると、こういう見解になるのかな?、童子さんが訪れ難く感じるのもおかしくないと思うよ? ……ってあれ、どうしたのみんな?」


「……俺、迷宮都市出身なのに知らんかったが?」


「にゅふふ、熱弁するカゲちゃんかわよ」


「副隊長は勤勉なのな…、いつしたのよ?」


「んー、いつだったかな? ……でも、テンじぃが悪いんですよこれ!!私の知識の偏り! 責任取ってください!!」


 そう言いつつも、学校での勉強が憧れであった為、歴史は興味本位で調べていた事は内緒である。


(地図があるともっとわかりやすいんだけどなぁ…)


「……オヤジかぁ、なんかすまん。責任は重いから却下。 ……メーデー、メーデーこちら童子。クリオネ、応答せよ。もっとヤカゲに女の子らしいことさせてやれ、オーバー」


「メーデー、メーデーこちらクリオネ。了解したわ。オーバー」


「いいなそのネタ、俺も混ざりたいオーバー」


「「「ーーー」」」


 ジノからの通信は一方通行になり、誰も受信しなかったのだが、そんな楽しげな会話の中、車両は無事、迷宮都市ノトス()()に到着するのであった。



 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「よし、ついたぞー」


「え、ここ何処っすか?」


「ノトス近郊の街だよー、厳密にはまだニュクス南方寄りの()()()()


「はい?、ノトスに行くんすよね?」


「貴方…、作戦の説明聞いてなかったかしら?」


「あれ?、書類のやつっすよね?」


「ふふっ、ジノくんって少し抜けてるのね」


 ちょっとクリオネのジノに対しての当たりが強い気もするが気のせいだろうか…。


 司令部からの作戦は『民間研究所の違法取締』なのだが、書面では『奉仕生物の調査ならびに悪鬼討伐用兵器開発のサンプル採取』となっている。つまり作戦計画書は()()()


 迷宮に顔を出す予定もあるが《夜爾(ヨルシカ)》にのみ通達された特別任務に今回は向かう事となっている。言質はアイザックから取ってるので問題ない。奉仕生物の素材必要?って聞いたし。


「ジノくん、今回は奉仕生物の調査と名目上なってるけど別の任務だよ」


「え、まじか?」


「あぁ?、おいジノ、流石に天然成分はシズクだけしてくれな。男がやっても需要ないぞ」


「え、きっつ…。当たりきっつ」


「ふふふ」


「あはは、ノトスに今日中に入って準備しないと時間がないから、移動しながら説明するね」


(クー姉、目が笑ってない…)


 来週当たる作戦の考案者は《方舟》司令部だが、現在行っている作戦の発案は天童。


 国内の問題で、まだまだニュクスと溝が深いノトスでのミッションである為、徹底した情報操作が必要になってくるのは《方舟》の事情。


 しかし、軍人の動向はノトスを含む各都市に随時情報としては通達されるのが必定。


 《方舟》から通達された作戦をより具体的にするなら、ノトスで秘密裏に行われている『悪鬼の密猟密輸と横行する研究』の差し押さえだ。


 星遺物四ヶ国協定上、A-CKI(アッキ)の素材は私的利用出来ない事になっているため、民間が研究等に加担する際には様々なルールが付き纏う。


 《ネフィリムの厄災》以来、年々更に厳しく取り締まるようなった。


 理由は至極単純、世論の反対。


 前世で言うところのES細胞の扱いに似ている。


 胚性幹細胞だっけ?


 受精卵の細胞を取り出して培養する万能細胞だが、倫理的観点から研究が禁止された経緯がある。


 D³sの開発を含めて、人間の命を弄ぶ蛮行にしか見えないと言う意見が世論を占めている。そして何より暴走の危険…。


 世論はそんなもんだよね…。


 宗教国家アルバスが認可した研究機関、すなわち要塞都市ニュクスに存在する《方舟》と水上都市ティアネコッタのエクスマキナート魔法師学園のみA-CKIを取り扱う事が許可されている現状がある。


 今回の調査はある意味、その法令による弊害が齎した反発勢力の排除。


 痺れを切らした研究職の人間が、こぞってノトスに集まり始めているのは《方舟》が調べ上げている。


 《方舟》は奉仕生物の調査をダミーとして、国内に通達する事で民間研究所に対しての情報操作を行い、軍人がノトスに入る正当性を主張し、1週間後に作戦を決行。私達をノトスに向かわせる予定。


 しかし、天童が本来の作戦期間を前倒しにした潜入捜査を現在《方舟》に対して秘密裏に行っているという構図だ。


 今回《夜爾》は民間研究機関以前に《方舟》を疑い、《白嶷(はくぎょく)》で起きた事件も並行して調査する。


「ジノくん、大丈夫そ?」


「ヤカゲちゃん…、今回の任務重くなーい?」


「あはは、今更だねー」


「うふふ、ほんと今更」


「まぁ、あれだな。そろそろ《夜爾》としての自覚持とうな、ジノ」


 ジノへの説明を終え、気配を消しつつ森の中へと入り、事前に天童とクリオネが手配した小屋の中に入った。


 そして、各個人に用意された着替えを済ませるのであった。


 所謂、変装である。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 家族とゆっくりご飯を食べる。学校に行く。友達と話す。たまに外出してはオシャレをして、ショッピングを楽しむ。

 お化粧なんて覚えて、仲の良いお友達とメイクの勉強をする。カフェで甘い飲み物や、ちょっと大人ぶってコーヒーを飲む。一緒に写真を撮る。


 そんな毎日が、私の思う日常。


 前世の私にはその経験が訪れなかった。それが普通に訪れると思っていた。しかし、訪れる事はなかった。


 この世界に生まれ変わってからも、有難い事に家族がいた。血は繋がっていないけど、優しい兄姉に囲まれて生きていた。長女の作るご飯は美味しい。お兄ちゃんとお姉ちゃんは優しい。


 幸せだ。


 それが普通だと思っていた。なのに突然奪われた。あの生活は特別だった。


 普通ってなんだろう?


 女の子として生きたいと思うのは私にとって普通では無くなった。


 でもね。今回くらい良いじゃない。


 女の子の格好くらい。


 なんでーー!!!


「な、なんで私だけ、この格好なのさー!」


「うふふ、いいじゃない! 似合ってるわよ! カゲくん」


「これはこれでありーー」「黙りなさい」


「えっ?」「ん? 何にもないわよ」


 今宵は()()ではなく、私は()()になる事になった。


 黒の燕尾服、白いシャツに黒いリボン帯、黒のスラックスに革製の靴。


 まさに執事である。


 ちなみに髪の毛は後ろで一つに纏めてる。


(……なんで男装…、かわいい服着たかったなぁ)


「クー姉、いいなぁ。まるでどこかの令嬢みたいだよ」


「うふふ、ありがとう。今夜は執事さんがエスコートしてくれるのかしら?」


 銀髪に、白い肌。紫紺の瞳。赤いドレスに赤いパンプス。


 首元には髪色に引を取らない、されど肌と髪色との調和が取れたクリオネが身につける為に生まれたような真珠のネックレス。


 可愛いよ… すごく… あれ心の涙が…。


 クリオネが一回転しながらドレスを見せる様は、同性の私ですら目が吸い込まれてしまうそんな魅力があった。


 お姉ちゃんが頬を紅潮させて微笑んでる。


 クリオネなら悪くないかも。


 沸々と私の心でささくれていた感情が薄れて行くのがわかる。


「ーーーぼ、僕で良ければ喜んで…」


「うふふ、意外とその気じゃない。カゲくん」


 私は膝をつき、クリオネの手の甲へキスをしようとしたその時。


「……あのさ、2人の世界作らないでもらえます?、見てるこっち恥ずかしいんですけど、これ何なんですかね。カメラ回しましょうか?、あ、いらないですかそうですか」


「……軍服も軍服だが、スーツもスーツだな。うっごきにくいなぁ。帰りてぇ…タバコ吸っていい?」


 全身黒いスーツを着込んだ童子は、空に浮かぶ月を眺めながら私達の返答を待たずしてタバコに火をつけ、帰りたそうにしていた。


 一方、ジノは同じく黒いスーツを身に纏きジト目で私とクリオネのやりとりを聞いていたらしく非常に恥ずかしかった。


 顔からボッとライターのように火が出そうになったので、両手で思わず隠す。


(何やってるんだろう、私…ッ )


「にゃはああああ!!、カゲちゃん可愛いっ!! ねぇ、もうこれ結婚よ。カゲちゃんといやカゲくんと結婚しゅるぅううう!!」


「僕、女の子だよ…。せめて、女でいさせてぇええ」


 前世は全く何もできなかったから切実な願いである。


 とほほ、と全身を脱力させているとクリオネが目を細めて不敵に笑う。


「……今度、一緒に水上都市に行きましょ。色々連れてってあげる。もちろんカルマ も!、三人でね!」


 耳元で囁き、ウィンクして来た。


(……ずるいなぁ)


 そう思いながらもその言葉に元気を取り戻す当たり私は意外と単純にできているのかもしれない。


「あのーっ、スルーするのやめてもらっていいですか?」


「さて、準備もできたし行きましょ!童子さんもスーツ似合ってるわね!」


「うんうん!、童子さん似合ってるよ!、あ、ジノくんもね」


「……ヤカゲちゃんの優しさ心に沁みるぅ」


「あぁ? あんがとさん。まぁ んなもん、テキトーでいいだろ。バレなきゃいいのよ、バレなきゃ」


 《夜爾》は、令嬢と執事、そして二人のボディーガードの扮して夜の街に繰り出す。


 今夜は長いね。

いつもお読みいただきありがとうございます。


ブクマ&評価&いいねもありがとうございました。


「面白い」「続きが気になる」「更新頑張れ」と思われた方ブックマークと評価の☆☆☆☆☆を押して頂けるとすごく嬉しいです。

これからもよろしくお願いします。

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