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サボタージュと正義

毎日12時と17時に更新!!

よろしくお願いします。

後半はちょっと小難しい内容です。

ちょっと長いかもしれないですが付き合ってください。

「お前さんが悪者ね、おほほ」くらいの認識でOKです!

 アイザックとの任務内容の確認を終え《夜爾(ヨルシカ)》の隊員と作戦会議をした後、すぐにカルマとシズクと共に迷宮都市へと向かってくれている。


 一通り作戦説明を終えると、童子が「今回の任務、カルマとシズクの二人はペアで、俺達と別行動な」と軽い感じで采配を決めていたので、ちょっと寂しい。


 でも仕事だしね。仕方がない。


 采配を聞いたカルマは「はぁ」とため息を吐いていたが、クリオネに「お兄さんなんだから、面倒見てあげなさい」と言われて渋々、シズクと共に()()()()《方舟》を出ていった背中は面白かった。


 その時にシズクは「クリオネ殿ぉおおお」と泣きついていたのは言うまでもない。


 私のお姉ちゃんを取らないでほしいが、みんなが仲良ければ、それで良いのだ。


 しかし、カルマの身内認定試験は中々険しいと見える。シズクには是非頑張ってほしいところ。


 お兄ちゃんはシャイなのだ。でも面倒見は良いと知っているので心配はしていない。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


 シズクとカルマが任務に出た後、1週間が過ぎた。


 現在はジノに対して奉仕生物について説明している。ちなみに童子とクリオネに関しては学園で学んできているので全く問題が無く、二人は天童と共に別の準備に取り掛かっている。


 故にジノとマンツーマン。


 ちょっと緊張する。こう言うの初めてだし…。


 ジノは迷宮都市出身。魔法は親の影響で基本的なものは使えるので問題なく戦えるらしいが、あまり自分の事を喋りたがらない男の子だから、詳しくは知らない。


「ーーーうんうん。それくらいの認識でいいよっ!、モノリスも魔力に依存している性質があるし刃は通るけど、魔法の方が効率的」


(私、まだ、使えないけど…… )


「成程なぁ、モノリスが普及してないから魔法か」


 モノリスが一般に普及している訳ではなく《方舟》に所属している人間と、アルバス国王直属の近衛魔法騎士団の一部の人間しか取り扱っていないが故に、魔法か一般兵器に魔法を付与する戦い方がポピュラーとされている。


 魔法の方が奉仕生物に対して有効という認識が現在一般的なものとされているが、私の場合は汎用型モノリスで、滅多斬りにした記憶しかない…。


 カルマを脳筋と思っていた過去が懐かしい。


「じゃあ、奉仕生物は悪鬼と、どう違うのよ?」


「そうだね……、一番違うのは食性って()()()()()かな」


「……言われてる?」


「ん〜、実際まだまだ、未知な部分が多いんだよね。とりあえず資料一緒に見よっか」


「お、おう」


 私はジノの隣に座り、彼が見やすいように資料を広げる。椅子を近づけてマーカーを取り出す。


「どうしたの?、…隣は嫌だった? ごめんね」


「……い、いや大丈夫。続けてくれると助かる」


「わかった。続けて良い?」


「うぃ」


 ジノの顔を覗き込むと目線を逸らされる。仕事だから我慢してほしい。


 とりあえず資料に目を向け、マーカーで色を付けていく。


( ナツ兄もよくしてくれたなぁ… )


 奉仕生物は、学術名称は胞子生命体。


 聖樹と呼ばれる魔力場から発生する生命体とされているが、未だ未知な部分が多い。


 迷宮区に現れ、その生態系は聖樹から発生する魔素を喰らう事で成長する。


 聖樹や魔素に寄生にしているような状態に近いので、胞子生命体と呼ばれ始めた経緯がある。


 しかし、共食いや別種個体を獲物として喰らい成長する弱肉強食の食物連鎖が存在する為、聖樹から供給される魔素を吸収しすぎないように互いで間引いているような生態系でもある。また、死体は放っておくと迷宮に吸収され魔素へと還元。


 聖樹と奉仕生物とで魔素が循環しているので、ダブルミーニング的な意味で、聖樹の奉仕生物と名付けられている。


 近年、迷宮上層の奉仕生物は共食いの傾向が強くなっているそうだが理由は不明。


 一方、悪鬼。学術名称はA-CKI(アッキ)


 奴らもまたノアの奉仕生物と言えるが、食性が違う。


 A-CKIは奉仕生物を捕食せず、必ず人間のみを捕食しようとする。内包している魔素は隕石ノア由来のものと言われている。


 この理由も長年の謎とされており《方舟》で研究に取り組む人間が後を絶たない。


 奉仕生物にせよ、A-CKIにせよ、感知魔法から魔力の違いを読み解く事ができているので生物として別種とされている帰来がある。


 魔力の元となる、魔素の話をし始めるとややこしくなるので割愛した。


「ーーーーだから、それぞれ同質、同系統の魔力じゃないと攻撃が通らない…。()()()()()は、相性の問題くらいの認識で良いと思うよ!」


「……生まれや育ちが違うくらいで良いのか、めんどくせぇ」


 露骨に顔を顰めるジノは、何だかんだ言いながらも私の拙い説明と書類で理解してくれたので安心。


「あはは、迷宮区の内部に関しては、作戦開始時で良いかな。地理は分かるけど、扱いが難しいみたいだし」


「あぁ、らしいな。下層からは国の許可がいるもんな〜」


「ありゃ、ジノくん、それは知ってるんだね」


「ん?、まぁな〜」


( 面倒臭がりなだけで実はちゃんとやるタイプなのかな? )


 同い年の男の子に無粋な事を考えてしまうが、説明は終了。


「じゃあ、私は司令室に行ってくるね。お疲れ様」


「おう、あんがとさん」


 マーカーをジノに渡し、アイザックに渡すた為の作戦計画書を片手に作戦会議室を後にする。


(学園とか通ってたらあんな感じで勉強するのかなぁ…)


 そんな事を呑気に考えながら廊下を歩き始めるが、すぐに思考を切り替え、作戦に関して思案する。


「今回の人選は妥当かな…?、本当に童子さん分かっててやってるよね? 凄いなぁ 」


 童子は普段、テキトーかつサボっているような態度を取っているが、頭はキレッキレである。


 カルマの武器種はどうしても迷宮内では威力が高い上に圧倒的に場所が狭い。シズクには申し訳ないが、独断専行に走る可能性を考えると遭難のリスクが高い。そこは全員でカバー出来ると思うが、両者ともに奉仕生物と戦った事が一度もない。


 カルマは迷宮については《白嶷(はくぎょく)》で聞いている筈なので、今回の作戦で別行動する事に対してのツッコミは一つもなかった。


 今回、作戦を共にするメンバーの内クリオネと私は迷宮経験あり。また、奉仕生物との戦闘経験はジノ以外ある。


 ()()()()、非常に頼りになるメンバー構成だ。


 童子は理解してこの采配なのだろう。


 ジノも多分…大丈夫。


 童子は魔法が使える事は、天童から聞いている。アネモネが唯一両手を挙げて尊敬していた人。無論、クリオネも学園で学んできている。


(あれ、まって… 純粋な魔法使えないのって実は私だけなんじゃ…)


「だ、大丈夫だよね?」


 内心不安になるも、今回の作戦の目的は別のところにあるから問題ない…筈。


 奉仕生物の調査も無論するが、司令部の任務はあくまでも、国に許可なく研究を進めている人達の取り締まり。


 それに付随して天童から厳命された内容も《夜爾》は独自に調べるのだが、実は、司令部には内緒。


 書面上の違和感は限りなくゼロに等しい。


「…よしっ」


 独り言を呟いてしまっていた事には一切気付かず、私は()()()()作戦計画書を再度確認し、《方舟》司令部に提出しに行くのであった。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・


「…手筈は整って居るのか?」


「はい、当然でございます。ロイス様…」


「なら、良いが。本当に大丈夫なんだろうな?」


「ええ、勿論ですとも。我々が独自に研究を重ね、見事成功した最高傑作にございます」


 怪しげな黒いローブを身に纏う男は、揚々しく取り繕いながらロイスに黒い箱を見せつける。


 箱に入っているのは、禍々しく黒く、亀裂に緑色の光が不気味にゆらめく立方体。


「ほう、これがモノリスか…」


「…左様にございます」


 ロイス・オクタビアは、迷宮都市ノトスに住まう一人の元男爵家。


 オクタビア家は神聖ノルキア皇国の中央都市からノトスへ移り住み、迷宮区探索の功績が認められ、貴族として成り上がった家柄。


 ノルキアの領土であるノトスが、宗教国家アルバスの領土になってから言うもの階級独裁的風潮は無くなり、さらには治外法権制度も現アルバス国王の手によって廃止された。


 一部合法として認められたものも存在するため、ロイスはその政策に対して不満は特に感じていなかった。


 理由は自身が経営する事業、カジノが合法化している事が大きい。しかし、カジノを経営して莫大な資産を有しても尚、ロイスの目的に到達し、満たされる事はなかった。


「……キサマらの仕事はよくわかった。近々、金は用意する。A-CKIはどこに運び込んでいる? 」


「迷宮区にございます。近年、立ち入る人が減っております故。確認なされますか?」


「……迷宮区だと?、まぁ、いい。わざわざ雑な嘘をつく連中ではないだろう? 提示した額… いや、お前の主人には世話になっている。その1.5倍は用意しよう。それで良いな」


「な、なんと… 寛大な心遣い… 痛み入ります」


「わかったならさっさと出ろ」


「えぇえぇ、ではお言葉に甘えさせて頂きます」


 ローブの男は、その場を立ち去った。


 残されたロイスと漆黒のモノリス。


「ちっ、この邪教徒め…、貴様らのやっている事はエデンガルドの連中となんら変わらんではないか!、ノアを神聖視する割に、その使徒であるA-CKIには手を汚す。美学が足りんのだ」


 ロイスもまた、研究者であり、迷宮区の探索者だった。


 しかし変わった。


 10年前、迷宮区の探索中妻を悪鬼の手によって奪われ、娘は重症。


 奇跡的に水上都市の病院にて一命を取り止めたが、迷宮都市に住まわせるのは危険であると考え、娘の名前と戸籍を偽装し、水上都市に存在する寮付きの学園へ通わせている。


 また、探索者という文化は元々神聖ノルキア皇国の文化。迷宮や聖樹、隕石ノアを含む未知を探求する科学者の総称だ。


 しかし、ノトスに位置する迷宮区は既に資源が取り尽くされており、土地的な価値は最早ないと言っても過言ではない。


 また、数年前に珍しい剣を持った人間のような何かが、奉仕生物を狩り、血の海を作った噂が後を絶たず、人の出入りが極端に減った過去がある。


 その素材の殆どは要塞都市ニュクスに存在する研究施設兼軍事施設である《方舟》へと渡ったと黒ローブの連中からロイスは聞いていた。


「奴らに正義などない…。弱者を守る?、笑わせるでないわ。D³s(ドールズ)などという私の娘と殆ど変わらない者達を兵器のように活用するなどと正気の沙汰ではない……。弱者を愚弄しおって」


 娘がもし、D³sと同じような悲劇に曝されるような事があればと思うと、ロイスは恐ろしくて仕方がなかった。


 研究を秘密裏にしている事も、悪鬼の売買に加担している事も、国の定める法に反しているのはロイス自身も従順承知していた。


 賢者と呼ばれる天才科学者が姿を消した途端、各国がA-CKIやモノリスを人間に移植する研究が息を吹き返した事は、ありとあらゆるパイプを駆使して情報として掴んでいる。


 そして実際に第二世代型と評してニュクスから若干2名ほどの少年少女が成功体として表舞台に出てきている。


 その2名の成功体を生むのにどれほどの犠牲者を出しているのか。ロイスは考えただけでも恐ろしいと感じていた。


 そして水上都市に住まう学生、魔法適正が高いものに移植実験を行う可能性は大いにある。そのような研究結果を神聖クスマルクス皇国から既に入手している。


 何としてでも別の手段を確立しなければならない。


 また、異端な研究所にA-CKIを流通させてはならないのだ。


 誰かがやらなければならない。


 娘は誰が守る?


 誰も守ってくれやしない。


 自分自身の手でやるしかないとロイスは思った。


 アルバスが敷く法は確かに表向きには人類の危機に対して有効と言える。


 研究者を間引き、資本を持つ者から徴収し、平等に分配して経済を回す。


 見る人が見れば、手厚い社会義的な思想と言えよう。


 それによって救われる生活や命があるのも認める。


 良薬は口に苦しというが、《ネフィリムの厄災》は研究者にとって良い薬になった。


 ただ、元はニュクスの研究機関がやらかした事であって民間の研究機関にまで飛び火するのは、理不尽にも程があるとロイスは考えていた。


 当然、法案を整える際に、綻びが生まれるに決まっている。


 国民の意見を聞き、即座に行動と結果を出す現在のアルバス国王は実に優秀だとロイスは考えている。


 しかし今まで階級を持つ者が生んだ経済効果や業務効率の改善、実績を出してきた事実を有耶無耶にしてまで、無理やり社会主義へ移行した際の反感や資本主義的思想を持つ者への処理がなっていない。


 階級独裁も労働者独裁も本質的には一緒。


 社会的科学主義という位置付けで証明されている。


 実際、神聖ノルキア皇国は財政難に陥っているではないか。故に紛い物を崇めて良からぬ宗教に奔るのだとロイスは軽蔑する。


 多数派か、少数派か、弾圧を敷く構図が逆転するか、しないかの二択でしかないのだ。


 多数派連中の人間に家族がいるように、少数派である私にも家族がいる。


 同じ人間なのだ。


 その思想の元、平等を提唱する考えでは無かったのか?


 私の愛する妻が残した唯一の宝。その宝が守れるのであればどんな罪でも犯してやろうではないか。


 ーーートントントン


 ロイスはそう思案していると、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「誰だ?」


「失礼します、ロイス様」


「何の用だ?」


 部屋に入ってきたのはロイスの配下であり、表向きにはカジノの運営に携わっている従業員が真剣な表情をしながら頭を垂れた。


「はっ! ……15分ほど前に建物内に盗聴器のような反応を確認しました」


「……何ッ?!、どこの勢力だ?」


 先程のやりとりを聞かれては不味いと内心焦るも、


「ご安心ください。盗聴はされておりません。我々も研究員の端くれ…、ジャミングは機能しており、逆探知を恐れたのか、すぐに盗聴器が自壊しております」


「……はぁ、ふざけるなッ!、どこの勢力かと聞いている!!」


「す、すみません…ッ!! それが全く検討がつかず… 監視カメラも盗聴器もつける瞬間等は検知できておりません…」


「ちっ、くそっ、どいうことだ?、すぐに探し出せ!!」


「は、はっ!!」


 ロイスの配下は焦りを見せながら部屋を出て行った。


「やはり、この国はきな臭い…。いやどこも変わらんか」


 15分前に見つかったものを今更報告してくるというのはどういうことだ?


 ジャミングが成功しており、自壊したから報告は焦らなくても良いと判断したのか?


 馬鹿馬鹿しい。


 情報漏洩対策を徹底したのにも関わらず、どこの勢力かもわからない輩に、この建物が怪しいと踏んで盗聴器の設置を一度許しているという事態に問題があるのだ。


「はっ、これもサボタージュの影響か」


 従業員含めたノトスの住民の平和ボケ具合にロイスは頭を抱える。


 地位や名誉は一夜にしてならず。


 努力をしている者は、見た目や見え方など気にせず、日々研鑽している。


 いざ自身の立場が保障されれば、途端に動かなくなる。


 階級が気に食わず撤廃させて、労働環境の平等性を主張したのではないのか?


 ロイスが手に持つ黒い箱。


 彼はモノリスがどのようなものか理解しているつもりだった。


 しかし、彼が持つものが誰の手によって生み出されたものなのか、そしてどのようなリスクを孕むのか、敵勢力がいると言う事態に頭を支配されたこの時の彼は一切、思慮が回っていなかった。


 彼もまた、自身の身に余る願望を叶える為の努力を怠っているに過ぎなかった。

いつもお読みいただきありがとうございます。


ブクマ&評価&いいねもありがとうございました。


「面白い」「続きが気になる」「更新頑張れ」と思われた方ブックマークと評価の☆☆☆☆☆を押して頂けるとすごく嬉しいです。これからもよろしくお願いします。


2022/12/11 アップ予定の話はどちらも6000字超えてますが、今後の章でも国同士の関係は結構出てくるので覚えていると《夜爾》と一緒に作戦を考えられるようになっているので良ければ楽しんでください!!

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