可愛いと焼肉は正義
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《夜爾》を率いる童子は、ほぼ八つ当たり気味に悪鬼を切り飛ばしたり、蹴飛ばしたりしながら戦場を突き進んでいた。
そんな彼を横目に、私は感知魔法を感知魔法を使い、シズクの位置を探る。
「……隊長、シズク見つけました!」
「あぁ、聞きたくねぇなぁ、どこにいた?」
「今回の討伐対象、大型悪鬼の真前かな…ッ!」
私は作り笑顔で答える。
「ーーーだよなぁ…ッ!!、そうだよなぁ…!!ちくしょうっ!!、 くそっ!邪魔だ!!どけぇええぃっ!!」
キレながらも的確に取りこぼしのないように悪鬼を汎用型モノリスのみで処理していくのは流石だなと思うけど、少し子供っぽくて親近感が湧く27歳。
流石の私も、シズクが、単騎で大型に挑もうとするとは思わなかったのでちょっと焦ってる。
ただ、隊長がこの調子だと追々支障が出てしまう可能性があるので宥めるとしよう。
一日で吸う煙草の本数が増えちゃう気がするんだよね。
「後で罰としてシズクにご飯奢ってもらいましょう!……隊長命令で!」
「おぉっ!いいな、それ!、ーーーカルマ!、ジノ!それでいいなっ!」
(…シズク、ごめん…ッ )
シズクの給料を生贄に機嫌を取り戻した童子は、後方についてくる2人に同意を求める。
「っしゃ、ラッキー!!」
「焼肉」
「…カルマの案採用!!」
( 焼肉、あるんだ…ッ )
焼肉はどうやら、異世界でも正義らしい。
外食に関して前世の私は、殆ど行った事が無いのでちょっと楽しみ。それにしてもカルマが焼肉だなんて、随分と8年間で丸くなったなとつくづく思う。
会っていなかった7年間、童子と行動を共にしていたみたいだけど、何かあったのかなと母性が溢れそう。
(別部隊に配属されてた時の事、今度聞いてみようかな……)
「ーーヤカゲ、どうした?」
「んー?、なんでもないよー?」
「そうか」
「…嘘、マー兄も男の子なんだね」
「あぁ…」
ニンマリした表情を横目で向けるとカルマに視線を逸らされてしまった。
「左奥30m、廃屋2階、悪鬼6体確認…。一般兵と交戦中っす」
「了解。私が行ってくるよ。カロン、棺!」
『ん』
「ヤカゲ、気をつけろ」
ジノの報告通り、建物内で交戦しているようだ。カルマのエールに頷きつつ棺に飛び乗り、そのまま空中を移動。
私を乗せながら移動できる事は最近知った。建物のガラスを破るの同時に悪鬼のコアを感知魔法で確認。
「カロンは待ってて」
『わかった』
棺を待機させてから、《緣断》を左腰に据え、棺から床へ着地。そのまま踏み込み、一般兵の隣に立つ。
ーーーーググルッ?!
「な、なんだ?!」
「……援軍か?」
「《夜爾》です。先行部隊の方々は後退。防壁の補給部隊と合流してください」
「え? ……しかし?!」
「気にしなくて大丈夫ですよ?、もう終わりましたから」
「「「は?」」」
悪鬼は6体ともコアを破壊されて、絶命していた事に一般兵が気付いていなかったが気にしない。
伝える事を伝え、棺に飛び乗り《夜爾》の隊員と合流する。
「ヤカゲちゃん、もう終わったの?」
「うん、終わったよ?」
「ひゃー」
トラッシュトークを交えながら《夜爾》は着実に悪鬼を駆逐していく。
「こちら《夜爾》。……正面のクレーター付近は俺らでやっから、第一、第二部隊は、手分けして側面叩きつつ退路を作れ…いいな?」
『こちら、第一部隊、了解』
『こちら、第二部隊、承知しました…。先程の少女は一体?』
「んあ?、あーうちの副隊長だ。どうせ顔と脚しか見てなかったろ?」
『い、いえッ、そのようなッ!!』
「きるぞー」
童子が通信機で他部隊に指示を飛ばし、目標とシズクがいるであろう場所へ直進。
他部隊は防壁付近の駆逐が主の任務である為、悪鬼がより多く出現する箇所には基本的にD³sが対処に当たっている。
防壁付近は既に制圧済み。退路を作れば、事前に要請した補給部隊と合流出来るだろう。
この状況はアネモネの一件以来、私が1人…もしくは天童と共に戦場へ駆り出されている時から変わっていない。
( 今日で大体30体かな…?、いつもより出現数少ないね )
ちょっと物足りない気もするが《夜爾》として動く分そんなものだろうと割り切るしかない。
そもそも悪鬼の数が少ない事に違和感を覚えるけど…。
「止まれ」
童子の声に反応し、私含めた隊員は立ち止まる。目標が鎮座する小規模なクレーターに差し掛かったその時。
ーーーーードゴォオン
大きな音を立てながら空中に浮かび上がる黒い物体を目撃した。
「あぁ…」
「…これ焼肉いける?」
「「ーーーー」」
ジノの反応が指し示すところは頭では理解しているが、言葉に出なかった。童子とカルマは黙り込む。
その個体は今まで見た事がない狼のような形をした異様な悪鬼。
しかし、その個体がボロボロになった状態で打ち上げられている。
私は気付かぬ内に口をあんぐりと開け、全身切り刻まれた悪鬼が地面へと自由落下していく姿を目で追ってしまっていた。
ーーーーガシャアーーーン
クレーターの中央に落ちた悪鬼。
土煙で姿形が見えなくなったが、おそらく悪鬼の息の根止められている事だろう。
汎用型モノリス打刀二式を納刀するポニーテールの少女が姿を現す。
刀の鞘でツンツンと悪鬼の屍を突く様子が伺えた。
その光景を眺めていると、シズクが私達に気づいたのか、
「……はて?、終わったでありますな。……おっ!、皆遅いでありますよっ!、私が斬り飛ばしてしまったのでありますが……。隊長殿〜!これで良いのでありますよね??」
満面の笑みを浮かべて手をブンブン振る天然娘。
名前はシズク・ナデシコ。
城塞都市アマテラス出身、第二世代のD³sである。
彼女が内包するモノリスは、第一世代と呼ばれている私達と大分異なるらしいけど、詳細は不明。何でも実体が無いらしい。
「…俺、今日何もしてないんすけど? いいのこれ」
「……雑用荷物持ち」
「喧嘩売っとんのか!…です。すんません」
「…よぉ〜し、撤収だ、撤収…。シズク回収して帰るぞぉ〜。……いや置いて帰るか。なんか疲れたわ」
「まぁ、連れて帰りましょ…。私がもう少し説明してあげればよかったのかも…」
「あれ以上、あれ以下の説明ないのよ、ヤガゲちゃん…」
「……そ、そうかな?、ジノくんからもお願いできる?」
「うぃ」
少し頭を抱える。
シズクの今までの任務実績を見れば、こうなるのが必然かと内心ちょっと諦めかけたが、副隊長として頑張らねばと思い直す。
彼女は《夜爾》に配属される前までは単独で悪鬼達と交戦し、その全てをボロボロになるまで斬り刻んだと言う実績があるそうだ。
出会うまでは怖い女の子が来るのかと不安に思ったが、全くそう言う事も無く、寧ろ愛想が良い天真爛漫な女の子だったので安心した記憶は新しい。
そんな事を思い出しつつ、彼女の様子みながら周りの戦況を感知魔法で確認する。
(……この分だと大丈夫かな)
「ーーー俺からも再度、説明する」
「……ありがと、マー兄。とりあえず焼肉だね。食べながらシズクと話そう…」
「そうだな」
「副隊長…、本部に連絡……宜し?」
「え?、あ、はい…。とりあえず取り繕っておきますね」
「助かる」
悪鬼の殲滅を確認し終えた隊長が連絡を取るべきなのだが…。
童子の引き攣っている表情から察するに、始末書を書かされるビジョンが容易に汲み取れた。
怒られるのが、面倒くさいのだろう。私もヤダ。
「ジノくん」
「はいよ。ダイヤルは俺が合わせるわ」
「うん、ありがと」
ジノはバックパックから通信機を取り出し、私に渡す。
この世界の通信機はまだ、小型が進んでいないらしく、取り出しが不便な為、隊員の一人が背負う形で持ち運んでいる。
ダイヤルを確認し、本部へと連絡を入れ、私達を含めた悪鬼の回収を要請する。
「こちら《夜爾》、副隊長ヤカゲです。それがですねーーーーー」
数分間やり取りをしていると、童子が両手で始末書を書くフリをしながらアイコンタクトを取ってくるので、頷く。
( めっちゃ落ち込んでる…。)
「みんなして、何を話しているのでありますかー?、私も混ぜてほしいのでありますよーっ!!」
小さなクレーターからシズクの声が響く。通信中なので控えて頂きたい…。
「ーーーあ、はい…。すみません。私が処理した分は全て《方舟》の研究資材として使って頂いて結構ですので…」
『承知した。ただし、その隊員についてはーーーー』
「えぇ、本人にも伝えておきますので……」
『今後、そのような事が無いよう、善処しろ』
「はい、すみません…」
悪鬼討伐用特殊部隊《夜爾》の初任務は、シズクの独断専行により半分失敗。
大型悪鬼の保存状態が非常に悪かったため、今回の任務で隊長である童子と副隊長の私、そしてシズクの給与が減給されるのは言うまでもない。
責任は重いね…。
とりあえず焼肉で頭を誤魔化そうと思う。
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