アネモネ・ローズマリー
毎日12時と17時更新!!
よろしくお願いします。
アネモネは歌うことが大好き。
アネモネ・ローズマリーは、1歳の頃から、水上都市ティアネコッタで音楽に触れ、絵画に触れ、ありとあらゆる芸術に手をつけて来た。
物心ついた頃には特に音楽が好きだった。
「ママ!、パパ!、私歌手になりたい!」
「だめよアネモネ、そんなものになっちゃ。食べていけないわよ? それより、あなたは研究者になるの」
「そうだぞ〜。パパはな〜、そうなって欲しいから、いろんなものを見せて来たんだ。研究者には発想力と独創性が必要だ、わかるね?」
両親は幼少期の些細な夢を笑顔で全否定し、アネモネは人生の選択権を持ち合わす事が出来なかった。
ちょうどアネモネが10歳になる頃、両親の研究を手伝う、傍ら魔法の勉強に勤しんだ。
どうやら魔法の才能があるらしい。
水上都市ティアネコッタに存在する国内最大の魔法師育成校、エクスマキナート魔法師学園を目指し日々奮闘した。
もし、進学する事ができたら褒めてくれるに違いない。
アネモネがそう思う矢先、丁度その年に妹が生まれた。
どんな両親であれ、親は親。
親が妹に取られてしまうと一瞬思う事もあったが、生まれたての妹を見て、アネモネはそういう意識は何処かへ消え去った。
お姉ちゃんとしてお世話していくんだ。
そう意気込んでいたのだが、両親からは何故か、妹から引き剥がされた。
「アネモネは、魔法師になるんでしょう? 勉強に専念する為に家を借りたわ。楽園都市ガーデンよ! そこで頑張んなさい!」
「そうだぞ〜。なかなかその歳で一人暮らしは出来ないんだ。困った時はうちの助手かシッターさんを呼びなさい。きっと素晴らしいものになるぞ〜」
アネモネには意味が理解出来なかった。
この両親は決定的にズレている。
アネモネはそう思った。
しかし目的は理解できていた。
楽園都市ガーデンに存在する《白嶷》という研究施設に自分達を売り込むためだ。
魔法の勉強しか取り柄が無くなっていたアネモネに少しでも両親の研究に興味を持ってもらうために送り込んだに違いない。
そしてその予想は直ぐに的中し、更に酷いものだと発覚した。
11歳くらいになる頃。
将来の為と勉強中のアネモネを連れ出し、両親は《白嶷》の見学へと赴いた。
アネモネをそっちのけにして研究員達との会話に勤む両親。
妹はどうしたのかと尋ねると、シッターさんに預けて来たの一言だけ。
「私達の娘は優秀なんです!」
「教育方針の賜物よ。時期にエクスマキナートで良い成績を残してくれる筈だ!、是非っ私達家族共々此処で研究の礎に!」
まるで妹が居ないかのような素振りを見せる両親が憎くて堪らなかった。
しかし、アネモネは妹の生活が掛かっていると思い、《白嶷》の研究員の前では優等生を演じては、媚びへつらう両親にも愛想よく振る舞った。
勿論研究員に対しても同じかそれ以上の対応をした。
吐き気がした。
アネモネの存在も利用して、両親は《白嶷》の研究員に取り入ろうとしていたのだ。
そんな時アネモネは、天童とヤカゲに出会った。
ヤカゲはまだ1歳。
よちよちペタペタ歩くヤカゲの姿を見て、アネモネは、実の妹と同い年くらいだと直ぐに気づいた。
この時のアネモネは、実の妹に会えない寂しさから《白嶷》に訪れてはヤカゲの世話をした。
気を紛らわせてたのかもしれない。
天童も快く受け入れてくれた。
そしてカルマやナットにも出会い、幼いながらも懸命に生きている彼らを見て再び、頑張ろうと思えた。
彼らが体内に背負わされたものは決して良いものではない。
人類の敵として存在しているA-CKIの一部を移植され作られた子供達。
両親が関心を惹くモノなのだから、きっと碌でもない研究だとアネモネは思っていたが、想像以上に酷いものだった。
大人にとってD³sは、文字通りお人形。
愛玩用のドールなのだ。
人間ではなく、数字という研究結果を舐め回すように見ながら恍惚とした表情を浮かべる研究員はA-CKI以上に醜く、化け物にしかアネモネは見えなかった。
呆れるばかり。
あの子達は生きてるの。
私と同じ。普通の子供達。
アネモネは世話をする度に、そう感じていた。
「ーーーほっほっほ、彼らを見てどう思う?、アネモネよ」
「ーーーおかしいわ!、狂ってる…。でも…」
アネモネの複雑そうな表情を見て、天童は、彼女の頭を優しく撫でた。
「ーーお主は、その歳で気づいておるんじゃなぁ…。そうじゃ、彼らに罪は無い…。生きる権利があるのじゃ。儂は彼らの命をモルモットのように扱う事を断じて許さぬよ」
「なら!、なら、なんで天童様は…。こんな所にいるの?」
こんな優しそうなお爺さんが《白嶷》と呼ばれる狂った研究をしている施設にいるのか…。
この時のアネモネは、1ミリも全く理解できなかったが、直ぐに返答が返って来た。
「彼らは確かにわしら大人のエゴによって生まれた存在じゃ。決して許されぬ事をしているのも従順承知しておるよ。今でも別の方法があったのでは無いかと時折考えてしまう事がある……」
天童は立ち上がり、話を続ける。
「しかし、生まれて来た命が既に存在しておるのじゃ。残念ながら後戻りはできぬ…。だからせめて、彼らの命の手綱ぐらいは緩めて、自由に生きれる環境を作ってやりたいのじゃよ。その為にわしは《白嶷》に身を置いておる、これもエゴかもしれんがの…」
天童の言葉を聞いて、この人が自身の親だったらなと思えるくらい、アネモネには、他の大人に比べて誠実に見えた。
確かにやっている事は間違っているが、その間違えを認めてあの子達の為に目を光らせ、子育てに努める姿は、私の両親より随分マシだとアネモネは思えた。
実の妹以外にもD³sと呼ばれる存在の居場所を作れる魔法師にいつか成りたいとアネモネは心に決めた。
14歳になる頃。
アネモネは飛び級で進学し、学術系魔法と呼ばれる戦闘用魔法に磨きをかけた。
さらには歌を媒介に発動する広範囲魔法を独自で作り出し、一躍、時の人になった。
時代が時代なだけに成績上位者は徴兵され、戦場を走ることになったが、その魔法を使い数多くの生徒と兵士を守りながら戦うことができた。
大切な仲間と呼べる人間もできた。
両親は大いに喜んでくれるに違いない。
アネモネはそう思った。
しかし、現実は違った。
両親は、妹に目をつけた。
アネモネがどんな魔法を使おうと、戦場で功績を残そうと関心を示さなかった。
それも当たり前の事だった。
近年の軍事研究は隕石ノア、A-CKI、モノリスに対してのものがほとんど。
両親はその事と妹で頭が一杯だった。
数年後には汎用型モノリスが完成する。
魔法技術は、モノリスを起動する上で副次的な効果しか持たないという見解が研究者の間で一般的だったのだ。
A-CKI討伐作戦が続く最中、アネモネが無事帰還した数日後の事。
「そんなの反対よ!!、妹にモノリスを移植するなんて!!」
「上の決定なんだ……」
「仕方がない事なのよ…」
「なんで反対しなかったのよッ!、なんで……」
「ーーこの研究に成功すれば、お父さんとお母さんは偉大な研究者として名前を残すことになるんだ! お前のようにッ! ……わかってくれ」
「私達を置いて、貴女は有名になったのよ?!、なのにお母さん達は……ッ、理解してちょうだい!」
正直うんざりした。
両親は、妹をシッターに預けているとは言え、時折り顔を出しに行っている話は伺っていた。
我が子故に可愛がるだろうとアネモネは思っていたが、両親は結局、研究者としての地位や名声を諦めきれていなかった。
寧ろ研究の被験体を用意する為に我が子を利用しようとしていた。
これじゃ、まるで《白嶷》の大人に扮した化け物。
いや既に両親は《白嶷》の研究員。
洗脳されていたのかもしれない。
狂ってる。
だったら、
「ーー私が被験体になるわ」
「?!、ーーーアネモネ!、本当か!」
「ーーーさすが、私達の娘よ!!」
一切躊躇う様子がない両親は、既に数字しか頭になかった。
「えぇ、その代わりーーーー」
アネモネは条件を出した。
妹への実験、モノリスの移植をやめる事。
もし失敗したとしても成功したとしても、今回限りでモノリスの移植は断念する事。
そして、
姉であるアネモネの存在を妹に直向きに隠し、両親共々、アネモネの事を忘れて、妹をしっかり普通の女の子として育てる事。
生まれてくる妹に罪はない。
こんな状態の両親に妹を育てて欲しくない。
親は子を選べないように、子も親を選べない。
しかし、産む産まないの選択権は親に委ねられている。
命の手綱は親が握っているのだ。
アネモネも天童のように。
せめてその手綱を自身の手で緩めてあげるのだ。
アネモネ自身の全てをかけて、顔も殆ど知らない妹に未来を与えるのだ。
例え、どんな未来が降りかかって来ようとも。
アネモネが唯一、人生の中で自由に選ぶ事が出来た生涯をかけた戦場なのだ。
よっぽどA-CKIや人と争うより妹に報いる事ができる。
大好きよ。
私の愛しい愛しい妹さん。
愛してる。
アネモネは意識が微睡む最中、そんな事を思い出していた。
感想、修正等ありましたら宜しくお願いします。
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昨日下書き保存しようとおもったら何故か公開してしまったという…。でもよくよく考えたら12話は昨日投稿した方がキリが良かったのでOK。
ポジティブに考えます。




