恐慌敬白
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ダメージを殆ど受けていないような悪鬼の姿に唖然とする私とカルマ。
悪鬼の口の中にあったナットの腕らしきものが現実を絶望の淵に追いやる。
(ナツ兄、アー姉…大丈夫かな…)
嫌な予感が脳裏に浮かぶ。
今すぐにでもカルマへ、訓練所に来る前までの出来事を伝えたい。
でも、余計な心配をさせる事は最善の策では無いよね。
カルマは、アネモネがナットの元へと向かった事を知らないのだ。
すぐに頭を切り替え、忌むべき敵を観察。
不安を押し殺すように思考の軌道修正を図る。
(……これが、実戦か… )
心臓が痛い。
『へぇー、賢明な判断だね』
「ん?、どういう事?」
『マスターにその杞憂は伏せておきな?……ヤカゲちゃんの判断は正しいってことだよ』
どうやら私の思考が読み取れるそうだ。
こんな真面目な声でも喋るんだね。
先程も身体から何かが抜けていくような感覚があったので、ジェミニーと繋がっている事は間違いない。
魔力に違いないけど、感知魔法の時とは違う感覚だ。
純白の悪鬼は、ボロボロだった翼を瞬時に再生させたどころか、両翼を大きく広げて、合計12個の光輝く何かを生み出そうとしていた。
先端から魔法のようなものが浮かび上がる。
(?!、……まずいかもッ)
あれは以前、ナットに教えて貰った私が全く使える気が全くしない魔法。
使い方によって魔法師としてのセンスや性格が現れると言われた魔法剣。
今の私じゃどうしようもない。
せめて情報だけでも伝える。
「マー兄!! 《オリュンポスの輝剣》が飛んでくる!!」
「……なんだそれは?」
「合計12本!! 魔法でできた剣が飛んでくる!!」
「ちっ、……ジェミニー」
『ーーーOK. マスター!』
私は悪鬼の両翼に浮かび上がる魔法を瞬時に読み解き、カルマに伝えた。
それを一瞬、疑うような素振りを見せたものの信じて、ジェミニーに対抗手段を指示してくれた。
(……ありがと、マー兄。信じてる)
『えぇー 僕のことも信用してよー』
「信じて欲しいなら頑張ってッ!、私も頑張るからッ!」
『はははっ、厳しいね…ッ!』
とは言いつつも先程一回の攻撃で、なんとなくジェミニーの扱いが分かった気がする。
異形が放つ魔法の明確なイメージをしつつ、銃を構える。
ジェミニーは悪鬼が放つであろう魔法と同等か、それ以上のエネルギーを収束させるのが分かる。
二度目は不思議と不快感や倦怠感は無い。
『ヤカゲちゃん、いいイメージだね〜!、助かるよ〜っ』
「ほんと?」
今度は私とカルマ、そしてジェミニー3人で口を揃えた。
「『掻き消せ!!!』」
「お願いっ!!」
ーーーバババババババババン
「ルルゥ!!」
紫電の弾丸が放たれたと同時に、悪鬼も12本の輝く剣を私達に目掛けて放つ。
魔法の剣と光弾に込めた力が拮抗する。
まるで剣先とブレットが空に溶け出すように紫色にスパークする。
「砕けろっ!!」
カルマの意思が働いたのか、弾丸は悪鬼の魔法を相殺した。
「やったっ!!」
その安心が、私のスキを生んだ。
「バカッ! 避けろっ!!」
「……え?」
悪鬼が口をニタリと歪める。
完全に油断をしてしまった。
死ぬほど後悔した。
実際一回死んでるのだけど。
そんな冗談が思い浮かぶくらい走馬灯というのは、逡巡の時を数百倍へと引き伸ばすんだなと思う。
思い出すのが遅かった。
悪鬼のメインウェポンは、魔法ではない。
異形の口を開き、たった1発で訓練所を半壊させた極光が私を狙う。
終わったかな。
そう悟り、諦めかけたその時ーーーー
『……誰が、12発だけだって?』
合計4発の弾丸が、悪鬼の顎目掛けて突き刺さり、爆散する。
「ーーーグルルッ!?!」
その威力に押され、極光狙いが逸れる。
私を外れ天井へと突き進み、遥か上空へと消えていった。
『……どうだい、ヤカゲちゃん? 僕も案外悪くないもんだろ?』
一瞬、拳銃の可愛らしいドヤ顔が見えた気がしたが、
「あはは、凄いね…ッ、ありがとっ」
「ジェミニー、よくやった」
『にゃはは、そうでしょ? マスターも普段からそう褒めなよー?、僕、褒められて伸びるタイプだからさっ』
あの一瞬で放ったのは合計16発の光弾。
着弾に時間差をつけて放っていた。
ジェミニーの事を所詮物だとばかり、少し甘く見ていたかもしれない。
武器に意思があるというは大きなメリットだ。
自身が未だに使えない兵器。
想像以上にモノリスは凄かった。
しかし、先程油断した事実は変わらない。
煙で悪鬼の姿は見えないが、同じ場所に止まっているのは危険と考え、一定の距離を保ちながら走る。
「ーンナーイーテー、ーネカーーシール」
悪鬼から、言葉のような音が聞こえたのは気のせいだろうか。
「ウーイーイーター」
『何か言ってるねー』
「ジェミニーもそう聞こえる?」
「何なんだ、一体…。?!、ちっ」
困惑するのも束の間、顎が外れ、焼き爛れた悪鬼はより翼を大きく広げた。
自身の体を包みながら丸くなり、 宙へと浮かび上がった。
それは、まるで純白の繭。
紫色の脈がドクン、ドクンと明滅する。
私はただ呆然とそれを眺める。
カルマは何か異変に気づき、私に駆け寄ってくる。
どうしたんだろう。
悪鬼は奇声を挙げ続ける。
あれ?、奇声?、あれ、そんなの出してたっけ?
「ウターーウウウウウ」
ーーーーーーーーーウーーーーターータウヴ
ーーーーーーウターヴェウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタウタタタタタタタタtttttttttttttttttttttttttttttヴェ
「ーーーーアイシテルーーーー」
全身に悪寒が走った。
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