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相好を崩すのはジジイの勤め

毎日12時と17時更新!!

よろしくお願いします。

 時は少し遡り、天童とクリオネが居るD³s(ドールズ)のホームに移る。


「ヤカゲを、わしの孫を見くびるでないわ」


「はい?」


 天童は、クリオネがヤカゲの事を理解しているようで理解していないのではないかと考えていた。しかし、ヤカゲの事を思ってクリオネは、自身に対して偉そうな口を聞いている事が表情から伝わっていた。


 妹思いの良い姉。


 天童はヤカゲに本当に良い隣人、兄姉に恵まれたものだと感心する。


 一部の研究員は違うみたいだが。


 天童は、クリオネの言動に対する怒りよりも彼女の献身的な心音に感謝と喜びの念で溢れ返っていた。


 クリオネはヤカゲを妹のように可愛がり始めてから、数年前の荒々しい雰囲気から随分と変わった。


「クリオネの言い分はよう分かっておるよ…。それに黙ってやり過ごすつもりはワシ自身も元々考えておらん」


「ッ?!、だったら!!」


「ほっほっほ、話は最後まで聞くもんじゃよ。ただ、ワシはクリオネやカルマ、ナットに関しては少しみくびっておったようじゃ。すまぬの……」


 いつからだったか。天童は思いに耽る。


 この楽園都市ガーデンに巣食う闇が大きくなったのは。


 無論、此処だけではないが、思い出したくもない。


 もともと戦争によって傷ついた兵士を癒し、治療し安心して生活ができるように、孤児となってしまった子達を教育する設備として天童と初代国王が協力して生まれた庭。


 楽園都市ガーデン。


 別の目的もあったが概ね、間違いはない。


 A-CKI(アッキ)との戦闘が激化を極め、軍事的な研究が盛んになり始めて《白嶷(はくぎょく)》は現在の有様に至った。


 天童は嫌な予感を悟っていた。


 故に医療機関らしい部分は全て水上都市に移した。


 クリオネにも伝えるべきではないか、天童はそう思う。


「儂は、今の《白嶷》が正解だとはミジンコ程にも思っておらん」


「どういう意味かしら?」


「D³sの扱いじゃよ。何処から話せば良いかーーー」


 アネモネには以前、天童は話した事があった。


 それを境にアネモネはD³sの世話役になってくれた事は記憶に新しい。


 ナットを始めとするD³sが生まれ、研究を進める研究員の言動から疑念を抱き始め、ヤカゲを育てる過程で、それは確信へと変わった。


 子とは国にとって宝だ。


 我が身可愛さに、子を蔑ろにする大人が居て良い筈がない。


 そうは言いながらも戦場に我が子を向かわせている為、矛盾はしている事実に心が痛む。


 そもそもD³s計画はA-CKIとの戦争の為ではない。


『対話』だ。


 世界に跋扈する異形を駆逐するでなく、対話による解決を図る為に設計された計画の筈だった。


 しかし研究者が躍起になり、自身の地位や名誉の為に軍需産業を始め、目的と手段を違え始めた。


 《白嶷》を管理する要塞都市ニュクスが介入し、別の目的が絡んでいるのは、天童も薄々察していた。


 いつの時代も同じ事を繰り返す。


 その傍ら、この子達はどうだ?


 ナットは二度と自身のような存在を生まない為に研究を続け、一般兵でも扱える武器を作った。


 結果《白嶷》ではモノリスを自我の無い幼児に移植すると言った研究は廃止となり、また間接的な影響ではあるものの兵士間の格差を緩和するに至った。


 しかし、悪い影響としては魔法技術が衰退し過ぎた。


 今はナットのやりたいようにさせてやるのも親の勤めだと、この件は追々考えれば良いと天童は考えている。


 クリオネは、戦場で傷つき苦しむ兵士を1人でも多く減らし、ヤカゲが生まれてから要塞都市ニュクス以外のところでも慈善活動として医療費や療育費を払えない貧しい地域に赴き、人を癒し、治し…。


 数多くの民を笑顔にしている。


 この国は宗教国家と名を冠すものの、近年では珍しい宗教的思想が強い聖女や女神と呼ばれる存在にまで、至っている。


 カルマは、不器用ながらもあの若さにも関わらず先人を切ってA-CKIと戦い、数多くの人間を救っている。


 近年のA-CKIによる民間被害件数が減少しているのはカルマのお陰と言っても過言ではない。A-CKIの30%以上はカルマが地形ごと削り取っているのが良き証拠。


 一般兵が戦場で被害に遭わなくなって来ているのだ。


 なんと大人の醜きことか。


 なんと子供の健気なことか。


 D³s達は皆、造物主を愛している。


 生かされているという事に感謝してくれているのだ。


 クリオネはヤカゲやアネモネに似て器用に自分自身の内面を隠す。


 我々大人はクリオネには随分と甘えてしまっていた。


 天童は話を締め括る。


「長々と話してしもうたわい…。クリオネよ、大人の事情は醜いの」


「何よ、……それだったら」


「そうじゃな。わしも、そろそろ動くとするかの……」


 クリオネもまだ、11歳。


 天童は、まだ成長しきっていない彼女達に不安はあるが、そうも言って居られない予感がして居た。


 椅子から立ち上がりクリオネの隣を横切る。


「感謝するぞ、ヤカゲの為に。ただ、お前さんはもう少し肩の力を抜いてもええかもの〜」


 クリオネの肩をぽんぽんと叩きながらその場を立ち去り、訓練所に向かおうとしたその時、地響きと共に巨大な爆発音が聞こえた。


「きゃっ!、何!?」


「ぬ?」


 天童は、事態の急変に気付いた。


 しかし、決定的に遅かった事にも気付いた。


 クリオネやナット、ヤカゲすらも白き異形の正体に気づいていた。


 ならその先にある計画が漏れている、もしくは気付いている連中が居る可能性を警戒すべきだったと後悔する。


「わしも、孫可愛さに腑抜けたわい…。クリオネ、ついて参れ」


「え、えぇ…わかったわ」


 2人は部屋を出た瞬間、施設内の光景に驚いた。


 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


 クリオネは先程から、何が起きているのか理解が追いついていなかった。


 天童は何か思い当たる部分があるように見えたが、今はそれどころではない。


 異変が起きる前に言っていた話が本当だとすれば、《白嶷》も一枚岩ではなく、個々の目的があり、勢力図が分かれている事になる。


 その誰かが今回の事件を引き起こしている可能性が高い。


 クリオネは目の前に広がる光景が無ければ独自に調べ、考えたいと思っていたが、


「何よ…これ…」


「想像以上に深刻じゃの…。爆発箇所が複数とは…」


 天童は地面に手を付き、感知魔法を使い施設全体の様子を把握する。


 施設内の床や壁に天童を中心とした銀色の亀裂が波紋し、脈動する。


 クリオネは場違いにもその魔法が美しいと感じてしまう。


 とても前時代の技術とは思えなかった。


 火の海や瓦礫と化していない廊下から足音が聞こえた。


 研究員が、天童に焦りを見せながら報告する。


「ろ、老師様!、第一研究区画と監視塔からーーーーー」


「わかっておる…。お主は監視塔とナットの研究室の消火活動に専念しつつ、出来る限り研究データの回収を急げ」


「はっ!、ーーー犯人は一体…?」


「…馬鹿者ッ、前触れもなく爆発箇所が複数同時じゃぞ?、既に目的を果たし、逃げ果せておろう…。第一研究区画B-2の渡り廊下から潜入するのじゃ。そこに数名研究員が残っておる。手分けして掛かれッ!」


「しょ、承知しましたっ!!」


 研究員は天童の指示に従い廊下を走り去っていく。


 あの一瞬発動した感知魔法で施設内の状況を全て把握する天童に驚くが、私達もこうしては居られないとクリオネは考える。


「お爺さま!、私達は?」


「ふむ。訓練所が少々まずい事になっておる…。儂が先行する。先を急ぐのじゃ」


 天童が走り出し、クリオネはその後を追う。


 ヤカゲの身体能力は高く、D³sの中で最も速い。


 クリオネは、ヤカゲを施設内で追いかけ回せるほどの速さを持つ天童に着いていくのがやっとだった。


 天童が右手に持つ木製の杖が意味成していない。


「…ぬぅ?、 クリオネ、少し止まれ」


「な、なに?、急に! ……まさか歳??」


「……ちゃうわい失礼な。ほれ、飛んでくるぞ」


「……何がかしら?」


 天童は杖で見るべき箇所を指す。


 目の前の廊下の床と壁が斜め方向に丸く膨らみ出したかと思うと、轟々と赤く溶け始め、巨大な光がとてつもない音を立てながら突っ切って行った。


 ーーーードゴォォォオオオオオオ


「ーーーッ?!」


「ほっほっほ、派っ手じゃの〜」


 本来あり得ない現象を目の当たりにしてもいつもの茶を啜るかのような反応を見せる天童にクリオネは内心ゲンナリする。


「そういうのは、切迫感を出しながら言ってくださいッ!!」


「焦らせるのも変じゃろう? 落ち着いて対処すべきじゃ。それに今の妙技…、先の爆発と比べてどうじゃ? 同質かの〜?」


 クリオネは天童の言葉の意味を考える。


 確かに違う気がする。


 爆発した研究施設側と全く別の何かが、それこそA-CKIのような異形の何かが放ったものように感じた。


 そう考えていると天井からむき出しの鉄骨が数本、クリオネと天童がいる方へと倒れてきた。


「ーーきゃっ!!」


 ーーーカカカカッ


「ーーーーぬん!!」


 下駄の走る音が一瞬耳を過ぎる。


 天童が宙に飛び、鉄骨を何かでバラバラに切り飛ばした。


「ぬぅ…やはり派手さが、ちと足らんの…」


「…お爺様、さっきのは…? いえなんでもありません。その、ありがとうございます」


「ん? よいよい。良い肩慣らしじゃ。……わざわざ道を教えてくれたの〜、ここから降りる。寒気がするわい…」


「はいっ、お爺様!」


 クリオネが今見たのは、天童が老師と呼ばれる所以の一旦。


 現役の頃はまた別の名前で呼ばれていたそうだけど。


 木製の杖で、鉄骨を切るなんて正気の沙汰では無い。


 クリオネはそう思った。

感想、修正等ありましたら宜しくお願いします。

『よかった』『続きが気になる』と思って頂けたら、

ブックマークや評価をしてくれると泣いて喜びます。


かつて最強だった系のお爺ちゃんっていいよね。


2022/12/05 追記 3話 時点での主人公の年齢が

冒頭に追加出来ていませんでした。申し訳ないです。

話の流れは変わらず同じなので兄姉達との年齢差は4歳。


引き継きお願いします!!

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