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‐禁忌の召喚者‐ ~The Toboo summoner~  作者: ろーぐ・うぃず・でびる
最終章 The Toboo summoner
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最終章 第十三話 立ちはだかる者は

「上出来だね」


 砂浜で、ベルゼブブは笑う。


 少年の、その姿を前に。


「どう? 神の力は」


 ベルゼブブが言うと、快は念じ、自分の体から一匹のハエを召喚し手に止まらせる。


「借りてる本人の前で言うのもなんですけど、妙にしっくりくるような……まるで、自分の役割を、今になっていきなり分かったような……でも、ちょっと怖いです」


「多分、デモニルスの置き土産としての側面がそうさせているのだろうね……力を使うのはいいけど、戦いと緊急時以外は控えてくれないかな。使われてる今若干体が怠いし。さて、黙らせるべき相手を言おうか」


 ベルゼブブが指を鳴らす。


 すると、静かな波立っていた海が泡立ちはじめ、徐々にせり上がってくる。


 隆起した海の一部分は、まるで鏡で出来た柱のような印象を受け、壁のように広がって行くとそれは何かを映し出し始めた。


 快は、隆起した水の中を覗き込んでいく。


壁に映し出されたのは――稲妻。


 紫電の落雷、灰色の大地に盛り上がっている岩石すら砕き、毒々しく生えた草花さえも貫く。


貫かれた草花、岩石の末路は等しく同様――灰燼へ還るのみ。


 その電撃の先には、ある影があった。


 紫色の長い爪。


輝かんばかりの金色の毛髪を、荒々しく切り揃えた頭部。


そこには赤い二本角が生えており、口は片方割かれている。


筋骨隆々とした、大男を思わせる造形には灰色の猛禽の翼が六枚。


肌は炭色で“悪魔”という言葉を、イメージすればそのままが浮かびあがり、具現化したような姿には、彼が古来からの魔界の住人だという事を物語らせるには充分すぎた。


「まずは、知り合いを相手にしようか。彼の名は、魔王の器(ダーク)・ベリアル……サタナエルとも呼ばれてる。僕の知り合いだけど、こいつほど武器と結束力のある軍団を従えてるやつは他に居ないだろうね……弱い奴が嫌いで、特に人間に対しては解りやすく嫌いな奴だ。人間に対してだけは、嘘しか言わない」


 ベルゼブブがそういうと、壁に向かって手をかざす。


その瞬間、画面が切り替わっていく。


 次に映ったのは、杖を握り、長い銀髪を縛った紳士服の青年。


長身痩躯で、十二枚の白鳥のように優美な翼を伸ばして黄金の椅子に座る、青い目の悪魔。


中性的な、有名な彫刻・絵画芸術すら平伏すような美しい容姿は、妖しい色気をまとい、見ていた快側も何か――形容しがたい官能、敬意と畏怖の念に駆られていた。


魔王の器(ダーク)・ルシファー……天界への反乱神話は聞いた事はあるだろう? 凄まじい魔力を持つ大悪魔でね。穏健派……なんだけどなぁ、ちょっと頑固なところがあるから話し合いは必要かな。一応戦闘は免れない前提でかかった方がいいかもねぇ」


 ベルゼブブが腕を下ろすと、海の壁は沈められ、何事も無かったかのように元の姿へと戻っていった。


「あいつらと、戦うと……」


「そそ、もれなく人間単位で言うと二メートル越えの奴らばっかり。相当俊敏だし、戦闘経験も豊富。これらが怒り狂って襲い掛かってくるんだよ~? ししっ」


 嫌な笑みに感じたに違いなく、快は固唾を飲み、震えだす。


「だ、だったとしても……やってやる。その前に、グリードらの所へ戻らないと」


 快は、ベルゼブブから背を向き町の方へ向かおうとする。


ベルゼブブは、それを見て快は肩から腕を伸ばし、何かを差し出した。


印章封印札(シジル・カード)


「何かあったら、こっそり言いな」


 快は、それを受け取ると――ハエの大群を身にまとわせ、業六区へと向かった――。

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