表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
‐禁忌の召喚者‐ ~The Toboo summoner~  作者: ろーぐ・うぃず・でびる
最終章 The Toboo summoner
82/117

最終章 第十話 ひれ伏させる

 海岸、潮騒。


踏みしめる砂の感触だけがそれをしっかりと現実だと認識させる。


 快の脳内に叩きこまれるのは、現実から遠い、超常的な存在の発する提案。


まさしく、悪魔の契約に等しいだろう言葉。


「魔神を納得させるって、どうやって?! まさかとは思うけど、わざわざ力を示す……戦いに行くって?」


「察しがいいね、その通りさ。といっても、人間に対して好戦的で、かつ古典的な連中だけと戦うだけだけどね。君自身にとっても良いこと尽くめだよ? だって、実戦経験が詰めるし、いざという時、あいつを止める事だってできるようになるだろう」


「じゃあ、もう片方の……禁忌をさっさと滅ぼすって?」


 快が問うと――ベルゼブブは首を傾げ、両手の平を擦りながら笑う。


「君からすれば、修羅の道を往くことになる方だね。今から教える力の使い方だけをざっくり学んでカンで、グリードや魔王プエルラを滅ぼすか……まぁ、魔王を滅ぼされたらされたで、立場がある以上それはそれで混乱を招くだろうけどね」


「で、でも……ジェネルズやポグロムアを、あのグリードの兄弟を倒したときの要領で――」


 快が反論しようとすると、ベルゼブブは快の唇に人差し指の腹をあてがい、黙らせる。


「よく考えてもみなよ、虚弱な小僧一匹が、何故あんな化け物どもと戦えたのかを。確かに君自身の執念(ガッツ)と、能力、運もある……けど、ジェネルズはかなり弱体化していた。ポグロムアも同様。一方であいつはどうだ? ピンピンしているし、今の今まで――ダゴンと戦っている時でさえ、本気を出していなかった」


「確かに……そうだ」


 ベルゼブブの発言は、快自身の驕りを痛感させられるものであり――自分が如何に恐ろしい存在と戦っていたのかを再確認させられた。


 同時に、グリードの底知れぬ力も。


 跋扈し続ける、異常なる存在によって麻痺しきっていた脳内。


それが一気に、快の記憶によって覚醒させるような感覚さえ覚える。


「アレは、今だかつて本気を出したことがない。本気を出せるのは、自分の作り出した空間の中だけど……本気を出しきった結果が隕石の招来。だから近頃はかなり手加減して戦っている」


 思えば、何故本気を出さないかについて快は考えてもいなかった。


(散々、あいつが強い強いとは聞かされていたし、人間ではない上位の存在なら、あれくらいが当然だと思っていたけれど……あいつの強さは、本当に規格外みたいだ)


「さて、どうする? 禁忌はグリードを含めるともっといるし、ほとんどあいつが仕留め損なった奴らか、見てないだけの奴ら……どこかで漂っている、超古代からの存在だよ? どっちを選ぶ? 尤も、どちらかを選択したところで結局両方しなきゃいけないけど……どっちを優先するかって話だ」


 快は、俯き思考する。


砂を踏みにじり、風に吹かれて。


「昔の友の言葉を一部借りるなら“君は好物を食べて、苦手なものを残し後悔するか、苦手なものを先に食べて、好物を食べるか”だ」


 ベルゼブブが笑うと、快は顔を上げて答えた。


「僕は、先に苦手なものを食べよう……わかった、僕はあいつを止める為にも、そして、力を借りている魔神達がどういう存在なのかを知るためにも……力で納得させてみせる」


 快の答えに、ベルゼブブは納得した様子で地面を蹴り、一メートル程度後ろへ飛ぶ。


「いいねぇ、けど覚えておきなよ? 驕りと自信は違う……どちらも“プライド”だけどね。さぁ、て。では教えようか」


 ベルゼブブが両手を広げると、黒い渦が湧き立ち始める。


快が良く見てみるとそれは、ベルゼブブ自身の手が分解し、分離したハエの大群だとわかった。


 快は、反射的に両拳を握り、構えるとベルゼブブがハエの大群を投げる。


「そのハエを、魔術を操る要領で手懐けろ。魔力をひりだして、僕の力を体内に宿すんだ」


 飛ばされたハエに、快の視界が塞がれると、快はひたすらにもがく。


「うぁっ!」


 手で掻けど、叩けど、潰れる事もなく尚もハエが蠢く。


 慌てふためき足がもつれた末、背中を地面に背中を打つと、徐々に瞼の上にのみ止まっていたハエの密度は上がり、広がって行くのを快は感じた。


 足、頬、腕にハエ共に包み込まれ――咄嗟に出た行動は転がり回る事だけ。


「神経を研ぎ澄ませ、想像して……体の奥底から沸き立つなにかを、練り上げろ。それが魔力だ。その湧き立つ魂の、垢こそが魔力だ!」


「うあっ……ぐっ!?」


 快があがく程に、ハエの密度は増し、どんどんと熱を帯びていく。


(体が熱くて……呼吸がし辛い……まさかこれ蜂球!? 蜂だけじゃないのか!?)


 蜂球。


それは、ミツバチが大きな外敵に群がり、球状に包み込むことで殺すという攻撃手段。


ミツバチの中で、特に攻撃力の高く――自傷的な行為だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ