表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
‐禁忌の召喚者‐ ~The Toboo summoner~  作者: ろーぐ・うぃず・でびる
最終章 The Toboo summoner
76/117

最終章 第四話 笑っていようと

日常回です。

  戦争が、起こる。


 アムドゥシアスが放ったその一言に、一同は凍り付く。


「どういうこと?」


 快が問うと、アムドゥシアスは語りだした。


「その力を狙う者、あるいは邪魔に思う者が…………特にこのご時世、境界が緩くなっている以上、移動しようと思えばいつでも移動できてしまいます。ですから、きっと……ばれてしまえば、直接あなたの方へ向かう者が現れるでしょう」


「という事は……あまり、大々的に使ってはいけない、と」


 快が返すと、アムドゥシアスは唸り、続ける。


「しかし、その力がどういう条件で使われるのかが、問題ですな……見に覚えのあることは?」


 快は、顎を擦り、考え込む。


(そういえば……大体は僕が危機的状況の時に発動している……けどなんでだろう。何も思い当たる節がない……法則性も無いし)


 快が考えていると、棕が頭を掻きながら話に割り込んだ。


「なぁ、思った事言っていい?」


「どうぞ」


 棕は、軽く会釈して言う。


「快が行く先々って、アムドゥもそうだし、その前のバエル? シトリー? もそうだったし……なんか悪魔が多くね? まるで快の方が釣られているような……」


「いや、僕が行ってるところは……どこも以上は無かったし、なんなら……既に自分たちの意思で集まってる事が多かった。だから、別に僕の行く先々って訳じゃないと思うけど――」


 快、棕、アムドゥシアスとで話し合っていると、ちはがと棕の間に、割り込んで入ってきた。


「あの……お腹、空いたんで……もうどっか行っていいですか?」


「俺も俺も、酔いも冷めたし、難しい事に使った分の糖分もすっからかんだ」


 グリードとちはが言うと、棕が何かをひらめいた様子で、口許に弧を描かせる。


「おっしゃ! じゃあ丁度うちもお腹空いてたし、皆で飯いかね? おすすめの中華店、知ってるんだぁ!」


 棕は手を叩き、自転車のハンドルを握り脇に添え、歩きだすと後ろの三人の方を向く。


 一瞬、三人は首を傾げると――快が一歩、前に出た。


「行こうよ、皆」


 快が笑みをたたえて言うと、グリードとちはが顔を合わせる。


 グリードが笑むと、ちはは頷き、正面を向き――前進する快に歩幅を合わせて歩み始めた。


「うちが昔、アマチュア時代から世話になってる店でさ、あそこのラーメンと餃子、チャーハンは格別に多いし美味いし……食事といえば、もうあそこしか勝たんっしょ」


 棕が三人の方を向きながら、ゆっくりと、楽し気に話す。


 その様子に思わず三人の表情は、ほころんでいた。


「あの、鳴深さんて……どんな曲歌ってるんですか?」


 ちはの発言に、快は目を丸くする。


 信じられない、とでも言わんばかりの顔だった。


「ええええ!? 知らないの? “blue rose chein” は?」


 快が大声で叫び問うと、グリードが噴き出すのを我慢するように、口を抑えて笑う。


 ちはは、素直に横に首を振って、答えた。


「知らない、だって……ほとんど音楽聞かなかったもん」


 ちはは、こっそりと快に耳打ちして付け足す。


「顔はいいと思うけど。あれナチュラルメイクだけど、天然のブルべ肌……すっごい白いし、顔も小さいし」


「……ブル、なちゅ……へ?」


 いきなり、快の知らないであろう単語が、連続で聞こえてくる状況に、思わず戸惑う。


 横から聞いていたグリードが、歩きつつ笑っていった。


「へっへっへ、快、知らない言葉をあんまり使ってやるもんじゃあないぜ。そういう事で返されるから。ブルべってのは、ブルーベース。要は西洋人なんかに多い、血管が青く見える白い肌で、ナチュラルメイクはざっくり言うと割と薄化粧ってこと」


 グリードが言うと、棕が笑顔で返す。


「やめろって、たまたま人に会うことないからこうしてるだけ。あー恥ずかし」


 談笑と共に進める歩み。


 快にとってそれは、軽やかなものに違いなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ